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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
20/360

亜人

今回は亜人についての説明が多いです

 ゴブラドはノエルに静かに語り始めた。

 かつて亜人は、人々から奇異の目で見られていた。

 エルフやドワーフの様に、人間とある程度の交流があった者達はまだ平気だったが、ゴブリンやトロル、そして獣人等、見た目や身体能力が人と大きく異なる者は、忌み嫌われ、人と交わり生きることは難しかった。

 他国でもそうした傾向の国は多く、特に西の大国セレノアは人間至上主義を掲げ、多くの亜人を奴隷として扱っている。

 故にひっそりと、人目を避けて生きるか、もしくはそうした素性を気にしない裏家業に付くしか道はなかった。

 しかしノルウェは、彼らの現状を知ると、亜人の事を認める声明を正式に発表した。

 「亜人も人も我が民、だから同じ様に生きる権利がある」

 そう言ったノルウェは亜人達を捜し集め、土地を与え、村を作る事を許した。

 そこから近隣の村を手始めに交易もさせてもらい、今では亜人はこの国では普通に町を歩ける様になった。

 アルビアの亜人と人が理解し合えた。

 それは他国を滅ぼし恐れられた魔帝の、世に知られる数少ない善行の1つだった。

「・・・私がこうしてより多くの知識を得られたのも、ノルウェ陛下が我らを認めてくださったからこそ。 だから私は・・・ゴブリン達は皆、陛下にいくら返しても足りないほどの大恩があるのです」

 ノルウェの事を語るその姿は、ゴブラドにとってノルウェがどれだけ特別な存在であったかを物語っている。

 魔帝と恐れられながらも、ここまで慕ってくれる者がいる・・・この前出会ったラズゴートの時も感じたが、それはノエルにとってとても嬉しく、改めて父という存在を感じさせてくれた。

「・・・ありがとうございます。 貴方の様な人に慕われて・・・父も喜んでいると思います」

「勿体なき御言葉・・・」

 ノエルから礼を受け、ゴブラドは再び涙ぐみながら頭を下げた。

 因みに、ライルは例のごとく涙で顔がぐちゃぐちゃである。

「てめぇは泣き過ぎだっての・・・」

「だ・・・だってよ~・・・」

 ライルに少し呆れながら、リナは二人の元に歩み寄る。

「つかゴブラド、そんな畏まんなって。 こいつはまだ只のガキなんだしよ」

「はは・・・まあ、僕は確かにノルウェの子ですが、何の地位もない只の人間です。 だからもっと普通に接してください」

 茶化すリナに苦笑しながら、ノエルもリナの意見に同意する。

「・・・そう言える方がノルウェ陛下の子でよかった。 ・・・ですが、私も大恩ある方の御子息に対し礼を尽くさない訳には参りません。 それに・・・まだということは、素質は充分あるということですよね?」

「・・・深読みしすぎだっての」

 リナがバツの悪そうな顔をすると、ゴブラドは小さく微笑み、すぐ表情を引き締めた。

「とにかく、これは私の理念によるものゆえ、どうかご容赦を」

 ゴブラドの態度が変わらないと悟ったノエルは、今のままでいいと許可を出した。

「さてと、感動の対面も終わったことだし、そろそろ本題に入りたいんだけど・・・」

 今まで気を使って喋らなかったクロードが頃合いを見て話すと、ゴブラドは立ち上がる

「申し訳ございません。 少々感情が抑えられず・・・」

「構いませんよ。 私達は今、ノエル君と共に五魔復活の為に動いています」

 クロードはそこから簡単にこれまでの経緯と旅の目的をゴブラドに説明した。

「なるほど・・・それでジャバ様とラクシャダを・・・」

「ええ。 しかしあのジャバの様子は私達の知るジャバじゃなかった・・・というより、明らかに普通じゃなかった」

「あいつが俺達を攻撃するなんて有り得ねえからな。 何かあったのか?」

「・・・それは我々にもわかりません。 ついこの前まで一緒に過ごしていたのですが、三日前突然豹変し、狩りに出た仲間が襲われたのです。 幸い怪我程度で済みましたが・・・」

「何か原因に心当たりは?」

「さて・・・少なくとも我らとの関係は良好でした。 ジャバ様も我らによくしてくださいましたし・・・」

「あの・・・」

 ゴブラドが考え込んでいると、先程紅茶を入れてくれたゴブリンの女性が話しかけてきた。

「どうしたリム?」

 小柄ながら可愛らしい姿のリムは、緊張した面持ちで話始めた。

「実は・・・森を巡回していた者から人影らしきものを見たという報告がありまして・・・」

「なんだと!? 何故それを早く言わない!?」

「す、すみません! ここは人間は滅多に入りませんし、それに報告した者のに話だと、とても人の動きではなかったらしいので、猿型の魔物かと・・・」

 ゴブラドに怒鳴られ萎縮してしまったリムに、ノエルが優しく問いかける。

「大丈夫、落ち着いて下さい。 その人影はどこに向かっていたんですか?」

「森の西の岩山付近に・・・ですがあそこは人間どころか、亜人も近寄れない魔物が多いんです」

「どう思います、クロードさん?」

「・・・人間離れした動き・・・恐らくそれは聖五騎士団だろうね。 しかも、恐らく幹部直属の部隊だろう」

「猿ってことは・・・聖獣ですか?」

「いや、彼の性格上それはない。 考えられるのは・・・」

「聖人・・・この前の3人組の親玉か」

 リナの言葉に、クロードは頷いた。

「恐らくこの前の襲撃でこちらの目的地を予測したんだろう。 それで先回りした」

「で、ジャバになんかして俺らを襲わせたか・・・あいつ頭は弱いからな、なんか言われてコロッと騙されたんだろ」

 そう言いつつ、リナは明らかに怒っていた。

 仲間を操られた事、その仲間に自分達を攻撃させたこと、リナの怒りに火をつけるには充分だった。

 リナだけじゃない。

 クロードも表に出さないが、かつてリーティアを馬鹿にされた時と同じ空気を纏っている。

 それだけ、二人にとってジャバは大事な仲間だったということだ。

「そいつら見つけてぶっ倒すぞ。 そしてジャバを取り戻す」

 リナの言葉に、その場にいた全員が頷いた。






 ノクラの森西部の岩山、その中腹地点でアルファ、ベータ、ガンマの3人と、アンヌの姿があった。

『上手くいったみたいね』

「はい。 ジャバウォックに取り付けた装置は正常に作動しています」

「しっかし、まさかあんな簡単に騙されるとは・・・ちと罪悪感感じまさぁ」

「ベータ」

 軽口を叩くベータをアルファが嗜めると、アンヌは『構わないわ』とそれを許した。

『あなた達の行動も私が感情や心を知る教材になるから気にしないで。 というより、もっと普段通りにしてくれて構わないわ』

「流石アンヌさん。 話がわかる」

「お前は・・・それで、ウリエル様はなんと?」

『ジャバウォックの身体データに喜んでるわ。 これなら鎧の運動能力を30%上げられると』

「そいつぁよかった。 で、この後どうします? ディアブロ達を片付けますか?」

『そうしてちょうだい。 五魔同士の戦闘データ。 これがあれば、御父様の研究もより捗る』

「了解しました。 ではディアブロとバハムートの排除、及びノエル様確保の準備を進めます」

『お願いね。 私は少し森を回って偵察してくるから、作戦を考えといてね』

 アンヌが飛び立つと、アルファはふぅと息を吐きベータに向き直る。

「あんたね、もう少し気を使いなさいよ。 アンヌはギゼル様のお気に入りなんだから」

「隊長は気にしすぎなんですよ。 アンヌの嬢ちゃんだって普通にしろって言ってたじゃないですか」

「私には隊長としての責務があるんだよ! そう任務中にホイホイ簡単に素になれるわけないでしょ!」

「今なってるじゃねぇっスか」

「あんた相手に気を使う必要ないでしょ」

「おやおや、つめてぇことでま~」

二人の様子に、ガンマは困ったようにおろおろする。

「大丈夫よガンマ。 別に喧嘩じゃないから」

 そう言うとガンマはホッとしたように胸を撫で下ろす。

「心配性だね~ガンマは。 ただの楽しいトークってやつだ」

「私は楽しくない」

「まあまあ・・・で、作戦考えとけって言ってましたが何かあるんですかい?」

「少なくとも、ディアブロとバハムートの両方相手させるのはキツいだろうね。 かといって私達が手助けすればかえって邪魔だし・・・ん?」

 通信器に反応があり、アルファはスイッチを押した。

「こちら魔甲機兵団第七部隊隊長アルファ」

『いや~アルファ殿。 お久しぶりですな』

「!?軍師殿!?」

 聖帝の相談役とも言える軍師の突然の通信に、一気に緊張感が辺りを包んだ。

『いや、突然の通信申し訳ありません』

「いえ・・・どういったご用でしょうか?」

『なに、ジャバウォックを操ることに成功したと聞きましてね、(わたくし)も何か手伝えればと思いまして・・・』

 まだギゼルにしか伝えていないジャバウォックの件を知っている事に驚きながら、アルファは平静を装いながら対応した。

「申し出は大変ありがたいのですが、本作戦は聖人・ギゼル様に一任されています。 ですので軍師様のお手を煩わせる訳には・・・」

『ああ、ご安心を。 手伝いと言っても、ジャバウォックの隠された能力をお伝えするだけですので』

「能力?」

『ええ・・・』

 軍師に話を聞いたアルファは、その表情を変えた。

『では、(わたくし)はこれで。 作戦の成功をお祈りしております』

 通信が切れ、アルファは疑念に満ちた表情をしている。

「あいつ・・・一体何者なんだ?」

 正直素直に聞きたくはないが、情報が本当ならディアブロを倒すことも可能だ。

 アルファ達は情報を検証するため行動を開始した。


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