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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
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布告の後

「というわけで、宣戦布告してきた」

「お前何勝手やってんだよ!?」

 帰ってきたルシフェルの発言に各国の代表を含めたその場にいた全員が驚き、リナは案の定ルシフェルに食ってかかった。

「貴様らの反応を待っていては機を逃すからな。 だから私が先に話をつけてやったんだ。 感謝するんだな」

「にしてもちっとはこっちの話聞きやがれこの駄天使!」

「まあそう怒るんじゃないよリナの嬢ちゃん。 今回はあたしの指示さ」

 リナを宥める様にラミーアは二人の間にヒョイと降り立つと、新たなセレノア王メリウスが前に出る。

「一体どういうつもりですかラミーア殿? 滅ぼされた同然の我らセレノアはともかく、他の国に合意なく話を進めるのは些か勝手が過ぎるのではないですか?」

「そこに関しては謝るよメリウスの坊や。 だがね、そうも言ってられない事情があったのさ」

「聞かせてもらいたいね。 私達に断りもなく宣戦布告など、戦う覚悟は既にしているとはいえ士気を下げかねない行為をした理由を」

「わかってるよマークス坊や。 理由は2つ。 1つは向こうの行動を読む目安が欲しかったんだよ」

「目安? なんのこった?」

「正直言うと向こうの情報が少なくてあたしでも読めない部分が多すぎるんだよ。 タナトスなんて不確定要素まであるしね。 そこでルシフェルに行かせて情報収集と、敢えて期限を指定することで向こうの出方や行動を予測する目安が欲しかったんだよ」

 ライルに説明すると、ラミーアはルシフェルの方を見た。

「それで、ディアブロは3か月と言ったんだね?」

「そこはしっかりと」

「てことは、遅くても2ヶ月後には攻めてくるだろうね」

「ちょっと待てよ! 3か月後って約束したんじゃねぇのかよ!?」

「昔のディアブロならそうしただろうな小娘。 だが、今の奴は勝つ為ならその位はやる。 折角手に入れた準備期間をフルに使いいかに早く我々を排除するか。 奴の中にあるのはそれだけだろう」

 ルシフェルの報告にラミーアは複雑な表情を浮かべる。

「そうかい。 あいつはそこまで変わったかい。 単純バカだった頃とは偉い違いだね」

「あの頃の方がまだ可愛げはありましたが、今の奴は完全な王です。 良くも悪くもですがね」

「己の国の利益の為なら非常な決断も卑怯な事も平気でするか。 耳が痛いねどうも」

 マークスはかつての自身のやり方と重なり肩をすくめる。

 そんな中、ノエルが口を開いた。

「もう1つの理由は、本当に和解したかったからですか、ラミーアさん?」

「なんでそう思うんだいノエルの坊や?」

「もしリナさん達と同じ様な理由で敵対したら僕もそうするならですよ」

 ノエルの答えに苦笑しながら、ラミーアは頷いた。

「まあそうだね。 被害が一番少なくて済むってのもあるけど、やっぱり長年一緒だった連中だからね。 戦わないで済むならそれが一番だったんだけどね」

 ラミーアからすれば、ディアブロ達はずっと共に戦ってきた大切な仲間だ。

 衝突しながらも苦楽を共にし、成長してきたかけがえの無い戦友達。

 それは口にこそ出さないがルシフェルも同じだろう。

 それがどんな理由であれ敵対関係になってしまったのはやはり不本意な事だ。

 ラミーアが最後の和解の提案をしたのも、仕方のない事ではある。

「全く、こんな甘い事考えるなんて、あたしも耄碌したもんだよ」

「僕は寧ろ貴女がそういう人でよかったですよ。 仲間を本当に想える人だってわかりましたから」

「それが仇になることもあるんだよノエル坊や。 王ならそこら辺も計算しときな」

 そう言いながらも、ノエルの言葉で少し暗くなっていたラミーアの表情がいつもの飄々としたものに戻った。

「まあぐだぐだ言うても仕方なかろうが。 わしは寧ろ決戦の時期が決まってスッキリしたけぇの!」

「本当、君は単純だね。 まあ準備しやすくなったっていう意味では私も同意だけどね」

「どの道私達には戦うしか道はないわけだし、その為に出来る事をするだけよ」

「今は進むのみか。 兄上に託された物を守る為、やるしかないか」

 アクナディン、マークス、エミリア、そしてメリウスと各国の代表格が同意するのを見ると、ラミーアは指示を始めた。

「なら、チャッチャと話を進めないとね。 まずラバトゥとルシスは自国で戦力を編成し直しながら周辺諸国に援護を要請しな。 兵は出さなくても物資出させるだけでも構わないよ。 プラネとアルビア、そしてセレノアは自軍兵力の増強に勤めな。 特にプラネはドルジオスの坊や達は優秀なドワーフがいるんだ。 可能な限り装備の生産を急がせな。 それと在野の勢力かき集めるのにあらくれ共とラズゴートの坊やの所の子を使うけど構わないかい?」

「ヴォルフ達をか? 構わん。 存分に使ってくれ」

「あらくれってゴンザ達かよ? アイツらに何させる気だ?」

「後で説明するよ。 それとサタン」

「ん? なによラミーアちゃん?」 

「あんたの所に実務の得意なのが一人いただろ? そいつ呼び寄せて各国手伝わせな」

「またおじさんの事もこき使うね〜」

「使えるものはなんでも使うよ。 で、後はノエルの坊や達だね」

 そこでラミーアの目つきが変わった。

「ディアブロを止めるのには、あんた達の強化が絶対条件だよ。 だからノエル、リナ、エミリアはサタンの元で。 その他レオナ、ジャバ、ラズゴート、ライル、そしてイトスの坊や達もあたしが用意した方法で鍛え直してもらうよ」

「お、俺もかよ!?」

「ビビってんのかライル?」

「ば、馬鹿言うんじゃねぇよ姉さん! 俺だってやってやらぁ!」

「この歳で鍛え直す事になるとはのぉ。 愉快なもんだわい! ガッハッハッ!」

 それぞれやる気を見せる中、ノエルはある事に気付く。

「ちょっと待ってください。 イトスも鍛え直すってどういう事です? それにギゼルさんの名前もないですし」

「ギゼルの坊やに関しては、坊やの好きにやらせる方がいいと思ってね。 まあ専門知識のアドバイス位ならあたしがやるけど、それで構わないかい?」

「ああ。 その方が私も助かる」

「だけどイトスもって事は・・・」

「勿論俺も戦うよ。 こいつ使ってな」

 イトスはそう言うと杖を取り出した。

 それはいつもイトスが使う杖だったが、元々杖の先端にあった宝玉の周りに見覚えのある宝玉が4つ付け加えられていた。

「それは、エルモンドさんの精霊の宝玉!」

 エルモンドの杖には4大精霊を宿した宝玉が付けられていた。

 イトスの杖に新たに付いたのはまさにその4大精霊の宝玉だった。

「リナの嬢ちゃんが逃げる時に回収しといてくれてね。 それをイトスの坊やのに付け替えたのさ」

「でも、4大精霊はエルモンドさん以外扱えない筈じゃ・・・」

「舐めるなよノエル。 俺だって師匠の弟子だ。 意地でも使いこなしてやるよ。 それにいつまでもお前らに頼ってちゃ、師匠に呆れられるしな」

 そう笑うイトスの顔に彼なりの決意を感じ取り、ノエルも同様に笑った。

「無茶だけはしないでよ」

「いつも無茶するお前が何言ってんだよ?」

 こうして、皆魔族と戦う為それぞれ動き出したのだった。

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