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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
22/360

魔王対魔獣

今回はリナ対ジャバです。

ノエル達も他の魔獣相手に頑張ります

 リナとジャバの拳がぶつかったのが開戦の合図となった。

 ジャバの圧倒的なパワーに対し、リナは斥力で衝撃を跳ね返しつつ、重力場を拳に乗せた通常の何倍もの威力の拳。

 その威力はかつてグリムに浴びせたものの比ではなく、拳同士の激突で生じた衝撃波により周囲の木々が薙ぎ倒される。

「おらぁ!!」

「ウガアアゥ!!」

 リナの拳と蹴りに対し、ジャバも拳で迎え撃つ。

 小回りの効くリナの攻撃に、ジャバは大振りながら的確に弾いていく。

 二人の対決は均衡を保っている様に見えた…が、それはすぐに崩れた。

 ジャバのアッパーに乗る形でリナは大きく跳躍、空中に舞った。

 そして手をかざし魔力を集中させる。

「重力100(グラビディハンドレット)!」

 瞬間、100倍の重力が襲いかかりジャバの周囲の木々が押し潰される。

 当然ジャバにも同様の重力がのし掛かる。

「・・・ウゲャウウ!!」

 片膝をつきかけるジャバだったが、力を振り絞り100倍の重力の中立ち上がる。

「ちぃ、やっぱこのくらいじゃ効かねぇか」

 舌打ちするリナの目の前で、ジャバは足に力をこめる。

 100倍の重力の中、ジャバは大きくジャンプしリナの頭上を取った。

 そして両腕の裏を全面に出し回転を始める。

「ちぃ!」

 リナは咄嗟にガードするが、回転しながら急降下するジャバの両腕を叩き付けられる。

 地面に飛ばされたリナは激突寸前に斥力により地面との激突を避ける。

「ウギャウ!!」

 だがその場に避ける間もなく、ジャバの両腕が再びリナに直撃する。

 地面とジャバの腕に押し潰されたリナは土の中に埋もれていった。






「リナ様!」

 デスサーベルタイガーと対峙していたゴブラドは、リナの窮地に思わず声をあげる。

 だがそれがいけなかった。

 デスサーベルタイガーの前足の刃が、ゴブラドの右腕を引き裂いた。

「ぐああ!?」

 ゴブラドは激痛で膝をつき、持っていた棍棒を落としてしまう。

「おのれ・・・」

 なんとか左手で棍棒を握り直すが、ゴブラドが構えるより早く、デスサーベルタイガーの牙がゴブラドに迫った。

 ガキン!

 死を覚悟したゴブラドの耳に大きな金属音が響くと、己の目の前に漆黒の鎧の騎士が立っていた。

「ノエル様!?」

 ノエルはゴブラドを守るようにデスサーベルタイガーに立ちふさがり、その牙を受け止めていた。

「っ・・・そら!!」

 ノエルが振りほどくと、デスサーベルタイガーは体を回転させ着地する。

「ノエル様お逃げください!そいつは他の2体より凶悪な・・・」

「大丈夫。 任せてください」

 ゴブラドの忠告を遮り、ノエルはデスサーベルタイガーを見据えた。

 大きさこそ他の2体に比べると小さく、2メートル半くらいだが、明らかにその空気は他の2体とは違う。

 現に急な乱入者にも驚くことなく冷静な態度を取る辺りかなり頭がいい。

 しかも先程牙を受け止めた鎧の部分に穴が開いている。

 幸い中まで傷付けていなかったが、それだけでも攻撃力はかなりのものだ。

 恐らく爪や両足に付いている刃でも、同じように鎧を切り裂くことが出来るはず・・・ノエルはデスサーベルタイガー相手に身構える。

デスサーベルタイガーもノエルがゴブラドより厄介と気付いたのか、警戒しながらノエルの隙を伺う。

 恐らく勝負は一瞬・・・二人はそう感じていた。

 その時、デスサーベルタイガーが動いた。

 ノエルの首元目掛け牙で襲いかかる。

 ガキン!

 先程と同じ様な金属音と共に、デスサーベルタイガーの牙がノエルの首に噛みついた。

「ノエル様!!?」

 絶叫するゴブラドは飛びかかろうとするが、何か様子がおかしいことに気付いた。

 噛みついた筈のデスサーベルタイガーが苦しそうにもがいている。

 しかもよく見ると、牙は先程の様に貫通せず、鎧により防がれている。

「これで終わりです」

 ノエルはデスサーベルタイガーの胴体を掴むと、黒雷を流し込む。

 苦悶の叫び声とともにデスサーベルタイガーは白目を向き、気を失った。

 ノエルは気絶したデスサーベルタイガーを優しく地面に下ろした。

「ノエル様・・・」

「あ!ゴブラドさん! 大丈夫ですか!? すぐに手当てを・・・」

「いえ、大丈夫です。 それより、どうやって・・・」

「いや、ちょっと実験を兼ねてやってみました」

 ノエルの言葉の意味がわからないゴブラドは、よく見ると鎧の表面を魔力が覆っているのに気付いた。

「僕の黒魔法は本来強化魔法です。 なら鎧も強化出来るんじゃないかな~って」

「そ、それで実行したのですか? 確証もないのに!?」

「ええ。 実際ちょっと不安でした」

 「上手くいってよかった~」と安堵さるノエルに、ゴブラドは思わず腰が抜けた様な感覚がし、そのまま地面に座り込んでしまった。

 この危険な魔物相手にそんな事を平気でやってのけるノエルに、ゴブラドは驚きを隠せなかった。

「さあ、手当てしますから、じっとして」

「・・・はっ! それよりリナ様が! それにまだ他の魔物が・・・」

「大丈夫ですよ」

 兜から聞こえる声に、ゴブラドは言葉を止め顔を向ける。

「僕らが行っても邪魔になりますし、それに・・・リナさん達は強いですから」

 ゴブラドには、兜でノエルの顔は見えない。

 だがその表情が見えた気がした。

 リナが負けるはずはないという、確信に似た自信に満ちた顔、それはかつて、ノルウェが見せたものと同じだった。

 五魔という肩書きではなく、仲間の力を芯から信じられる力…それは甘えでも何でもない、真の信頼から来ているもの。

 そしてノエルは、恐らくリナ達とこの短い間でそこまでの信頼を紡いでいる・・・かつてのノルウェの様に・・・。

 ゴブラドはそう感じ、それ以上何も言わなかった。






「ひぎゃあああ!?」

 ライルは叫び声をあげて吹っ飛んでいた。

 地面に激しくぶつかりながらも、すぐに起き上がり体勢を立て直す。

「たくよ、デタラメだなこいつ」

 アシュラコングの6本の腕による攻撃に、ライルは攻めあぐねていた。

 しかも顔が正面と左右に計3つあるため隙をつくのが難しい。

 現にゴブリンの戦士10名が先程から攻撃しているが全て弾かれてしまっている。

「くそ・・・あんまりこいつは使いたくなかったんだが・・・しゃあねぇな」

 ライルは息を整えるとアシュラコングを見据え突撃した。

 アシュラコングは素早く察知し、ライルに拳を見舞う。

 だがライルは俊敏な動きでそれらをかわしていく。

 それはノエルと組手をする時行う武術的な動きだった。

 アシュラコングは危険を察知したのかゴブリンを無視しライルに集中する。

 だが攻撃は当たらず、ライルはアシュラコングの懐に潜り込む。

「うぉらあぁぁ!!」

 ライルは渾身の拳をアシュラコングの腹部にめり込ませる。

 アシュラコングは胃液を吐きながらその場に仰向けに倒れ、動けなくなってしまった。

「ふぅ・・・やばかった~」

 ライルはその場に座り込むと、ゴブリン達から歓声が上がった。







「やれやれ、私が最後か・・・少し手こずったな」

 そう言うクロードが見上げる先には鎧姿のリーティアとボロボロのベアコンドルが飛んでいた。

 ベアコンドルは本来熊の怪力とコンドルの飛行能力を有する恐ろしい魔物なのだが、既に満身創痍といった姿だった。

「ピエエエエエ!」

 ベアコンドルが背中の翼を大きく羽ばたかせると、小型の竜巻の様な風の塊が生まれリーティア目掛け飛んでいく。

「残念。 それはもう見切ってるよ」

 クロードはリーティアを旋回させ、竜巻を交わすとベアコンドルの頭上を取る。

 ベアコンドルは熊の様な強靭な腕でリーティアを襲おうとする。

「終わりだよ」

 リーティアはベアコンドルの腕を避けると、その脳天に拳を叩き込む。

 ベアコンドルは白目を向き、そのまま地面へと激突した。

「鳥が竜に勝てるわけないだろ?」

 クロードはそう言いリーティアを自分の元に戻した。






「ウガアアウ!!」

 ジャバは何度も両腕をリナの埋まった地面に叩きつける。

 まるで得物の息の根を止めるように。

 リナはそこから出てくる気配はなかった。

 その様子に、アルファ達は魔獣3体が倒されたにも関わらず勝機を感じていた。

「うわ・・・あれで生きてる人間なんぞいませんぜ」

「相手はディアブロだ。 まだわらかない・・・が、この状況なら・・・」

「ウギャワアアアアア!!」

 ジャバは止めとばかりに拳を握り締め地面にめり込ませる。

 辺りに轟音が響き、衝撃で木々が大きく揺れた。

「・・・それで終わりか?」

 ずっと反応のなかったリナの声に、アルファ達はまさかと思い拳を叩きつけた場所を見る。

 すると、ジャバの拳を片手で受け止めるリナの姿があった。

「あれを・・・止めるのか?」

「はは・・・まさに化け物・・・てやつですかい・・・」

「おらぁ!」

 リナは受け止めた腕に力を込めるとジャバを弾き飛ばした。

 ジャバの巨体が宙に舞い、地面に叩き付けられる。

「随分軽くなったな・・・お前の拳もよ」

 そう言いながらもリナも無傷ではなかった。

 斥力によりガードをしていたが、ジャバの力はそれさえ突き破りリナにダメージを与えていた。

「まあ、お陰で目当てのもん見付けたからいいか」

 ペッと口から血を吐き出すと、リナは拳に魔力を込める。

 そして斥力の反発を利用し、起き上がろうとするジャバの下に飛び込んだ。

 リナが狙いを定めたのは顎の下。

 そこにはジャバの着ている毛皮で隠れているが、首輪の様な物が見えていた。

「まさか!? あれを探すためわざと!?」

 アルファがリナの狙いに気付き驚愕する中、リナは重力場を拳に発生させる。

「似合わねぇ首輪なんかで・・・飼い慣らされてんじゃねぇ!!」

 リナは拳を振り上げ、ジャバの顎にアッパーをぶちかます。

 ジャバは真上に吹き飛び、衝撃で首輪が砕け散った。

 ジャバは意識を失い、その場に轟音と共に地面に落下した。

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