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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
新国開拓編
154/360

懐かしき顔続々


 かつて共に旅をし、現在は父親のギエンフォードの元で修行中の筈のライルの登場に周囲が驚く中、ライルは両腕に力を込める。

「うりゃあああああ!!!」

 ライルはそのまま強化されたペガサス騎兵二人を乗っているペガサス事豪快に投げ飛ばした。

「凄い・・・・」

「あの方は一体?」

 ライルを初めて見るサクヤとキサラ達が呆気に取られる中、リーティアは敵を倒しながらライルに歩み寄る。

「ライル様!」

「ようリーティア! 久しぶりじゃねぇか! 随分苦戦してやがったが、クロードの奴整備怠けてたのか!?」

 近付く敵を殴り倒しながらかつてと変わらぬイタズラっぽい笑みを浮かべながら軽口を言うライルに、リーティアにも自然と笑みがこぼれる。

「そうですね。 クロードったら、他の人形達の相手もしてて大変なんですよ」

「暫く見ねぇ内に浮気者になったもんだな! 直接会ったらたっぷりからかってやるか!」

「それは楽しみですね。 それよりどうしてここに?」

「ノエルの初の大戦に俺が来ねぇ訳にはいかねぇだろ!? だからよ!」

 ライルの視線の先を見ると、左側の丘の上に大勢の軍勢が出現した。

「ギエンフォード軍5000人引き連れて援軍に来たんだよ!」

 突然現れた大軍にキサラ達は驚きを隠せなかった。

「そんな、どうやってここまで!? ギエンフォード様の軍は今動けないはず!?」

「別に援軍として動かした訳じゃねぇよ。 言われた通り周辺警戒すんのにたまたま手の空いてた連中がいたんで連れてきて、たまたま戦闘中の一団見付けただけだ。 何も聖王様の命令違反なんかしてねぇよ」

 父親と似たような強引な言い訳をするライルに、リーティアはクスリと笑う。

「全く、暫く見ない内にギエンフォード様にすっかり似ましたね」

「親父に似てるは余計だっての! まあでもよ、そんな訳だからよ、この緊急事態を収拾するためにたまたま会った連中と共闘しても何も問題ないわけだ」

「連中? それって?」

 不思議に思うリーティアが見ると、ギエンフォード軍の隣にもう1つ違う軍団がいるのに気付く。

「あれは・・・・・ラバトゥ!?」 






 プラネへ正規軍を出せないとファクラに諭されたその時、アクナディンはギラリと目を光らせる。

「つまり、正規の軍隊は出せんっちゅうことじゃな?」

「ええ。 無念ですが今回は・・・・」

「だったら正規軍以外の部隊を送ればええ!!」

 アクナディンの言葉の真意がわからず、ファクラは一瞬ポカンとする。

「陛下、それはどういう・・・・」

「じゃからプラネ援軍の為の義勇軍を集うのよ! 勝手に集まった連中が助けに行くんじゃ! わしら正規軍はなんも関係ないけぇの!」

「いや、陛下! そんな無茶苦茶な!」

「戦っちゅうんはどれだけ常識外れが出来るかで決まる! そがあなつまらんもんに囚われとったら、勝てる戦なんぞないわ!」

 アクナディンの説明を聞いてもファクラは無茶苦茶だと思った。

 いくら正規軍ではないにしろ、ラバトゥから援軍が出たとなればそれは当然ラバトゥとプラネが友好的なのは予想がつく。

 少なくとも、プラネ派の勢力がいると疑われるのは目に見えている。

 正直リスクの方が高い。

 止めようとするファクラに、アクナディンはそれを察したのか更に続けた。

「お前の言いたいこともわかる。 じゃがのうファクラ。 わしはの、このまま何もせんのがラバトゥの為にならんと思うんじゃ」

「? どういう事ですか?」

「わしはなファクラ、あの若い王を認めた。 正面からぶつかって心の底から認めたんじゃ。 じゃからあの場で国交を結ぶと約束した。 信頼するに値するとな。 じゃけんどもし、ここでわしらが何もせんかったら、わしはあいつらの信頼を裏切ることになる。 それは向こうの信頼を失うだけじゃのうて、あの場でわしらの試合を見て同じ様に認めてくれた連中をも裏切ることになる。 わしは王として、自分の国民を裏切ることだけは出来んのじゃ」

 アクナディンの話を聞いたファクラは少し思考し始める。

「3000です。 義勇軍とするならそれが限度でしょう。 指揮はサディール軍団長がいいでしょう。 八武衆も何人か加え数の不利を少しでも軽減しましょう」

「!? ファクラお前!?」

 具体的な計画を考え始めた事に驚くアクナディンに、ファクラは諦めた様な、それでいてどこかスッキリした表情を向けた。

「民の事を出されては、私がその想いを否定するわけにはいきませんからね。 それに、正直私もこのままなにもしないのは、目覚めが悪かったですしね」

 そんなファクラに、アクナディンは愉快そうに豪快に笑った。






 ギエンフォードの部隊と共に現れたラバトゥ軍の先頭で、サディールと八武衆であるカルラ、キンナラ、ケンダツバ、そしてアシュラが戦場を見下ろす。

「ふはは!  久しく見ぬ修羅場! なんとも血がたぎる事よ!」

「皆頑張ってるね~♪ この戦力差でよくやるよ♪」

 騎乗するサディールとカルラが張り切る中、キンナラは戦場に耳を澄ます。

「コキュート側の動きが若干鈍い。 恐らくディアブロが何かしているのだろう」

「この人数を相手にか。 相変わらず図り知れんな」

「彼女なら可能でしょう」

 驚くケンダツバに、リナの実力の一端を知るアシュラが冷静に答える。

「しかしそれが枷となり手こずっている様子。 ならば、一刻も早くその枷を外すのが我らの役目ですね。 サディール軍団長」

 サディールは頷くと槍を掲げた。

「ラバトゥ義勇軍、及びギエンフォード軍! 義により、これよりプラネに助太刀する! 全軍突撃!!!」

 サディールを先頭に、一気にラバトゥ、ギエンフォード両軍は一斉に戦場へと雪崩れ込む。

 サディールは槍を振るいコキュート兵を薙ぎ倒し道を開いていく。

「我等は先行します。 ここは頼みましたよ」

「心得た!」

 サディールの開いた道からアシュラ達八武衆が一気に戦場の中心部へと突き進む。

 それを阻止する為、コキュート兵が次々と襲い掛かる。

「久々の出番だし、アタシ張り切っちゃうよ♪」

 カルラは身に纏う羽衣を展開させると、舞う様な独特の動きで羽衣を操りコキュート兵を縛り上げていく。

「はいドッカーン!」

 そして縛ったコキュート兵を投げつけていく。

「全く、繊細なんだか豪快なんだか、相変わらずよくわからん戦い方だな」

 キンナラはチャクラムを飛ばし、コキュート兵の足を負傷させ動けなくしていく。

「ケンダツバ」

「わかっている。 ふん!!」

 ケンダツバは持っている盾に付いた動物の角を回転させ、雪崩れ込むコキュート兵の攻撃を弾きながら薙ぎ倒していく。

「やれやれ、皆張り切り過ぎですよ。

ノエル陛下は不要な犠牲を好まない方ですから、極力殺さぬ様に加減してください」

 そう言いながら、アシュラは斬りかかってくるコキュート兵を流れる様な動きでいなし、その力を利用した強力な打撃で次々と吹き飛ばしていく。

「アシュラちゃんが一番加減出来てない気がするんだけどね~♪」

「全ては因果応報。 私はただ彼ら自身の力を返しているだけです」

 普通に会話しながらも次々と敵を倒していくアシュラやカルラ達の姿は、まさにラバトゥ最高戦力と呼ぶに相応しいものだった。

「ちょっとちょっと! 珍しいお客さんじゃない!」

 そんな快進撃を続けるアシュラ達の前に、一人コキュート兵を吹き飛ばしながらレオナが現れる。

「これはレオナ殿。 お久しぶりですね」

「やっほ~♪ 助太刀に来たよん♪」

「本当どういう風の吹き回し? 確かあなた達来れないんじゃなかったの?」

「陛下がいつも通り無茶を通しただけですよ」

「全くあの王様らしいわね!」

 レオナはアシュラと話ながら鉄根を伸ばして二人気絶させる。 

「とりあえず出来るだけ殺さないでね! それがウチの王様の望みだから!」

「心得てます。 此度の戦、ノエル陛下の意向に沿うようにと仰せつかっています」

「面倒かけて悪いわね! あとカルラとそこの大きな盾の人!」

「ケンダツバだ」

「二人は後方で負傷者を守って! 魔力の壁だけじゃいつまで持つかわからないから!」

「心得た。 この身に代えても守護しよう」

「人使い荒いね~レオナちゃんは♪」

「それだけ頼りにしてるってことよ。 これ終わったらこっちのお菓子や料理御馳走するから、それで許して」

「ふふ、楽しみにしてるね♪」

 ケンダツバとカルラはレオナの指示通り後方へと向かった。

「二人はこのまま中央を掻き回して!」

「了解した」

「お任せ下さい。 折角の五魔との共闘。 存分に力を発揮してみせましょう」

 構え直すキンナラとアシュラに、レオナも鉄根を捨て剣を産み出す。

「さあ! 一気に押し返すわよ!」






 丁度その頃、右側の丘にその集団は到着していた。

「げ~! もう始まってやがる! しかもなんか援軍っぽい連中が既に来てやがるし!」

「貴様がいらぬ寄り道をするからだろうが」

 ゴンザ率いる荒くれ連合の先頭で、ベクレムがゴンザに文句を言っていた。  そんな二人の間にミラがスッと入り宥め始める。

「まあまあいいじゃないの。 こうして間に合ったわけだし、ちゃんと意味のある寄り道だったでしょ? ねぇお二人さん」

 ミラの視線の先には漆黒の甲冑に身を包んだケンタウロスと、同じ色の軽装の鎧を着たダークエルフの姿があった。

「うむ、感謝する。 不馴れな地故助かった」

「これでやっと、セレノアでの借りが返せるわね」

 セレノアの黒曜隊であるロウとヘラはそれぞれの獲物を手に闘志をみなぎらせる。

「頼むわよお二人さん」

「うむ。 我が主ダグノラの願いを叶える為、そしてノエル陛下への大恩を返す為、再びこの槍を振るおうぞ」

「そういうこと。 黒曜隊代表して来てるんだ。 やってやるさね」

 ヘラが乗ると、ロウはその脚力で一気に戦場へと突撃する。

 ヘラは持っていた三又の槍を構え魔力を集中する。

「さあ、出番さね。 出ておいで死霊達!」

 ヘラの呼び掛けに応える様に、半透明の死霊達が次々と現れ、コキュート兵へとまとわり付き動きを封じていく。

「ね? 戦力差埋めるのに最適だったでしょ?」

 茶目っ気たっぷりにウィンクするミラに対し、ベクレムは舌打ちをしながらもゴンザに向き直る。

「さっさと命令しろゴンザ! これ以上遅れれば、我等の沽券に関わる!」

 言葉は乱暴だがゴンザを長と認め、荒くれ連合として振る舞うベクレムに、ゴンザはニヤリと笑った。

「よっしゃ! 野郎共! 今こそノエルの旦那達に恩を返す時だ! 存分に暴れやがれ!!」

 ゴンザの号令と共に荒くれ連合2000は雄叫びをあげながら戦場に突撃していった。






「ねぇ、あれって・・・」

 荒くれ連合に気付き、その中に黒曜隊の二人の姿を見付けたサクヤは確認する様にクラークを見た。

 すると、同じ黒曜隊に入れられていたクラークの顔に生気が戻る、

「ゲシャシャ、まさか同志達まで駆け付けてくれるとは」

 洗脳され無理矢理入れられた黒曜隊だったが、同じ境遇でわかりあったかつての仲間の援軍は、クラークとサクヤにとって何より嬉しいものだった。

「かつての同志が駆けつけてくれたのだ。 我等も負けていられないなサクヤ殿」

「そうね。 勝ってちゃんとお礼言わないといけないしね」

 そう言いサクヤは小太刀を構え、クラークと共に暗殺者(アサシン)達に向かっていく。

「へっ、偽もん連中も来やがったか! このまま勢いに乗って全員ぶちのめしてやろうぜ!」

「ええ、そうですね・・・・・!? ライルさん!」

 ライルの背後に、2本の刀を抜いたリドの姿を確認しリーティアは声をあげる。

(数的にはまだ此方が上だが、勢い付かせる訳にはいかん。 ここで五魔と親しいこの男を討つことで流れを断つ!)

 リドは先程リーティアの虚を付いた時以上の速度を持って、ライルの首を斬り落とそうと刀を交差させる。

(もらっ・・・・!?)

 だがリドが次に感じたのは首を斬った手応えではなく、顔面の激痛だった。

 それはライルの拳が自分の顔にめり込んだ証拠だった。

(馬鹿な!? 暗殺者(アサシン)である俺の気配を読んだと!?)

「俺はよ、てめぇみてぇなちょこまかした野郎にはよ、もう二度と負けねぇって決めたんだよ!!」

 ライルはそのまま力を込め、一気に拳を振り抜いた。

「うおらあああああ!!!」

 ライルに殴り飛ばされたリドは思い切り吹き飛ばされ、そのまま受け身も取ることが出来ず地面に激突し倒れた。

 リーティアは拳を放つライルの姿に、かつてのギエンフォードのそれを思い出した。

「・・・・本当に、頼もしくなったんですね」

「大したことねぇよ。 あのカメレオンジジイより遅かったしな」

 リーティアに誉められ照れ臭そうに笑うライルは、そのまま上空に顔を向ける。

 その様子に、アムドは焦り始める。

(まさかリドまで倒れるとは!? こうなれば残りの部隊で一気に下を急襲して・・・・!?)

 アムドは突然感じた巨大な魔力に反応し向き直る。

 瞬間、両手を解き放ったリナにより自分の部下達を重力で叩き落とされていた。

(ば、馬鹿な!? 我が精鋭がこんなに簡単に!? いや、それより何故奴の両手が!?)

 片手は味方の援護の為に重力を放ち続けていたリナが、今は両手を使い簡単に強化されたペガサス騎兵を全滅させている。

 リナの圧倒的な力は勿論だが、あれほど固執していた援護を止めた事にアムドは混乱する。

「たくよ、舎弟があんだけカッコつけてるってのに、俺がいつまでもごたついてる訳にはいかねぇからな。 下は連中に少し任せて、さっさと終わらせてもらうぜ」

 そこで漸くアムドは理解した。

 リナは援護を諦めた訳ではない。

 頼るべき援軍が来たことで、自分の力がなくとも暫くは持つと確信したから援護を止めたのだ。

 それほどリドを倒したあの男がリナにとって頼りになる存在だと知るのと同時に、アムドは戦慄する。

 援護を止め、魔力を全て戦闘に回したリナの力がまるで巨大な影の様にリナから溢れ出ている。

(こ、これが魔王・・・・先程とは比べ物にならないではないか!?)

 リナの力に当てられ戦慄するアムドに、リナは挑発する様に手招きする。

「さっさと来いよ。 てめぇの全力、受けてやるよ」

 その言葉に、アムドは覚悟を決め槍を構える。

 そして刺し違える覚悟でリナへと特攻した。

「これで終わりだ! ディアブロ!!!」

「てめぇがな」

 繰り出された槍を重力を纏った拳で粉砕しながら、リナはアムドに拳を叩きこんだ。

 アムドはそのまま凄い勢いで地面に叩き付けられ、白目を向いて意識を失った。

「死ぬ覚悟があんなら前に進む覚悟も出来んだろ。 次はそっちの覚悟して出直してこい」

 倒れたアムドにそう言うと、リナはライルを見下ろした。

 そして拳を突き出すと、ライルも嬉しそうに拳を突き出した。

(ちったぁマシになったじゃねぇな)

 舎弟の成長を嬉しく思いながら、リナは再び両手を戦場に向ける。

「さあ、次はそっちの番だ! さっさと方付けろよノエル!」

 リナは再び重力で戦場を覆い、敵の動きを封じていった。

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