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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
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決戦へ

 出陣当日の朝、自室でリナは集中し自身の体に魔力を軽く巡らせる。

 質、量、コントロールの制度に至るまで完全に元通りだ。

 体の調子もアーサーからの傷は完全に癒え、戦闘にも支障はない。

 リナは短期間でここまで完治させてくれたイトスに心の中で感謝した。


 これでノエルを助けられる。


 そう拳を握り締めると、部屋の扉が開いた。

「やあリナ、体調はどうだい?」

 いつもの笑みを浮かべながら入ってくるエルモンドに、リナは呆れ顔になる。

「仮にも女の部屋なんだからノック位しろっての」

「ふひひ大丈夫。 僕はそっちの感覚は疎くてね。 それに君やレオナの体なら子供の頃から見てるから何も感じなぶべあ!?」

「「そういう事じゃない!!」」

 エルモンドにリナの拳と後ろにいたレオナの蹴りが炸裂した。

「全く、相変わらずデリカシーないんだから」

「いてて、出陣前なんだから手加減してよ」

「よく言うよ。 殴られる度に喜んでるくせによ」

「ふひひ、君達の成長を経験出来るからね~」

 相変わらずなエルモンドに二人はやれやれと息を吐くと、レオナがリナに向き直る。

「で、どうなの? いけそう?」

「たりめぇだろ。 お前はどうなんだよ?」

「勿論いつでも。 クロードもジャバもライル君も皆いつでもノエル君助けにいけるわよ」

 ニヤリと笑うレオナに、リナも同様の笑みを浮かべる。

「そうか。 で、頼んだもんは出来てんのか?」

「ふひひ、当然。 僕とレオナで今の君用に仕立て直したよ」

「そっか。 ありがとな」

 リナは目に決意を満たしエルモンド達と共に部屋を後にした。






 プラネの周囲を囲むルクスマの森林地帯に、プラネ連合軍は集結していた。

 プラネの軍は今幾つもの勢力が合流している。

 プラネ本隊6500、ゴンザの荒くれ連合2000 、ギエンフォード・サファイル混合軍約10000、そしてアクナディンからの援軍23000が加わっている。

 コキュートが加わったにも関わらずプラネ本隊の数が思ったほど増えなかったのは、元々コキュートはその大多数が一般人をバルドが戦える様に香で操っていたこと、そしてその香の後遺症により体への負荷が強かった為、今回戦闘に参加出来ない者が多いことからこの人数に止まった。

 それでもその総数は40000を越える軍勢となった。

 アルビア軍45000には届かないが、ルシスがアルビア軍半数20000を釘付けにしているお陰で実際プラネ連合軍と戦うのは残った25000。

 普通に考えれば互角以上に戦える戦力だ。

 だがプラネ連合の一部の表情は暗く、どこか落ち着かない様子だった。

 理由は2つ。


 数の差が絶対ではないということ。


 数の上では有利だが、向こうはアルビアの誇る主軍だ。

 数の差などすぐにひっくり返るだろう。

 皮肉にも、それは前回のコキュートとの大戦でプラネ自身が証明したことでもあった。

 だがそれはそこまで問題ではない。

 一番の問題は二つ目。


 魔王・ディアブロの敗北。


 先日の戦いで聖五騎士団最高幹部の長、聖王・アーサーにリナが敗北した。

 敵味方問わず絶対的強者と認められた五魔、その中で最強と言われていた魔王・ディアブロであるリナの敗北は、プラネのみならずかつて敵として五魔と戦ったラバトゥの軍にとっても大きな衝撃だった。

 ノエルを取り戻すという意思は強い。

 だがそういった事実がプラネの軍全体に影を落としていた。

「全軍! 注目!!」

 軍の前に置かれたお立ち台の上からのラグザの号令に、ざわついていた軍全体が静まり返り正面に意識が向く。

 ラグザは全員の意識が此方に向いた事を確認すると後ろに目配せし、一歩後ろに下がる。

 ラグザと入れ替わりに壇上に上がった人物の姿に、皆の空気が変わる。

 鋭く尖った肩のアーマー、漆黒の鎧とマント、兜に装飾された緑色の瞳、そして悪魔のごとき威圧感ある姿。

 それはかつての大戦で圧倒的強さを誇った魔王・ディアブロの姿に他ならなかった。

 更にその後ろから竜を型どった白銀の全身鎧(フルアーマー)を纏った魔竜・バハムート、ローブと白地の仮面、四色の宝玉の埋め込まれた杖を持つ魔人・ルシフェル、黒いマントに鋼鉄の骸骨鎧(スカルアーマー)骸骨兜(スカルヘルム)を身に付けた魔器・デスサイズ、そして最後に巨大なヘラジカの頭蓋を被る五魔1の巨体魔獣・ジャバウォックが姿を現した。

 かつてその圧倒的な力で各国を蹂躙した五魔が、当時の姿で今目の前に蘇ったのだ。

 更にディアブロの横にラバトゥの誇る武王・ラディン・アクナディンが並び立つ。

 その光景に、軍全体から異様な熱気が漂い始める。

 そこには不安や動揺はなく、伝説の強者の揃い踏みに対する興奮と高揚がその場を支配する。

「すげぇ」

 完全に空気が変わったのを目の当たりにし、お立ち台の近くに控えていたライルは息を飲んだ。

「よく見とけライル。 こいつが時代を創った連中の姿だ」

「親父だって、同じだろう」

「俺はそういう柄じゃねぇ」

 「それに・・・」とギエンフォードはパイプをふかす。

「これからはお前らの時代だ。 次はお前があそこに並べ。 ノエルの小僧と一緒にな」

「! おう!」

 気合いを入れ直すライルに、ギエンフォードは周囲にわからぬ程度に小さく笑んだ。

 そんな中魔王・ディアブロ、リナが一歩前に出る。

「あ~、固っ苦しいのもまどろっこしいのも苦手なんでな。 思ったことだけ言うわ」

 少しくぐもった声ながらいつものリナの声が周囲に響く。

「俺は、2度と負けねぇ。 必ずノエルを助ける。 だからてめぇらも力貸せ! やれること全部やれ! 俺達はノエルがいたから今ここにいる! そのノエルが集めた力全部注ぎ込んで、聖帝やアーサーの野郎をぶちのめす! 奴等の下らねぇ企みもぶっ壊す! そして、ノエルを驚かせてやろうぜ! お前の集めた連中は、創った国は、こんだけ強ぇんだってな!!」

 リナの言葉に、プラネ連合軍全員が雄叫びを上げた。

 人も亜人もラバトゥも元コキュートも関係ない。

 あるのはただ1つ。

 ノエルを助けるという強い意思だった。

 今ここに、プラネとアルビア、五魔と聖五騎士団の最後の戦いの幕が下ろされた。

「さあ行こうぜ! ノエルを迎えによ!!」

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