世界は驚きで満ち溢れている! ⑦
今回は4000字くらいで更新。
前ロクヤ君は何ですぐ仲良くなったの?とか言われたんですけど
まぁ、ロクヤ君はフレンドリーな部分があるんですよ、たぶん。
別に人を嫌っている訳ではなく自分の種族を嫌っているので基本的に誰とでも仲良くなれます。
ですが、自分の種族をからかわれるとその人の事嫌いになります。
全部をまえがきで説明するのは無理なので簡単に説明してみました!
そういえば、どうでもいいけどローソンでファミチキ頼んで来る人がいました。
⑦
俺とセレアは装備を整え、鍛冶屋と服屋の店を経営している、あっち系じゃないかと俺だけが疑っているガスから離れた。
外に出ると、人が大勢右往左往に行き来している。
先程の壁の破壊事件のせいで街の人々が一つの場所に集まっていたからなのか、先程ネルセマ達と喫茶店に居た時は人が全然通らなかったので、騒ぎが収まったのか改めて観た光景に驚きを隠せない。
「あ、あああ……人が多いな」
「そりゃそうですよ、街ですから」
当たり前、と壁の破壊事件の犯人セレアは言ってくる。たぶん、壁の事は忘れている。
「で、どうするんだっけ。何かやる事があったような――」
俺が最後まで言おうとした瞬間、また、言葉を遮ってセレアは言葉にした。
「だからクエストですって!」
「だ、だよね~……はい、ごめんなさい」
いや、怒る気持ちはわかりますけど、せめて話を全部聞いてから言葉を返してくれませんかね?
何回か言葉を遮られてるんでそろそろキレる頃かもしれないぜ?
と、心の中で強気でいたが本当に心もステータスも弱いので何故か逆らえない自分がいた。先程の嬉しい言葉をかけてくれたせいか、そのせいでもあるのかもしれない。
「ロクヤさん、何で見てるんですか? 私の顔に何か付いてますか?」
おっと、無意識に顔を見ていたらしい。何故か照れくさくなり目を逸らす。
「あ、あ、いや……! 悪い! ちょっとボーっとしてた」
苦笑いで謝りながら返すと、何かにひっかるのか俺の言葉に納得していないような顔をセレアはしていた。
「んー……まぁ、いいですけど。よし! クエスト受注しにまずは冒険者ギルドに向かいましょう! あ、あとギルドの入会申請ですねー! ロクヤさんも認めてくれた事だし。さぁ、行きましょうか!」
冒険者ギルド 集会場。酒場とも言う。
冒険者が暮らしていけるにはとても必要な場所の一つだ。
人がクエストを発注し冒険者はクエストは受注する。そのクエストをを達成すると発注した人から額を貰える。
また、ギルドを創りたい、だとかギルドに入りたいだとかの申請もこの冒険者ギルド一つで何でも出来る。
歩く事数分。
冒険者ギルドは賑わってきた。
「あああ……ここも凄いな」
「昼だからが人が多いんですねー。色々なギルドへ捨てられたからなのか、常連になってわかっちゃいましたよ、いつ人が来るか、何時に特定の人が現れるだとか」
「はい、お疲れ様」
「もうちょっと慰めてくれません!?」
「いや、正直さ……だから? としか思わないんだよね……かなりどうでもいい」
「い、いや、え? ロクヤさんって結構酷い性格の人ッ?」
うるさいなぁ。
そんな会話をしてるその時だった。日の当たる場所へといる俺達の影が俺達の何倍も大きくなった。
「っ!? 太った!?」
「この短時間で何があった俺!?」
「おいっ、そこのチビ共」
俺達の後ろから、正確に言うと"上"から重々しい声が聞こえた。
「デカッ!」
俺は驚きで思わず声を上げてしまった。目の前には自分の身長を遥かに超える大男がいた。二メートルあっても可笑しくない程の身長だった。
「ん~、何だテメェ、見ない顔だな」
その言葉を聞きビクッ、と体が震える。すると、その大男の後ろに五人程いる人数から一人が声を上げた。
「お?……ギィメスさんギィメスさん、こいつもしかして、さっき壁を破壊したとかで噂になっていた紅魔族の男じゃないですか? でも、ネルセマの野郎が「ここは僕に任せて! 僕が正義の鉄槌を下すよ!」とか言ってあいつが引き取ったって聞いてたんですけどぉ、可笑しいですね。何でこんなところに……?」
……くそ、あの野郎。ていうか壁破壊したの俺じゃねぇよ! 誰、誤報流したの!?
「ほぉ……お前があの絶滅危惧人族の紅魔族か……でも、紅魔族の割りに強そうに見えねぇな。小っさいし」
弱いのは事実だけど最後のは余計です。
「ギィメスさんお久しぶりですー!」
隣から嬉々して声を上げるセレア。そういえば全部の募集ギルド回ったんだっけ。ギィメスとか言う奴のとこも募集してたんだな。毎日のように通ってたようだし、知り合いになっていても当然なのかもしれない。
そんな事を考えていたその時だった。
「え……せ、セレアちゃん……!? な、何で……ッ!?」
また驚きを隠せない。何でこう、展開がちょいちょい早く変わってるんですかね? さすがに頭が追いつかないぞ?
ていうか何でセレアを見て驚いてるんだ。バケモノを見てる訳じゃあるまいし。
「いや、毎日来てますし、いるのは当然みたいなものなんですけど」
「い、いや! あ、あの時確かお前は……」
混乱しているようだ……え? 何? 俺の知らないとこで何が起こってたの?
気になる。気になり過ぎてセレアの耳元に声をかける。
「!? んッ……ッ! あふっ……」
耳元に声をかけたせいか、何かエロい声が聞こえたんですけど!
「ん、ん? どうしたセレア? お前まさか発――ちょ、い、痛い! やめてっ! 何で弓で殴るのッ!?」
顔を真っ赤にして威嚇してくるセレア。こちらを見て警戒してるようだ。
「ふー……はぁ。あ、そういえばギィメスさん、何か言いかけてたみたいですけど……」
落ち着いたようだ。そういえば、確かにギィメスとか言う奴、何か言いかけてたな……。
「それ、めっちゃ気になるんだけど……」
ギィメスは俺達を丸い目で見つめ――また俯いてしまった。一体何があったのは見当がつかない。そんなギィメスを見て真剣な表情になる俺だが一方隣のセレアも真剣な表情をしている。
思い出せよ。何か怖がるこ――。
その時だった。
俺の記憶に一つの記憶を思い出した。
壁。……破壊……まさか?
魔法の強さで危うく殺しそうになっただとか、ギィメス達を危ない目に合わせてしまったのか?
「せ、セレア……。お前一体何やったんだよ……」
「ご、ごめんなさい。私を捨てた人だったから、要らない記憶は数日すれば自動的に忘れてますから……」
「便利な脳みそだな」
「ありがとうございます! さすがロクヤさん!」
もういいや。
「ぎ、ギィメスって言ったっけ? だ、大丈夫か? 一体何があったんだよ……」
「……ッ!? お、お前か……ビックリさせんじゃねェよ」
「わ、悪い」
「まぁ、良い。心配かけて悪かったな」
いいよ、と返答すると、ギィメスは意を決したように俯かせていた顔を前に向ける。
「わかった、話す。実はな――俺は驚いていたんだよ」
まぁ確かに驚いていたが、怖がっているようにも見えたけど。どりらにせよ、本人が答えようとしてるんだ。何故セレアを見た時驚いていたのは全く訳がわからないが――恐らくセレアが何かやらかしたんだろう。こいつら危険な目に遭う程の。
「…………驚いた? 私を見て……ですか?」
「あぁ……」
セレアにはまだわからないらしい。
「セレアちゃん、ギルド入会テストみたいで、俺達のギルドとクエストに行ったの覚えてるか? あの時の事は忘れたくても忘れないな。何せこの俺達が死に掛けたんだからな、八ッハハハハハハッ!」
いや、笑えないよ。
でも、危険な目に遭ったのは確かか。
そういう事か、あいつが断れ続けられた理由はこれか。
「あはは、じゃあ、さっきのは危険な目に遭わされた奴に会ったから、再びセレアを見た時怯えていたのか?」
「ん……あぁ、いやあれは、セレアちゃんの髪型がロングヘアじゃなくなっていたから気が動転していただけだ、悪りぃな心配かけて貰って。へっ、心配されるとか久しぶりだぜ」
は? 髪型? 何だこいつ喧嘩売ってんの?
「喧嘩売ってんのか?」
遂、口に出してしまった。
ギィメスに続き後ろにいた数人の冒険者、恐らくギィメスのギルドの仲間達が騒がしい。
「セレアちゃん髪切ったのかぁ。ロングの時も可愛かったけど今もめっちゃ可愛いからいっか」「いや、セミロング? 俺は今の髪型よりロング派だわ。ロングには男の夢がいっぱい詰まってる。すれ違う時靡く髪にエロスを感じさせる」「僕は今の方が好きかな! 顔立ちが良いからね! どんな髪型でも似合うよ! 襲いたいぐらいだね!」「てめぇら、うっせぇぞ! セレアちゃんの髪型は断然ポニーテールだろうが!」
……外野がうるさい。
苦笑してる俺とは裏腹、セレアを見ると――詠唱を唱えていた。
「は!? は!? ちょ、セレア、怒る気持ちはわかりますけどここで魔法を使うのはやめよう!? 怒りで魔力使い果たす程全力で魔法使う気だろ!? 絶対そうだろ!? このあとまた俺巻き込まれるの嫌ってのもあるんだけどッ! セレアさんお願いしますマジで止めてください。お願いします、お願いします」
「ご、ごめんねセレアちゃん!」「お、おい! お前も謝れよ! お前エロスとか言ってただろ!」「え、え、ああ! え、エロい女神なんて言ってごめんなさい!」「ちょ、ちょっと! エロいとか女神まで言ってないよぉ!」「俺は謝らない。真実を言って何が悪い?」
「「「謝れよ!?」」」
ギィメスの後ろにいるバカ共を何とかしなければいけないが、ここは、まず無理やりでも止めなければ。
止めなければ――死ぬ!
「よし、セレア! クエストに行かなくてもギルドだけ入る事にしよう! クエストってまず面倒じゃん!? そんな事しなくても入れるんだし良いよな! あ、お菓子とかアイスとかもいっぱい買ってやるよ!」
所持金、貯金、共に残高ゼロだが、嘘をついてまで止めなければッ!
俺は先程セレアが魔法を使ったせいで酷い目に遭わされたからな。同じ事が続くなんてごめんだ!
「……っく、ま、まぁここはロクヤさんに免じて逃してあげましょう」
お前ちょろいな!?
俺がセレアのちょろさに驚いていると、先程から静かにしていたギィメスが口を開いた。
「ハッハハハハハ! まぁセレアちゃんの体や顔はここの街の男達からすりゃあ大好物だしこうなるのも無理はないだろうぅ、セレアちゃんは知らないと思うが街では女神って呼ばれてんだぜ? マニアックな奴らの中には~女神とかあるけどな。でも魔法の力が強すぎてるため、あまり近づかないようにして遠くから見て自分の都合が良いセレアちゃんを頭の中で――」
俺は拳を全力で振りかぶった。
「こんの変態がああああああああああああッ!」
ギィメスは巨体にもかかわらず三メートル程大きく振りかぶった拳で飛ばされた。
「「「ギィメスさあああんッ!?」」」
「おおおおッ! ロクヤさんすごいッ!」
………………あ。