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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
亜人救出編
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ノーラの魔力 ジャバの咆哮


 ノーラはドルイドと対峙する。

 漆黒のローブから見えるドルイド特有の仮面は妖しく笑みを浮かべた不気味なもの。

「アバタリスノーム」

 ドルイドは青年の声で呪文を発すると、いくつもの氷柱が彼の周りに浮かぶ。

「ディぺ」

 ドルイドの青年の一言で無数の氷柱がノーラへと向けて放たれる。

 ノーラは慌てる様子もなく冷静に手に集めた魔力を展開させる。

「レザースゥケイム!」

 ノーラの呪文に呼応し彼女を中心に巨大な炎の竜巻がノーラを守るように上空へと舞い上がる。

 炎に触れた氷柱は一瞬の内に溶け、蒸発していく。

 ノーラはまるで指揮者の様に手を振るうと、一気に右手を下に降り下ろした。

「コラン!」

 炎の竜巻は上空からドルイドの青年目掛け、まるで蛇のように襲いかかる。

「パスクリダ」

 ドルイドの青年は魔力の障壁を造ると、激突した炎の竜巻を霧散させた。

 巨大な魔力とそれを操る術に長けたドルイド同士の高度な魔術の応酬に、エルモンドは目を輝かせる。

「ふひひ、いいねいいね。 流石マグノラ君の娘だ。 魔力コントロールが素晴らしい。 一方向こうの子は・・・・」

 エルモンドはドルイドの青年に目を向ける。

 ノーラの攻撃に無機質なまでに冷静に反応し、的確に攻撃と防御を使い分けている。

 だが、エルモンドは違和感を覚える。

(彼は元々戦闘向けではないみたいだね。 にも関わらずあの反応速度。 余程過酷な訓練をさせられたか、あるいは・・・・)

 エルモンド同様の疑問を、ノーラも感じていた。

(これはまるで、自分の事などまるで度外視しているような・・・・とにかく早く終わらせる方が良さそうですね)

 ノーラは周りに出来た瓦礫を浮かばせ青年に放つ。

 ドルイドの青年は障壁を出し防ぐが、その衝撃で粉塵が辺りに立ち込める。

「そこ! メディスケーク!」

 ノーラは視界が塞がったと見るや、硬質化した雷をいくつか青年に向け降り注ぐ。

 防御は間に合わない、そう思いながらノーラは警戒を解かず粉塵が晴れるのを待つ。

 やがて粉塵が晴れると、ノーラはその姿に絶句する。

 そこにはローブが破れ、夥しい数の傷跡が刻まれた上半身を露にした青年の姿があった。

 大きく抉られた脇腹、無数の火傷の跡

、よく見ると手の爪は何枚か剥ぎ取られ、ちゃんと手当てされなかったのか、腕の骨も歪んでいる。

 それはノーラが付けたものでなく、拷問により付いたものだと一目でわかった。

「どうして、こんな・・・・」

「やっぱりね。 恐怖心が無くなる程の拷問か。 余計な恐怖心が無くなればそれだけ無駄な動きも思考の遅れもなくなる。 薬と併用されれば実に合理的だけど、あまり誉められたやり方じゃないね」

 エルモンドが顔をしかめると、その光景を見ていたサファイルが笑みを浮かべる。

「そいつは魔力の割に出来が悪くてな。 余自ら少々折檻してやったのだ。 その成果で、ここまで有能な道具になったわ」

「あなたは、人をなんだと・・・・!?」

 ノーラがサファイルに気を取られた瞬間、ノーラの足元の床の石がまるで石が帯の様に伸び、まるで石を持つ様にノーラに巻き付き、包み込む。

「!?」

「リトグリス」

 ドルイドの青年は一気に床に魔力を送る。

 完全に石の帯に包まれたノーラは、そのまま全身を締め付けられる。

「まずは一人。 所詮低脳な亜人よ。 我が国で人を表す高貴な白に包まれて終わるのだ。 光栄に思うがいい」

「あなたは何も見えていないのですね」

「なに?」

 サファイルがノエルにいい気分な所に水を刺され不快感を露にしようとすると、轟音が部屋に響く。

 サファイルが慌てて見ると、ドルイドの青年の腹に床から生えた石柱が突き刺さる。

 予想外の攻撃に防御が間に合わず、青年は体をくの字に曲げ踞る。

 同時に、ノーラを包んでいた石の帯がボロボロと崩れ出す。

「なるほど、白は人を表すんですか。 なら私にピッタリですね」

 崩れ落ちる石の帯から徐々に姿を見せるドーラに、サファイルは驚く。

 締め付けられ仮面が壊れたことで露になったノーラの素顔は、ドルイド特有の醜いものではなく、青い瞳の美しい白い肌を持つ美女だった。

「何故なら、私の半分は人間ですからね」

 ドルイドらしからぬ美貌を持つノーラに、サファイルは激しく動揺する。

「ば、馬鹿な!? 貴様、まさか人と亜人の、忌み子か!? なんと汚らわしい!!」

 激しい拒絶反応を見せるサファイルを、ノーラは一瞥する。

「そうですか。 私にはこの様な外道を何も感じず出来るあなたの方が余程汚らわしいと思いますが」

 そう言い捨てると、ノーラは気を失った青年を抱えエルモンドの元に連れていく。

「お願い致します、エルモンド様」

「はいはい。 少し待っててね」

 エルモンドはシルフィーを呼び出すと、青年に浄化の風を送り込む。

「余の奴隷に何をするか!? 誰か止めぬか!」

 その言葉に真っ先に反応したのは、豚頭族(オーク)の巨兵。

 エルモンドを止めるためその巨体で突進する。

「行かせない!」

 その突進をジャバが正面から受け止める。

 巨兵はジャバを振りほどくと、怪力に任せ背に背負う巨大な鎚でジャバを襲う。

 ジャバはそれを受け止めると、手に力を込める。

「お前、本当はいい奴の匂いする。 それがこんな酷い事させられてる。 おれ、許せない! ウガアアアアアアアアア!!」

 ジャバは咆哮をあげると巨兵を上回る怪力で鎚を握り潰す。

 豚頭族(オーク)の巨兵は怯まずジャバに突撃する。

 ジャバは突撃してきた巨兵の腰を掴むと、そのまま抱えあげた。

「お前、少し寝てる!」

 ジャバはそのまま勢いを付け、豚頭族(オーク)の巨兵を背中から叩きつけた。

 豚頭族(オーク)の巨兵は衝撃で息を詰まらせると、そのまま失神した。

「エルモンド!」

「わかってるよジャバ。 解毒中の守りは任せたよ」

「うが! 任せる!」

 ジャバは己が倒した豚頭族(オーク)をエルモンドの近くに運ぶと、守るように構えた。


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