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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
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襲撃

 聖五騎士団第六部隊の若き隊長、アレックス・カイザルは、聖都からの指令によりノエル捜索の為秘密裏に捜査をしていた。

 道中それらしい人物を発見できなかった事を受け、歓楽街の隠れ家となりそうな場所をしらみ潰しに探した。

 それこそ人の出入りの少ないボロホテルや秘匿性の高い客を扱う高級ホテル、はては法ギリギリの商売をしている悪徳宿屋まで徹底的に。

 しかしノエルとディアブロとおぼしき人物は見つからなかった。

カイザルはもどかしかった。

 本来なら大々的に捜索するべきなのだが、ディアブロが付いている以上下手に刺激し暴れられては被害が大きい。

 ましてや、再び五魔が復活したという話が広まれば、それはこの国にとって大きな影を落とす。

 下手をすれば旧魔帝派や滅ぼした国の残党、果ては近隣の大国すらも動きかねない大事になる。

 だからこそ慎重に行動すべしというのが上層部からカイザルの部隊に通告されていた。

 それだけ五魔という存在の大きさは上層部にとって大きく、厄介な存在だった。

 カイザルも五魔の伝説は知っている。

 事実自分もまだ7才の時五魔の一人を見たことがあった。

 その圧倒的な存在感は今でも覚えている。

 だがそれも所詮悪の力。

 聖帝に破れた敗残兵に過ぎない。

 今は己を含め、聖五騎士団にはあの時の五魔を越える猛者が大勢いる。

 ならば恐れず早期解決を目指すべきだというのがカイザルの本音である。

 しかし聖帝の命は絶対だ。

 元々使命感の強いカイザルに、聖帝の意向に異を唱える事は出来なかった。

 自身がどう思おうと聖帝の命に尽くす、それがカイザルの理念だった。

 そんな中、カイザルにある情報が入った。

 ここ数年人気の劇場で、先日大きな魔力が感知されたと。

 時間にして数秒だったがそれで十分だった。

 カイザルは劇場へ乗り込む為に出陣した。






「隊長、やはり間違いではないのでしょうか? この様な劇場にディアブロがいるとはふぐぁ!?」

 異を唱えようとしカイザルに拳を叩き込まれた部下はその場に倒れ、痛みにもがいた。

「愚か者め。 僅かに可能性があるならそこを調べるのは当たり前だ。 疑わしきは罰せよ。 これがこの国の安寧へと繋がるのだ」

 そう言うとカイザルは他の部下達に向き直る。

「これより劇場に突入する! 最悪手配書の人物以外処分しても構わん! 全力で捜索せよ!」

「「はっ!」」

 カイザルは兵士を率いて劇場へと向かった。






「ちっ、来るとは思ってたがもう来るとはな・・・」

「とにかく一旦ここから離れないと。 もし見つかればクロードさん達にも迷惑が・・・」

「待って待って、勝手に決めないでよ。 君らが出ていってもし見られたらどのみち怪しまれるのは僕なんだから」

「でも・・・」

「大丈夫、ここは僕に任せといて」

 クロードはリーティアを連れ騒ぎの起こっている劇場入り口へと向かった。






「さっさと通せ! さもなくばお前も逮捕するぞ!?」

「待ってください! 今公演後で立て込んでおります! もう少し時間を…」

「ええい邪魔だ!」

「きゃ!?」

 カイザルに平手打ちされた呼び込みの女性はそのまま倒れそうになる。

 だがすぐリーティアに支えられ転倒を免れた。

「大丈夫?」

「はい、ありがとうございま・・・座長!」

 クロードはリーティアに呼び込みの女性を下がらせるとカイザルの前に歩みでた。

「これはこれはカイザル小隊長殿。 我が劇場にようこそお出でくださいました・・・で? どのようなご用でしょうか? 生憎本日の公演は既に・・・」

「ここに手配犯がいると知らせがあった。 即刻調べさせてもらう」

 営業スマイルを浮かべ丁寧に対応するクロードの言葉を遮り、カイザルは要件を切り出した。

「はて・・・その様な演目はやった覚えがないのですが・・・」

「惚けるな! ここで巨大な魔力が感知されたのだ! たかが芝居小屋では感知するはずのない魔力をな!」

 クロードはそれに心当たりがあった。

 呼び込みをしていたリナがセクハラ紛いを受けた時だ。

 あの時すぐに治めていたが、怒りで魔力が数秒漏れていた。

(爆発しなかったからリナにしては上出来なんだけど・・・しくじったな・・・)

 心の中で舌打ちをしつつ、クロードは態度を崩さなかった。

「あ~・・・それでしたら(わたくし)のせいだと思います」

「なに?」

「いや~これは本当は極秘事項なのですが、芝居の人形は全て私が魔力の糸で操演しているんですよ。 それで少々この前ミスをしていまい、魔力を送りすぎて人形が破裂してしまったんです。 恐らくその魔力を感知したのかと・・・」

「たかが人形数体が破裂したごときで感知する程度の魔力ではない! ご託はいいからさっさと通せ! でなければ強行突入する!」

(やはりこの程度じゃ騙せないか・・・本当厄介な人が来たね~)

 クロードが内心やれやれと思いっていると、カイザルの部下が慌てて駆けてやってきた。

「た、隊長!」

「どうした?」

「き、北の入り口に、手配書の人物と思われる男が目撃されました!」

「なに!?」

 驚きながらもカイザルは部下を問い詰める。

「間違いないのだな!?」

「はっ! 二人組で走っているのを別動隊が発見したと!」

「どうやら見付かったようですね。 早く行かないと逃げられちゃいますよ?」

 クロードの言葉に舌打ちしながらも、カイザルは冷静に何かを思案し始める。

「・・・おい、北の入り口は確かこの通りの先だったな?」

「はい! ですから今ならまだ追い付けます! 急ぎ追撃を・・・」

「その必要はない」

 そう言うとカイザルは身軽な身のこなしで飛び上がり、近くの高い建物の上に登った。

「・・・あれか」

 カイザルは目標を確認すると背負った巨大なランスを抜き構えた。

 右手に力を込め、狙いを定める様に目標を見据える。

 次の瞬間、カイザルがランスを突くと、遥か先にある筈の二人の貫いた。

 クロードは二人が貫かれた事に動揺するが、更に驚く事態が起こった。

 なんと貫かれた二つの物体はまるで吸い込まれる様に瞬時にカイザルの元に引き寄せられ、ランスに自ら刺さった。

 カイザルは刺さった物を見て表情を変える。

 それは人ではなく、手配書のノエルに似せた人形と、偽のディアブロとして造った人形だった。

「おい、クロードとか言ったな? 確か貴様は魔力で人形を操ると言っていたな・・・これもお前の仕業か?」

「そ、それは・・・」

 クロードの顔に動揺がにじみ出、降りてきたカイザルはクロードを睨み付ける。

「貴様・・・私を謀ったな!?」

「お待ちくださいカイザル様! これには訳が・・・」

「黙れ女が!!」

止めに入ろうとするリーティアをカイザルは張り倒した。

「リーティア!」

「聖五騎士団を謀るとは・・・この様な重罪! 見過ごす訳にはいかん! この場で処分する! まずは貴様からだ女!」

 怒りを露にするカイザルは、部下にリーティアを斬らせようとする。

 部下は剣を抜き躊躇いなくリーティアに振り下ろした。

「リーティア!」

 クロードが叫ぶ中動けないリーティアに剣迫ろうとした・・・その時、黒炎がリーティアを斬ろうとした部下に襲いかかった。

 炎に苦しむ部下を目にしたカイザルは、すぐ炎の飛んできた方向を見る。

 するとメイド姿のノエルが手を翳して立っていた。

「その人は関係ない!」

「貴様・・・まさか・・・」

 カイザルはメイドの顔と黒炎を見て、あの手配書の人物を思い出す。

「・・・どうやら手配書に不備があった様だ。 まさか女だったとは・・・」

「え、いや、僕は・・・」

 女と勘違いされ少し戸惑うノエルに、カイザルは容赦なくいい放つ。

「ノエル・アルビア! 貴様を聖帝の名の元に拘束する! 大人しく縛につけ!」

「お断りします。 あなた達こそ、今すぐ立ち去ってください」

「良かろう・・・ならば力ずくで取り押さえるまで!」

 カイザルの号令に部下が一斉にノエルに襲いかかる。

 ノエルは攻撃をかわしながら黒炎と体術で部下達を圧倒していく。

(体が軽い・・・これが鎧の効果だったんだ) 

 今ノエルはリナの重力から解放されている。

 枷が取れたノエルは、自分の体が羽のように軽く感じられた。

「流石魔帝の子、なかなかやるではないか・・・ならば!」

 カイザルは部下の間をすり抜け、一気にノエルの死角に潜り込む。

「しまっ!」

「我が突きに貫けぬものはなし! 手足の1本は覚悟せよ!」

 先程遠くの人形を貫いた高速の突きが放たれ、ノエルは被弾を覚悟した。

 だが瞬間、ノエルの前に大きな物体が立ちふさがった。

「あ・・・ああ・・・」

「ムフォフォ・・・まだまだ・・・警戒心が足りないよ・・・」

「クロードさん!!」

 ノエルが目にしたのは、自分を守ろうとし、腹にランスが深々と突き刺さったクロードの姿だった。

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