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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
298/360

人魔決戦4・魔獣VS巨神

 ジャバは目の前の相手を見上げた。

 自身が巨大なジャバに戦う相手を見上げる事はほぼない。

 このダイダラボッチはジャバよりも大きなモンストロよりも巨大で、40メートル近くはあるだろう。

 それはこの前大敗した太古のジャバウォックすら超える、まさに巨人を超える巨神と呼べる大きさだった。

 だが、不思議とジャバには恐怖はなかった。

 このダイダラボッチも、他の巨人族(ジャイアント)を圧倒する程の威圧感はある。

 武器こそ持っていないが崩れかけのヤオロヨズ製の甲冑を身に纏い、甲冑の隙間から見える筋肉と傷跡はその戦ってきた歴史を思わせそれが一層不気味さと迫力を増した。

 だがジャバは感じた。

 太古のジャバウォックよりも格下だと。

 ジャバの野生の感覚が、完全にどちらが上かを正確に見極めた。

 そんなジャバに対し、ダイダラボッチは右腕を振り下ろした。

 ただそれだけで部隊一つ潰してしまうのではないかと思うその一撃が眼前に迫るにも関わらず、何故かジャバは微動だにしない。

 そしてその一撃がジャバの頭上に振り降ろそれた。

 風圧のみで通常の兵士達は生者死者問わず飛ばされ、巨体を誇る明王や山脈巨象(マウンテンマンモス)ですら吹き飛ばされぬ様に踏ん張った。

「ジャバ殿!」

 明王は叫ぶと、無いはず目を見開いた。

 ジャバは両腕で、ダイダラボッチの手を掴んで防いでいる。

「ウガアアアアアアアア!!」

 ジャバはそのまま全身に力を込めると僅かに、しかし徐々にダイダラボッチの体が浮いていく。

 自分の4倍はあるであろう巨体を、ジャバは怪力のみで持ち上げていく。

 ダイダラボッチはそのまま宙を舞い、死者の軍勢の上へと落ちていく。

 同時に、死者の兵隊達が虫の様に押し潰されていく。

 ジャバは倒れるダイダラボッチを見据えながら、フェンリルとの最期の特訓を過ぎらせる。





 それはフェンリルが最期の教訓と称した、殺し合いをした時だった。

 当初ジャバは戸惑ったが、フェンリルは本気でジャバを殺そうとしてきた。

 その爪が、牙が、狼王の名に相応しい殺気を纏いジャバの命を喰らおうとしてくる。

 それは、太古のジャバウォックと退治した時をジャバに思い起こさせる。

 ジャバは必死に抵抗し、そして、決着が付いた。

 フェンリルは地面に横たわり、その命が消えようとしていた。

『・・・よくやった、ディーアの息子よ』

 もはや死が目前にある身にも関わらず、フェンリルの声はその威厳を失わず凛としたものだった。

『我が王としての殺気に打ち勝ったお前なら、もはや獣の本能に負ける事はない。 己の意思の元、どの様な怪物にも立ち向かえる。 魔獣の長としてな』

『フェンリル・・・』

 悲しそうな顔をするジャバに、フェンリルは初めて小さな、そして穏やかな笑みを見せた。

『その様な顔をするな。 もはや我は必要ない。 古の獣は消え、新たな世代が時代を紡ぐ。 かつてディーアが貴様に森を託した様に、我も貴様に一族とこの身を託してやろう』

 目から光が失われていく中、フェンリルは最期の力を振り絞る。

『貴様との数日、意外に楽しめた。 あちらでディーアに自慢し、悔しがらせてやると、する、か・・・』

 長い時を生きた狼王は逝った。

 弔う様にジャバは雄叫びを上げると、白銀狼達もそれに続き、ジャバを新たな長と認める様に頭を下げた。

 そしてジャバはフェンリルの望み通り、その体を喰らい糧にした。






 ジャバはフェンリルに託された全てを身に宿し、今戦場に立っている。

 だがそれを重荷に感じる事はなかった。

 何故ならフェンリルを初めとした自らジャバの糧となった魔獣達が、ジャバと共に闘ってくれている。

 そう感じる事が出来たからジャバは目の前の巨神を前にしても、恐怖も無く戦える。

 そんなジャバに警戒心を抱いたのか、起き上がるダイダラボッチの空気が変わる。

 ぼぅっとしていた空気が張り詰め、ジャバを“敵”と判断した様だった。

 体に張り付いた死者の兵隊の死体を払うと、ダイダラボッチは全身に力を込める。

 すると筋肉が膨張し甲冑が弾け飛び、巨大だった体がまた一回り大きくなる。

 完全に戦闘態勢に入ったダイダラボッチに、ジャバは雄叫びを上げながら向かっていく。

 ダイダラボッチは先程とは違う勢いのある拳をジャバに向かって放つ。

 ジャバはベアコンドルの様に宙を舞いそれを避けると、ダイダラボッチの腕を走っていく。

 アシュラコング独特の身のこなしで軽々と腕を駆け上がると、デスサーベルタイガーの様に牙をむき出しにしダイダラボッチの喉を喰いちぎる。

 喰らったものを糧とする。

 まさにそれを体現するかの様にジャバは喰らった魔獣達の特性を活かしてダイダラボッチに痛手を与えていく。

 苦悶の声を上げるダイダラボッチだが、体格差もあり大きな痛手にはならずすぐに迎撃としてジャバに左手を伸ばす。

 それに対してジャバは避けず、息を吸い込む。

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 フェンリルを思わせる咆哮を向かってくる手に放つと、ダイダラボッチの左手が砕け散った。

 手が吹き飛んだ事に驚くダイダラボッチは、ジャバを振り落とそう暴れ始める。

 ジャバはその勢いを利用し空へと飛んだ。

 そして両腕を前面に出す様に丸まり高速回転を始めダイダラボッチの頭上に急降下を始めた。

「ウガアアアアアアアア!!」

 回転するジャバがダイダラボッチの頭に直撃した瞬間、ダイダラボッチの頭蓋が頭蓋が砕ける音が辺りに響き渡る。

 ジャバの体はそのままダイダラボッチの頭を貫通し、地面に降り立った。

 ダイダラボッチの頭には撃ち抜かれた様な大きな穴が空き、そのまま倒れ始める。

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 トドメとばかりにジャバは再びフェンリルの咆哮を放つ。

 すると直撃した頭が砕け散り、まるで活動停止を意味する様にその体も霧散していく。

 戦場にジャバの勝利の雄叫びが響き、魔獣達も称える様に吠えた。

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