魔器デスサイズ
今回からデスサイズ編です(^_^ゞ
ノクラの森から東に約半月、のどかな景色とそこそこ活気のある町ソリクトに、ノエル達はいた。
あれから時おり地上に出てジャバに匂いを確認してもらいながら進んだノエル達は、ここら辺で匂いが止まったというジャバの言葉を聞き、周辺を探すことにした。
ゴブラド達にラクシャダを近くの森に待機させ、ノエルとリナ、リーティアの中にいるクロード、そしてライルとジャバの5人で町にやって来た。
本当はジャバを連れてくる予定はなかったのだが、ジャバがごねた為、リナ達が使っていた小さな小屋に入ってもらっていた。
と言っても、本人はかなり窮屈そうだが、そこは我慢してもらった。
「で、どうすんだノエル?」
「とりあえず手分けして探しましょう。この規模なら短時間で全部回れるはずですから。 後、念の為二人一組になりましょう」
「了解。 ライル、ジャバ頼むぞ」
「勿論でさ姉さん!」
ライルはジャバの入った小屋を腰に下げた。
そのままノエルはリナと、クロードは既にリーティアと二人組みたいなものなのでそのままにした。
「それでは、3時間後に1度ここに集まりましょう」
リーティアの言葉に頷くと、皆その場から散っていった。
「しっかしレオナか。 あいつこんな町でなにやってんだか」
「リナさんはレオナさんが嫌いなんですか?」
前からレオナのは話題となるとどこかキツい感じの言葉が多いので、ノエルが聞くと、リナの表情が複雑になる。
「嫌いってわけでもねぇんだけど、なんつうのかな、苦手っつうか、好みが合わねぇっつうか」
リナは説明に困ったように首をかしげる。
事前に受けたクロードの説明によると、レオナは名前の通り女性だという。
リナと違い女らしい性格の様だ。
まあそれが本当なら、男らしいリナとは真逆だから合わないのも頷ける。
「お前、今なにか失礼なこと考えなかったか?」
「い、いえ! なんでも!! あ! そういえばレオナさんの魔器ってどういう意味なんですか!?」
慌てて話題を変えようとするノエルに不満そうなリナだったが、深く突っ込まず説明を始めた。
「正確には魔武器だ。 そのまんまだと何となく語呂が気に入らなかったから魔器になったんだけどな」
「魔武器。 ということは、武器使いですか?」
「まあ簡単に言うとな。 あいつはあらゆる武器を自在に操る。 正直やり合ったらかなりめんどくせぇ」
めんどくせぇという表現ではあったが、何だかんだでリナがレオナを認めているのはわかった。
「武器か。 ちょっと習ってみたいかも」
「止めとけって。 第一お前、今ライルの組手にクロードの魔法、おまけにジャバの魔物講座までやってんだ。 それに武器入れたら体持たねぇぞ」
「大丈夫ですよ。 最近体力付きましたし」
「たくっ、勝手にしろ」
そんなことを話ながら、ノエルとリナは町の中を探索していく。
「だ~!! 全っっっ然見つからねぇ!!」
探し始めて約二時間、レオナを見つける所か手がかりすら見つからなかった。
「まだ集合まで時間ありますし、もう少し探してみませんか?」
「探すっつっても、こんな外れじゃ何にもねぇだろ?」
ノエル達は探す内に町外れの野原まで来てしまっていた。
近くに旅人用の道はあるが、人の影も余りない静かな場所だった。
「それに腹へった。 甘いもん食いたい」
「帰ったらまたケーキ作りますから」
「でもな~・・・・お!」
渋るリナの目線に、ある建物が目に入る。
そこは2階建ての小さな建物で、1階は食堂になっているようだ。
「なあ! あそこでなんか食ってこう!」
「駄目です! レオナさん探さなきゃ」
「飯屋なら人いるし、情報収集にもなるだろ!? ほら!」
「え、ちょっとリナさん!」
ノエルの制止を振り切り、リナは食堂の方に歩いていく。
ノエルはやれやれと思いつつ諦めてついていく。
食堂に入ると、時間も食事時ではない為か、客は殆どいなかった。
リナは構うことなく適当な席に着き、ノエルもそれに続いた。
「結構空いてますね」
「町外れだし、こんなもんだろ。 お! ケーキがある! 3ついいか!?」
「駄目です。 大体リナさん最近ケーキ食べ過ぎです。 太りますよ?」
「お前、最近俺に対して遠慮なくなったよな」
「色々ありましたからね。 それにリナさんにはこのくらいが調度いいでしょ?」
「まあ気を使われるよりはマシだけど。 ・・・2つくらいならいい?」
「・・・はぁ、わかりました」
子犬の様な目で見つめるリナに、ノエルはため息を吐く。
「やった! すいませ~ん。 注文いいですか?」
喜ぶリナは外用のおしとやかな喋りに直した。
「は~い。 今行きます」
リナの声に、厨房にいた女性が出てきた。
茶髪の綺麗な人で、笑顔で近寄ってきた。
「お待たせしました。 ご注文は・・・え?」
注文を取ろうとした女性はリナ達を見た途端、先程の笑顔が抜け落ち呆然と固まった。
ノエルはどうしたのかとリナを見ると、リナも同じように固まっている。
「あの、どうしたんですか?」
「もしかして・・・リナ?」
「レオナか?」
その言葉にノエルと固まった。
目の前の女性を、リナは今レオナと言った。
暫く呆然としていたレオナは、突然堰を切ったように話始めた。
「ちょっとあんたどうしたの!? なんで!? なんであんたがここにいるのよ!? てかこの人何!? なんであんたの昔の鎧着てるのよ!?」
「だあもう!? 相変わらずうるせぇな!!」
「うるさいって何よ!? 普通驚くでしょ!? 急にあんたが男連れで内の店に来るんだもの!! なに? やっと彼氏出来たの?」
「んなわけあるか!! 大体10年ぶりに会って最初の質問がそれか!?」
「何言ってんの!? あんたが男作るなんて天地がひっくり返るくらいの大事件じゃない!」
「どういう意味だこの野郎!!」
「リナさん落ち着いて!」
会った途端始まった二人のやり取りに呆気に取られながら、ノエルは店の人と共に二人を落ち着かせたのだった。
その夜、レオナのいた食堂にリーティアとライル、ジャバが集まった。
落ち着いたレオナから、今は営業時間の為後で来てくれと言われ、こうして集まったのだ。
尚、ジャバからリナ達の時と同様に会った途端レオナが抱き締められ一騒動あったのは言うまでもない。
そして現在・・・。
「リーティア久し振り~。 元気してた? クロードとはその後どう?」
「ふふ、彼は相変わらずです。 よかったらまた男の人の喜ばせ方教えてください」
「もっちろん! 任せといて!」
と言った感じでリーティアとの再会を喜んでいた。
(確かに、色んな意味で女らしい)
それがノエルの感想だった。
レオナはよく喋り、他者の恋愛事にも熱心だった。
無論、性格や表情も明るく好感が持てる感じではあるが、なんとなくリナが苦手だというのもわかる気がした。
「それで? なんでわざわざ今頃になってあたしのとこに来たの? しかも五魔が3人とノルウェ陛下の子供まているし」
「ちょっとレオナ、そんな堂々と」
リーティアはレオナの後ろにいる青年に目を向けた。
青年の名はフランク。
ここの店長らしく、リナとレオナとの言い合いを一緒に止めてくれた人だ。
「大丈夫よ。 だって彼は・・・」
レオナは満面の笑みで青年に抱きついた。
「あたしの旦那様なんだから! ねぇ~フランク♪」
「ちょっ、レオナ、恥ずかしいよ」
顔を赤らめるフランクと対称的に、ノエル達(特にリナ)は固まり、次の瞬間・・・・。
「「「「え~~~~~~~~!!?」」」」
という絶叫が食堂内に響いた。
「だ、旦那様って、結婚したのレオナ!?」
「3年前にね。 私の大事な人よ♪」
フランクは照れながらも、ノエル達に挨拶した。
「えと、改めて、レオナの夫のフランクです。 五魔の事は、レオナから聞いているのでご安心ください」
どことなく爽やかな風が吹く様な笑顔で挨拶するフランクに、ノエル達は呆然とするのみだった。
「レオナおめでと! おれ嬉しい!」
「ありがとうジャバ♪」
素直に喜ぶジャバの横で、リーティアはノエルにどうする?と目配せした。
正直困った。
五魔復活の為にもレオナには来てほしい。
だがレオナは既に結婚し新しい生活を始めている。
そんな彼女を再び戦いに巻き込んでいいものか…ノエルは頭を悩ませる。
「ふ~ん、お前結婚出来たんだ。 よかったな三十路で結婚できて」
ノエルが悩む中、急にリナが口を開いた。
「失礼ね! あたしはまだ27よ!」
「ほぼ30じゃねぇか」
「何よこの一生独身女!」
「んだとこの腑抜け女!」
「誰が腑抜けよ!? あ、もしかして焼いてんの? あたしが結婚出来たから」
「俺はそんなつまんねぇことしたくねぇだけだよ!」
その言葉に、レオナの目付きが変わる。
「それどういう意味?」
「そのまんまの意味だよ」
「何よ? あたしが結婚しちゃいけないの? 結婚ってそんないけないこと?」
「んなこた言ってねぇよ。 俺はつまんねぇからしねぇってだけだよ」
「ふ~ん。 じゃああたしがさぞ滑稽に見えるんでしょうね。 そんなつまんないことしたあたしが」
「レオナ落ち着いて」
「リナさんも、いったいどうしたんですか急に?」
険悪になる二人をノエルとフランクが止めに入る。
リナはレオナを一瞥すると座っていた椅子から立ち上がる。
「帰る」
「え?」
「帰るってんだよ。 こんなとこにいてもつまんねぇだけだし」
「ええ、さっさと帰れば? それでもう2度と来ないで!」
「言われなくても来ねぇよ」
そう言うとリナはさっさと店を出ていき、ノエルとライルが慌てて追いかけ、ジャバもそれに続き、リーティアは何か言おうとしながらも思いとどまり、フランクに詫びるよう頭を下げると店を後にした。
「ごめんねフランク。 いやな思いさせちゃって」
「いや僕は・・・それよりよかったのかい? 君はいつも・・・」
「大丈夫よ。 だって」
レオナは振り返ると少し寂しそうに笑った。
「あたしとリナは、これでいいのよ」




