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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
295/360

人魔決戦2・激突

「全軍突撃だと!? 何を考えている!?」

「本当に呆れますわ。 まさか先発部隊が惨めに倒されたとはいえいきなり全軍だなんて、子供の癇癪に等しいですわね。 どうなさりますヒュペリオス?」

「俺が知るか!」

 タナトスの突然の指令にキュラミスが呆れながら聞くと、ヒュペリオスは憤りを隠さず衝動のまま近くの屍兵の頭を叩き潰した。

「あいつは生きてる者もいるというのを忘れたのか!? 俺達は奴の換えの効く死体共ではないんだぞ!?」

「確かに、ワタクシの可愛い子達をむざむざ捨て石にされるのは癪ですわね。 ここは様子見させていただきましょうか」

「ヒャ〜ッハッハッ! やっぱ嫌われてんな〜タナトスの野郎!」

 声に振り返ると、デスサイズの後ろに降り立った。

「で、デスサイズ殿! なぜ貴方がここに!?」

「あの野郎の近くにいたってつまらねぇからな。 それより、あれどうする気だ?」

 デスサイズが前方を指差すと、モンストロの吹き出した海水の余波がこちらに徐々に迫ってくる。

「流石の規模ですわね。 まるで津波ですわ」

「あの程度でどうこうなるとは思えんが、念の為部隊を避難させるべきか」

「 いや、その必要は無さそうだぜ?」

 デスサイズが見上げると、空中を巨大な影が飛んでいく。

 それは紫色の雷光を放ちながら高速で飛ぶと、口からブレスを放った。

 ブレスと激突した海水は一気に消し飛んだ。

 しかもヒュペリオス達の方に向かっていた部分だけだでなくその更に奥、メガロ達が戦っていた壁際までの海水が霧散した。

「あ、あれは一体?」

「雷竜ボルガルス。 昔バハムートのジジイに仕えてた4体の内の一体だよ。 死んじまってたのか」

 バハムートにはかつて4体の直属の竜がいた。

 ボルガルスはその中で雷竜王と恐れられ、バハムートの片腕とまで呼ばれた知恵も持ち合わせていた。

 だが今はその知恵の片鱗もなく、凶悪に瞳を光らせ下の連合軍を睨みつけている。

「なんでも、人間から仲間を護る為に捨て石になったという話ですわ」

「なるほどな。 確かにジジィがキレるわけだわな。 しかし、雷竜王とか言われてたアイツまでタナトスの人形とはね」

 かつての姿を知るデスサイズは今のボルガルスの状態と盟友を道具に堕としれたバハムートに若干の哀れさを感じるが、今はそんなものに浸っている暇はない。

 今も前の方で部隊が動き始めている。

 自分の獲物がいなくなるのは、デスサイズにとって何よりも避けない事だった。

 デスサイズの目の奥が好戦的な光を放った。

「さてと! じゃあ俺は獲物を狩るとするか! てめぇらもさっさとしねぇと、目当ての奴らが死んでタナトスに取られちまうぜ! ヒャ〜ッハッハッ!」

 デスサイズが跳躍するのを見届けると、キュラミスはヒュペリオスに視線を向ける。

「だそうですわよ」

「貴様はどうするつもりだ?」

「そうですわね。 付かず離れずに立ち回りながら好みの子を手に入れさせていだきますわ。 貴方はどうなさるおつもりですの?」

 キュラミスの問いに、ヒュペリオスはライルの顔が脳裏に浮かぶ。

 そして息を吸い込むと、自分の部隊に言い放った。

「ヒュペリオス軍! これより前線に向かう! 屍共に遅れを取る等、四天王の軍の名折れと思え!」

 怒号が響き、ヒュペリオスの軍は前進を始めた。






「んん〜、これは凄まじいですね〜」

 セイメイは太郎丸の上から戦場を見下ろした。

 海水が全て吹き飛び、海人(シーマン)の戦士も屍の軍団も地面に落とされている。

「おいおい大丈夫なのかよあいつらは?」

「目立った死者は出ていない様子ですが、それなりに負傷者は出ている様ですな。 隆信(たかのぶ)殿」

 セイメイの声に反応しその影から白く長い布の様なものが飛び出し、先端の1つ目がギョロリと開いた。

「なんの用ねセイメイ?」

「眷族を率いて負傷者の回収をお願い致します。 回収した者はキサラ殿達のいる後方へ」

「任せときんしゃい」

 隆信が戦場に向かうと、それに続く様に隆信と似た姿の者達が影から飛び出していった。

 粗方出終えるとイトスは半ば呆れた様に言った。

「一体どんだけ出せるんだよあんたは?」

「さあ? 数えた事は御座いませぬが、まだまだおりますよ」

 ふふふっと笑うと、セイメイは後ろのモンストロに顔を向ける。

「もう一度同じ技を、とはいきませぬなその様子では」

「すまない。 どうやらここまでの様だ」

 モンストロはその巨体ゆえ、本来生活の殆どを海中で行わなければならない。

 その為長時間地上で活動するのは難しく、大技を出したのもありかなり消耗していた。

「無理しなくていい。 戻って休んでいてくれ」

「承知した。 後は陸の同胞に任せよう」

 モンストロはべクレムの転送術の書かれた紙を使いその場から離脱した。

「しかし、これで策の1つは早くも崩れましたな」

「そうも言ってられねぇよ。 ちっと早いけど、そろそろ出番だ。 いけるか?」

「誰に言ってんのよ?」

 モンストロが消えた場所から入れ替わる様に現れたのは、レオナやアクナディン達第一部隊部隊と、ジャバ率いる魔獣部隊だった。

「待ちくたびれたわ! 漸くこの前の借りをかえせるけぇの!」

「そう早るなよアクナディンのおっさん。 敵さんもかなりヤバいっぽいからな」

 イトスが指差すと、屍の軍団の先頭を巨人族(ジャイアント)達が地響きを響かせながら進軍してくる。

 全員がジャバと同じかそれ以上の大きさを巨人の軍団は、圧倒的な存在感を見せ付けている。

「とにかくあいつらを潰さねぇとキツそうだ。 ジャバ、やれるか?」

「ウガゥ! 任せる!」

 ジャバは自身の胸を拳で叩くと従う魔獣達もそれに呼応する様に雄叫びを上げる。

「よし。 なら次はジャバ中心に連中とぶつかる。 第一部隊は巨人以外の連中を。 特にレオナやアクナディンのおっさん達は打ち合わせ通りに頼む」

「了解。 掻き回してくるわ」

「指揮は任せぇ! おどれらは好きに暴れりゃええ!」

 士気も十分高い部隊の面々を見て、イトスは杖を光らせ精霊達を呼び出す。

「決戦ですねイトス」

「ああ。 お前達はみんなのサポートだ。 可能な限り死なせない様に補助を頼む」

「わかりました。 精霊の力、存分に発揮しましょう」

「よし! みんな頼んだぞ!」

「ウガアアアアアアアア!!」

 ジャバが咆哮すると、魔獣達を引き連れ一気に駆け出し大きく飛んだ。

 するとイトスの出したウンディーネがその下に水の道を作り、ジャバ達はその上を滑る様に進んでいく。

「あたし達も行くわよ!」

「しゃあ! なんなら〜!!」

 アクナディンが先頭に立ち、第一部隊も次々と進軍していった。






 地面に叩きつけられたメガロは頭を抑えながら、何とか立ち上がる。

「ツツッ。 いくら魔族とはいえ、滅茶苦茶な連中だ」

 突然周囲の海水が消し飛んだ事に驚愕しながらもすぐに思考を切り替え周囲の状況を確認する。

 仲間の海人(シーマン)達も同じ様に地面に叩きつけられなんとか立ち上がり戦闘を再開するが、屍の兵達の方が回復が早く苦戦をしている様だった。

 更に前からは巨人(ジャイアント)がどんどん近づいてくる。

「こりゃあ、ヤバいかもしれないな」

「ウガアアアアアアアアアアアア!!」

 仲間の救助と巨人の相手。

 どちらに向かうか考えるメガロの頭上で雄叫びが響く。

 見上げると、水で作られた道の上をジャバが猛スピードで滑っていく。

 そして道が途切れた所で飛び上がり、巨人(ジャイアント)の戦士達に突っ込んでいった。

 ジャバは突っ込むなり二人の巨人(ジャイアント)の頭を鷲掴みにし、そのまま体を回転させて投げ飛ばす。

 投げ飛ばされた巨人(ジャイアント)達は他の巨人達にぶつかりそのまま倒れていく。

 太古のジャバウォックとの戦いで負ったトラウマも完全に克服した様に、同族相手でも怯む様子はなかった。

 そこへジャバと共に滑ってきた魔獣達が雪崩込み攻撃して行く。

 メガロはその光景に安堵し、仲間の救助へ向かおうとする。

「よし、これで・・・」

「これでどうした?」

 声に反応すると同時に、赤銅色のドクロが自身の首筋に刃を振り抜こうとする。


 これは死んだ。


 メガロは本能的にそう察した。

 自分とこのドクロの実力差、刃を速さを見ても防ぐ事も躱すことも不可能。

 メガロは、自分の生命を諦めた。

 だがメガロは生きていた。

 ほんの薄皮一枚の所で、自分とドクロの間に割り込んだレオナの刃がそれを防いだ。

「さてと、あの時の借り、返させてもらうわよ?」

 現れたレオナに赤銅色のドクロ、デスサイズは凶悪に笑った。

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