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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
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ディアブロ

こんにちは、第二話です。

タグ付けしてみたんですがなかなかいいのが思い付きません(苦笑)

 町外れの小さな屋敷・・・その奥の部屋で先程のチンピラ達は怯えながら土下座をしている。

 チンピラ達の正面では、椅子に座りながらダーツをする眼鏡を掛けた細身の男・・・グリムがいた。

 グリムは無言でダーツを正面に軽く投げると、的の頬を掠め壁に刺さった。

 的にされている男はグリムの部下であり、失敗の罰としてダーツの的にされていた。

 ダーツには痛覚を刺激する毒が塗ってあり、1本でも刺されば失神するほどの激痛が全身に駆け巡る。

 再び男の頬すれすれにダーツが刺さり、男は恐怖で過呼吸に陥っていた。

 そんな男の様子に、チンピラ達は恐怖しながらグリムの様子を伺っていた。

「顔を上げなさい」

 チンピラ達の様な粗暴さを感じさせないグリムの声に、チンピラ達は恐る恐る顔をあげた。

「安心しなさい、商品を逃がした事は今回特別に見逃してあげます。それよりも・・・」

 ダーツが三度壁に刺さり、その音にチンピラ達はビクンとした。

「そのフードの男・・・確かに黒い炎をだしたのですか?」

「は!はい!そうですボス!」

「間違いねぇです!真っ黒な炎でした!」

「すぐ消えちまいましたが、ありゃあ間違いなくひぃ!?」

 必死に弁解するチンピラ達の足元にダーツが刺さり、チンピラ達は恐怖し飛び退いた。

「少し静かに話なさい。耳障りです」

「は・・・はい・・・」

「よろしい・・・」

 グリムは机に置いてある紙を手に取りながら質問を続けた。

「他に特徴は?顔や声・・・もしくは髪や瞳の色・・・」

「えと・・・か、顔は見てませんが、髪は確か黒だったと・・・」

「黒髪・・・間違いないですか?」

「は、はい!」

「後目ですが、青っぽかったです!」

「黒髪に青い瞳・・・なるほど・・・」

 グリムはそこで満足そうに笑みを浮かべ、小さく笑う。

 チンピラ達はその姿に不気味な感覚を覚えながら、機嫌を損ねないよう笑顔を作る。

「・・・漸く私にも運が向いてきましたね」

 そう言うとグリムは持っていた最後のダーツを的の男に投げた。

直後男の悲鳴が屋敷に響き渡った。






 リナの反応に、ノエルはやはり早計だったかと後悔する。

五魔とは、かつて恐怖の象徴と言われた魔帝に支えた最強の5人の総称だ。

 5人揃えば1国を滅ぼすとまで言われた最強最悪の精鋭達だ。

 そんな五魔を探していると言えば、リナが言葉を失うのも当たり前だ。

 どうするべきか・・・そう考えていると、リナが声をかけてきた。

「・・・あの、なんで五魔を探してるんですか?」

「え?なんでって・・・」

「だって五魔って、凄く強くて怖い存在だって言うじゃないですか。そんな人達を探してるなんて、何か訳があるのかなと思って・・・」

 怖がる様子もなく聞いてくるリナに内心驚きながら、ノエルはどう答えるか考えた。

「訳・・・は確かにあります。彼らの力を借りたい。それに聞きたいことがあって・・・」

「でも五魔って、出る戦場全てで敵兵を皆殺しにするって聞きましたよ。そんな危ない人の所に行くなんて、危なくないですか?」

「まあちょっと心配だけど・・・でも少なくともディアブロさんはそんなに怖くは・・・」

「え?ディアブロさん?」

 ノエルはしまったと思い口を紡ぐ。

 だが既に遅く、リナは何かを察したようにノエルを見た。

「もしかして・・・会ったことあるんですか?」

ノエルは諦めたようにため息を吐くと、静かに語り始めた。






 ノエルが暮らしていたのは現在の帝都から離れた田舎の屋敷だった。

 屋敷といっても大きなものではなく、お手伝いの老夫婦と共に暮らしていた。

 父親はいたが、忙しく年に2、3回くらいしか会うことが出来なかったが、ノエルは優しい父親が大好きだった。

 そんななかなか帰ってこない父親が帰ったある日の事だった。

 それはノエルが5才の時、久しぶりに会える父親の為に父親の好きなキノコを取りに一人で近くの山に入り、迷い混んでしまった。

 帰り道もわからず途方に暮れたノエルは、その場で膝を抱えて泣き出してしまった。

「ふぇ・・・お父さん・・・帰りたいよ・・・」

 そうしてノエルが泣いていると、近くでガサガサと音がした。

 父さんが迎えに来てくれたかも・・・そう思ったノエルは恐る恐る父親を呼んだ。

「・・・父さん?」

 瞬間、2メートル近くある巨大な熊が立ち上がりノエルを見下ろした。

「だ、誰か!お父さ~ん!!」

 凶暴な熊の姿に動転したノエルは叫びながらその場を逃げようとする。

 だがその叫びは逆に熊を刺激し、ノエルに飛びかかった。

「うあ~!!?」

 ノエルが恐怖のあまり目を閉じた。

 だが熊は襲ってこず、代わりにドスン!と何かが倒れる音がした。

ノエルが恐る恐る目を開けると、そこには自分の目の前に立つ漆黒 のフルアーマーの騎士と、地面に倒れる熊の姿があった。

 ノエルがその光景に呆然とする中、漆黒の騎士がノエルに振り向く。

 漆黒の鎧とマント、鋭く尖る肩のアーマー、兜には瞳の部分にはめられた本物の目の様に光る緑色の装飾と、まるで悪魔の様な威圧感のある姿だ。

 そんな姿の騎士にノエルは熊以上の恐怖を感じ固まってしまった。

「怪我はねぇか、小僧?」

 鎧独特のくぐもった声にノエルはただ首を立てに振るしかなかった。

 そんなノエルの姿に、漆黒の騎士はやれやれと首を振る。

「たくっ・・・ビビりすぎだっつの・・・本当にあいつのガキか?」

 その言葉に、ノエルの表情は少し明るくなる。

「おじちゃん・・・お父さんを知って!?」

 次の瞬間、ノエルの頭に拳骨が振り下ろされた。

「誰がおじちゃんだ!?そんな年じゃねぇっつの!」

「ひく・・・ごめんなさい・・・」

 泣きながら謝るノエルにため息をつきつつ、騎士は流石にやり過ぎたかと思い、片手を優しくノエルを頭に乗せた。

「お前の親父に探すの手伝ってくれって言われたんだよ。つかメソメソすんな。男だろ?」

「う・・・ごめ・・・」

「いちいち謝んな。もっと堂々としてろ」

 諭すように言うと騎士はノエルを持ち上げると自分の肩に乗せ歩き始めた。

 普段より高い視線と優しく掴む騎士の手に、ノエルの恐怖は次第に薄れていった。

 暫く歩くと、山の出口付近に辿り着く。

「ここからならわかるな?」

「うん、ありがとう・・・お兄ちゃん」

「・・・まあいいか。下ろすぞ」

 先程怒られたので気を付けて呼んだのだが、何となく騎士は微妙そうだった。

 騎士はノエルを下ろすと、ノエルの頭を撫でた。

「もう一人でこんなこすんじゃねえぞ。あと、その泣き虫直せ。男なら弱いやつ守れるくらい強くなれ。いいな?」

「う・・・うん。頑張る」

「いい子だ」

 騎士はそう言ってノエルに背を向け去ろうとする。

「あの・・・」

「ん?なんだ?」

 振り返った騎士にノエルは少し迷いつつ、取っていたキノコを差し出した。

「これ・・・よかったら食べて」

 騎士は少し驚くと小さく笑い、再びノエルを撫でた。

「ありがとよ、でもそいつはとっとけ。親父の為に取ったんだろ?」

「う・・・わかった」

「よし。んじゃ行きな。親父達が心配してる」

「うん。お兄ちゃん名前は?」

「俺か・・・」

 騎士は少し考えてから答えた。

「ディアブロだ」

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