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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
194/360

ノエルのダチVSフェルペスの娘


 二人の最後の攻防は激しさを増した。

 特に動きが変わったのはエミリアの方だった。

 超スピードと剣に宿る魔力を駆使しながら放つ斬撃はより洗練されていた。

 対するリナはどちからというと分が悪かった。

 慣れたと言っても完全にエミリアの動きが全てわかる訳ではないし、先程あった殺気や荒々しさが消えた分また捉えるのが難しくなっていた。

 加えて、やはり地の理はエミリアにある。

 この場にある状況は明らかにリナに不利に働いていた。

 だがリナもそれでは終わらない。

 その証拠に確実にエミリアに攻撃は当たる様になってきているし、かわせる攻撃も増えた。

 かわせずとも最小限のダメージで済む様に斥力で防御している。

 その順応能力は驚愕の一言に尽きる。

(長引けば此方が不利。 なら隙を見て全力を叩き込むのみ!)

 エミリアは剣に宿る魔力を斬劇に乗せ衝撃波として何発か放つ。

 リナの注意を少しでも分散させ、自身最強の技を叩き込む為に。

(正直、感謝してるわリナさん。 あなたのお陰で、私は自分の最初に抱いた気持ちを思い出せた。 父様の娘としての私をね。 でも、だからこそ、ここで終わるわけにはいかない! エミリアとしてあなたに勝って、ちゃんと父様と向き合うと決めたのだから!)

 リナへの感謝と新たな決意を胸に、エミリアは更に激しく剣を振る。

 リナは斥力を駆使しながらかわし、防ぎ続けている。

(ならば、これなら!)

 エミリアは瞬時に天井の一部を斬りつける。

 すると巨大な四角いブロックになった天井の破片がリナへと降り注いだ。

「舐めんな!」

 リナはそれらを斥力で受け止めると重力場を生み出し粉砕する。

(今だ!)

 エミリアは速度を上げ、分身の様に7人の残像を生み出した。

七光(セブン)断罪(ジャッジメント)!」

 雷・水・炎・風・聖・魔・そして強化の魔力を纏った斬撃がリナへと飛んでいく。

 そしてその斬撃よりも速くエミリアはリナへと接近しその背後に回った。

 かつて1度はリナを下したエミリア最強の技。

 その技を完成させるべく、2本の剣がリナを襲う。

「来やがったな」

 瞬間、リナは瞬時に振り向きエミリアと向き合う。

 まるで自分の動きを読んだ様な行動に驚きながらも、エミリアは剣を止めない。

「うらぁ!!」

 リナは自分の鎧を粉々にしたのと同等の斥力を周囲に発生させる。

 斥力は衝撃波の様に全方位に拡散し辺りを吹き飛ばす。

 エミリアが発した七つの属性の斬撃も斥力に吹き飛ばされ壁に激突し、エミリア自身その力に堪えきれずほんの一瞬動きを止めた。

 だがその一瞬が、超スピードで戦うエミリアにとっては命取りとなった。

「終いだ」

 リナは拳に重力を纏わせそれを螺旋状に回転させながらエミリアの腹部を殴った。

「かはっ!」

 殴った衝撃はエミリアを突き抜け、その背後の壁を破壊した。

 エミリアは拳を受けたままなんとか剣を振るおうと握りしめる。

 だが、もはや体に力は入らずリナにもたれ掛かる様に前のめりで倒れ込んだ。

「わ、私は・・・」

「無理すんな。 小さく纏めた分普段より威力は上だ。 いくらてめぇでも、暫くまともに動けねぇよ」

 意識はあるのに、全身の力が入らない。

 リナの言う通り、エミリアはもう剣を握ることさえ出来ず、ついにその2本の剣を床に落とした。

 そこで、漸くエミリアは静かに目を閉じた。

「あなたの、勝ちですね。 リナさん」

 不思議とその声には負の感情はなかった。

 自分の全てを賭けて放った一撃が破られ、計画の成功も父に託さねばならない。

 上に立つ者として情けなく恥でしかない結果の筈なのに、エミリアの心はスッキリしていた。

「そんな顔も出来んだな」

 そう呟くリナに、エミリアは苦笑する。

「どうやら、私は今の立場に相応しい人間じゃなかったようね。 結局自分の想いを優先させてしまったのだもの」

「いいんじゃねぇかそれで。 結局人なんか自分が楽しくてなんぼだろ? だったら好きにやりゃいいんだよ」

「本当、あなたはどこまでも自分勝手ね」

 呆れながらも、どこまでも自分に正直なリナに自分を偽っていた自分が勝てるわけがなかったと改めて思い至った。

 そしてそんなリナとノエルがよく似ているということも。

(青臭く自分勝手、それでいて頑固。 本当よく似た二人ね。 でも、だからこそ強いのかな。 ・・・少し羨ましい関係ね)

「おい、いつまで俺にもたれ掛かってんだよ? そろそろ降り・・・」

「リナ!」

 声の方を向くと、リナの入ってきた場所からレオナとギゼルが現れた。

 背後には目を覚ましたアーサーの部下も数名いるが、ギゼルが制止している様だった。

「よぉ、お前も勝ったか?」

「当たり前でしょ。 それより、そっちは随分仲良くなったみたいね」

「そんなんじゃねぇよ。 こいつがいつまでも乗っかってるだけだ」

「誰のせいで動けなくなったと思っているのよ?」

 リナ達と会話をしている女性がアーサーらしいという事に戸惑う兵士達を落ち着かせ、ギゼルが歩み寄った。

「まさかお前が負けるとはな」

「お互い様よ。 他の皆は?」

「クリスがエルモンドと交戦中だが、ラズゴート殿とカイザルは敗れた様だ」

 そう言うとギゼルはリナからエミリアを受け取った。

「大勢は決した。 だが、我らの王が戦っているならそれを見届ける義務が我等にはある。 敗者の身だが、同行を許してもらえるかリナ?」

「構わねぇよ。 何かしてくんなら返り討ちにするだけだしな」

「それは恐ろしいな。 構わんなアーサー?」

「ええ。 それと、もうアーサーはいないわよ」

「わかった、エミリア殿」

 エミリアに肩を貸すギゼルの姿に、我に返った部下が手を貸した。

「んじゃ、行くとすっか。 ダチの戦いを見届けにな」






 時はリナとエミリアが戦い始める少し前まで戻る。

 剣を抜いたフェルペスは周囲の震動に意識を向ける。

「ふむ。 もう城内でも戦いが始まったか。 私達の決着も急がねばならないかもな、ノエル君」

 そう言うフェルペスの眼前には、膝を付くノエルの姿があった。

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