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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
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魔獣の目覚め

 リナは地面に倒れるジャバを見下ろす。

「・・・たく、手間かけさせやがって・・・」

 自分の知っているジャバの寝顔に、リナは少し安堵する。

「リナさん!」

「姉さ~ん! 獣皆倒しやした~!」

 ノエル達に気付いたリナはそちらに意識を向ける。

「おせぇんだよ! こっちもとっくに終わってるぞ!」

「のひゃあ!? 姉さんその怪我!」

「大丈夫ですか!? すぐに手当てを・・・」

 リナの血を流した姿にライルとノエルが驚愕する中、リナは「大したことねぇ」と制した。

「ただのかすり傷だ。 実際余裕だったし」

「その割には結構ボロボロだけど?」

「んんなこたねぇよ! ぜんっぜん余裕だってんだろ!?」

 クロードにからかわれぎゃあぎゃあ騒ぐリナの横で、ゴブラドは目の前の光景が信じられない様な表情をしていた。

「なんと・・・いくらリナ様とはいえ・・・暴走するジャバ様をこんな短時間で・・・」

「だから余裕っつってんだろ!? 大体操られてるそいつに負けるわけ・・・!」

 リナは言葉を止めるとその場を避けた。

 するとリナのいた場所に矢が刺さった。

「・・・っと、いけねぇいけねぇ。 危うくわすれるとこだったぜ。 まだ敵がいたんだったな」

 リナの視線の先に、ボウガンを構えるアルファの姿があった。

 その表情には余裕はなく、明らかに此方を消す意思が宿っていた。

「ディアブロ・・・お前は危険だ。 ギゼル様には生け捕りにしろと言われたけど・・・お前はここで始末する!」

 そう言うとアルファは黒い矢の束をを装填する。

 これは爆発と貫通力の両方を備えたアルファの切り札であり、万一貫通しきらずとも爆発で内部から吹き飛ばせる高威力の矢だ。

 アルファはそれを何本も連射し、矢の雨となりリナへと放たれた。

「リナさ・・・」

 ノエルの声が爆音にかき消され、爆煙と爆風が辺りを包み込む。

「リナさん!?」

「姉さん!!?」

 ノエル達が叫ぶ中、アルファは笑みを浮かべた。

(あれを避け切れはしない。 例え斥力でガードされてもジャバウォックと戦った傷がある。 無傷では済む筈がない)

 アルファはすぐに次弾を装填し構えた。

 ベータとガンマは攻撃されぬようクロード達を牽制する。

 やがて爆煙が晴れていき、アルファは射とうとすると、そこにリナの姿はなかった。

 いや、消えた訳ではない。

 リナの前に大きな手が立ちふさがり、リナを守っているのだ。

「おせぇよ・・・ジャバ」

「うがああああああああう!!」

 リナの呼び掛けにジャバは立ち上がり咆哮した。

 ジャバウォックの目覚め。

 それはアルファ達を戦慄させるには十分だった。

「ジャ・・・ジャバウォック・・・うあああああああ!!」

 アルファは矢を連射し、ジャバに放つ。

 だが矢はジャバを傷付けることはなく、空しく爆音が響くのみ。

 やがて矢が尽きると、アルファは戦意を喪失したように呆然と立ち尽くす。

 その目には、恐ろしい魔獣の姿が写るのみ。

「うがああああああああう!!」

 ジャバは怒りの咆哮を上げると、アルファ達のいる岩山に突進した。

「ガンマ!」

 ベータは危険と判断しアルファを守るためガンマと共にアルファの前で構える。

 ジャバは走る勢いそのままに跳躍し、拳を振り抜く。

 ノエルはその光景に目を疑った。

 ジャバの放った拳はアルファ達のいる部分を吹き飛ばし、完全に崩れていく。

 直撃を受けたガンマ達の防御も意味を成さず、アルファ達は上空彼方へと吹き飛ばされた。

 まるでおとぎ話の巨人の様なジャバの力に、これが操られていない本来のジャバウォックなのだと、ノエルは感じた。

「はぁ~、見事に飛んでったな」

「まあ、死にはしないだろうけど、当分は戦えないだろうね」

 この異常な光景に普通に話すリナとクロードに、ノエルはやはり五魔は凄いなと、何かを諦めたような乾いた笑いをした。

「ウゴアアアアウ!」

 すると、ジャバは突然叫び、こちらに突進してきた。

「な、なんだ~!? まだ操られてんのか!?」

 騒ぐライルにリナ達と焦ったように慌て始め、そして・・・。

「リナ~!!!!」

 ジャバはリナとクロード、リーティアに抱き付いた。

「リナ~! グロード!! 会いだがった~!!!」

 号泣しながら抱き付くジャバの腕の中で、リナ達はジタバタともがいていた。

「ば! 強い! 傷に響くから離れろって!」

「リーティアが! リーティアが壊れる!」

 あれ?・・・ジャバウォックって・・・こんなキャラ?とノエルとライルは呆然とその光景を眺めていた。

「ああ、ジャバ様・・・漸く元に戻られて・・・」

 感動するゴブラドを見て、普段からこうなのかと、ノエル達はリナが渋った理由がなんとなくわかった気がした。

 すると、ジャバは何かに気付きノエルの方を見た。

「え?・・・えと・・・」

 戸惑うノエルをじっと見詰めると、ジャバの目に再び涙が溢れた。

「の・・・ノルウェー!!!」

「え!? ちょっ!? 違!?」

 ジャバは今度はノエルに飛び付くと力の限り抱き締めた。

「ノルウェ! 生きてた!! よかっだ~!!!」

「ちょっ、ジャバさ・・・違ぅ・・・」

 ノエルをノルウェと勘違いしたジャバに抱き締められ、ノエルは目を白黒させた。

「はぁ~、相変わらずあいつのハグはキツい・・・」

「大丈夫かリーティア!? 今すぐ整備を…」

「いや姉さん達止めて! ノエル死んじまうって!!」

「あ・・・父さん・・・もうすぐ・・・行くから・・・」

「ノエル~!!? そっち行くな~!!!」

 こうして、ジャバが落ち着くまでこの騒動は暫く続いたのだった。

漸く素のジャバが書けました♪

いや~、うがああとかだけだと逆に大変だってんで良かった(笑)

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