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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
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対策

 水晶を通し各地に救援に向かった皆の報告を聞いたノエル達の表情は暗かった。

 結果として各国の要人は無事だった。

 セレノアとサファイルの件は残念だが、メリウスとダグノラは無事生き残り連れていた民もなんとか全員此方の保護下に入りプラネに向かっている。

 ルシスも死者数は多いがマークスを始めとした要人幹部はなんとか無事であり、ベルフェゴールのばら蒔いた病も収まりつつある。

 ラバトゥも国民の被害自体は少なかった。

 敵の能力を瞬時に見抜き防衛と避難に徹したアクナディンの采配が功を奏した結果だった。

 だがその代わり軍隊に多くの犠牲が出た。

 民を逃がす足止めの役目を担った為にサディールを始めとした実力者を多く死なせた。

 テンとマコラガも一命はとりとめたが、もう戦うことは出来ないという。


 悪い知らせはそれだけではない。


 今回の事でわかったのは敵の戦力が此方の予想を遥かに越えているということ。

 四天王と呼ばれる者達もそうだが、特に旧五魔の実力は想像を越えていた。

 特にジャバは今も意識のない状態まで痛め付けられた事は大きかった。

 更にもう1つ、ノエル達に悪い知らせがタナトスの存在。

 冥府の王というのが事実かは別として、死者を操る力が厄介過ぎる。

 なにせ敵を殺したとしてもタナトスの力で復活し戦力が減ることはないのだ。

 それどころか此方の死者はタナトスに操られ敵へと変わる。

 つまりノエル達は敵を殺さず此方も死なずという無茶な条件で戦わなくてはならなくなる。

 そうしなければ敵が増え続けいつかは数で押しきられてしまう可能性も出てくるからだ。

「しかしまぁ、随分と面倒な奴を味方につけたもんだねぇ」

「ラミーアさんはこのタナトスという人の事はなにか知っていますか?」

 ノエルの問いにラミーアは首を横に振った。

「知らないね。 そもそもあたしもディアブロが治める様になってからの魔界に関しては何もわからないよ。 あいつ完全に入り口を閉ざしてたからね。

唯一何人か地上に出して色々学ばせてたっていうのは知ってるけど、その中にタナトスなんてのはいなかった」

「それが、四天王と呼ばれている者達?」

「その通りだよエミリアの嬢ちゃん。 魔眼ベアード。 蛇王(ナーガラージャ)ヒュペリオス。 吸血鬼女王(バンパイアクイーン)キュラミス。 そして災厄のベルフェゴール。 昔ディアブロが五魔だった頃戦った事のあるの奴らだよ。 強さ、特殊能力と癖のある連中ばかりだよ」

「で、そいつらよりも強いのが昔の五魔ってか。 ふざけやがって」

 普段なら自分がぶちのめすと言いそうなリナだったが、かつて本気でないルシフェルに全員でかかり一撃与えるのがやっとだった経験もあり、昔の五魔の力を理解出来てしまった。

 その事に苛つく様に舌打ちすると、リナはルシフェルに向き直る。

「てめぇも元は連中と互角だったんだろ? 今連中とやり合って勝てんのか?」

「愚問だな小娘。 私にかかれば造作もない。 ・・・と言いたいが無理だな。 屈辱だがあいつらは当時今より傲慢だった私が認めた数少ない実力者だ。 特に当時ですら、私はバハムートに及ばなかった」

「バハムート!? 昔の五魔はそいつが一番強かったのかよ!?」

「仮にも竜の神と崇められた存在だ。 何もかも当時の我々とは格が違った。 そのバハムートを従えたとなれば、今のディアブロの力も想像するのは簡単だ。 もっとも、私も当時のままではないがな」

 傲慢と言われるルシフェルからの最大限の評価と言える言葉に、ノエルはどうするべきかを考えた。

 今すべきは戦力の強化。

 ラバトゥやルシス等の大国の戦力を早くこの地に集結させなければならない。

 クロードの向かったヤオヨロズも加わってくれれば心強いが、恐らくヤオヨロズにも魔族の襲撃はあっただろう。

 連絡手段がなく確認出来ないが、今はクロード達を信じて待つしかない。

 だがそれだけで足りるのか?

 大国の内3つが大きな被害を受けている状況で、ただ戦力を増やすだけでなんとかなるのか?

「らしくない顔してるねノエルの坊や」

 ラミーアは前足を軽くポンとノエルの頭に乗せた。

「頭を使うのは今はあたしの仕事さ。 あんたはどっしり構えてればいいんだよ」

 ラミーアは「ルシフェル」と声をかけると、ルシフェルはノエル前に地図を広げた。

「あたし達がしなきゃならないのは戦力を増やすこと。 だけどこの状況じゃ小国じゃ役に立たない可能性が高い。 協力してもらうにも後方支援に徹しさせるのがいいだろう。 エミリアの嬢ちゃんなら協力してくれそうな所は目星は付くだろう?」

「ええ。 アルビアと懇意にしていた国は幾つかあるから、そこに協力を頼めば物資や兵糧は確保できると思うわ」

「上出来だよ。 で、戦力としては国じゃなくて在野の勢力がいい。 少なくとも戦闘特化してるのがいるだろうからね。 それぞれの勢力は目星付けといたからあたしが交渉役選んで送らせるけど構わないかい?」

「ええ。 お任せします」

「で、これがもっとも重要。 あんたらの力の底上げだね」

「底上げ? 特訓でもやるってのか?」

「そういうことだよリナの嬢ちゃん。 数揃えても、結局はあんた達が強くならないと最終的にはどうにもならないからね。 既にルシフェルにそれぞれの特訓役にちょうどいい連中を見付けてさせてるから、レオナの嬢ちゃん達も帰ってきたら相手をさせようと思ってる」

 レオナ達と一緒に大国を助けに行かなかったルシフェルが裏でそんなことをしていた事に驚くが、リナは首をかしげた。

「でもよ、俺達の特訓相手なんてそんないるのか? それこそそいつにやらせる方が早いだろ?」

「貴様もつくづく傲慢だな小娘。 世の中には貴様らの知らない猛者など何人もいる。 その中には当然貴様よりも強い者もな。 そういった中で適切な特訓相手を選び割り当てるのが私の役目だ」

「本音は?」

「貴様らとの些事に関わるより我が君の世話を優先するに決まっている」

「やっぱそういうことかよこの駄天使!!」

「堕天使だ小娘!」

 喧嘩腰になる二人をノエルとエミリアが宥め、ラミーアはやれやれと首を振る。

「まあ、実際ルシフェルには他にやってもらうことがあるから、あんたらの特訓相手にはなれないんだよ。 あんたらに構えない分コキ使っとくから安心しな」

 ラミーアがイタズラっぽく笑みを浮かべると、本当にコキ使われるんだなと少しルシフェルに同情した。

「さてと、じゃあ一旦国の事はエドガーの坊や達に任せて、あんた達は早速やってもらおうか」

「え? 僕達3人一緒ですか?」

「ああ。 あんた達位なら3人でちょうどいいだろうしね。 構わないかい?」

「おもしれぇ。 留守番させられてモヤモヤしてたんだよ」

「私も構わないわ。 むしろ今は一刻と早く強くならないと」

「僕も同じです。 もう犠牲は出せませんから」

「決まりだね。 じゃあ付いてきな。 ルシフェル、後は任せたよ」

「かしこまりました、我が君」

 ラミーアは3人を連れ部屋を後にした。

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