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1話

ー yesterday after school ー


「相変わらずかぁ……」

一学期末テスト、総合順位180人中92位と可でも不可でもない成績に憂鬱になっている少女の名前は朝宮ついり。

ゆるふわのショートヘアーのついりは成績だけではなく、見た目もこれといった特徴がない、平凡な高校3年生である。

ついりは視線を成績表から名刺程の大きさの用紙に視線を変える。

「こっちも当然、変化無いよね。」

視線を移した用紙にはついりの名前と能力(スキル)判定(ジャッジ)

第五位(フュンフト)】とだけ、印字されている。

2枚の紙を印刷面を伏せるように机に置いた、ついりは短い溜め息を吐くと左頬が机と触れるように伏せる。

学校の教室内には、友達同士で談笑したり、下校の支度をしている生徒達がいる。

「なに、朝宮はまたぼやいてるの?」

意気消沈しているついりとは対称的に、見た目も声も明るい小野秋沙がついりに話しかける。

「うん…… 秋沙ちゃんはどうだったの?」

ついりは顔だけを上げて、自身の席の前に立つ、秋沙に視線を向ける。

「私も、両方ともいつも通りだったし、朝宮も気にする必用ないんじゃない。」

秋沙は制服のブラウスの袖を腕捲りした右手で、ついりの頭をポンポンっと軽く叩く。

「秋沙ちゃんは良いよね…… 私より順位が上で、それに【第四位(フィアート)】だし。」

ついりは膨れっ面を見せたかと思うと、次の瞬間にはがっかりした表情を浮かべる。

「い、いや…… アイツらと戦えるって言っても、所詮は第四位(フィアート)だよ。」

秋沙は屈み、ついりとの目線を合わせて、言葉を続ける。

「それに、成績だったら綾音には敵わないよ。」

秋沙はついりとのやり取りを隣で見ている、ぽわっとした雰囲気を漂わす高瀬綾音を話題に出す。

「そんなに凄くないよ、私が出来るのは勉強くらいで、体育とか運動系は2人には及ばないから。」

綾音が謙遜し、首を振ると、その動きに釣られてパーマがかかった長い黒髪が揺れる。

「またまた〜」

ついりと秋沙の声がハモる。

「それで、これからどうする?」

立ち上がり、体勢を戻した秋沙が2人の瞳を一瞥する。

「う〜ん、テストも終わったことだしファミレスにパフェ食べに行こうよ。」

上体を起こしたついりは、さっきまでとは打って変わってキラッとした表情を見せる。

「私、今月のお小遣いピンチなんだよね……」

綾音が難色を示す。

「それに、ファミレス高いじゃん。流石、農家の娘はお金持ちですな。」

綾音の意見に賛同した秋沙がついりを茶化す。

「そんなことないよ、私だって最近、食べてないよ!」

ついりは慌てて弁明する。

「分かってるって。もう、冗談だよ。」

秋沙と綾音はついりの様子を見て微笑む。


ーーーーーー


「いつもありがとうね。」

駄菓子屋の店主である初老の女性はか細い声で礼を伝える。

「うん、また来るね。」

ついり達は夕日に照されオレンジ色に染まる道を帰る。

鋪装された道路に沿って流れる川からはせせらぎ、小さな町を囲むように佇んでいる山々からは蝉の騒がしい声が聞こえてくる。

「今日も、暑かったね。」

ついりは小豆がたっぷりと入った硬いアイスをかじる。

「ホントだよ、雨は降っていないのに降ったように錯覚するしね。」

秋沙は柚子サイダーと共にガラス瓶の窪みに収まっているビー玉を転がす。

「ですよね、あの霧が無くなったら体感温度も下がるはず。」

綾音は柚子サイダーを一口、飲むと山の向こう側の景色を遮断している白い幕に目線をやる。

「ねぇ、もうちょい涼しくなるまでここで休んでいかない?」

秋沙が指差した方向には、木陰に覆われた神社がある。

……

3人は神社の本殿の脇にある青いベンチに横一列で座り、談笑して時間を潰していく。

「そう言えば、ついりと綾音は進路希望出した?」

秋沙が上体を軽く曲げ、2人の顔を覗き込む。

「うん、看護専門学校希望って書いたよ。秋沙は出したの?」

綾音は直ぐに応える。

「うん。オカサトミヤのPSC部門に能力(スキル)保有者として勤務希望って書いて出したよ。」

秋沙も直ぐに応える。

「それで、請負人の菊川君と一緒にこの町を守るんでしょ?」

綾音は笑みを浮かべながら秋沙に聞く。

「もう…… そうだよ、この町の平和は私と優希がバッチリ守るから大船に乗った気持ちでいてくれて構わんよ!」

秋沙は照れを隠すように大口を叩く。

「ついりは農家を継ぐんだったっけ?」

綾音は慎重についりに聞く。

「う〜ん…… お姉ちゃんが家を継ぐ為に、大学で農業について勉強しているし、まだ分からないかな。」

答えを濁す、ついりが言葉を続ける。

「2人はやりたいことが決まっていて凄いよね。」

ついりは2人に対して感心と羨望が入り交じった表情を見せる。

「私は自分に出来るベストは何かを考えて、尽くそうとしているだけだよ。」

秋沙は声をワントーン下げて応える。

「私も同じ感じだよ。人の為に、出来ることを選んだだけだよ。」

綾音も秋沙の声に同調するように、続けて応える。

「そっか…… ありがとう。もう少し考えてみるね。」

ついりは親身に応えてくれた、2人の親友に感謝する。

「うん、焦らなくて良いよ…… 涼しくなったし帰ろっか?」

ベンチからひょい! っと跳ぶように立ち上がった秋沙はついり達の方を振り向く。

……

神社を出た3人は太陽が沈みかけて、暗くなり始めた帰り道を歩いていく。

そして、左右に枝分かれしたY字路に差し掛かると、立ち止まる。

「私、こっちだから。また、明日ね。」

綾音が2人に挨拶する。

「バイバイ!」

「うん、また明日ね。」

ついりと秋沙は手を振ると右の道に足を進める。

綾音も手を振り返すと左の道を進んでいく。

……

談笑しながら下校するついり達の前に、1台の黒塗りの高級車が見えてくる。

ついり達が高級車の横を通りすぎようとした、次の瞬間。

「朝宮ついりさんと小野秋沙さんですね?」

若い男性が高級車から降り、ついり達に話しかける。

「はい、そうですが……」

振り返った秋沙は怪訝な顔を、若い男性に向ける。

ついりも振り返り、立ち止まる。

「初めまして、私、オカサトミヤPSC部門所属の特殊能力遊撃部隊【Chevalier(シュヴァリエ)】の代表を勤めています、宇治橋ナギサと申します。」

ナギサは白銀の短髪と色白な肌といった外見からは想像出来ないくらいの気さくで明るい声で自己紹介する。


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