第10章 B 臨時パーティー結成
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——朝食後 · 城市の大通り
市集は人波と馬車の喧騒でごった返し、売り声が響き渡る。
アレン(アレン)は巨剣を背負い、安定した歩調で先を行く。
白忻は周囲をきょろきょろ見渡し、目は「買い物できる!」と輝いていた。
「まずは道具屋でポーションと巻物を補充するか?」
アレン(アレン)は真面目に問いかける。
「ふん~好きにすればいいわ。今日は金なら余ってるから、全部買い占めても余裕よ!」
白忻は顎を上げるが、内心では金袋をぎゅっと抱えていた。
心の声(白忻):
「うわわわ! 六万だもん! は、早く使いたい!!」
——道具屋
カラン、と鈴が鳴り、扉が開く。店主のオヤジは棚を拭いていた手を止め、二人を見るなりにやりと笑った。
「おぉ~小恋人さんご来店か! 昨日は大したもんだったな。大主祭を倒したって噂じゃねぇか!」
白忻:「こ、小恋人!? だ、誰がよ!」
アレン(アレン)も顔を真っ赤にし、手を振り乱す。
「ち、違います! 俺たちは仲間です!」
オヤジは一切気にせず、目を細めて下卑た笑みを浮かべる。
「へへっ、仲間ねぇ? でも昨日帰って来た時の顔、真っ赤だったじゃねぇか。もう進展してたりしてな?」
「わわわわわ! な、何言ってんのよぉぉ!」
白忻は完全に破壊され、顔は真っ赤。
アレン(アレン)は慌てすぎてポーションを落としそうになり、石像のように硬直。
「ち、違うってば! そ、そんなことあるわけないでしょ!」
白忻は机をバンと叩き、店内がシンと静まり返る。
冒険者たちが一斉に振り返った。
彼女は即座に気まずくなり、ポーションを抱えて無理やり平静を装う。
「こほん! と、とにかく補給は済んだわね! さっさと行くわよ!」
アレン(アレン)は大汗をかきながらも、うなずき、二人して慌てて店を後にした。
——仕立屋
扉を開けると、室内には布の匂いが満ちており、壁には厚手のマントや様々なズボンが吊るされていた。
白忻は最初こそ期待に胸を膨らませていたが、一周見渡した途端、顔がしょんぼりと崩れ落ちた。
「な、なによこれ!? 全部厚布じゃん! しかもほとんどズボンばっかり!」
鼻をひくつかせ、ゴワゴワの短パンをつまみ上げる。
「粗すぎでしょ! 私の愛するスポーツ短パンに比べたら最悪! こんなの拷問具じゃん!」
アレン(アレン)はきょとんとする。
「スポーツ……短パン?」
白忻は歯ぎしりし、机をドンと叩いた。
「もういい! オーダーメイドよ! 元の短パンとTシャツを完全再現するの! あれこそ最涼快、最快適なんだから!!」
アレン(アレン)は目を剥く。
「えっ!? 短パン? Tシャツ? そんなの……戦場で着られるのか!?」
受付の店員娘は一瞬驚いたが、すぐに眉を上げて笑った。
「ふふ~、そういう滑らかで伸縮性があって通気性の良い生地でしたら、特別に仕入れる必要がありますね。普通の麻綿じゃ到底できません。お値段は……もちろん高めになりますが。」
白忻は胸を張り、尊大に言い放つ。
「ふん~いくらだっていいわ! 一週間分! 七着よ! 毎日着替えるの!!」
店員は口角を引きつらせ、静かに数字を告げた。
「七着で……一万ほどですね。」
「な、なにぃ!?」
白忻は飛び上がり、顔面蒼白。
心の声(白忻):
「うわわわ! 一万!? 馬一頭買える額じゃない!?!?」
店員の目はすぐに軽蔑に染まる。心の中で冷笑した。
心の声(店員):
「ほら見なさい、この慌てっぷり……ただの貧乏人じゃない。口だけ達者なクレーマーね。」
だが次の瞬間――
「買うわ!」
白忻は勢いよく金袋を叩きつけ、ジャラジャラと金貨が溢れ出す。店員の目が眩むほどの光。
彼女は顎を突き上げ、誇らしげに言い放つ。
「ふん! 快適さのためなら、この程度の金どうってことない! 金は稼げばまた手に入る! 本小姐が七着全部いただくわ!」
店員は硬直し、顔が引きつる。
「……こ、これは……」
ボロ布の村娘風に見えた少女が、躊躇なく一万金貨を叩き出す。その瞬間、態度は一転して恭しくなった。
「かしこまりました! すぐに仕入れを進めます。最短で三日後にはお届けいたします!」
白忻は腕を組み、得意げに鼻を鳴らしたが、心の中は大荒れだった。
心の声(白忻):
「うわわわ! 一万! 一万だよぉ! 痛すぎる! でも短パンとTシャツ……私には必要なんだぁ!!」
アレン(アレン)は横で呆然としている。
「……白忻、本当にあんな短パンで戦場に出る気か?」
白忻の顔が赤くなり、慌てて顔を背ける。
「ふん! 放っておきなさいよ! 快適さが最重要なの!!」
——魔導工房前 · 午後
アレン(アレン)は黙ったまま歩いていたが、角を曲がったところで立ち止まり、真剣な声を出した。
「白忻……マントを一着買おう。」
「マント?」白忻が眉を上げる。
「そうだ。魔導繊布で織ったマントなら、防御が付与される。対魔法、防裂、防火、防水、自己修復、魔力導通まである。雨の日は雨具にもなる。」
アレン(アレン)は声を落とし、心配を滲ませる。
「昨日、あの土弾を腹に受けた時……倒れそうなくらい痛がってただろう。もうあんなの、見たくない。」
白忻は一瞬固まり、昨夜の激痛と恐怖が脳裏に蘇る。思わず肩をすくめる。
「……ふん、別に怖がってないけど?」
強がって顎を上げたが、視線は逸れていた。
心の声(白忻):
「正直……死ぬほど痛かった! 防御あればよかったのに……雨でびしょ濡れも嫌だし!」
最後には小声でつぶやく。
「……まあ、見るだけならいいわ。」
——魔導工房
符文に覆われた織機が青い光を放ちながら動いている。若い職人が黒いマントを掲げた。布は軽やかでありながら、確かな魔力を宿している。
アレン(アレン)は自然に前へ出て、値段や性能、保証を確認する。
「いくらだ?」
「八千ソルです。」と職人は即答。
白忻の心臓がひゅっと縮む。
心の声(白忻):
「うわわわ! 八千!? 短パンで一万使ったのに!? 破産一直線じゃん!!」
アレン(アレン)は考え込んで頷いた。
「よし。これは俺が――」
「ダメ!」白忻は遮り、両手を腰に当てて顔を真っ赤にした。
「ふん! 男に奢られるなんてまっぴらよ! 私は自分で払うの!」
アレン(アレン)は驚き、苦笑混じりに言う。
「……ただ、少しでも金を残して欲しかっただけだ。短パンで一万も使ったんだし……。」
「わ、私は好きでやってるの! 金なんて稼げばいいのよ!」
白忻は金袋をぎゅっと抱き、必死に強がった。
職人はこっそり吹き出す。
(どう見ても小カップルの痴話喧嘩だな……。)
最終的に、白忻は歯を食いしばり、金袋を叩きつけた。
「買うわ! 今すぐ仕上げて!」
——工房の外
新しいマントを羽織った白忻。布は軽く、符文がほのかに光る。引っ張っても破れず、魔力の流れも滑らか。心の中では大満足だが、顔は冷めたふりをしている。
「ふん~まあまあね。仕方なく合格ってとこかな。」
アレン(アレン)はその様子を見て、口元を和らげた。
「……よく似合ってる。」
白忻の耳が赤くなり、慌てて顔を背ける。
「ふん! 見た目じゃないわよ! 実用性のためなんだから!」
心の声(白忻):
「うわわわ! 彼が勧めなければ買ってなかった……ずっと私のこと考えて……くっ! 心臓が爆発しそう!!」
彼女は必死にクールを装いながら、マントのフードを深くかぶった。
——数日後 · ギルド仕立屋
「こちらがご注文の七着特製ルームウェアです。」
店員は布で包んだ衣装の束をカウンターに差し出した。白忻の目は輝き、すぐに広げて確認する。滑らかで通気性抜群の布を触った瞬間、感嘆の息。
「うわわわ! 完璧! 短パンも最高! Tシャツも涼しすぎ!」
大事そうに衣服を抱え、鼻歌交じりでギルド宿舎へ帰る。部屋に入るなり着替え、鏡の前で二回転。
「ふんふん~やっぱり私のセンスは最高ね!」
浮かれていた時、廊下から声がかかる。
「白忻さん、会長が応接室でお待ちです。新しい任務の話だそうです。」
「えっ?」白忻は固まり、顔がしゅんと垂れた。
「……また仕事かぁ……。」
足を引きずり、嫌々応接室へ向かう。
心の声(白忻):
「うわわわ! せっかく新しい服に着替えてベッドでゴロゴロしようと思ったのに! やっぱりギルドはブラック企業じゃん!!」
——応接室
扉を押し開けた瞬間、慣れた圧迫感が襲いかかる。
高い背もたれの椅子に会長が端然と腰掛け、冷たい灰色の瞳が射抜くように向けられた。
「……久しぶりだな。」会長は低く言い、白忻の全身を上から下まで見渡した。
白忻の背筋が強張り、思わず衣服の裾を引っ張る。
「これが……お前が一万も払って仕立てた服か?」
「う、うわわわ!? だ、誰がそんなこと言ったのよ!!」
白忻は慌てふためき、顔を真っ赤にして声を裏返した。
会長は動じず、淡々と告げる。
「仕立屋の店員は私の友人だ。最近、一万金貨を投じて妙な短い上着と……あまりに短すぎるズボンを仕立てた奇人がいると聞いて、真っ先にお前を思い出した。」
「う、うわわわわ! へ、変な人じゃないもん! こ、これは最新の流行なの!!」
白忻は必死に否定しつつ、手で短パンの裾を押さえ、恥ずかしさで机の下に潜り込みたい気分だった。
会長はただ冷ややかに一瞥し、それ以上追及せず話を切り替える。
「……さて、本題に入ろう。」
その時、アレン(アレン)が扉を開け、会長に礼をした。空気は一瞬で張り詰める。
会長の声は低く、抑えられた厳しさを帯びる。
「一ヶ月前、ギルドは黄金級パーティー『銀翼』を北の都市ミルナ外港近くの古代遺跡へ派遣した。だが彼らは未だ戻らず。二週間前に追加の偵察隊を送ったが、それも消息を絶った。」
白忻の顔が青ざめる。
「……そんなに帰って来ないって……まさか……」
会長は静かに頷いた。
「ギルドの判断では、『銀翼』はすでに全滅した可能性が高い。」
白忻のまぶたが震え、心臓がドクドク暴れる。
「えええ!? じゃ、じゃあなんで私たち!? まだ大主祭の戦場から生還したばかりだよ!? 他に人はいないの!?」
会長の声は静かだが断固としていた。
「高位冒険者の大半は王都に召集されている。残る白銀や黄金級では荷が重い。『銀翼』ですら帰還できなかった。彼らの代わりに向かえば、同じ運命を辿るだけだ。」
灰色の瞳が白忻を射抜き、さらに重く告げる。
「だが、お前たちは違う。森で伝説級の魔物・大主祭を討ち取ったのは、白忻、お前とアレンだけだ。私は信じている。」
白忻は言葉を失う。断りたかった。いつものように「ふん~そんな面倒ごと押し付けるな」って顔をしたかった。
だが脳裏には浮かんでしまう。――初めて会った時、会長が自分を庇ってくれたこと。伯爵戦で命懸けで守ってくれたこと。
「……くそっ。」彼女は俯き、小声で吐き捨てる。
顔を上げた時には、渋々ながらも瞳に決意の光。
「ふん~しょうがないわね! 本小姐が引き受けてあげる! 後悔しても知らないから!」
会長はわずかに頷き、口元に微かな弧を描いた。
——新たな任務が下された。
応接室の空気は重々しく静か。会長は二人を見据え、冷たくも揺るぎない声で告げる。
「今回の任務は二人だけではない。もう一人、同行する。」
白忻は眉を跳ね上げ、疑わしげに問う。
「え? 誰? 他にも行くの?」
その瞬間、重い扉が軋む音を立てて開いた。聞き慣れた足音と共に、端正な影が入ってくる。
「……な、なにぃ!? あんた!?」
白忻は思わず叫ぶ。――普段は受付に座り、にこやかに微笑む受付嬢メアリー(メアリー)。
相変わらず端正な制服姿だが、静かな眼差しの奥に潜む圧力は大広間で見せたものとは全く違った。
「受、受付嬢まで任務に!? 会長、冗談でしょ!?」
白忻は慌てて叫ぶ。
会長は首を横に振り、厳しい目を向けた。
「これは本人の意思だ。受付は彼女一人ではない。代わりはいる。」
白忻はメアリーを訝しげに見つめ、心の声を漏らす。
心の声(白忻):
「……本当に戦えるの? いつも笑顔で愛想振りまくだけの人でしょ……?」
その瞬間、メアリー(メアリー)は一歩前へ出た。笑顔のまま、だが声には微かな火花。
「白忻さん、どうぞよろしくお願いします。」
右手を差し出す。
白忻もつい自然に手を伸ばした――次の瞬間、手のひらが鋼の鉗子のように締め上げられ、関節がきしんだ。
「い、痛っ!? な、なんでこんな力……!」
白忻は真っ青になりながらも、必死に握り返す。
「ふ、ふん! この程度で……負けるもんですか!」
しかし数秒もせず、圧倒的な力に押し潰され、片膝をつき、ついに叫んだ。
「い、痛い痛い痛い! 放してってばぁ!!」
「もういい。」会長の冷たい声。
メアリーは優雅に手を離し、また微笑みに戻った。
白忻の指は痺れ、涙目で足を踏み鳴らす。
「うわわわ! 卑怯でしょ! 不意打ちなんて卑怯すぎ!」
会長は冷淡に言った。
「侮るな。彼女はかつてカイオウと肩を並べた実力者。元は正真正銘のプラチナ級武闘家だ。自ら退いたから今は受付にいるが、本気なら今の地位はもっと高かった。」
「な、なにぃ!?」白忻の顎が外れそうになり、脳裏に、かつてお姫様抱っこで担がれた光景が蘇る。
「そ、それで私を軽々と運べたのは……元から怪力だったからかぁ!!」
メアリーは礼儀正しく頷き、灰色の瞳に戦意を宿す。
「改めて、よろしくお願いします。」
手の痺れをさすりながら、白忻は肩を縮め、心の中で絶叫した。
心の声(白忻):
「うわわわ! やばい! 受付嬢、想像の百倍怖いじゃん!!」
応接室の空気はさらに重くなる。会長は三人を見渡し、羊皮紙を閉じた。声は冷たく鋭い。
「決まりだ。白忻、アレン、メアリー――お前たち三人で臨時小隊を結成し、ミルナ港都市外の古代遺跡へ向かえ。銀翼の行方を探り出せ。」
白忻は思わず口を開いたが、会長の灰色の瞳に射抜かれ、飲み込むしかなかった。小声でぶつぶつ。
「……うわわわ、今度こそ逃げ場なしじゃん……」
会長はメアリー(メアリー)に視線を移す。
「出発前に、ミルナの情報を簡単に伝えてやれ。」
「承知しました。」メアリー(メアリー)は静かに頷き、再び端正で柔らかな雰囲気に戻った。
「ミルナは北方最大の港町です。人口が多く交易で栄え、帝国軍も駐屯しています。表向きは治安良好ですが、実際は闇市が暗躍する混沌の街。公会の身分証なしでは生き抜けません。古代遺跡は港の外れ、海蝕崖の下に眠るとされ、失われた魔導文明の残骸が眠る――危険地帯です。」
白忻は頭がくらくらし、小声で愚痴る。
「うわわわ……聞くだけで面倒くさいんだけど……」
メアリー(メアリー)はにこやかに締めくくった。
「明朝出発です。今夜のうちに荷物と補給を整えておきましょう。」
アレン(アレン)は頷き、低く答える。
「了解。準備する。」
白忻は椅子にぐったりもたれ、無力に呻く。
「はぁ……せっかく短パンと服を買ったのに、まだ楽しんでないのに遠征かよ……」
心の声(白忻):
「うわわわ! 新しい服でゴロゴロする時間もないとか……やっぱギルドってブラック企業じゃん!!」
彼女は隣をちらりと見た。憨厚で頼れる戦士と、見た目は淑やかだが自分の手を握り潰す受付嬢。
(……はぁ、このパーティ、前途多難すぎる……)
会長は三人を静かに見つめ、口元に微かな笑みを浮かべた。
夜が訪れ、ギルドの灯が一つずつ灯る。
白忻は新しい服を抱え、アレン(アレン)は黙々と武器を点検し、メアリーは抜かりなく補給を整える。三人はそれぞれの思惑を胸に抱きつつ、明日を迎える。
——第10章 · 終
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。 みなさんの応援が、次の物語を書く大きな力になります。 次回更新:9月21日 10:00 JST どうぞお楽しみに!




