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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
300/360

人魔決戦6・カイザルVS雷竜王

 イグノラを囲う5つの城の一つ、バハムートの眷属である竜が飛び交うその城の屋上でバハムートはある方向を見詰めていた。

「気になるか?」

 背後から聞こえてきた声にバハムートは近付いてくるディアブロを睨みつける。

「魔王自ら見張りに来るとは、ご苦労な事じゃな」

「それだけ貴様を評価しているという事だ」

 睨むバハムートを気にする様子もなくディアブロはその隣に立つ。

「まだ怒りは収まらないか」

「かつての友が死者の王如きの玩具にされた恥辱、貴様にはわかるまい」

「友か。 確かにあれは数少ない貴様と対等に近い竜だった」

「奴だけではない。 他の竜達までタナトスに使われるとは。 しかも同胞達が殺し合うなど・・・」

「ほぉ。 貴様に付かない竜がいるのか? この時代の竜にしてはなかなか骨がある様だ」

「ボルガルスの倅よ。 ヤオヨロズでランスを持った戦士を乗せて飛んでおった」

「息子がいたのか」

「話によれば卵の頃に逸れた様じゃから親の存在は知らんじゃろうがな」

 珍しく興味深そうにするディアブロの方を向かず、バハムートは戦場になっている方向を向いた。

「互いに知らぬとはいえ、せめて親子で殺し合う自体は避けてほしいものだが」






 カイザルはジークに跨りながら目の前のボルガルスを見据えていた。

 竜とは何度も対峙した。

 クロードに破れた後自分を鍛え直すべく聖域とまで言われた竜達の住処アレスに籠もった。

 ジークともそこで出会い、今ではほぼ目にする事のない古竜種とも戦った。

 その時の古竜種達ですら当時のカイザルからすれば怪物だった。

 だが、目の前のボルガルスを見てカイザルは理解した。

 今の古竜種は、このボルガルスが生きていた時代からすれば劣化版にすらならない程退化した存在に過ぎないと。

 カイザルはボルガルスを知らない。

 バハムートが認めた存在であり雷竜王の名を関するものである事は勿論、その名すら知らない。

 だがそれでも本能で感じた。

 目の前のこの古竜こそ、真の古竜。

 その中でも最高峰の一頭であると。

 自分を乗せているジークもそれを感じ取ったのか、最大限に警戒をしている。

「ノーラ殿。 マンティ殿を連れて一時離脱を」

「しかし、あれを立ったお一人で相手するのは・・・」

「一人ではない。 私にはジークがいる」

 カイザルにジークが答える様に鳴く。

 ノーラはマンティの様子を見て足手まといになると判断し「ご武運を」と一言残しその場を去った。

 カイザルはランスを構え改めて目の前のボルガルスと対峙する。

「我が名はアルビア聖五騎士団! 聖竜ニーズホッグ! アレックス・カイザル! もはや言葉が通じぬ身屍の身と見受けるが、その力に敬意を評し愛竜ジークと共にお相手しよう!」

 名乗りを上げたカイザルに呼応する様にジークは咆哮すると、ボルガルスへと飛び出した。

 ボルガルスはカイザル達を敵と認識し目を血走らせ、向かってくるジークに爪を振るう。

 ジークがその速度で爪を回避すると、カイザルはランスを放つ。

 だが鱗が固く微かな傷を付ける事しか出来なかった。

「出し惜しみしてはいられないか。 ジーク!」

 ジークは宙に雷のブレスを吐くと、それは落雷の様にカイザルのランスに落ちた。

 それによりカイザルとジークの体は雷光を纏い、バチバチと帯電し始める。

「行くぞジーク!」

 雷を纏った事で雷光の速度となっジークはボルガルスの巨体に急接近する。

 カイザルが貫通力の増したランスで思い切り突き刺すと、ボルガルスの体から鮮血が飛び散る。

 するとジークは即座にその場から離脱しまた違う方向から急接近を開始する。

 雷の速度でヒットアンドアウェイを繰り返す事で、ボルガルスの体の鱗を徐々に破壊し痛手を与えていく。

「よし! このまま一気に!」

 カイザルがそう思った瞬間、ボルガルスは宙に向けブレスを放つ。

 すると宙に雷雲が広がり、幾つも落雷がボルガルスの体に降り注いだ。

「一体何を?」

 一瞬戸惑うカイザルだったが、それが自分達が先程したものと瞬時に理解した。

「ジーク! 回避!」

 ジークがすぐにその場を離脱すると、先程までいた場所にボルガルスの巨体が突っ込んできていた。

 カイザルはボルガルスが自分達と同じく雷を纏い雷光の速度を手に入れたと判断した。

 巨体に自分達と同じ雷光の速度。

 更に自分達よりも大量の雷を受けても耐えられる耐久度。

 何より、自分達がした事を瞬時に真似て自分の力にしてしまうその応用力はとても屍と化した存在とは思えない程驚異だった。

「これが、真の古竜か」

 速度が互角になった事を含めてどう攻略すべきかカイザルは思考を巡らせる。

 だがボルガルスはカイザルの思考を遮る様に再びブレスを雷雲に放つ。

 すると紫色の雷が雨の様にカイザル達に降り注ぐ。

「天候まで操るか!」

 豪雨の如き勢いで降り注ぐ雷をジークは必死にかわしていく。

 ジークのブレスより高濃度の魔力を含んだ雷の雨は雷に耐性を持つ自分やジークでも確実にダメージを負う。

 そう判断したカイザルはとにかくジークに回避に専念させた。

 それがいけなかった。

 突如下から衝撃が走り、カイザルはジークから落とされる。

 落下しながらカイザルは上空にいるボルガルスを見て漸く何があったかを把握した。

 雷を避けるのに集中していた自分達の真下から先程の様な突進をしてきたのだ。

 直撃は避けた様だが、全身に貫く様な痛みが走る。

 恐らくボルガルスの纏う雷の影響だろう。

 痺れもあり思う様に動かないカイザルを、ジークがすぐに受け止めた。

「すまない、ジーク」

 ジークは答えるが、その体には爪の痕の様な傷が出来ている。

 カイザルを庇いボルガルスの爪を受けたのだろう。

 出血と突進のダメージがありながらも、ジークはカイザルを乗せボルガルスを睨みつける。

「ジーク、お前・・・」

 未だ闘志を失わないジークの頭を軽く撫でると、カイザルはランスを強く握り締める。

「ジーク、少し賭けに付き合ってくれないか?」

 ジークが肯定する様に鳴くと、カイザルは覚悟を決めた様に降り注ぐ雷の豪雨を見据える。

「ジーク!」

 カイザルはジークに指示を出すと雷の豪雨に突っ込んでいった。

 雷の豪雨を避けながらボルガルスに接近すると、カイザルはボルガルスの体に飛び移る。

雷槍竜牙(らいそうりゅうが)!!」

 カイザルは渾身の突きでボルガルスの鱗を砕き、体にランスを突き刺した。

 だが致命傷にはならず、ボルガルスはダメージを負いながらもカイザルを振り降ろそうと暴れ始める。

「これからが本番だ」

 カイザルは普段使わない腰の剣を抜くと天に掲げる。

「さあ、我慢比べといこう」

 するとカイザルの剣目掛け雷雲から雷が落ちてくる。

 剣に当たった雷はカイザルに流れ、ボルガルスの体にも伝わった。

 雷に体制のあるボルガルスだが、体の内部に自分の雷を流され苦痛の声を上げる。

 暴れようとするボルガルスに、ジークは掩護の為ブレスを顔に目掛け吐き続ける。

 カイザルに内部から、ジークに外から攻撃をされ、ボルガルスは苦痛の表情を浮かべる。

 勿論、ボルガルスと同じく強力な雷を浴び続けるカイザルのダメージも大きいものだ。

 ジークも攻撃しながら降り注ぐ雷の豪雨をかわし続けるのは難しく、何発も被弾している。

 ダメージ覚悟の捨て身の攻撃だが、それをしなければボルガルスを倒す事は今の自分達では不可能。

 だがこの大戦の中他の戦力をボルガルスに集中させる余裕はない。

 ならば自分が抑えなければならない。

 カイザルはその強い使命感でひたすら雷に耐え続けた。

 やがて、ボルガルスの瞳から徐々に失われいく。

 力尽きるとカイザルが思った瞬間、ボルガルスは最後の力を振り絞る様にジークに向けてブレスを放とうとする。

「ジーク!」

 カイザルが叫ぶが容赦なくブレスは放たれる。

 避けられないと判断したジークは自分のブレスをぶつける。

 ブレスとブレスが激突するが、やはりジークの方が弱く押し戻されていく。

 カイザルはなんとかしようとするが、もう雷の豪雨も止み雷を流す事も出来ない。

 せめて少しでも弱まればと思いランスを突き立てるが、それでもボルガルスのブレスは勢いを失わない。

「ジーク!」

 必死に名を呼ぶカイザルにジークを必死に踏ん張る。

 それでも押し戻されていくブレスに、ボルガルスは勝ちを確信した。

 だが、そのジークを姿にある映像が頭を過る。

 それはかつての自分。

 仲間の為に身を呈し、ボロボロになりながら戦う生前の自分。

 何故かその時の自分と、ジークが重なって見える。

 その意味がなんなのかもはや思考する事は出来ない。

 それでも何かを感じたボルガルスの体は急に力が抜けていく。

 ブレスの威力も弱まり好機と見たジークは一気に押し返し、そのままボルガルスの体を貫いた。

 体を貫かれたボルガルスは、不思議と穏やかな気持ちになり、そのまま落下を始めた。

 ジークは落ちるボルガルスからカイザルを拾い上げると、落下しながら消えていくボルガルスを見送った。

「よくやったジーク」

 カイザルの言葉に答えるジークだが、その声に歓喜はない。

 寧ろ、どこか寂しさを滲ませている様に聞こえた。

 その理由はカイザルにもわからない。

 だが、何故かボルガルスがブレスの威力を弱めた時、何かを感じた。

 それを同族であるジークの方が強く感じ取ったのだろうと思い、敢えてそれ以上追求しなかった。

「一旦下がるぞジーク。 お前も治療が必要だ」

 ジークが答えると、カイザル達は自分達の陣の奥に一旦帰っていった。

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