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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
302/360

人魔決戦8・各地の激闘


 Dゴーレムとバギュアと対峙するラグザは肩で愛刀を担ぎながら隣のガルジに意識を向ける。

「しかし、あんたがこっちを選ぶのは以外だったな。 てっきり四天王とやり合うつもりだと思ってた」

「そのつもりだったんだがよ、どうもあのガキが先みてぇだからな」

「結構律儀なんだなあんた」

「他人の喧嘩取るほど落ちぶれてねぇよ。 だから今回は雑魚で我慢してやらぁ」

「ヒュハハハハ。 雑魚とは言ってくれるじゃないですか」

 ガルジの発言に怒るでもなく、ただニヤニヤと笑いながらバギュアは指から金属音を擦り合わせた様な音を鳴らしている。

「私達はこれでも魔界では四天王に近い存在として名を馳せていた存在です。 たかだか奴隷共の末裔如きが大きな口を叩くと後悔しますよ?」

 魔界から逃げ出した奴隷の末裔である亜人を明らかに見下した態度のバギュアに、ガルジは好戦的な笑みを浮かべる。

「おい鬼野郎。 あの金属もどきは俺が貰うからな」

「どうぞ。 俺はあっちの奴に興味があるんで」

 ラグザに相手と定められたDゴーレムはそれに反応するでもなく、無言でラグザを見下ろしていた。

「流石に乱戦になっちまったら楽しめねぇからな。 少し場所変えようや」

 ラグザが移動すると、Dゴーレムもそれを追う様に姿を消した。

「残念でしたね。 二人で力を合わせれば万一傷1つ位は付けれたかもしれないのに。 二人共死亡確定です」

「ゴチャゴチャうるせぇんだよ。 御託はいいからかかってこいや」

「ではお言葉に甘えて!」

 バギュアは腕の刃を鋭く光らせるとガルジに向かって斬りかかる。

 ガルジは腕に鱗を出しそれを受け止める。

 だがガルジの強固な鱗は刃が当たった瞬間簡単に斬れてしまった。

「ああ!?」

「まず腕一本!」

 バギュアが腕を振り抜こうとすると、ガルジは蹴りをバギュアの腹に放ち吹き飛ばす。

 吹き飛ばされたバギュアはすぐに着地する。

 普段ならすぐ追撃するガルジだがそれをせず、冷静に自分の脚を見た。

 すると蹴った脚に何本かの斬り傷が出来ている。

 よく見るとバギュアの腹に何本かの刃が出現しており、それに防がれたのだとわかる。

「めんどくせぇ体してやがんな」

「ヒュハハハハ! 今更後悔したか!? 我が肉体はあらゆる物を斬り裂く! それは現四天王の肉体も同様! 不可避の斬撃こそ我が最大の武器にして最大の防具となるのです!」

「斬る? 削るの間違いだろうが?」

 バギュアがピクリと反応すると、ガルジは自分の腕を見た。

「汚え切り口にガリガリとした振動。 どうせ刃の部分がノコギリみてぇに回転するなりなんなりして切れ味上げてんだろ? 狡い真似しやがるもんだ」

「狡い? 私の最大の能力を狡いだと?」

「そうだろうよ。 切れ味上げて俺の腕も脚も切れてねぇんだからよ。 チィッ。 本物の雑魚引いちまったか」

「こ、この奴隷風情が〜!!」

 バギュアは目を血走らせ全身に刃を出現させる。

 どこを攻撃されようと返り討ちに合うバギュア必殺の姿だ。

「これで貴様は攻撃出来ない! このまま無残に切り刻まれるがいい!!」

 バギュアは体を回転させてガルジに突進する。

「ワリぃけどな、その程度の技はもう見飽きてんだよ」

 ガルジは正面が受け止めると、両腕だけ竜人化させる。

 太くより強靭な鱗に包まれた両腕に力を込めるとバギュアの回転は徐々に鈍くなり、やがて止まってしまった。

「ば、馬鹿な!?」

「馬鹿なじゃねぇよなまくら野郎」

 ガルジは両腕に力を込めると、バギュアの刃が砕け体が押し潰される。

「が、ギュア!?」

「四天王を斬れる刃じゃなくて、四天王に勝てる刃自慢しろ雑魚野郎が」

 鉄くずの様になったバギュアを放り投げると、ガルジはつまんなそうにラグザが行った方向を向いた。

「やっぱあっちにしとくんだったな」






 ラグザは大刀を振り下ろしDゴーレムに斬りかかった。

 だが刃はDゴーレムの肩に当たると止まり、逆にDゴーレムが刃を掴み投げ飛ばした。

 ラグザはすぐに着地し大刀を構え直す。

「確かにかてぇなこいつは」

 これまで数回斬りつけているが、Dゴーレムには傷一つ付かない。

 一方ラグザの大刀は僅かだが刃こぼれしている。

 他の兵達の様に壊れないのはラグザの技量の高さ故だが、このまま続ければ遅かれ早かれ大刀は使い物にならなくなる。

「もう、止めておけ」

 突然構えを解き声を出したDゴーレムに少し驚きながら、ラグザは戦闘態勢を崩さない。

「へぇ、あんた話せたのか」

「無駄な事は止めて、降伏、しろ。 そうすればうぬの命、助けてやる」

「随分気前がいいじゃねぇか。 てっきり皆殺しにするつもりなのか思ってたわ」

「勘違いしている。 我達は、皆殺しが目的ではない。 魔力を無限に生み出す、仕組みこそ我達の望み」

「仕組みだ?」

 戦場にいるにも関わらず落ち着いた様子のDゴーレムは頷くとそのまま話を続けた。

「極論我達は、魔力という糧さえ手に入ればそれでいい。 その為に必要なのがあの怪物。 それを利用する為に、地上は、必要」

「で、俺達を生贄にして自分達は魔力を好き放題ってか?」

「勘違いするな。 確かに生贄は必要。 だが、各国から極わずか。 決して国を傾ける程の量ではない。 それどころか、手に入れた魔力は地上のうぬ達にも、均等に分けられる。 それを使えば、うぬ達は今より、発展する。 新たな技術。 治らぬ病の治療法。 あの怪物から生まれる無限の魔力には、それだけの可能性、ある」

 そこまで言うと、Dゴーレムは片手を差し出した。

「我は、本来争いは、好まない。 そしてうぬは、強き者と認められる。 こちらに来るなら、うぬの仲間を含め、それなりの待遇を約束する」

 争いを好まないというのは、恐らく本当だろう。

 今までの攻防でDゴーレムは殆ど攻撃らしい攻撃をラグザにしていない。

 倒された兵士達も、少なくともラグザが見る限り振り払った程度で重傷者らしき者はいなかった。

 相手の立場を理解し、理性を持って物事を見るDゴーレムは、無機質で怪物じみた見た目とは逆にどこか人間臭さを感じる。

 恐らく提案も本心からしてくれているのだろう。

 それを理解しながらも、ラグザは大刀をDゴーレムに向ける。

「悪くねぇかもしれないが、生憎内の王様は強欲なんでな。 一部を犠牲にして得る栄華や安心ってのに興味ねぇんだよ」

「そうか」

 Dゴーレムは腕を下ろすと、その周りの空気が変わった。

「なら、うぬはここで死ぬ」

 Dゴーレムは巨体に似合わぬ速度でラグザに突進する。

 ラグザがそれを避けると、近くにいた屍の兵隊にぶつかりその体を四散させた。

「マジかよ」

 最高硬度の巨体がトップスピードで突進してくる。

 それは余りに危険な凶器だ。

 ラグザは立ち上がるDゴーレムに大刀を振り下ろすが、またその硬さで弾かれる。

「無駄だ」

 Dゴーレムは手を地面に付けると魔力を発する。

 すると、地面から鋭い石つぶてがラグザに向かって飛んでいく。

「我の魔力は、体の硬さではない。 鉱物を操る事こそ、その本質」

「チィ!」

 ラグザは大刀を振るいつぶてを弾くが、全てかわせず体をかすっていく。

 ラグザはそれに怯まず三度大刀を当てるが、Dゴーレムは腕を振るって弾き飛ばす。

「刀が壊れないのは見事。 だが、斬るのは無理だ」

「そうかよ」

 ラグザはそう言うとDゴーレムの頭を掴み頭突きを浴びせる。

 突然の予想外の行動に驚くが、Dゴーレムにはダメージはない。

 寧ろラグザの額が割れ血が吹き出す。

「血迷ったか? 生身で我を壊せる筈が・・・」

「ゴチャゴチャうるせぇよ!」

 ラグザはDゴーレムの巨体を持ち上げると頭から地面に叩きつける。

 そして大刀を手にすると倒れたDゴーレムに向かい再び斬りかかる。

 額を当たった大刀から火花と鈍い金属音が響き、Dゴーレムは哀れむ様にラグザを見た。

「無駄だ。 どんなに頑張ろうが我を斬ることは・・・」

 その時、Dゴーレムの額に亀裂が入る。

「なに?」

「なるほどな。 この感覚か」

 砕けこそしなかったが、Dゴーレムは驚き初めて驚異を感じる。

 そして慌てて距離を取ろうとするが、ラグザはすぐに距離を詰め他の場所に大刀を振るう。

 すると、先程は出来なかった傷が大刀に斬られた場所に出来ていく。

「一体、何をした? なぜ急に?」

「てめぇは人の攻撃に無頓着過ぎたんだよ。 だから一点集中されてんのに気づかねぇんだよ」

 攻撃を続けながら額の角を指差すラグザに、そこでDゴーレムは漸くある可能性に気づいた。

 ラグザの頭突きは、額の角が起点になっている。

 そして地面に頭を叩きつけられた場所も同じ場所。

 もし集中的に細かい一箇所に連続て衝撃を与える事で傷を付けやすい状態を作り出したのだとしたら?

 答えは自身の額が証明している。

 だがそれだけでは、体の他の場所を斬れる様になる理由にならない。

 混乱するDゴーレムは、ラグザを迎撃しようと量の拳を握り合わせ振り下ろす。

 ラグザは大きな刀を振り上げる要領で、その両腕を切り落とした。

 自身の両腕が宙を舞うのを見て、Dゴーレムは呆然とする。

「終わりだ」

 ラグザは大刀を振り下ろすと、Dゴーレムの胸を斬り割いた。

 傷から血の代わりに鉱物の破片が飛び散り、Dゴーレムは仰向けに倒れた。

「何故だ? 何故、急に斬れた?」

 最早戦意を無くしたDゴーレムの問いに、ラグザは額の血を拭いながら答えた。

「一度頭斬って感覚掴んだからな。 一度斬れりゃあ後はその感覚利用すりゃいい話だ」

「感覚? そんなもので、斬れる訳が・・・」

鬼人(オーガ)は戦闘種族だ。 舐めんじゃねぇよ」

 戦闘特化した鬼人(オーガ)にとって、実戦こそ最高の稽古場だ。

 そんな鬼人(オーガ)の中でも強者であるなら、戦闘中の成長速度も他の者の比ではない。

 ラグザはその成長速度を利用し、見事Dゴーレムを斬ってみせた。

「さてと、ここで提案だ。 今こっちに来れば悪いようにはしねぇ。 両腕だって、多分内の奴らなら治せるだろうしな。 どうする?」

 Dゴーレムは倒れたまま思考し、自分がラグザに負けた理由を理解した。

「・・・投降しよう。 我には、うぬ程何かの為に戦う強い意志はない」

 危機的状況でも、決して折れない意志。

 そしてそれを支える仲間の存在。

 それはDゴーレムが持ち合わせていないものであり、自身の体の硬度をも超えるもの。

 そう悟ったDゴーレムは素直に敗北を認めた。


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