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その名も魔王リーナリア

試しにさらさらーと書いてみたら意外としっくり来ました。

私はこんな会話ペースの小説が好きみたいです。


男従者に幼女主人が翻弄される内容ですがお楽しみください。

 突然だがこの世界には魔王と言う存在がいる。

 魔王とは文字通り、自分勝手に暴れる強硬な魔族をも束ねる王。

 その存在とはさぞ立派な姿なのであろう……。



「ヘイムー? こらヘイムダル返事をしなさーい!」

 禍々しいオーラを解き放つ程の椅子に座った小さな女性。

 いや、幼女と言うべきか。

「誰が幼女だー!」

 小さな女性は幼女と図星を言われ、足をバタバタと暴れさせる。やはりその見た目は誰が見たとしても幼女そのものにしか見えない。


「こら、ヘイム! 変な解説入れるな! それと私は幼女じゃなくてまおー様よ!」

「ほう。ぱおーん様と?」

「ちっがーーう!! 小さい見た目の事ならともかく、私はどこからどう見ても美女でしょーがー!」


 スゥッと影の色が強くなると、いつの間にそこに現れたのだろう。そこには【ヘイムダル】と呼ばれていたらしき人物が立っていた。その姿は、凛々しい整った顔つきに短い銀髪。そして褐色肌……何よりも目立つのはその耳。一般的な耳とは違い、長く伸びたその耳は魔族の証であった。


「ふ、幼女たるもの。冗談も言うのだな。ぶふっ、美女とか……」

「ぬがーーー!! なんで笑うーー!」

 ヘイムダルの凛々しかった顔が一気に崩れた。まるでぷくっと膨れ上がった河豚のような顔で笑いを堪えていた。

 そのヘイムダルに対して先ほどから怒っているのは、禍々しいオーラを放ってた椅子に座る流れる金髪に立派な角の幼女――そう、彼女こそがこの世界で魔族を束ねる魔族の王様【リーナリア】だった。


「にして、ナリアは私に何用か?」

 ヘイムダルは先ほどとは一変し、キリリッと言わんばかりに真面目な顔に戻る。

「ちーがーうー! その呼び方は止めろって言ってる! 私にはサタンって言う名前があるんだ!」

「いえいえ、リーナリアじゃないですか名前」

「魔王っぽくないから、いーやーなーのー!!」

 ぎゃあぎゃあとリーナリアが玉座の上で暴れるが、ヘイムダルは一切動じなかった。それは日ごろからこのような魔王なのだ。

「それを言ったら、そもそも私のヘイムダルと言う名は神の名では?」

「う、うるさーーい! お前が名前無いって言うからかっこいいのつけてあげたのにぃ」

「はい、大変ありがとうございます。属性としては正反対の名になってますが」

「きーーー! 絶対嬉しがってない、その顔はーー!」

 リーナリアは暴れるだけ暴れると、荒い息をふーふーと吐き呼吸を整えた。

 そしてヘイムダルは漫画を読んでいた。


「って、漫画を読むなーー!」

「ええ、わかってますとも……(ページを捲る)ぶふふっ」

「こらー! 話をきーけー!!」

 リーナリアが癇癪を起こしながらもヘイムダルを叱るが、ヘイムダルは何事も無かったかのようにそのまま漫画を読んでいる。

 そんなヘイムダルの姿に怒り心頭のリーナリア。

「もう、怒った……へんしーーん!!」

 ピカッと当たり一面眩しいぐらいにリーナリアの体が光り輝いた。そして次の瞬間リーナリアの肉体が成長していく。そしてとても幼女とは呼べないほどの今や立派な美女の姿となっていた。


「ヘイムダル? もう一度言うけれど話を聞きなさい」

 もはや大人と言うべきだろうか、変身したリーナリアはまるで別人のようだった。しかしこれが本来の姿であり、先ほどの幼い体の方が間違っているのだ。

 そんな真の魔王の姿となったリーナリアの前、ヘイムダルもその場に跪く。

「はっ、何なりと……」

 その力はリーナリアだけでなく、ヘイムダルの態度までもを一変させてしまった。

「お前は私のなんだ?」

 そう、リーナリアがヘイムダルに問うと。

「私ヘイムダルは、魔王リーナリア様の犬です」

 驚くべきなことに、ヘイムダルは先ほどの態度を一切見せないぐらいの従属っぷりだった。

「そう、なら――」

 リーナリアが次の言葉を言いかけた瞬間。

 ポシューと、空気が抜ける音がするとリーナリアは小さき姿へと戻ってしまった。

「なら、私の言う事を聞くのよ」

「誰が聞くかこのロリータめ。ぺっ」

「あああーー!! 唾吐いたーー!!」

 リーナリアの姿が戻ると同時に、ヘイムダルの態度まで戻っていた。

 だが、それでも諦めないリーナリアはこほんっとわざとらしく咳き込むと、もう一度ヘイムダルに向かって問う。

「ヘイム! あなたは私の何?」

 これは先ほどの問いだ。そしてヘイムダルは犬と答えたが――。

「……(また漫画を読み出す)ぶふふっ」

「むきーーっ!!!」

 やはりと言うべきか、こちらの姿のリーナリアには微塵も従うつもりも無いらしい。


 ―トントン、と扉がノックされた。

「なーに? 今取り込み中ー。ってこら、ヘイムダル勝手に開けるんじゃない!」

 リーナリアが今言ったとおり、ヘイムダルは魔王であるはずのリーナリアのことを完全に無視して扉を開けていた。

 そして、扉の外に居たのは俗に言うオークと言う存在だった。

 オークの体はとても巨体で、その皮膚の色は君が悪いほどに緑色に染まっていた。そしてオーク独特の分かりやすいとも言える豚の鼻に牙。とてもではないがリーナリアやヘイムダルが勝てそうには一見見れない。

 しかしリーナリアもヘイムダルも見た目通りの強さではない。


「ヘイムダル様。例のことでご報告が……」

「と言うことは悪い知らせか」

「こらーー!! 私を無視するなーー!!」

 ヘイムダルとオークがこそこそもにょもにょとリーナリアには聞こえない小声で会話をし始めた。それを見たリーナリアはまたも暴れているが、最後まで玉座から降りることは無かった。

 そして良い知らせならばリーナリアの耳にも入るよう決まりごとがあるため、このようにリーナリアの耳に届かないように話すことは従って悪い知らせと言うことだ。


「勇者達によってナンジャ南のコリャー街が占領されました」

「そうか、むしろその地名がなんじゃこりゃーだな……」

「は? それで、先発隊が先ほど――」

 もちろんその名前を決めたのは言わずもがなリーナリアである。


「ふむ分かった。こちらから新たに派遣しておく」

「はっ!」

 オークはヘイムダルに返事をすると、先ほどの扉から外へ出て行った。


「つーーーん」

 先ほどの位置に戻るとリーナリアがご立腹の様子で、分かりやすいようにそっぽを向いて不機嫌そうにしてる。が、しかしその視線だけはちらちらとヘイムダルへ向いている。

 そしてそんなヘイムダルは――。

「静かで和むなぁ……」

 和んでいた。

「うにゃああーー! 私は怒ってるの! これ、怒ってるの!!」

 そんなヘイムダルの態度にリーナリアは怒ってヘイムダルに向かって声を荒らげる。

「おお、そうでしたか。あまりに小さくて気付きませんでした」

「むっかぁぁぁっ」

 売り言葉に買い言葉……いや、この場合一方的に侮辱に当たるのだろうか。

 しかしこのヘイムダルの態度にも慣れているのか、リーナリアは「はぁぁ……」とため息を吐いて怒りを静めた。そして椅子の手すりに肘をついて、その手の甲に顎を乗せヘイムダルに憂鬱そうに視線を向ける。

「ねえなんで私の扱いそんなに酷いの?」

「さあ? なんででしょうね。(漫画のページを捲る)ぶふふっ」

「むぅぅっ! でも、あっちの姿だったら素直じゃーん……」

 グデッとだらしなくリーナリアは姿勢を崩しながらそう呟いた。

 ヘイムダルの方はそれを聞いて漫画本を閉じた。そしてヘイムダルが息を静かに吸った。


「それはですね。リーナリア様の事を心から愛してるからですよ」

「うぇえええっっ!?」

 突然のヘイムダルの告白にリーナリアは椅子から転げ落ちた。慌てて椅子の上に戻るが、突然のことによる動悸は収まらない。

「私のこと、好きなんだ……そうなんだ。えへへへへ」

 よほど嬉しかったのか、リーナリアの顔がにやけている。そして今の言葉が口に出てたことも気付いてないようだった。

 しばらく間をおいて、「よしっ」と、リーナリアは意を決する。


「あのね……私もヘイムのことが!

 ――ことがー……」

 しかし、部屋の中のどこを探してもヘイムダルの姿は既に無かった。

 プルプルとリーナリアの体が震える。

「ヘイムの……ヘイムの……」


「ばかあああああああーーーー!!!!」


 その叫びは、先ほどのオークの件で退席していたヘイムダルの耳にも届いたと言う……。



ここまで読んでいただきありがとうございました。


もっと面白おかしくハッピーにしたいところですね。

優先度が低いため、今後もゆっくりですが投稿していきたいと思っております。

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