表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王家乗っ取り? 失礼ですね、私は毎日お花畑とスイーツのことしか考えておりません!  作者: すじお
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/11

第七章 遅すぎた理解

王妃付きの応接室に、幹部女官と女官長ミレーヌが顔を揃えた。


その日、ある“証拠”が提出されたのだった。


「では、こちらをご覧ください。バルトン領宛の旧書簡記録です」


若い女官がテーブルに置いたのは、シモーヌが王宮を離れる直前に提出していた文書の写しだった。


ミレーヌが「王子に取り入ろうとした女」としてシモーヌを非難し、事実上の追放を決定したその翌日――


「誤解を招いてしまい申し訳ございません。私の立ち居振る舞いに配慮が足りませんでした」


「私の行動が、王家や皆さまの名誉を傷つけるようなものに見えたのであれば、それは本意ではございません」


そう記された、潔白と謝罪を両立させた手紙が残されていた。


王妃は静かに、それを読み上げた。


「この文体、礼節、そして相手を立てつつ自らを律する姿勢……これが“策略家”の書くものですか?」


室内に重苦しい沈黙が落ちた。


さらに、ある若い女官が続けた。


「その後、シモーヌ様の関係者から領地に送られた物資の記録も確認されましたが――王子殿下に向けた私的な贈答は一切ありませんでした」


「むしろ王子殿下の方が……そっと“スイーツのお取り寄せ”を希望された形跡が……」


ごほん、と誰かが咳払いする。


王妃はふと微笑み、柔らかく言った。


「私には、あの子の“誰かを疑わず、信じ続ける強さ”の方が、よほど王宮に必要な資質に思えますわ」


その瞬間、ミレーヌは初めて気づいた。


自分がずっと、「貴族社会の常識」という狭い世界でしか人を見てこなかったことに。


そして、その“狭さ”が、シモーヌという少女の本質を見誤らせたのだと。


「…………」


言い訳を探す舌が、喉の奥で乾いた。


会議が終わった後。


女官の一人が、そっとミレーヌに話しかけた。


「……リュシエール様、王宮で冷たくされたこと、恨んでいないそうですよ」


「……え?」


「むしろ、“あの頃があったから、私はスイーツの優しさに気づけた”って、笑っておられたとか」


その言葉は、ミレーヌの胸を焼いた。


罵られる方が楽だった。


許されることのほうが、残酷だった。





その日の夕暮れ。


執務室に残されたのは、シモーヌから贈られたスイーツの箱。

誰もいなくなった部屋で、ミレーヌはそれをそっと口に運んだ。


口の中に広がる、優しい甘さ。

そして――涙。


「……こんなもの、もっと早く……知っていれば……!」


それは、彼女の“自業自得”にして、“遅すぎた理解”だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ