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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
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不器用なリナ

今回はちょっと昔話が出てきます

「リナさん! 待ってください!」

 ラクシャダのいる場所に近くで漸く止まったリナに、ノエルとライルが駆け寄った。

「どうしたんスか姉さん? いきなり喧嘩始めちまうなんて…」

「うるせぇな。 しょうがねぇだろ」

 顔を向けず話すリナに、ノエルは静かに言葉をかける。

「わざと、ですよね? レオナさん怒らせたの」

「うぇ!?」

 ノエルの言葉にライルが驚き、リナは少し間を起き、はぁっと息を吐く。

「お前、本当そういうとこ敏感だよな」

「これでも最近色々ありましたからね」

 リナは再び息を吐くとバツの悪そうな顔をして振り向いた。

「レオナさんを巻き込まないように、わざと喧嘩して話をさせないようにしたんですよね」

「あいつ、昔はあんなに明るくなかったんだよ」

 そう言うとリナは静かに話始めた。






 まだリナが6才の頃、既にジャバとクロードと共に五魔となる為育てられていたある日の事。

「さあ、皆。 新しい友達を紹介しよう。 ほらレオナ。 ここが君の新しい家だよ」

 エルモンドがリナ達を集めレオナを紹介しようとする。

 レオナはエルモンドのローブを掴み、恐る恐るリナ達を見た。

 よく見ると、既にその目には涙が溜まっている。

「おやおや、どうしたんだい? 大丈夫。 皆怖くないからね」

「ジャバが怖いのかな?」

「おれ、怖くないぞ」

 クロードに言われジャバが顔を近付けると、レオナは「ひゃう!?」と怯えてしまった。

「あはは、流石にジャバは刺激が強いか」

「おれ、怖くない・・・」

 落ち込むジャバをクロードが慰める横で、リナがレオナに近付いてきた。

 レオナは怯えて隠れようとするが、既に隠れる場所は近くにはなかった。

「あ、あの・・・」

 怖がるレオナに、リナは手を上げる。

 レオナは恐怖で身を小さくする。

 すると、リナは優しくレオナの頭に手を乗せた。

 きょとんとするレオナに、リナはニカッと笑った。

「ジャバは怖くないぞ! 動物とも話せるし、優しいぞ!」

「ほ、本当?」

「うん! でももしなんかしたら俺に言え! 俺が守ってやる!」

「おれ! なにもしない!」

 ジャバの反応とリナの優しい言葉に、レオナは始めて笑った。






「以来年も近かったのもあって、ガキの頃は姉妹みたいにいつでもよく一緒にいたな」

「そうだったんですか」

「まあ、流石に今は煩くなりすぎたけどな」

 静かに話を聞くノエルとライルに、リナは苦笑しながら続けた。

「あいつはずっと、家族ってのに憧れてたんだ。 ずっと昔無くした家庭を、自分で作りたいって」

 ずっと一緒に育ってきた。

 例え10年離れていても、レオナがどれだけ努力してフランクと結ばれたのか、リナにはよくわかった。

 そしてレオナがどれだけそれを望んでいるかも。

「あいつはうるせぇけど、本当に重要な事は簡単には話さねぇ。 こんなあいつが俺達の事を話したんなら、あのフランクって男は本当に信頼できるんだろう」

そこまで言うと、リナはノエルに向き直った。

「わりぃなノエル。 勝手なことしちまって」

 素直に謝るリナに、ノエルは小さく首を振った。

「大丈夫ですよ。 勿論、レオナさんが来てくれたら嬉しいですけど、それでレオナさんの幸せを壊したくないですし」

「・・・ありがとな」

「安心してください姉さん! 例え一人足りなくても! 俺が新しい五魔として・・・」

「てめぇじゃ役不足だパシリ」

「ぐはぁ!? ひでぇっスよ姉さん!!」

 普段のやり取りに、リナにも笑顔が戻った。

 そのやり取りを遠くから、リーティアとジャバは見ていた。

「全く、素直じゃないんですから。 リナもレオナも」

「リナ、本当優しい。 レオナ、それ知ってる」

「そんなこと、言われなくてもわかってますよ」

 リーティアはニカッと笑うと、ジャバと一緒にリナ達の所に歩いていった。


『そうか、デスサイズは断ったか』

 町外れで、アルファはギゼルに報告をしていた。

「はい。 あまり近付けず詳細はわかりませんが、どうやら口論になったようです」

『なるほど』

 ギゼルは暫し考え込むと、ニヤリと笑った。

『アルファ。 明朝作戦を実行する。 例の助っ人にも伝えておけ』

「了解しました」

 通信が切れると、アルファはふぅと息を吐いた。

「ギゼル様なんだって?」

「もう動いていいって?」

 アルファが振り返ると、そこにいたのは髪型以外全く同じ姿の二人が、タイトな魔甲鎧(まこうアーマー)を着て立っていた。

「明朝に開始だ。 それまでに準備をしておけ」

「漸く暴れられるなシータ」

「そうだねゼータ兄さん」

 ゼータとシータ、魔甲機兵団第2部隊の双子の隊長。

 今回部下が倒れたアルファの助っ人としてやって来たのだ。

 因みに長い髪を逆立てた方がゼータ、短い髪を逆立てた方がシータだ。

「あまり派手に動くなよ。 今回の作戦、失敗は許されない」

「わかってるよアルファ隊長」

「そうそう。 ギゼル様も本気みたいだしね」

 そう言って、ゼータとシータは後ろの木の下で寝ている少女に目を向ける。

「ギゼル・・・満漢全席・・・」

 今回の件でギゼルに奢って貰った満漢全席の夢を見ながら、聖盾(せいじゅん)・イージスことクリスは幸せそうに眠っていた。


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