母からの手紙
私は泣いた。とにかく泣いた。泣いてどうにかなるわけじゃないってわかってるけど、そんなことはどうでもいいくらい泣いた。
私の大好きなお母さん、いつも私の味方で、いつも私と一緒にふざけて、どんなに私が失敗してもいつも私を励ましてくれた世界で一番の私のお母さん。
私が生きてきた時間なんてまだ短いけど、それでも彼女ほど私を愛してくれる人なんていないって知っているし、それを超える愛をくれる人もこれからいないような気がしてる。
そんな私の大好きなお母さんは、病院のベットで息をひきとってしまった。
お母さんが体の具合が悪いのは知ってたけれど、いつも何かこまごまとやっている様子を気にもとめていなかった私は、とても親不孝に思える。
痩せてきた体で一体何をやっていたのか、お母さんが亡くなった後に、いろんな人から話しを聞かされることでわかった。
お母さんがせっせと貯めてきた貯金、これから私の世話をしてくれるお母さんのお姉さん、私がこれから必要となるだろう洋服やら下着、勉強道具まで全て用意されていた。
こんなこと、しなくても良かったのに……。
もっと自分の体を労わって、もっと私と一緒にいてくれたら良かったのに。
私がどんなにお母さんを愛していたのか、もっと私は声に出していってあげればよかった。
今となってはどうにもならない後悔ばかりが私の胸を締め付けた。
沈んだ気持ちと泣きくれる日々、そんなある日、私の学生かばんの小さなポケットの中に手紙を見つけた。
お母さんからだ。
私が病院でトイレにいっている隙に、こんなところに手紙をいれたんだ。
まだ、お母さんが生きているかのように感じて、私の心に日が差したような気がした。
私の愛する娘。
この世で一番愛する娘にお母さんは謝ります。
こんなに早く別れを言わなければならないことを。
あなたにはしてあげたいことがまだまだたくさんありました。
私はいつもあなたの笑顔を見続けたいと思ってました。
ごめんなさい、あなたに悲しい思いをさせて。
お母さんは、たった一つですがあなたにお願いがありました。
それは、あなたの勇気でしか乗り越えられないものです。
お母さんに、あなたの美しい声を聞かせてください。
そして私がこの世を去った後も、私がどこかで聞こえるように、あなたの声を響かせてほしいのです。
私は、あなたが声をだすことを止めてしまった理由も知っていたのよ。
あなたがまた声を出すってことは勇気がいることだっていうのもわかってる。
お母さんがあなたにお願いするのは、あなたの勇気。
あなたの勇気を見ることで、お母さんは安心できる。
それにね、いつか悔しいことがあった時に「ばかやろー」って声を出して相手にいってほしいのよ。
……あははは、お母さんらしいな
お母さんの願いは、私が遠い昔に閉ざしてしまった箱をあけることだったんだ。
あなたが私を思い出す時、私はいつもあなたの側にいます。
どうか忘れないで、あなたの後ろにはいつも私という応援団長がいるんだから。
誰にも私のことは見えないけど、私はいつも応援してるから。
あなたは私が世界で一番愛した人、愛する愛する私の娘
手紙の終わりの方には、水滴がたくさんついた跡があった。
お母さんの涙だ。
私がお母さんと別れる悲しみと同じように、お母さんも私と別れる悲しみをたくさん抱えていたんだ。
それなのに、いつもお母さんは私のことだけを考えていてくれたんだ。
自分の時間をいつも私のために使って、生活のために削って、どんなに疲れて眠くても毎日私に本を読んでくれた。どんなに悲しいことがあっても、悔しいことがあっても、決して私に涙を見せなかった。
どうしてもっと私に愚痴をいってくれなかったの?
どうしてもっと苦しい顔を見せなかったの?
そして、最後のお願いまで私の人生に勇気を与えるためにって…。
「わ゛がやろー!わ゛がやろうっ!」
涙でぐしゃぐしゃになった顔。
なのに、私の小さな口元は少し微笑みを浮かべていた。
ありがとう、世界で一番大好きな私のお母さん。
私にこんな素敵なお母さんをくれて、神様、本当にありがとう。
テーブルに置いてあるお母さんの写真が、少し笑って見えた。




