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第11章 C · 出発

みなさん、こんにちは。


いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

——数日後 · 海港都市


幾日もの道行きの末、馬車は最後の丘陵を抜けた。視界がぱっと開け、蒼がいきなり胸いっぱいに広がる。


「……わあああ!」

白忻ハイシンが真っ先に窓へ飛びつき、目を丸くする。


遠くに果てのない海。白い波が堤を叩き、陽光に泡の銀が煌く。

高い灯台が港の縁に屹立し、その頂の火は昼も夜も消えない。


城壁は続くが、内陸の都市のように冷たくはない。塩の白い痕と風蝕の傷跡。石の目地に蔓が這い、窓辺には異国の草花が揺れる。


桟橋はさらに喧騒。

巨きな貨船が列をなし、帆は膨らみ、索はマストの間でパンと鳴る。

各地から来た商人と水夫が入り混じり、荷を叫び、魚桶を押して売り声が飛ぶ。空気は塩っぽく熱い。


「ひ、人が多い……」

アレン(アレン)は声を潜め、無意識に柄へ指を添え、用心深く目を巡らせる。


白忻ハイシンは景色に酔って、瞳がキラキラ。

「魚! 魚がいっぱい! カニも! うわ、あのタコ桶デカすぎ!」

鼻を押さえつつも身を乗り出す。

「うわわわ……この匂い……社畜の昼休み海鮮フードコート!」


メアリー(メアリー)は前方をじっと見据え、珍しく険しい表情。

視線は城門から街路へと滑り、封じた記憶の底を手繰るかのよう。


白忻ハイシンが横から声をかけかけた瞬間、メアリー(メアリー)の冷い眼差しに塞がれ、すごすごと引っ込める。

心の声(白忻):

「ま、また真顔……この人、感情スイッチの切り替え早すぎない!?」


隊商は人波に合わせてゆっくり城門へ。

街路は想像より広く、石と木の折衷の建物に異国趣味の意匠。

看板には酒場、工房、競売所、香辛料や異国布の店が名を連ねる。


白忻ハイシンは歓声を連発し、目がいくつあっても足りない。

アレン(アレン)は警戒を解かず、ぴたりと彼女の傍に付く。

メアリー(メアリー)は振り返らず、まるで全てを知り尽くしたかのように一定の歩を刻む。


——三人の旅は、内陸とはまるで違うこの「海港都市」で、本番を迎える。


——港町 · 路地の衝突


三人は埠頭通りを進む。人波はうねり、魚売りの呼び声と樽が転がる音が混じり合って騒がしい。


人通りの少ない路地に入ったところで、酒臭いチンピラが数人ふらつきながら現れ、視線は即座に白忻ハイシンのむき出しの腿へ吸い寄せられた。


「おやおや~お嬢さん、いい脚だねぇ。」

「俺たちと遊びに行かない? 気持ちよくしてやるよ~。」


白忻ハイシンの顔が一瞬で真っ赤になり、心の声が爆発する。

心の声(白忻):

「うわわわ! その台詞、化石!? その昭和口説き、よく私に向けて言えたね!?」


アレン(アレン)は即座に一歩出て、手を柄に置いたまま低く言い放つ。

「失せろ。」


チンピラどもは一瞬固まり、すぐ哄笑する。

「ガキが、俺らが誰だか分かってんのか? その口の利き方はないだろ!」


怒鳴り声に足を止める野次馬たち。空気がざわつく。


アレン(アレン)が目を細め、言い返そうとしたところを、メアリー(メアリー)が手で制す。

「こういうのは、私がやる。」


チンピラは一拍置いてから下卑た笑い。

「女が出てくるのかよ? へぇ、俺たちと“交流”でもしたいのか?」

そのうちの一人がメアリー(メアリー)の顎に手を伸ばす。


「ウッ……キモ……。」

白忻ハイシンが顔をしかめて吐き捨てる。


次の瞬間、メアリー(メアリー)の眼が凍てつき、腕が雷光のように閃く。掌底がチンピラの鳩尾に突き刺さった。


「ドン!」

男は凧糸の切れた凧のように吹っ飛び、脇の魚桶へ激突。鮮魚が路地にぶちまけられ、潮臭さが一気に満ちる。


「うわぁぁぁ!」

野次馬は悲鳴を上げて散る。


残り二人が怒号とともに突っ込む。

メアリー(メアリー)は一切慌てず、冷ややかに受け流す。手で弾き、身を捻り、返す肘打ちを二連。二人は地面に叩き伏せられ、屋台が「ガラガラ」崩れて果物が転がる。


「野郎ども、全員でやれ!」

奥から仲間が駆け込み、雪崩のように群がる。


白忻ハイシンは思わず後退し、両手を上げて叫ぶ。

「ち、近寄るなぁ!」

魔力がはじけ、烈風が路地を薙ぐ。突っ込んできた連中はまとめて壁に叩きつけられ、うめき声を上げる。


「くっ……!」

倒れた一人が歯を食いしばり、腰から匕首を抜いて白忻ハイシンの背へ忍び寄る——


刃がきらり。

冷たい剣身がその首筋に横たわる。アレン(アレン)の瞳は闇のように冷たい。

「……次に動けば、どうなるか分かるな。」


チンピラの全身が震え、匕首はカランと落ちた。


形勢は一瞬で逆転する。


全員が尻餅をつき、ガタガタ震えながら土下座で連呼する。

「も、もうしません! 許してください!」


メアリー(メアリー)は前に立ち、刃のような眼差しで冷たく言う。

「失せろ。」


ただ一語。それは死刑宣告にも等しい。


チンピラは魂を抜かれたように転げ逃げ、路地の口から消えた。


通りには囁きが走る。

「誰だあの女……掌で人が飛んだぞ……」

「旅人に見えるのに、あんな強さ……」

「冒険者か? 少なくともプラチナ級だろ……。」


白忻ハイシンとアレン(アレン)は鼓動の高鳴りを抑えられず、同時にメアリー(メアリー)へ目を向ける。気配を収めたその姿に、言いようのない畏れが滲む。


心の声(白忻):

「……つ、強すぎ……この女、一体どの怪物ランク……!」

アレン(アレン)も思わず呟く。

「やはり……プラチナ級だ。」


メアリー(メアリー)は鼻を鳴らし、踵を返す。

陽光に伸びた背は一直線で、容易に近づけない気配を残して路地を出ていく。


——港町での初登場は、チンピラ騒ぎという形で、強烈な刻印を残した。


——路地の後


白忻ハイシンはまだ青ざめ、頭を抱えてぷりぷり。

「心臓止まるかと思った! ここ、初心者観光どころじゃないでしょ! 運が悪けりゃ魚の餌コースだよ!」


メアリー(メアリー)は冷ややかに一瞥し、無感情な声で急所を突く。

「脚が目立ちすぎ。」


「うわわわ!?」

白忻ハイシンはその場で爆発、顔を真っ赤にする。

「こ、これは普通のコーデでしょ! 観光に甲冑着て来いっての!?」


メアリー(メアリー)は肩をわずかにすくめ、街を見渡す。

「ここは港町。表は華やかでも、治安は底抜け。裏社会、闇市、密輸……どこにでもある。慣れなさい。」


白忻ハイシンは言葉に詰まり、内心で喚く。

心の声(白忻):

「観光都市? どこがだよ! ほぼブラックマーケット首都!」


空気が固まりかけたところで、アレン(アレン)が慌てて割って入る。

「まあまあ、今日は無事でよかった。宿を探そう。」


——夜の帳


夕闇が降りても喧騒は収まらず、灯りが濡れた石畳に滲む。潮の匂いを含んだ風が吹き抜ける。

三人は見た目が堅実そうな宿に腰を落ち着けた。


部屋に戻るなり、白忻ハイシンはベッドへダイブし、枕を抱えてゴロゴロ転がりながらぶつぶつ。

「うわわわ……今日は寿命が縮んだ……この街、怖すぎ! 観光詐欺!」


アレン(アレン)は根気よく宥め、毛布を掛け直し、自分の剣と甲冑を点検する。

「よくやったよ。もう考えすぎるな。」


メアリー(メアリー)は多くを語らず、窓辺で腕を組み、灰藍の瞳で遠い海を見つめている。

灯りと波光が交差し、その顔は淡々としていながらどこか深い影を宿す。


——その瞬間、誰も気づかなかった。彼女の口元に、かすかな苦味がふいに浮かんでいたことに。


——第11章 終。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

みなさんの応援が、次の物語を書く大きな力になります。


もし気に入っていただけましたら、ぜひブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


どうぞお楽しみに!

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