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俺が少女になる時に  作者: 山外大河
二章  ハザードサモン編
17/31

1 新装開店

 今回から新章突入です。

 あの特級精霊との戦いから二週間が経過した。

 日曜だからって休みって訳でもないので、今日もギルドに行かなくてはならない。


「じゃ、バイト行ってくる」


 靴を吐き終え、ゆっくりと立ち上がった所で、佳奈が俺に声を掛けた。


「兄貴ってさ、一体なんのバイトやってんの? いい加減教えて欲しいんだけど」


 まあ……流石に教えられないよな。こればっかりは。


「ヒント、時給七百五十円」


「それヒントになってるの?」


 正直に言う。なって無い。

 ていうか俺ってちゃんと時給貰えるのだろうか。

 一応名目上では一億の借金があるわけだから、タダ働きってのも覚悟しないといけない。


「まあいいや……気を付けてね、兄貴」


「おう」


 俺は今日も佳奈に送りだされて、ギルドへ向かって歩き出した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「……にしても、もう二週間か」


 あの後、藤宮は情報屋にあの時の一件の調査を依頼したらしいが、まだ情報は掴めていないらしい。

 つまり状況は何も変わっていない。

 下級精霊を狩りに行ったらオマケで上級精霊が出てくるのは日常茶飯事で、運が悪いと特級精霊が出てくる。

 そんな事態になった時の為に、毎回俺が同行している。

 正直女の子に変身する事に慣れてきている自分が怖い。

 絶対に慣れてはいけないものだと思うんだが……やっぱ慣れてくるんだよなあ。

 そんな事を考えながら歩いていると、隣を白バイが通って行き思わず体が縮こまった。

 原因は俺の腰に有る。


「こっちもいい加減慣れないとな……」


 俺は腰に掛った日本刀に目をやる。

 例の一件の状況が変わらないのと裏腹に、変わったことだって沢山ある。

 その一つがコレ。日本刀型の魔装具だ。

 魔法少女の魔装具は一度使うとエネルギーの充電時間を要するらしく、使えるのは一日一回が限度だ。

 だから下級精霊相手に魔法少女に変身する訳にもいかないので、俺は日本刀の魔装具を携帯している。


「どうせなら藤宮達みたいに、何も無い空間から出せるタイプが良かったのにな」


 俺の日本刀は鞘に入れている限り、魔法具などを使わない一般人には目にすることができない作りになっているが、やはり誰かとすれ違うたびに通報されるんじゃないかとビビる。ビビりまくる。実際にはされる訳がないんだが。

 見えていようが見えて無かろうが、やっている事は銃刀法違反。法律違反だからなぁ。ビビるなっていう方が難しい。


「まさかあの出し入れの効果を付ける魔法具がレアな魔法具だったとはな」


 なんで銃にはあの方法を採用しないんだろうとか考えていたが、ソレを聞いて理解した。

 にしてもまさか俺の分が無いとは……まあ腰に刀を携えるの自体は嫌いじゃないから我慢できるが。

 俺の刀以外にも変わった事はある。

 携帯の電話帳に、佳奈以外の異性の名前が登録されたことだ。

 ていうか機種変した所為で、前の学校の友人たちのアドレスが分からなくなったため、今俺の携帯に登録してあるメールアドレスの半分が異性のアドレスとなっている。

 佳奈に藤宮に中村さんに雨宮さん。

 まさか俺の携帯のアドレス帳に、こんなに異性のアドレスが増える日が来ようとは……転校してくる前の俺には予想もできなかったに違いない。

 あとは、藤宮の怪我が完治したりもしたな。本当によかったよ。

 そしてもう一つ変わったこと……何だか良く分からないが変わっていること。


「え? は……何これ」


 俺は目の前に飛び込んできた建物に絶句した。

 えーっと……俺はギルドにやってきたんだよな。

 表向きではヤクザの事務所って事になっている建物に。

 でもなんだろう……どう見たってこれ……。


「……喫茶店?」


 昨日は精霊が出る予報も無く、臨時に呼び出される事も無かったので、此処には足を運ばず、土曜日をエンジョイした訳だが……俺がいない間に何が起きた。

 ってか本当に此処で合ってるんだよな……なんだか不安になってきたぞ。


「まあ……入るしかないよな」


 俺は扉の取っ手に手を掛け、ゆっくりと開いた。


「……喫茶店だ」


 内装が完全に喫茶店のソレだった。

 ……やっぱり俺、来る所間違えた?

 そう思った時、店の奥から藤宮が姿を現した。

 藤宮が出てきたって事は……ここはギルドと考えて間違いなさそうだ。

 でもどうしてこんな事になっているんだ。


「どう、宮代君。凄いでしょ!」


「ああ……一体何があったんだ」


 俺が尋ねると、藤宮が笑う。


「一昨日に読んだ漫画に喫茶店でバイトするシーンがあって……つい」


「ついでこんな事になるのか!?」


 まあ白○読んでヤクザになる奴だから、この位の事が起こってもおかしくないんだが、この短期間でこれは、なんというか……凄すぎる。

 恐らく……犠牲になったな。折村さん、村上さん、松本さん。及びギルドの男性陣。

 昨日が休みで……本当によかった。


「で、何。今日から営業するのか?」


「いや、一般向けのオープンは明日からよ」


「一般向けは明日からって事は、それ以外は今日って事か?」


 自分で言っておいてなんだが、それ以外ってなんだろう。


「そう。今日は例の情報屋がこっちに成果を報告に来るらしいから、情報を教えてもらうついでに、βテスターになってもらうわ」


「まるでオンラインゲームみたいだな」


 まあ藤宮にとって、喫茶店経営はゲーム感覚なのかもしれないが。


「そういえば村上さんは? 一応あの人の本職な訳だし、開店準備とかやっているのか?」


 あの人、たまには喫茶店の仕事がしたいとか言ってたもんな。

 念願がかなってよかったですね、村上さん。これで今日からマスターですよ。


「いや、村上さんは此処に居ないわ」


「いないって……何処に行ってるんだ?」


 なんだろう。買い出しとかだろうか。


「パチンコよ」


「は? え……パチンコ?」


「そうよ。どうやら今日は新装開店らしいわ」


「こっちも新装開店なんだけどおおおおおおおおおおおおッ!」


 何やってんの本職!

 なんで娯楽施設の新装開店に足運んでんだよ! こっちも新装開店なんだから働けよあの人!


「まあ現役でマスターやってた時から、フラっと店を閉めてパチンコ行く人だったからね、村上さんは」


「潰れた理由それじゃねえの!?」


 不況とかどうとか言ってたけど、単に村上さんの問題じゃねえかソレ!


「一応止めたんだけどね、男には人生の中で、乗り越えなくちゃならない関門が何かしら有るものなんですよ、とか言って出て行っちゃったわ」


「その格言そこで使うのかよ!」


 アンタの人生それでいいのか……働けよ。


「……で、この喫茶店は普通の喫茶店なのか?」


「ん? つまりどういうこと?」


「いや、最近メイド喫茶やら執事喫茶やら、色々とあるじゃん。特殊な店がさ。お前の事だから、そっち方面に手を出したのかなって」


「ん……まあ特殊っていえば特殊ね」


「へえ。どんな喫茶店なんだ?」


「えーっと……」


 藤宮が物凄い照れた様子で、後頭部を摩りながら答える。


「……ヤクザ喫茶」


「特殊過ぎるわああああああああああああああああああッ!」


 なんだよヤクザ喫茶って! 新ジャンル開拓しすぎだろ!


「どうやったらそんな発想に行きつくんだ!」


「だって、昨日までヤクザの事務所だった所が突然普通の喫茶店になるなんて、石○良純の天気予報が一週間連続して的中する位不自然じゃない!」


「それいくらなんでも馬鹿にしすぎだろ!」


 まあ昨日の予報では、朝から大荒れの天気になるって予報してたけど……雲ひとつない青空が広がっているがな。


「とりあえず……止めとけ。絶対需要無いから」


 俺がそう言うと、藤宮は天井を見上げて漏らす。


「そうね……需要が無いんだったら止めるわ」


「うん。それがいい」


「ホントに無いかな……需要」


「無いだろ。ヤクザの事務所みたいな所でコーヒー出されても、恐ろしくて喉を通らねえだろ」


「でもそういう恐ろしさを体験できる喫茶店……駄目かしら?」


「駄目だろ……いろんな意味で」


「話題になると思うんだけどな……指詰め体験とかやったら」


「うん。もう恐ろしいよ。お前の思考も、ヤクザ喫茶への執着も」


 俺がそう言うと、藤宮は残念そうにため息を付く。ったく、お前はいつまで白○引きずってんだ。


「……まあ今日は村上さんいないし、私がマスターってのを体験してみる事にするわ。普通の」


「お、おう……頑張れよ」


 普通って単語が付いていても、なんだか嫌な予感しかしないが……まあ考えたら負けだよな。


「あ、そうだ藤宮。今日って、ミホちゃんギルドに居るか?」


「ええ、いるわよ。どうしたの? 急にそんな事を聞いて」


「いや、一昨日この刀を使っている時にさ、なんかちょっと調子悪いなって思ってさ、直してもらおうと思って」


 俺はそう言って、腰に携えた刀の鞘を掴む。


「なるほどね。ミホちゃんなら居ると思うわ」


「そっか。じゃあ直してもらいにいくわ」


 そう言って俺は喫茶店スペースの奥の『従業員以外立ち入り禁止』というようなプレートが掛った扉を開ける。

 と、そこで再び藤宮に声を掛けられる。


「やっぱり……駄目かな?」


「そうだな。お前の頭はもう駄目かも知れない」


 俺はそう言ってため息を付いて、とりあえずミホちゃんが居そうな共有スペースに足を向けた。

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