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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
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序章

初めまして、ユーリと申します。


まずはこのページを開いてくださりありがとうございます。

処女作で上手く出来ているか不安ですが、楽しんで頂ければ幸いです。


 暗雲が辺りに広まる巨城、アルビア城・・・その王の間に続く階段を、一人の精悍な男が駆け上がっていた。

 目の前に扉を見つけた男は、扉を勢いよく開き、王座に座る一人を男を見据えた。

「ここまでだ!魔帝よ!今ここで貴様を討ち、この国をかつての平穏な国へと戻す!」

 勇ましく宣言する男に対し、魔帝と呼ばれた男はまるで嘲笑うかの様にニヤリと笑い、ゆっくり立ち上がった。

「ふ、ここまで辿り着いたのは誉めてやろう・・・だが、愚かな貴様に私を殺すことが出来るか?」

 全てを威圧するかの様な低い声に男は一瞬何かを思うように瞳を揺らすが、再び魔帝を力強く見据える。

「勿論だ・・・その為に私は・・・ここに来た!」

 男が勢いよく腰の剣を抜くと、魔帝も静かに手をかざす。

すると黒いオーラに包まれた大剣が現れた。

「よかろう・・・ならば己の無謀を呪いながら逝け、我が甥よ!」

 魔帝が大剣を握ると男は一気に間合いを詰め斬りかかり、二人の刃が激しく火花を散らし激突した。






『未だ魔の力が色濃く残る世界・・・デルトラ・・・その中心に位置するアルビア王国の王・ノルウェ・アルビアは、五人の悪しき魔の者と契約した。

魔獣ジャバウォック

魔器デスサイズ

魔竜バハムート

魔人ルシフェル

そして…魔王ディアブロ

人々はこの5つの魔を、五魔(フィフス・デモンズ)と呼び恐れた。

ノルウェはこの五魔の力を使い、近隣諸国を圧倒、魔帝と異名され小国アルビアを大国へと発展させたのであった・・・』

「しかし、所詮魔の力は邪悪な力。邪悪な力で築いた物ほど脆いものはない。やがてノルウェ・アルビアは、魔帝へと堕ちた王を見かねた甥であるフェルペス・アルビア率いる軍に敗れた。魔帝を滅ぼしたフェルペスは民から聖帝と呼ばれ、新たな王として、今も我らをお守りくださっているのだった・・・めでたしめでたし」

 老人が紙芝居を終えると、見ていた子供達から拍手が鳴り響いた。

ここはアルビア王国の東の外れの小さな田舎町、ノット。

その町の一角で、老人は国の歴史を元にした紙芝居を子供達に聞かせていた。

「さあ、この話はお仕舞いだ。また今度新しい話を仕入れてくるからね」

 子供達が笑顔で帰ってく様を、老人は温かい表情で見送ると片付けを始めた。

「あ、あの・・・」

不意にした後ろからの声に振り向くと、フード姿の小柄な人物が立っていた。

「なんだい?どうかしたのか?」

「あの・・・さっきのお話で、五魔がどうなったのか言ってなかったのが気になって・・・」

「ああそこか・・・実はわしも知らんのよ。何せこの話があった10年前は国も混乱とったし、第一帝都の事なんて、こんな田舎にゃあ詳しく伝わってこないからの。これだって、帝都からちょこちょこっと伝わった話をわしが多少脚色して作ったわけじゃし」

「そう・・・ですか」

 どことなく落胆している人物に、老人は困ったように頭をポリポリとかいた。

「まあ、五魔が本物の化け物なら聖帝率いる聖軍に倒されるなり異界に追放されるなりしとるし、そうじゃなきゃ・・・」

「人です」

「あ・・・なに?」

「彼らは人です。化け物なんかじゃありません」

 先程の頼りない態度と打って代わりはっきり言い切るその人物を老人が奇妙に思いながらフードで隠れた顔を見た。

「お前さん・・・いったい・・・」

 老人が聞こうとしたその時、二人の視界に3人ほどの男に追われる赤毛の女性が目に入った。

「あれは!?」

「グリムん所の下っぱか。あんなのに目をつけられるとは、気の毒に・・・」

「助けないと!」

「いかん!グリムはここら一帯で幅を効かせとる質の悪い集団じゃ!手を出せばただじゃ・・・おい!」

 フードの人物は老人の制止を聞かずに走り出した。






「もう逃げられないよ、お嬢さん」

赤毛の女性は3人のチンピラに路地裏に追い込まれてしまった。

チンピラの一人が顔を近付けると、女性は怯えた様に瞳を潤ませる。

「お、お願いします・・・許してください・・・」

「そう言うなよ、あんたみたいな可愛い子の連れてけばボスも喜ぶんでな・・・悪く思うなよ」

「なあ、ボスに渡す前に俺らでつまみ食いしねぇか?」

「へへ、バレねぇようにやれよ?ボスにバレたら値が下がるって半殺しにされっからな」

下品な笑いをしながら、チンピラは女性に手をかけようもする。

「待て!」

 チンピラ達が慌てた様に振り向くと、先程のフードの人物が立っていた。

「なんだてめぇ?」

「その人を離してください」

「は?馬鹿かお前?」

「俺らがグリム一家って知らねぇのか?」

世間知らずの正義感が来た…と面倒そうに思いながら、チンピラはナイフを手にフードの人物に睨みを効かせる。

「まあいいか、見せしめにぶちのめすとすっか」

「ひひ、一人で来た事をたっぷり後悔させてやるよ」

 ジリジリと近付くチンピラ達に、フードの人物はふっ・・・と小さく笑った。

「そちらこそ見通しが甘いですよ・・・本当に僕一人だと思います?」

「なんだと?」

 動揺するチンピラ達を見て、フードの人物はチンピラ達の後ろに視線を送る。

「今の内に彼女を!」

 その言葉にチンピラ達が慌てて振り向く。

すると赤毛の女性が慌てて首を横に振って誰もいないと否定した。

「おい!はったりこいてんじゃねえぞ!?」

 こけにされたと怒りチンピラが再び向き直った瞬間、フードの人物は素早くチンピラの間をすり抜け、女性の手を取った。

「こっちです」

「は、はい」

 突然の出来事に女性はフードの人物に引っ張られ駆け出す。

「あ!こらてめぇ待ちやがれ!!」

 獲物を盗られたチンピラ達は二人の後を追って駆け出す。

 フードの人物は走りながら後ろに手をかざす。

 すると黒い炎の玉が放たれ、地面に落ちると壁の様にチンピラ達の行く手を遮った。

「な!?なんだこりゃ!?」

「ひぃぃ!!く、黒い炎!?」

 混乱するチンピラ達の様子に呆然もする女性に、フードの人物が「今の内に」と駆け出す。

 女性が従い一緒に走り出すと、フードが外れ、黒髪の少年の顔が見えた。

 女性は一瞬その顔に見詰めると、そのまま少年と路地裏から逃げ出した。






 路地裏から逃げた二人はチンピラ達が追って来ないのを確認すると、ホッと一息をついた。

「もう・・・追って来ないみたいですね・・・」

 少年は息を切らせながら女性に向き直る。

「大丈夫ですか?どこか怪我はありませんか?」

「ええ、大丈夫です・・・私はリナ・・・と言います」

「僕はノエル。よろしくです」

 自己紹介しながら、ノエルはリナを見た。

 短い燃える様な赤い髪に黒い瞳、チンピラが目をつけただけあって綺麗な顔立ちをしていて、おしとやかで優しい雰囲気の女性だ。

 リナもノエルを改めて見ると、透き通る様な青い瞳に闇を思わせる漆黒の髪、凛々しいというより可愛いという言葉が似合う顔立ちをしている。

 恐らく15、6程度なのだろうが、その顔立ちのせいで何となくもう少し幼く見える。

「あの・・・さっきは助けてくれてありがとうございました」

 笑顔で礼を言うリナに、ノエルは少し照れた様に頬を赤らめる。

「いえ、気にしないでください。さっきの人達は?」

「グリム一家と言って、この辺りでは有名な悪人達です。ノエルさん、ここは初めてですか?」

「うん、少し旅をしていまして…」

「そうなんですか。でもさっきは凄かったですね。私、黒い炎なんて初めて見ました」

「いや、あれはそんな大したものじゃなくて・・・それにすぐ消えますし・・・」

「それでも凄いですよ。ノエルさんは、ここには魔法修行で来たんですか?」

「ん・・・ちょっと人を探してて…」

「人・・・ですか?」

「そう、人。早く見付けないといけないんです・・・」

 深刻そうなノエルの表情に、リナは少し考えると口を開いた。

「あの・・・もしよければ、何か手伝いましょうか?」

「え?手伝い・・・ですか?」

 突然の申し出に驚くノエルに、リナは頷いた。

「ええ、助けてくれたお礼もしたいですし、何か役に立てるかもしれませんよ」

 笑顔で言うリナに、ノエルは悩む様に頬をかくと「絶体他の人に話さないなら・・・」と了承した。

「勿論です。それで、どんな人なんですか?」

「人・・・というか、人達というか・・・」

 どこか躊躇いながら、ノエルは意を決しリナに話し出した。

「僕が探しているのは・・・五魔(フィフス・デモンズ)なんです」

「・・・え?」

 今度はリナが驚き、言葉を失った。

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