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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
208/360

魔女との会合


 魔女ラミーア。

 1500年前五魔を創り、エルモンドを利用したあの魔力の怪物を産み出した魔女。

 それがいま黒猫の姿でノエル達の前に現れた。

「おい、マジでこんな猫がラミーアって魔女なのかよ?」

「見た目で判断すると損するよライルの坊や。 あとあたしは構いやしないけど、変なこと言うとそこの過保護堕天使がぎゃあぎゃあうるさいから気を付けな」

 ギクッとしてライルが慌てる中、ノエルはあることを疑問に思う。

「なんでライルさんの名前を?」

「そりゃ知ってるよノエルの坊や。 拳王ギエンフォードの息子。 父親譲りの格闘術に加えて、意外と機転の利く頭も持っている。 性格は大雑把で粗野だが情に深くて涙もろい。 ああ後年相応に盛んだからエロ本幾つか持ってるけどベッドを隠し場所にするのは安直過ぎやしないかい?」

「だぁ~!! なんでんなこと知ってンだよ!!?」

 最後に自分の知られたくない秘密を暴露され赤面して慌てるライルを見てラミーアはケラケラ笑った。

「あたしはなんでも知ってるよ。 例えばノエルの坊やがリナの嬢ちゃんにピーマン克服させようとケーキに内緒で混ぜたり、レオナの嬢ちゃんは旦那の絵にいつも寝る前にお休みのキスをしてるね。 後、そっちのジャバウォックはプラネの森の魔獣達に内緒で食べ物を渡しに行ってるね。 エミリアの嬢ちゃんはまだ小さい蛇は駄目みたいだね。 ギゼルの坊や、アンヌの育児日誌付けるのはいいけど程々にしなよ。 年頃の娘の娘に干渉しすぎると嫌われ・・・」

「「それ以上は止めろ~!!」」

 暴露が止まらないラミーアをその場にいたほぼ全員が止めた。

「ふふ、悪いね。 まともな話し相手がこいつしかいないんで、ついはしゃいじまったよ」

 楽しそうに笑うラミーアは、ノエル達の想像していた姿とは違っていた。

 あんな冷たい魔力の怪物を産み出した人物なのに、とても明るく、どこか人懐っこい印象だ。

「ラミーア殿。 何故私やイトス君のは言わないんだい?」

「お、おいクロード!」

 クロードが探る様に言うをイトスは慌てて止める。

「まだあたしが本物か疑っているみたいだねクロードの坊や」

「この手の役割をしていた人が今不在でね。 なら私が代わりをやるしかないじゃないか」

「流石今の五魔の長兄だね。 そうさね、イトスの坊やはもう一番の大きな秘密が周りにバレちまってるから敢えて言わなかった。 あんたは・・・出身が東って言えば十分じゃないかね?」

 その言葉にクロードはピクリと反応し一瞬顔が険しくなる。

「なるほど。 どうやら本物のラミーアと言えるだけの知識量はあるみたいだね」

「疑うのはいいことだよクロードの坊や。 ただ、今はあたし達があんたらの味方って事は信じてもらいたいね」

「それはこれからによるよ」

「それで構わないよ」

 そう言うとラミーアはノエル達に背を向けた。

「さてと、いつまでも外で立ち話もなんだし、家に入るとするかね。 ジャバウォックもあの小さくなれる薬まだあるんだろ? それでお入り。 ルシフェル。 菓子と茶の用意だ。 リナの嬢ちゃんにはケーキ多めで用意してやりな」

「はい。 我が君」

 ラミーアとルシフェルが家に向かい歩き出し、ノエル達は戸惑いながらもその後に付いていった。






「悪いね。 ちと散らかってるけど寛いどくれよ」

 家に入ったノエル達はリビングに通された。

 豪華な造りではなく普通の家のリビングといった感じで、所々ラミーアの趣味と思われる本が散乱している。

 ラミーアが自分のクッションに座ると、ルシフェルがラミーア様に造ったと思われるカップを出す。

 そこには先程ノエル達に見せた傲慢な態度はなく、敬愛に満ちている感じがするほど丁寧だった。

「ほら、貴様らにも飲むといい」

 ノエル達に対してはやはり上から目線のままカップと菓子を置く。

 紙芝居のおじいさんだった時とは明らかに違う態度と姿だったが、ラミーアの指示通り上から目線のまま給仕をする姿は少しおかしく見えた。

「悪いね。 これでも大分マシになったんだよ。 昔はあたし含めて人間なんてゴミクズ呼ばわりしてたんだからね」

「我が君。 その話はご容赦を」

 ルシフェルをからかうと、ラミーアは両前足で器用にカップを持ちお茶を一口飲んだ。

「さてと、まず改めて名乗ろうかね。 あたしはラミーア。 こっちはルシフェル。 あんたら五魔の初代と言えばいいかね。 それを造った者と属していた者だよ」

「こっちは、名乗る必要はなさそうですね」

「ああそうだねノエルの坊や。 さっきのやり取りで何となく人となりもわかったしね」

「その為にそこの駄天使けしかけたって訳か?」

「堕天使だ。 間違えるな小娘」

 リナの挑発に青筋を立てるルシフェルにラミーアは苦笑する。

「本当はもう少し穏やかに済ますつもりだったんだけどね。 まあリナの嬢ちゃんの言う通りさ。 あれが蘇ったなら、それに対応出来る連中かどうか見極めなきゃならないからね」

「やっぱり、あの怪物が出てきたことはご存じなんですね」

「まあね。 ここにいても魔力は感じたよ」

「貴女は、どこまで知ってるんですか?」

「この世の理を始めとする森羅万象とはいかないが、少なくともあんたらが聞きたいことの答えは持ってる筈だよ。 さてなにから話すかね」

「なら教えてれ! 師匠に何があったか! あんたなら知ってるだろ!?」

 身を乗り出すイトスに、ラミーアは静かに答え始める。

「エルモンドか。 あれはなかなかの逸材だよ。 あれが目を付けるのも納得いく存在だ」

「やっぱり、師匠は操られていたのか!?」

「半分辺りで半分外れだよ。 エルモンドが利用されたことは事実だよ。 ただ、あれがしたのはエルモンドの欲を強めた事位さ。 欲ってのは厄介でね。 理性なんて枷が外れりゃ道徳だのなんだのは吹っ飛んじまう。 その欲を満たす為だけの獣に堕ちちまうのさ。 エルモンドは随分頑張ってたみたいだけど、その強すぎる欲に最後は呑まれちまった。 後はあれがちょっと必要な所で唆せば自然とエルモンドは動くわけさ。 それが自分の考えかどうかもわからなかったろうけどね。 まあ、それでもここのヒント遺したんだから大したもんだけどよ」

「私の名を名乗る者としては、あまりにも情けない顛末だがな」

「ルシフェル、お止め」

 ルシフェルを嗜めると、ラミーアは頭を下げた。

「あんたの師匠を狂わせたのは、あたしらの落ち度だ。 今のアルビアの現状もね。 すまなかった」

「いや、俺は・・・」

 イトス達が突然の謝罪に戸惑う中、エミリアが前に出る。

「謝罪はいりません。 例え原因がなんであれ、最後に決断したのは私達です。 そしてそれを償うのも、私達自身でなければなりません。 私達は、その為にここに来たんです」

「そうかい」

 エミリアに続き、ノエルも前に出た。

「ラミーアさん。 僕達は知る為に来ました。 貴女の事。 かつての五魔の事。 そしてあの怪物の事。 だから教えてください。 貴女の知る全てを」

 ノエル達の姿に、ラミーアは何かを懐かしむ様な目をした後、小さく息を吐く。

「そうさね。 それがあのバカを止めるのに必要だろうし、あたしらの責任だね。 ならちょっと・・・」

 ラミーアが目を光らせると、空間が歪みだす。

「時間旅行としゃれこもうかね」

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