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たいしたことはしていません。みなさんのおかげです。  作者: 那須 儒一


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2話 戴冠式

くっ。頭を金槌で殴られたような痛みに襲われ、僕は目を覚ました。


……ここは?

ぼんやりと周囲を見渡すと、こじんまりとしているが整理整頓の行き届いた部屋にいた。


窓から吹き込む風が薄いカーテンを揺らしている。

ふと視線を向けると、部屋の隅の鏡台にミリアが座っていた。


白いレースの部屋着のまま髪を結っている。

――へぇ、ミリアって胸大きかったんだ。Dはありそうだな。


どうやら僕はベッドに寝かされていたらしい。

……っつ、まだ頭がガンガンする。完全に二日酔いだ。


「タクトさん、目が覚めたんですね。大丈夫ですか?」

ミリアが前屈みになり、僕の額にそっと手を当てる。

ふわりと甘い匂いがして、視界の端に“たわわ”が揺れる。


「うーん、熱はないみたいです。昨日はすみません……タクトさん、お酒ダメだったんですね」


「そんなことはないと思うんだけど……」

転生後に体質が変わったのか?


「タクトさんの意外な弱点、発見ですね」

ミリアは小悪魔みたいに笑った。


だがすぐに顔色を変え、慌ただしく立ち上がる。

「っと、こんなことしてる場合じゃない! 急がなきゃ」

「えっ、何かあるの?」


「今日は女王様の戴冠式なんです。民はみんな参加なので、タクトさんも寝癖だけなおして!」


「へぇー、戴冠式か」


言われるまま鏡台の前へ。

映ったのは、野暮ったい顔の青年。黒髪、黒目……見覚えのある顔だ。


――転生前の僕だ。

……せめてイケメンにしてくれよ。

軽くため息をつきつつ寝癖を整える。


「ほら、行きますよ!」

「もう行くの?」

「もうです!」


ミリアに手を引っ張られ、酒場の二階を飛び出す。


「そういえばさ、昨日って……一緒のベッドで寝たの?」

「うん。寝床そこしかなかったし……狭かったでしょ? ごめんね」


くっ。昨日の僕、バカ野郎。

どうして酔いつぶれて寝顔チャンスを逃してるんだ。


「いや、大丈夫。それより介抱してくれたんでしょ。ありがとう」

「でも、ベッドまで運んだのはリーン師団長だよ……師団長さん、妙なニヤケ顔で“お楽しみですな”って言ってけど、どういう意味だろ」


「気の利かせどころを完全に間違えてる……」

「ふふ、第七師団は下町出の人が多いから、ああいう気さくなところあるんだよ。ちょっと喧嘩っ早いけど」


第七師団……ってことは他にもあるのか。覚えておこう。

 


城の東側に着くと、白い漆塗りの城が青空に映えていた。

広場にはすでに大勢の民が集まり、騎士団が整列している。


一、二、三……七。

お、リーン師団長も最前列にいる。


さらに数えていくと――十二。

どうやら十二師団あるらしい。


城壁の上にも白銀の甲冑の衛兵。

……ん? 一人だけ丸みのある体つきだ。女兵士?


そんなことを考えていると――


「よかった。間に合ったね。もうすぐ女王様が見られるよ」

とミリアが嬉しそうに言った。


盛大な演奏が鳴り響き、年端もいかない女王が高台に姿を現す。

透き通る金髪が光を受けて輝いている。儚い雰囲気に、少し不安すら覚える。


民は歓声を上げる。


……その瞬間。

ん? 上で何か光った?


女王の髪の反射じゃない。

城壁の上、さっきの女兵士――


矢を番え、狙ってる。

矢尻は女王へ。


僕は全てを悟った。


「リーン師団長! 城壁上、五時の方角!」

ありったけの声を放つが――演奏と歓声にかき消される。


矢が放たれた。


まずい。間に合わ――


黒い残像が横切り、矢が弾き落とされた。

気付けばリーン師団長が城壁に駆け上がり、女兵士を気絶させていた。


場は一気に騒然となり、戴冠式は中止。解散となった。


「タクトさんが急に叫ぶからびっくりしたよ……何があったの?」

「女王様が狙われてたけどリーン師団長が助けたんだ」


城門の前で説明していると、大柄な男が歩み寄ってきた。


「あれ、ダグラスさん?」

「あっ、昨日の酒場の……」


「――ちょっと来い」


ダグラスが険しい表情で僕の手を掴む。

「えっ、どういうこと?」

混乱するミリアを制し、


「ミリアちゃんは家に帰ってて。すぐ終わるから」

そう告げると、僕は半ば強引に連れて行かれた。

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