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2話

「僕の奢りだから、何でも好きなものを頼むと良いよ。」

ナギサは喫茶店内のシックなテーブル席に座るよう2人に促す。

「本当に良いんですか? こんな高いところ……」

席についた、ついりは恐れ多く、店内を見渡す。

店の天井からは控えめな明るさを放つアンバー系の円錐形の照明器具が幾つもぶら下がり、テーブルや壁紙は暖色系で統一されていて落ち着いた内装になっている。

「えっ、高い……」

ついりの横の席に座り、メニュー表を見た秋沙が言葉を漏らす。

「これから、僕の話に付き合ってもらうんだし当然のことだよ。」

ナギサは店内のBGMと同調しているみたいに穏やかな表情を見せる。

「2人共…… 頼みたいやつは決まった?」

ナギサはメニュー表と長い時間にらめっこをしているついり達の様子を伺う。

「はい……」

ついり達は同期している機械かのように、ほぼ同じタイミングで頷く。

「それじゃあ……」

ナギサは微笑すると、店員の方を向き軽く手を挙げる。

「お待たせ致しました。ご注文の品はお決まりですか?」

黒のパンツと白のブラウスを着た若い女性店員が3人が座るテーブルに歩み寄る。

「えっと、僕は抹茶のロールケーキとエスプレッソのtallをドッピオで、それに持ち帰り用に抹茶のマフィンケーキをお願いします。」

ナギサはメニュー表を見ることなく、店員に伝える。

「かしこまりました。」

店員は軽く頭を下げたあと、ついり達に目線を向ける。

「じゃあ、私は夏みかんとマンゴーのフルーツタルトにアイスカフェラテのtallで。」

秋沙はメニュー表との決着が着く。

「秋沙ちゃん、tallってどういう意味?」

未だに、メニュー表とにらめっこしているついりに新たな疑問が浮かぶ。

「S・M・LのMサイズっていう意味。それで、何を注文するの?」

秋沙はついりが持つメニュー表を覗き込む。

「えっと、ミックスベリーとチーズケーキのパフェにアイスティーのtallをお願いします。」

ついりはようやくメニュー表を閉じる。

「では、少々お待ちください。」

メニュー表を回収した店員は客席からも見えるキッチンに戻るともう一人の店員にオーダーを伝えている。

「改めて、自己紹介させてもらうよ。僕の主な仕事は【Chevalier】の代表として各地からのゲシュペンストの討伐依頼を精査して、引き受けるか否かと優先順位を判断して小隊長に伝えることなんだ。」

ナギサは店員がテーブルに置いていったコップに入った水を一口飲み、話を進めようとするが……

「すいません、Chevalierってどういう組織、何ですか?」

秋沙が怪訝な顔を見せる。

「関係者ならともかく、普通の高校生が知らないのが当然だよね。まだ、創設してから5年くらいしか経ってないし。」

ナギサは、あはは……っと苦笑したあと話を続ける。

「特殊能力遊撃部隊。つまり、特定の地域だけを警備している能力(スキル)保有者達とは違って、各地の状況に対して臨機応変にかつ、迅速に対応することを主眼にした組織なんだ。」

ナギサはついりに目線を向ける。

「そうなんですか。」

ナギサと目が合ったついりは慌てて返事をする。

「失礼します。お待たせ致しました。」

女性店員が3人の注文の品を持って、テーブル席にやってくる。

「以上でご注文の品は揃いましたでしょうか?」

テーブルにスイーツ達を置いた店員が確認する。

「はい、ありがとう。」

ナギサは明るく返事をした後、店員に向けて笑みを返す。

「あっ…… はい、それでは失礼します。」

ナギサの表情にハッ! とさせられた店員は我に返ると戸惑いながらキッチンにスタスタと戻っていく。

「夏みかんは水々しくて、生地もサクサクで美味しい♪」

1500円もするタルトを頬張る秋沙からは感嘆の声と至福の表情が生まれる。

「パフェも美味しいよ♪」

1800円もするパフェを頬張るついりの瞳もキラッキラとしている。

「それは良かった。」

ナギサは喜ぶ2人の様子を見ると、2000円するロールケーキを淡々と堪能していく。

「それで、話を戻して良いかな。」

ナギサはエスプレッソの香りを楽しみつつ、一口飲む。

「あっ、はい。」

我に返った2人はシャキッ! と背筋を伸ばす。

「それで、率直に言うと、朝宮さんには

Chevalierに加わって貰いたいんだよ。お願い出来るかな?」

ナギサはついりに対して、面と向かって頭を下げる。

「えっ…… 私、能力(スキル)を持っていない【第五位(フュンフト)】ですよ?」

ついりはナギサの話に全く理解が及ばず、どぎまぎする。

「毎回、朝宮さんに渡されている結果は真実と異なっているんだよ。」

ナギサはやれやれといった、表情を見せつつ話を続ける。

「実は、朝宮さんは【第一位(エーステ)】なんだよ。」

ナギサはそう伝えると、紺色のパンツのポケットから名刺程の大きさの紙を取り出す。

「うそ…… 本当ですか?」

自分自身の氏名と能力(スキル)判定(ジャッジ)第一位(エーステ)】と書かれた文字を見た、ついりは驚きを隠せないと同時にある疑問が浮上してくる。

「どうして、結果を偽造されていたのっていう顔をしているね。」

ついりの表情から、ナギサは疑問を言い当てる。

「あっ、はい。」

図星のついりは短く返事をする。

「能力判定の結果は全て、オカサトミヤ本部のPSC部門に報告されていて、能力保有者として素質のある人物を把握しているんだよ。」

ナギサはワンテンポの間を明ける。

「本来は本部から各支部のPSC部門に対して、人材の割り振りが伝えられて、支部の人間から能力(スキル)保有者に契約内容を伝えて是非を問うんだよ。」

ナギサは更に続ける。

「それで、当然、朝宮さんの結果も四国支部に伝えたんだよ。でも、その四国支部には農作物の生産ノルマを長年、達成出来ていないという問題が有ったんだよ。」

ナギサはエスプレッソを更に飲む。

「それで、支部は朝宮が農家の娘であるところに目を着けたわけですね?」

合点がいった秋沙が合いの手を入れる。

「そうなんだよ。僕がChevalierの新しいメンバーを集めようと能力保有者の候補リストを見直していた時に気がついて、それで今に至るって感じかな。」

話終えたナギサはついりを見つめる。

「それで、私にChevalierに入って欲しいというわけですね?」

ついりは戸惑いながら確認を取る。

「ああ、もちろん強制じゃなくて朝宮さんの自由意思だからね。」

ナギサはどぎまぎしているついりを見て補足する。

第一位(エーステ)ということは、それなりに給料が良いわけですよね?」

考え込んで黙ってしまっているついりに代わり秋沙が聞く。

「うん、まあね。でも…… 相応のリスクを背負うことに繋がるのも事実だよ。」

ナギサの真に迫る声は緊張感と恐怖感を放っている。

「小野さんは地元の警備希望で申請書出してたよね。支部にも念を押しとくからね。」

ナギサの声は明るく気さくな雰囲気に戻る。

「はい、ありがとうございます。」

秋沙は嬉々とした表情を見せる。

「少し考えさせてもらっても良いですか?」

そう告げた、ついりはまたしても黙る。

「もちろん。最後に僕から言えることは…… 君は何を望み、君自身の力で何を叶える為に、必死になりたい?」

ナギサはYシャツの胸ポケットから名刺ケースを取り出すと名刺をついりに渡す。

「僕にとって良い返事、悪い返事、に関係なく連絡くれると助かるよ。」

ナギサは再度、笑顔を見せる。

「はい、分かりました。」

ついりは名刺を受け取ると、アイスティーを飲み干す。

「もう、こんな時間かあ…… 僕の話はこれで終わりだけど、何か質問はある?」

ナギサは一度、腕時計に目線をやったあと2人に確認する。

「いえ。宇治橋さんのおかげで美味しいスイーツを食べれましたし、今日はありがとうございました。」

秋沙は笑顔を浮かべ、ナギサに感謝する。

「はい…… 私も大丈夫です。今日はありがとうございました。」

ついりも感謝の意を伝える。

「喜んでくれたみたいだし、こっちもご馳走した甲斐があったよ。気を付けて、帰ってね。」

ナギサは軽く頭を下げる。


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