第11章 B · 出発
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——峡谷 · 白忻とアレンの戦い
風が唸り、両壁が音を増幅して鼓膜を打つ。巨怪の歩で砕石が転げ落ち、砂塵が舞い上がる。鼻を刺す獣臭が混じる。
アレン(アレン)が咆哮し、振り下ろされた棍棒へ突撃。
「ガァン!」峡谷に衝突音が炸裂し、火花が散る。鉄と木が噛み合い、反響が長く尾を引く。
巨棒が弾かれ、石屑が雨のように降った。巨怪は体勢を崩し、よろめく。
アレン(アレン)は刃を連ね、厚皮を割る。鉄が肉を割き、血が石地に黒赤を広げる。
だが刹那、裂け目が蠢いて閉じ、血肉がうねり、誰かが縫うように再生していく。
白忻の心臓が縮み、頭がジンと鳴る。
「な、何それ……再生早すぎ! 漫画の“チート自動回復”が現実に出張してきたじゃん!?」
巨怪が狂吼し、独眼が血に染まる。アレン(アレン)の呼吸は荒く、手首が痺れる。
白忻は息を呑み、前世で読んだページが脳裏を閃く——再生組織は火に弱い!
「アレン(アレン)! しゃがんで!」
峡谷に声が反響する。アレン(アレン)は反射で身を引き、膝をつく。
白忻は両手を掲げ、魔力が沸騰。空気が一瞬で灼ける。
「ドン!」
火球が腹部の裂け目を直撃。炎が爆ぜ、熱浪が襲う。焦げた煙がもくもく立ちのぼり、鼻を刺す匂いに胃が反転しそう。
焼かれた傷は縮こまり、もはや閉じない。
アレン(アレン)の目が細まり、胸が大きく上下する。見えた、決定的な隙。
彼は叫んで踏み込み、壁が足音を返す。
刃が巨腕を跳ね上げる!
「ズバァッ!」血飛沫。巨棍と太い腕が同時に断たれ、地に叩きつけられ砕石を撒く。
白忻はすかさず火球で断面を焼き、黒焦げにして煙を上げさせる。再生の気配は消えた。
巨怪は怒号し、壁を震わせる。残る手を振り回すが、焦りで隙だらけ。
アレン(アレン)の両腕に筋が浮き、巨剣を高く掲げ、冷たく振り下ろす。
「はあぁっ!」
風切りとともに一閃。独眼が縮み、巨大な首級が飛ぶ。血が噴泉のように迸り、巨体が崩れ落ちた衝撃で土煙が襲い、鉄錆の匂いが喉を刺す。
反響はやがて消え、熱気と焦げ跡、濃い血臭だけが残る。
アレン(アレン)は荒い息のまま直立を保ち、白忻に視線を移す。瞳に、初めての讃嘆が灯る。
「……弱点を一目で見抜くとは。やはり只者じゃない。」
白忻は耳まで熱くなり、慌てて顔を背ける。
「ふ、ふん……別に大したことないし!」
心の声(白忻):
「うわわわ! 本当に効いた! 漫画理論が異世界で通用するの!? 中二脳、私の命を救ったぁぁ!」
——壁に余韻が反響し、戦いの熱がまだ漂う。二人の連携は、この瞬間、真の戦場で火花を上げた。
——峡谷 · メアリーの出手
もう一方では、第二の巨怪が棍棒を振りかざし、独眼を赤く燃やして迫る。
メアリー(メアリー)は岩壁より冷たい顔で、眼差しに一片の波もない。
彼女は小さく欠伸をして、怠そうな声で突き刺す。
「たかが巨怪ごときが、私の休憩を邪魔する? ……死んで詫びなさい。」
言葉は通じずとも、圧は伝わる。巨怪は本能で吠え、全速力で突進。地が震え、砕石が飛ぶ。
メアリー(メアリー)は視線を落とし、足元は泰然。棍棒が落ち切る刹那、身を沈めて後ろへ滑る。巨木が紙一重で掠め、暴風が抜けるが、一束の髪すら触れさせない。
「ふぅ——。」
吐息一つ。次いで、つま先で地を撃ち、矢のように巨怪の懐へ。
掲げられた拳に、淡い白のエネルギーが凝縮し、光紋が閃き、極限まで圧縮される。
「死ね。」
——轟。
腹に叩き込まれた瞬間、峡谷に爆音。血肉は一瞬で炸裂し、巨体はのけ反る。独眼の瞳孔が虚にほどける。
「ドサッ!」
巨怪は崩れ落ち、土煙がもうもうと上がる。
メアリー(メアリー)は手を引き、死体を冷ややかに一瞥してから、舌打ちをひとつ。不遜に背を向け、振り返りもせず馬車へ歩く。
その背は刃のごとく冷たく、今の戦いが蚊に刺された程度でしかないと告げていた。
ちょうどその場面を目にした白忻とアレン(アレン)は、同時に息を呑む。
白忻は呆然と立ち尽くし、頭がジンジン鳴る。
心の声(白忻):
「うわわわわわ!! これが受付嬢ぉ!? 今の一撃、何なの!? 反則でしょ! ラスボス瞬殺の隠しキャラじゃん!」
アレン(アレン)は平静を保とうとするが、額の汗が真実を語る。
「……強い。」低く呟き、目に初めて畏れにも似た光。
白忻は口をパクパクさせ、心の底でそっと付け足す。
「……この人、絶対に軽口で怒らせちゃダメだ……。」
——峡谷 · 余波
煙塵が薄れ、二体の巨怪は血溜まりに沈む。
白忻はまだ茫然とし、メアリー(メアリー)を見つめて固まっていた。
「……す、すご……」思わず漏れる。
メアリー(メアリー)は力を収め、ふいに横目で見て眉をわずかに上げる。
「何か?」
白忻は慌てるが、素直に頷いた。
「い、今の……一撃で……ほんと、すごかった!」
メアリー(メアリー)は鼻を鳴らし、髪を指で軽く払って、淡々と答える。
「別に。たかが巨怪。力が大きいだけの雑魚よ。単体なら難しくない。群れれば……災害になるけどね。」
彼女の視線がアレン(アレン)をかすめ、冷たく一言を足す。
「それと、次は無駄に斬らないこと。要所を一閃で終わらせなさい。消耗するだけよ。」
アレン(アレン)は目を見開き、すぐに低く応じる。
「なるほど……やはりカイオウ師と並ぶ実力。さすがプラチナ級……。」
言葉には心底からの敬意が滲む。
メアリー(メアリー)は意に介さず、踵を返して馬車へ。
ただ、顔を横切る一瞬だけ、口元がほんのわずかに上がった。次の瞬間には平静へ。誰も気づかないほどに。
——商人たちの驚嘆
その時、救われた商人と御者がよろめきながら駆け寄り、地に横たわる巨怪の死骸を見て恐怖と畏敬をないまぜにした顔になる。
「天よ……あの化け物を一撃で……」
「なんて見事な冒険者たちだ! しかも女性で、この力……まさかプラチナ級……?」
彼らはあたふたと近づき、ずっしり重い金袋を両手で差し出した。
「どうか受け取ってください……命の恩人です。当然の礼です!」
白忻の目がぱっと輝き、恐る恐る手を伸ばす。顔全体が「YES PLEASE」を主張している。
「わ、わわ! 本当にいいの!?」
だがアレン(アレン)は素早く彼女の手を押さえ、きっぱり首を振る。
「不要だ。俺たちの職務だ。別の報酬は受け取れない。」
白忻はその場でほっぺをふくらませ、心の声が炸裂する。
心の声(白忻):
「うわわわわ! 目の前の真っ白な金袋ィィ! なんで断るのさぁぁ!」
商人はかえって感激し、深々と頭を下げてから、手勢を連れて慌ただしく去っていった。
アレン(アレン)はまだ未練たっぷりな白忻の腕を軽く引き、半ば押し戻すように馬車へ。
「行こう。まだ先は長い。」
白忻は遠ざかる商隊を振り返り、内なる叫びを止められない。
心の声(白忻):
「くぅ……私のチキンバケツとコーラの滝がぁぁ!!」
——馬車 · 峡谷の後
馬車が再び動き出し、砕石を踏む車輪が「ギシギシ」と鳴る。だが空気は先ほどの激戦とは打って変わって妙な重さ。
白忻は隅で膨れっ面、腕を組み、口の中で延々ぶつぶつ。
「せっかく向こうが差し出したのに、なんで受け取らないのよ。ぶーぶー……もらわなきゃ損でしょ……」
声はくぐもり、尻尾を踏まれた子猫みたいな反抗期モード。
アレン(アレン)は向かいで冷や汗。見つめられてしどろもどろ。
「そ、その……いや……」
言い訳を探すほどに口が詰まり、後頭部を余計にかくばかり。
白忻はその歯切れの悪さにますますご立腹で、ぷいっと顔を背ける。視線の先、窓辺のメアリー(メアリー)にロックオン。
メアリー(メアリー)は相変わらず腕組みで頬杖、流れる景色へ無表情……のはずが、口元がごくわずかに上がる。
白忻は目をむき、心で悲鳴。
心の声(白忻):
「えぇぇ! 笑った!? この女、笑えるの!? 絶対私をバカにしてるでしょ!!」
すぐさま直球。
「メアリー、今、笑ったでしょ!」
「……!」
メアリー(メアリー)の肩がわずかに揺れ、すぐに表情は無に戻る。冷淡で理不尽なほど堂々と。
「笑ってない。誤解よ。」
白忻は半眼でじいっと射抜く。
「……ふーん。」
疑いは晴れず、凝視を続行。
メアリー(メアリー)は平然と外へ目を戻し、横顔だけ残す。膝上で指先がコツ、と一度だけ鳴った。隠しきれない微かな愉悦。
二人の応酬を見たアレン(アレン)は、そっと目を閉じ、何も聞こえないふりに徹する。
こうして馬車は北へ揺れ進む。
峡谷は遠ざかり、視界は再び広がる。風には馬蹄と車輪の律動だけ。
この区間は大過なく。三人の臨時パーティーは、この微妙な空気を抱えたまま港町を目指す。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
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次回更新:9月21日 16:00 JST
どうぞお楽しみに!




