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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
新国開拓編
170/360

集結


 プラネがノエル奪還を決意してから4日が経った。

 皆がノエル奪還の為に動く中、エルモンドは水晶でセレノア元帥ダグノラと話をしていた。

『うむ。 ロウとヘラは引き続きそちらで活動してもらうとしよう』

「悪いね。 もう暫く君の部下を使わせてもらうよ」

『なに、構わんよ。 二人もだが、私もノエル陛下には大恩がある。 本来なら正式に援軍を送りたいが、サファイル陛下がお許しにはならんだろう』

「今の君なら無理矢理快諾させる事も出来るんじゃないかい?」

 セレノアは未だサファイルが王のままだが、ノエル達との一件でその影響力は落ちており、今ではダグノラや王弟であるメリウスの方が大きな発言力が持つ状態になっている。

 その事を言われダグノラは苦笑する。

『言ってくれるなルシフェル。 私が陛下を蔑ろに出来んのは知っているだろう?』

「僕としては君が王様になった方がいいと思っているくらいなんだけど、やはりそう簡単にはいかないね」

『人の心とは、そう単純ではない。 全てを合理的観点のみで考えれば、それは最早人では・・・いや、生物とは言えんかもしれん。 ただの道具と同じよ』

「心か。 僕が未だ唯一読み間違いをするものだよ。 だから僕は人をよく怒らせる」

『全ての心を解する者などおらんさ。 いるとするなら、それは神しかおらんだろう』

「神か。 僕には最も縁遠い存在だよ」

 会話をしていると、外が急にざわつき始める。

「申し訳ないね。 どうやら客人が到着した様だ」

『そうか。 ならばこれ以上仕事の邪魔をしては悪いな。 私はノエル陛下の無事をここから祈るとしよう』

 ダグノラが頭を下げると、水晶の映像を切られた。







 プラネの岩山の入り口から、2つの部隊が肩を並べ入場してきた。

 1つの部隊は拳おギエンフォード率いるアルビアの南国境守護の要ソビア軍とギエンフォードが引き入れたサライの元聖五騎士団第十一部隊の混合部隊計5500、そしてもう1つは、武王・ラディン・アクナディン自ら率いるラバトゥ正規軍20000である。

 両軍の先頭にはそれぞれアクナディンとギエンフォードが並んでいる。

 かつて死闘を演じた二人の並ぶその姿は、まさに威風堂々という言葉に相応しかった。

「しかしおどれとこうして(くつわ)を並べる時が来るとは、思いもせんかったわ」

「俺だってまさか自分の右目奪った奴と隣り合わせなんて思わなかったよ」

「そがあな事を言うたらおどれのせいで侵攻出来んかったんじゃ! 痛み分けじゃ痛み分け!」

 かつてラバトゥがアルビアに侵攻した時、ギエンフォードはアクナディンの軍と激闘を繰り広げ、方目を失いながらもなんとか侵攻を防いだ。

 当時の事を知る者なら、この光景がいかに稀有なものかよくわかるだろう。

 そんな周囲の事など気にする様子もなく豪快に笑いながら当時の事を話すアクナディンに、ギエンフォードはどことなく親友ラズゴートを思い出す。

 そんな二人の前にエルモンドにクロードとリーティア、レオナ、ジャバ、ライル、そして先に援軍として来ていたアシュラ達八武衆の面々が出迎える。

「はっ! 五魔が直々に出迎えとは豪勢じゃのぅ!」

「ふひひ、援軍感謝するよアクナディン君」

「おどれが魔人か。 胡散臭そうな奴じゃのう」

 王に対し君付けで呼ぶエルモンドに気を悪くする様子事もなくアクナディンが馬から降りると、アシュラを先頭に八武衆が跪き深々と頭を下げる。

「申し訳ありません陛下。 陛下からの任を完遂出来ぬばかりか、ノエル陛下を敵の手中に奪われる醜態を晒してしまいました。 どの様な罰もお受けいたします」

「ドアホ! 敵がわしらより上手じゃったっちゅうだけの話じゃけぇ! いつまでもつまらんことを気にする暇あるなら戦の備え万全にせぇ!」

 王として一喝するアクナディンに、アシュラ達は「ハッ!」と力強く応えた。

「あれが武王か~。 やっぱ迫力あんな~ぐべ!?」

 アクナディンの姿に圧倒されているライルの頭にギエンフォードの拳骨が飛んだ。

「ってぇな! 何すんだよ親父!?」

「馬鹿ガキに渇入れてやったんだよ。 どうせてめぇのことだ。 ノエルの小僧助けられなくてまたウジウジしてんだろ?」

 図星を突かれライルはギクリとした。

 実際、ノエルの力になる為に暫くギエンフォードの元で鍛え直したのに、合流して間もなくリナが重傷を負い、ノエルが捕まった。

 それはライルにとって大きなショックだった。

「てめぇごときでアーサーの知力に勝てるかよ。 アクナディンじゃねぇが、今はお前の王を取り戻すことだけを考えろ」

 言葉は悪いが、今のライルには父が自分を気遣ってくれているのがわかった。

 ぶっきらぼうながら真っ直ぐな父の言葉に、ライルは強く頷く。

「おう! やってやらぁ!」

 逞しくなった息子に、ギエンフォードは無言で背中を叩きエールを送る。

「ほぉ! そいつがおどれの息子か拳王の! なかなかタフそうじゃのう!」

「あまり誉めんなよ。まだまだ鼻ったれの甘ちゃんだ」

「鼻たれで五魔に付き合えとんじゃ! 十分タフじゃけぇ!」

 ギエンフォードより遥かに強くバシバシと背中を叩いてくるアクナディンにライルは「いてぇ!」と絶叫した。

「でも今更だけど、こんなに軍動かしちゃって国境大丈夫なの?」

「一番驚異の武王様が味方に付いてくれてるお陰でな。 お陰で砦を最低限の奴等以外すっからかんにしても安心だな」

「こっちもファクラと残りの八武衆がおるけぇ、国の方は問題ないじゃろ。 本当は全軍連れて来たかったがウチも周りの子蝿共が煩いけぇの」

 レオナの質問に答えるギエンフォードにアクナディンも続けて答えた。

「じゃがその分わしが暴れちゃけぇ頼りにしてけや」

「そうさせてもらうわ。 ありがとう、武王様」

「任せぇ。 弟分の為に一肌脱いじゃるわ」

「うがう!! 皆仲間! 俺嬉しい!!」

「おおジャバウォックか! お前さんが味方とは昂るのぅ!」

 かつて自分達の国を覆う壁を壊したジャバウォックに、アクナディンは嬉しそうに接した。

「ああいう人だと、本当後腐れなくて助かるね」

「そうだねクロード。 特にこれから連携しなきゃならない相手なら、尚更そこは重要だよ」

「で? 具体的には俺達はどうすんだ? 賢王がなんか手を回してくれてるらしいが、まさかこのまま正面衝突なんて言わねぇよな?」

「まあ、そう急かないでよギエンフォード君。 とりあえず僕のもう1つの策の準備と、リナの回復が終わってからだよ」

「あの小僧が重傷か。 アーサーの野郎、どうやら本物の化け物らしいな」

「まあ、リナに関しては明日辺り全快する予定だから、その前に詳細を打ち合わせしとこうか」

 その時、近くの建物から轟音がなった。

「な、なんだ!?」

「敵襲か!?」

「いや、この感じは・・・」

 周囲がざわめく中、五魔やアクナディン達はその音の正体に気付いている様だった。

「全く、相変わらずらんぼうなんだから」

「ハッハッ! やはりやつはこうでないといかんのぉ!」

 音の方を見るとキサラとイトスが仕切っている病院となっている建物の2階の壁の一部が吹き飛んでいた。

 そしてその穴から、完全回復したリナの姿が現れた。

「よぉ? 久しぶりだなおっさん達」

「姉さん!」

 復活したリナの姿にライルが喜ぶ中、ギエンフォードは呆れた様にパイプを吹かす。

「てめぇな、もう少しまともに出れねぇのかよ?」

 ギエンフォードに続き、リナの後ろから怒声が響く。

「てめぇ馬鹿リナ!! 何部屋ぶっ壊してんだよ!? 他の連中も使うんだぞここ!?」

「いや、力戻ってるかな~と思ってよ」

「加減しろって言ってんだよ!?」

 イトスに怒鳴られ鬱陶しそうにするリナに、リーティアはクスリと笑った。

「どうやら、魔力も完全に戻られたようですね」

「ああ。 あの薬が効いたかな」

「流石にこういう時マークス君は嘘つかないよ」

 エルモンドがクロード達にふひひと笑うと、リナは皆の前に降り立った。

「さあ、ノエル奪還始めっか。 策はあんだろうなエルモンド?」

「任せてよ魔王様。 ふひひひ」

 リナの完全復活にプラネの士気は上った。

 同時にそれは、決戦の日が目前まで迫っていること意味するのだった。

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