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第15章 A · 宰相の依頼

みなさん、こんにちは。


実は……

この前、ハイシンさんとケンカしてしまい、そのせいでしばらく筆が止まっていました。ですがようやく仲直りできて、また物語を語ってくれるようになりました。これからはちゃんと更新します……多分。


いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけたら幸いです

——数日前 · 皇宮 · 宰相専用書斎


夜幕が降り、皇宮の回廊には魔導灯が灯っていた。琥珀色の光が大理石の床を黄金色に染め、厚い扉の両脇には銀甲の禁衛が直立し、交差させた長戟が冷たく光っている。


「ギィ——」


扉が開くと、濃い墨の香りが押し寄せた。ここは宰相専用の書斎。四方の壁は高い書棚に覆われ、巻物や分厚い冊子がぎっしり詰め込まれている。中央の黒木の長机に広げられていたのは典籍ではなく、数枚の地図と公文。燭火に照らされた金色の筆跡が淡く輝いていた。


ライオンが半歩踏み入り、金の瞳が灯りに反射してかすかに光り、口元に気楽な笑みを浮かべた。

「やれやれ~宰相様、相変わらずですね。真夜中に寝もせず、本と恋愛中ですか?」


宰相は顔を上げた。疲労が刻まれているものの、その灰青の瞳はなお鋭い。視線をライオンに向け、淡々と告げる。

「軽口はいい。見てきたことをすべて話せ。」


ライオンは肩をすくめ、風原城から持ち帰った情報を順に語り、最後に黒いガラス瓶を机の上に置いた。瓶の中では濃い暗影の気がとぐろを巻き、蛇のように瓶壁を這い、見る者の心を凍らせる。


宰相は長く凝視した後、低い声で言った。

「……やはり暗影が関わっていたか。伯爵の件はすぐに後始末させ、新たな領主を任じよう。この瓶は帝国研究院に回す。」


そう言って身を翻し、燭火を背に受けながら声を重くした。

「ライオン、もう一つ頼みがある。ネク島へ行け。」


「はぁ?」ライオンは眉をひそめ、大げさな表情を見せた。

「宰相様、俺は今帰ったばかりですよ? 靴底の泥もまだ払ってないのに、また出動? 俺を早死にさせるつもりですか?」


宰相は眉間を揉み、わずかに申し訳なさそうに言った。

「仕方ない。他の者はすでに派遣した。南方と辺境では暗影の欠片、人間の魔化が次々発生している……悠長にはできん。お前が最適なのだ。」


「ふぅ……」ライオンはため息をつき、目は笑みを含みながらも、あえて苦労人のように装った。

「はいはい、分かりましたよ。どうせ俺が行くんでしょ……今すぐ向かいますよ。ただし! 帰ったら必ず長期休暇くださいよ? そうじゃなきゃ、この書斎の絨毯で寝転んでストライキしますからね!」


そう言い捨てて、軽やかに手を振り、風のように出て行った。扉が「バタン」と閉まり、残されたのは揺れる燭火だけ。


宰相は窓辺に立ち、夜の皇宮庭を見つめていた。風が帷幕を揺らし、光が揺れ動く。彼は言葉を発さず、低くつぶやいた。

「……ネク島……間に合ってくれればいいが。」


——皇宮 · 回廊


書斎の重い扉が背後で閉じ、ライオンは肩を落として長い息を吐いた。

「ふぅ……帰ってきていきなり苦役かよ。容赦ないな。」

披風を直しながら心で愚痴る。だが足取りはどこか軽い。


「転送陣に行くまで、まだ時間はあるしな……」

金の瞳を細めて欠伸をしながら進み、角を曲がった瞬間、ふと足を止めた。


回廊の先に、青と白のドレスが揺れていた。気品ある少女の姿勢は優雅だが、その眉目には隠しきれぬ疲れが漂っていた。——リヴィアナ王女である。


ライオンの瞳に狡猾な光が一瞬走り、すぐに柔らかな笑みを装って恭しく礼をした。

「殿下、ご機嫌麗しゅう。ここでお会いできるとは奇遇ですね。」

声音は礼儀正しいが、語尾にはかすかな揶揄が混じっていた。


リヴィアナは顎をわずかに上げ、冷ややかに応じた。

「……ええ。本宮は変わりなく。」


ライオンの笑みはさらに深まり、しかし口調は依然として恭しく。

「数日前、伯爵邸で……殿下のお姿をちらりと拝見しました。意外でしたね。」

何気ない雑談のようでいて、その言葉は針のように鋭い。


リヴィアナの足が一瞬止まり、目尻に硬さが走るが、すぐに冷淡を装った。

「……見間違いでしょう。本宮があんな場所にいるはずがない。」


「ふふ、そうかもしれませんね。」ライオンは軽く笑い、視線を外さずに告げた。

「ただ……あの時の伯爵は実に惨めでした。見間違いでなければ、殿下は彼と何か関わりが?」


リヴィアナの顔色が変わり、目に鋭さが宿り声を荒げた。

「無礼者! その言葉、どういう意味!?」

声は鋭いが、その奥には焦りが滲んでいた。


ライオンは相変わらず飄々とした態度で両手を広げ、無邪気な顔を作った。

「殿下、落ち着いてください。ただの世間話ですよ。だって——」彼は口元に笑みを刻み、声を落とす。

「秘密がなければ、そんなに取り乱す必要もないでしょう?」


「お前……!」リヴィアナは振り返りざまにドレスの裾を翻し、憤然と歩み去った。去り際、ライオンを鋭く睨みつけ、忌々しげに吐き捨てる。

「ふん!」


その背中を見送り、ライオンは小さく首を振り、呟いた。

「やっぱり何かあるな……」

唇に戯れの笑みを浮かべ、披風を叩いて歩き出す。

「まあいい、追及は次の機会にしよう。今は転送陣が先だ……」


回廊には足音だけが残り、高窓の外では夜風が幕を揺らす。冷たい宮壁は影の中で一層不気味さを増し、まるで何かの秘密が醸成されつつあるかのようだった。


——リヴィアナ王女 · 心の独白


「くっ……あのライオン、なんであんな目で私を見るのよ!ただの密偵風情が、本宮を疑うなんて!ふん!私は帝国の王女よ!私が望めば、指を一つ動かすだけで、何十人もの伯爵や侯爵が跪いて奉仕するのよ!

宰相の犬に過ぎないくせに、どうして伯爵邸にいたかなんて問い詰めるなんて……ふん、ふんふん……私は行きたいところに行く!誰にも止められない!」


「それに、あの伯爵はどれだけ私に敬意を払ったか。毎回豪華な贈り物を用意して、口にする言葉はすべて私を持ち上げてくれる。これこそ分別のある人間! 宮廷の古臭い連中ときたら、『責任』だの『自制』だのとうるさくて、うんざりするばかり!

……私は気にしない!あいつが従順で、誰よりも私を高貴に感じさせてくれる限り、私は彼を庇う。やがて帝位が私の手に落ちた時、誰が私を無能と笑えるか見ていればいい!」


(呼吸が荒くなり、声が沈む)


「……でも……もしあのことが露見したら……? い、いや、ありえない……誰も知らないはず……そうよね?

もし父王に知られたら……!だめ、だめよ!きっと烈火のごとく怒り、帝国の恥だと言い、……その場で私を処刑するに決まってる!

だめ……知られてはならない!絶対に!……もし知られたら……私のすべてが終わる……終わってしまう……!」


(両手は震え、唇は青ざめ、額に汗が滲む。誇り高い姿は崩れ去り、残されたのは恐怖と必死の自己暗示だけだった。)


——翌日 · 王都転送陣


朝光が穹頂を通して差し込み、転送陣の広場は人で賑わっていた。魔導士たちが魔紋を安定させ、衛兵たちは長戟を手に巡回している。ライオンは披風を翻し、慣れた様子で陣に踏み入れた。光が一閃し、世界が歪む。


光が消えると、彼は堅固な石の砦に立っていた。厚い外壁、海塩と土の匂いを含む風。鎧を纏った守将が迎えに現れ、視線が交わると同時に笑みがこぼれた。


「ライオン!この野郎、ようやく来やがったな!」

「はは、そう言うな。前は一緒に朝まで飲んだじゃないか。もうそんなに経ったのか。」


二人は肩をぶつけ合い、鎧と金属が重い音を立てた。その懐かしい感覚が、旅の疲れを一瞬で吹き飛ばす。


しばらく雑談した後、守将の表情が正され、どこか誇らしく、少し照れた声になる。

「来月、俺は結婚するんだ。」


ライオンは目を瞬かせ、すぐに笑みを浮かべ、肩を叩いた。

「やるな!ようやく腹を決めたか。時間が合えば、俺も必ず飲み潰れてやるよ。」


「ははは、それを待ってた!」守将は大笑し、やがて眉を上げる。「で、お前はどうなんだ?任務ばかりじゃなく、若いうちに相手を見つけろよ。」


石の廊下に笑い声が響く。だがライオンは一瞬沈黙し、金の瞳に微かな光を宿した。

「……そうだな。もう目星はついてる。しかも……簡単に手に入る相手さ。」


脳裏に浮かんだのは、伯爵邸で自分を睨みつけたハイシンの姿——頑なで、慌てていて、しかし眩しいほどに輝いていた。あの瞬間、戦火の記憶さえかき消された。


「おお?もう相手がいるのか?さっさと紹介しろよ!」守将の顔は好奇心でいっぱいだ。


ライオンは唇を吊り上げ、軽く手を振った。

「次だ、次。今は急ぎの任務がある。」


「よし、次は必ずだぞ!」守将の笑い声は爽快で、遠くの海風をかき消すほどだった。


ライオンは披風を整え、営門へと歩き出す。背は朝光に長く伸び、足取りは軽い。それでも口元には消えない微笑が残っていた。


「ハイシン……次に会う時は、俺を失望させるなよ。」

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

みなさんの応援が、次の物語を書く大きな力になります。


もし気に入っていただけましたら、ぜひブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次回更新:10月05日 15:00 JST

どうぞお楽しみに!

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