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第4章B · 伯爵の贈り物と後庭訓練

伯爵邸から届いたのは、まさかのドレス。

しかも……社畜少女には刺激が強すぎるデザイン!?

さらに後庭での魔法訓練では――雷が暴走する!?


――公会宿舎 · 朝


まだ陽が昇ったばかり。

ハイシンは布団に潜り込み、ぐでーっと枕を抱えていた。


「ンン~……昨日のあれで完全にHPゼロ……あと十時間寝ないと死ぬ……」


――ドンドン!


勢いよく扉が叩かれ、受付嬢の明るい声が響く。

「ハイシンちゃーん! 起きてー! 領主邸から贈り物が届いたよ!」


「へ?」寝ぼけ眼でドアを開けると、二人の従者が大きな箱を恭しく差し出した。

蓋を開けると、雪のように白いドレスが光を反射して輝いた。


「……え、えええ!? な、なにこれ!? ドレス!? しかも胸元ざっくり空いてるんですけどぉぉ!」


従者は恭しく頭を下げる。

「伯爵様より、『今夜の宴に必ずこれを』とのお言葉です」


顔が一瞬で真っ赤になり、ハイシンはドレスを抱きしめて床で転げ回った。

「ウワアアアア! こんなの着たら全員ガン見するじゃん! 完全にセクハラトラップだよこれぇぇ!」


受付嬢は口元を押さえ、笑いを堪えるように肩を震わせた。

「……似合うと思うよ。きっと皆の目を奪うはず」


「奪われるのは私の尊厳なんですけどぉぉ!」


その時、ギィと扉が開き、会長が現れる。冷たい視線がドレスを射抜いた。


「……伯爵の手口ね」

低く押し殺した声。


「会長ぉぉ! こんなの着たくないよ! エロトラップ禁止条約ぅぅ!」

ハイシンは泣きそうに叫んだ。


だが会長はすっと手を伸ばし、ドレスを奪い取る。

「今夜は伯爵邸の宴。拒めば噂は一層酷くなる。……着るのよ」


「ヒィィ! 異世界ってなんで強制サービスシーンばっかりなのぉぉ!」


――公会後庭 · 午前訓練


烈日の下、石畳が熱を帯びる庭。

杖をついた老魔導士・カイオウが前に立つ。


「よいか、ハイシン。魔力は洪水でも猛獣でもない。気息や泉の滴のように……導けばよい」


「ふーん……つまり全力アクセルじゃなくて軽く踏めばいいってこと?」


深呼吸して両手を掲げると、体内の熱が掌に集まり――

ボッと小さな火球が生まれた。


「……できた!? やったああ!」


顔がぱぁっと明るくなり、ハイシンはドヤ顔。

「フフン! ほら見て! 私天才かも!」


次々と火球を生み出し、五つの小太陽が彼女の周囲をくるくる回る。

「どうだどうだー! わはははは!」


老魔導士は沈黙したまま額に汗を浮かべた。

(……一日足らずでここまで……本当に人間か?)


ハイシンは勝手に調子に乗り、火球を短剣やドリルに変化させる。

「小細工までできちゃうんだぞー! ホメてもいいんだぞー!」


「……ハイシン。その才能は異常だ。だが危ういのは……お前の心だ」


「え……」


「これは遊戯ではない。制御できれば奇跡、できなければ災厄。驕りは必ずお前を飲み込む」


笑顔が止まり、耳まで赤くなるハイシン。

「わ、わかってるよ! でもさ、呪文暗記しなくていいし、思ったより簡単なんだもん!」


――雷魔法の暴走


「よーし! 次は雷いっちゃお!」

ハイシンが指を突き出す。


「待て!」カイオウの声が鋭く響く。

だがもう遅い。


「雷よ、落ちろーーッ!」


――ドガァァン!


眩しい閃光が庭を裂き、大樹に稲妻が直撃。

枝から煙が立ちのぼり、鳥たちが一斉に飛び立った。


「ウワワワワ!? マジで木に当たったぁぁ!?」


老魔導士は冷や汗を流し、心の中で祈る。

(あれは会長が二十年育てた木だぞ……神よ、彼女を守りたまえ……)


「すっご! 完全にアニメの必殺技じゃん! わははは!」

ハイシンは大はしゃぎ。


さらに風魔法で横っ飛び回避を披露し、草むらに転がってドヤ顔。

「ほら! これ回避スキルになるでしょ! 天才じゃん私!」


――会長の怒り


背後から冷気が流れ込む。

笑い声が止まり、振り返った瞬間――会長が立っていた。


「……」


氷の視線は黒焦げの大樹に突き刺さる。

ハイシンの顔が引きつり、乾いた笑み。

「エ、エヘヘ……会長さん、いつからそこに……?」


――パァンッ!


乾いた音と共に、頬に衝撃。

ハイシンは地面に吹き飛ばされ、涙目で絶叫。

「ウワアアアア! 顔割れるぅぅ! 新人虐待だぁぁ!」


冷たい声が降る。

「二十年の木よ。それを一瞬で灰にした」


「ち、違うの! 勝手に落ちただけなのぉぉ!」


草地で転げ回るハイシンを見下ろし、会長の視線は氷より冷たかった。


艾レンの慰め


「ハイシン!」

駆け込んできたのは青年冒険者・エレン。


顔を真っ赤にしながら彼女を抱き起こし、慌てて上着を肩に掛ける。

「大丈夫!? 痛くない? 俺……俺、何かできること……!」


「ウワワワワ! 超痛いぃぃ! でも誰も触るなぁぁ!」


泣きながらも、つい彼の胸元に寄りかかってしまうハイシン。

「だ、誰がアンタに慰めてもらうかぁぁ……でも……ちょっと安心するかも……」


エレンは耳まで赤くし、何も言えずに彼女を支えるだけだった。


カイオウは乾いた咳をし、そっと視線を逸らした。

会長は冷たい眼差しで二人を見やり、その奥に複雑な色を隠したまま立ち尽くしていた。

見事に会長の大切な木を炭にしました。

そして容赦ないビンタ。泣きじゃくるハイシン。

だが、エレンが優しく支えてくれて……ここ、ラブコメです。はい。


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