第12章 A 港町の影
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——第12章 港町の影
——宿屋 · 早朝
朝の光がブラインドの隙間から差し込み、宿の質素な木床に斑を落とす。通りからは行商の呼び声や駱獣のいななきが聞こえ、街はすでに新しい一日を始めていた。
だが部屋の中で、白忻はまだ夢の国。
四肢を投げ出して寝ており、布団は床に落ち、寝間着の裾はめくれ上がって白いお腹が呼吸に合わせて上下する。口元には涎がきらり、口の端からは「んふ~……フライドチキン……コーラ……へへ……」という夢の独り言。
アレン(アレン)はすでに装備を整え、長剣を背に真っ直ぐ立っている。
メアリー(メアリー)は卓に端坐し、指を組んで、礼儀正しいが刺のある微笑みを浮かべた。
「見事ですね、白忻さん。」
声音は平板なのに冷たい。「任務中でも、死人よりぐっすり眠れるとは。夢の中から港町へ向かうおつもり?」
「う、うわわわわ!?!?」
白忻は跳ね起き、髪は鳥の巣、真っ赤になって慌てて起き上がる。
「ご、ごめんなさい! いま起きる! ほんとに今すぐ!!」
服をもたつきながら着込むが、靴紐を踏んで「どてっ」と前につんのめる。
「きゃああ——!」
そのままアレン(アレン)の胸にダイブ。
アレン(アレン)は目を見開き、とっさに抱きとめて石像のように硬直。互いの息遣いが聞こえるほど顔が近い。
白忻の脳内で「ドン」と爆発音。顔は真っ赤。
「うわわわ! 何この少女漫画イベント!?」
アレン(アレン)も耳まで真っ赤になり、どもりながら低く言う。
「だ、大丈夫……ゆっくりでいい……」
そっと外套の乱れを整え、肩の埃を払ってやる。
白忻は呆けて見上げ、破裂しそうな鼓動を押し隠しつつ強がる。
「ふ、ふん……あ、ありがと。でもなんか“お母さん”みたい!」
「……」
脇でメアリー(メアリー)は額に手を当て、ため息。完全に「ガキね」という空気。
——宿屋 · 朝食
一階の広間で、三人はパンと煮込み、果汁で簡単に腹を満たす。
白忻はもぐもぐしながら目をきょろきょろ、窓の外の喧噪に興味津々。
「わわ……さすが港町、賑やか! 屋台がいっぱい、スパイス屋さんも、いい匂い!」
「見て見て、あっちの看板おっきい魚が描いてある! お寿司屋さん!? 異世界寿司!!」
アレン(アレン)は苦笑し、倒れそうなグラスを安全圏へスッと移す。
メアリー(メアリー)は静かに口を拭き、白忻が一段落してから淡々と告げる。
「最初の手順は、現地の冒険者ギルドへ行くこと。長距離任務は、まず支部と情報の擦り合わせが必要。」
「理にかなってる。」
アレン(アレン)は頷き、長剣の収まりを正す。「行こう。」
白忻は最後の一口を飲み込み、手の粉を払って目を輝かせる。
「やった! 冒険者ギルドの港町支部! 絶対かっこいい! 隠しクエストとかあったりして!?」
「……集中して。浮かれないの。」
メアリー(メアリー)が冷たく一刺し。
「う、うわわ! べ、別に浮かれてないし!」
白忻はすくみ上がり、頬をぷくっと膨らませる。叱られた子猫。
——街路 · 出発
宿を出て、三人は石畳の通りへ。
朝市の人波はすでにぎゅうぎゅう。
乾魚や反物を売る呼び声、木箱を担ぐ港湾労働者の掛け声。遠くで海風が塩気と汽笛を運ぶ。
白忻は目をまん丸にして左右を見渡す。
「わわわ! アニメのヨコハマより賑やかだよ! 灯台もある! 海鳥も! 最高!」
背嚢を抱えて、遠足デビューの子どもみたいな笑顔。
その笑みに釣られて、アレン(アレン)も口元をわずかに緩める。
メアリー(メアリー)は言葉少なに前を歩くが、一瞬だけ思案げに港の奥へ視線を投げた。
——街路 · ギルドへ
三人は荷を担いで、港町の冒険者ギルドを目指し石畳を進む。
人声は渦を巻き、
商人の呼び込み、異国訛りの談笑、馬車が石を噛む「ギシギシ」という音が混ざる。
時折、外から来た小隊を物珍しそうに盗み見る者もいる。——背の高い戦士アレン、妙な装いの白忻、そして優雅な笑みをまとったメアリー(メアリー)。
白忻はそわそわして、こっそりアレン(アレン)の脇へ寄り、小声で。
「ねねね……なんでみんな見てくるの? 私、パン粉ついてる?」
アレン(アレン)は堪えきれず笑い、肩を軽く叩く。
「ついてない。気にするな。」
「ふ、ふん……ならいいけど!」
口では強がり、頬は真っ赤。
——港町冒険者ギルド
ついにギルドへ到着した。
建物は風原城のそれよりも高く、正門には錨と双翼を刻んだ紋章が掲げられている。
「おお~立派!」
白忻は感嘆しつつ、重い木扉を押し開けた。
厚板が「ギィ」と鳴り、視界に広間が開けた瞬間、空気が短く凍る。
鋭い視線が数十、三人の見慣れぬ顔ぶれを刃のように測る。
卓に肘をつく冒険者たちが小声でささやく。
「誰だ? よそ者か?」
「この街のパーティには見えねえな……」
「あの白髪の女、変な格好……新人か?」
「バカ言え。隣の男、剣気がエグいぞ。お前が試してこいよ?」
「や、やめとく……」
耳のいい白忻はちらほら聞こえて心がザワつくが、涼しい顔を装う。
「ふん……新人じゃないし!」
三人はまっすぐ受付へ。
——受付
受付嬢は帳簿に目を落としていたが、顔を上げても表情は崩さない。
メアリー(メアリー)が礼をとり、澄んだ声で簡潔に。
「風原城から来ました。会長の命により、『銀翼』の行方と関連情報の調査に参りました。」
その言葉に、受付嬢の表情が一瞬こわばる。指が帳簿の上で止まり、唇を結んで小声。
「……少々お待ちください。」
すぐに小走りで二階へ消える。
白忻は首を傾げ、小さくつぶやく。
「え? なんで急にあんな顔……?」
アレン(アレン)は黙したまま、メアリー(メアリー)は目を細め、何かを察したようだが言葉にはしない。
——応接室
やがて、階段から重い足音。
壁のような肩幅、髭面の男が降りてくる。灰の長衣が歩みに合わせて揺れた。
渋い声で名乗る。
「初めまして。港町ギルド会長、ボルド(ボルド)だ。」
視線がメアリー(メアリー)で止まり、眉がわずかに上がる。
「……お前たち、小セリが寄越した冒険者だな?」
「こ……小セリ?」
白忻が目を丸くする。
メアリー(メアリー)が淡々と補う。
「風原城の会長、セリアの愛称です。」
そしてボルド(ボルド)に向き直る。
「はい。会長自らの指示で、『銀翼』の足取りを追っています。ひと月前、この近辺で消息を絶ったと。」
ボルド(ボルド)は短く黙し、眉間の皺が深まる。
「……分かった。上で話そう。応接室へ。」
先導する背中は重く、大広間の冒険者たちは囁きながら三人を目で追う。
白忻の心臓は「ドクドク」。背嚢のベルトをぎゅっと握る。
階段を上がるほどに、空気の圧は濃くなる。
アレン(アレン)の厳しいが揺るがぬ横顔に、白忻は少し落ち着き、
メアリー(メアリー)の瞳には、郷里に戻りながら触れたくない影を直視するような深さがあった。
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次回更新:9月23日 15:00 JST
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