第10章 A 臨時パーティー結成
みなさん、こんにちは。
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——ギルド · 朝
一晩のポーションと巻物による治療で、白忻とアレン(アレン)はまだ少し疲労が残っていたが、傷口はほとんど癒えていた。だが老魔導士カイオウ(カイオウ)は容赦なく命じた。
「お前たち二人、三日間はおとなしく休め。無理をすれば、老夫が直々に縛り上げるぞ。」
白忻は反論しかけたが、老人の厳しい眼差しに射抜かれ、結局は首をすくめて鼻を鳴らした。
「……わかったわよ。」
翌日。陽光が高窓から差し込み、冒険者ギルドの大広間を照らす。
白忻は長椅子に丸まって、退屈すぎてカビが生えそうな顔。指で机に円を描いたり、あくびをしたり、心の中でぶつぶつ文句を言う。
「うわわわ……休暇の方がモンスター退治よりきついってどういうこと!? せっかく異世界に来たのに、ただぼーっとするなんて、これが冒険者ライフなの!?」
そのまま突っ伏して眠ろうとした瞬間、足音が近づく。
「あっ、その……お、 おはようございます、白忻さん!」
白忻がガバッと顔を上げる。普段は彼女の初心者装備を笑っていた冒険者じゃないか。なのに今日は緊張しきりで、手を動かすことすらできず、大人物にでも会ったかのようにおずおずと挨拶してきた。
「え?」白忻が呆然とする間に、さらに二、三人の冒険者が集まってくる。
「お疲れさまです! 昨日の大勝利、聞きましたよ! 本当にすごい!」
「これからもよろしくお願いします! 同じ街にいられるなんて光栄です!」
彼らの笑顔は引きつり、目には畏怖が浮かんでいた。まるで一言でも失礼を言えば、彼女に吹き飛ばされるとでも思っているかのように。
白忻の頭の中は真っ白。
「……はぁ??」
心の声:「ちょっとちょっと! 数日前は『布衣村娘』って笑ってたじゃん! なんで今日は銅像でも立てる勢いなの!?」
疑いの視線を残しながら、彼女はすぐに受付嬢メアリー(メアリー)のところへ駆け寄った。
「ちょっとメアリー! 一体どうなってるの!? みんな女王様でも見るような目で私を見てるんだけど!」
メアリーは相変わらず落ち着いた笑みを浮かべながら、口元にいたずらっぽさを少しだけ滲ませる。
「まあ、ご存じなかったのですね? 昨日の討伐戦、もう街中に広まっていますよ。」
「討伐戦?」白忻が瞬きをする。
「ええ。白忻さんとアレン(アレン)さん、二人で『ゴブリンの大主祭』を討ち取ったとか。あれは伝説級の魔物です。その戦果だけで、冒険者たちは腰を抜かしましたよ。」
さらに微笑んで付け加える。
「しかも、ピトス(ピトス)一行が証人です。あなたの“連続天罰魔法”が戦場全体を雷火の洪流に変えた、と。そんな力を持つなら、この街はあなたを新たに評価し直すしかありませんね。」
「……はぁっ!?」
白忻はその場で石化、目は銅鑼のように見開かれる。
心の声:「うわわわわ! ちょっと待って! 天罰? 洪流? そんな誇張したっけ!? 私はただ必死に魔法を乱射しただけだよ!? なんで“秒で天地を制す”みたいに伝わってるの!? 特撮エフェクトまで盛られたら、明日には叙事詩にされちゃうじゃん!!」
彼女は頭を抱えてぐるぐる回る。周囲の冒険者たちは遠巻きに眺め、ただ「全属性魔女」の威圧感に震えていた。
——こうして、白忻の“伝説”は半日のうちに街全体へと広まった。
——ギルド · 午後
白忻は角の長椅子で舟を漕ぎ、瞼は机に落ちそうになっていた。
そのとき、大広間にメアリーの澄んだ声が響く。
「白忻さん、カウンターまでお願いします。」
「……え?」白忻は寝ぼけ眼で顔を上げ、心の中で文句を言う。
心の声:「うわわ……もうちょっとで寝落ちだったのに! 今度は何よ……また面倒な書類でも書けってこと?」
ダルそうにカウンターへ向かい、顎を手にのせて不満げに言う。
「なによ……? 一気に説明してよ、まだ寝たいんだから。」
メアリーは相変わらずプロの笑みで、冷静に告げる。
「昨日の討伐報酬、まだお渡ししていませんでした。」
「報酬?」白忻は首を傾げ、気の抜けた声を出す。
「ふーん、新人任務ならせいぜい数千でしょ? まあいいわ、いくらでも受け取るけど。」
その気のない返答をよそに、メアリーは淡々と数字を告げる。
「六万です。」
「……は?」
白忻の頭が真っ白になり、次の瞬間、目をカッと見開いた。
「ろ……六万っ!?!?」
声が一気に跳ね上がり、大広間の視線が集中する。
心の声:「うわわわわ! 六万!? 小遣いなんてもんじゃない、車も家も買える額だよ!? ちょっと待って、私昨日、国の半分でも滅ぼしたっけ!? なんで報酬が十倍跳ね上がってるのよ!!」
しかしメアリーは涼しい顔で続ける。
「はい。昨夜、お二人が部屋に戻った後、会長が魔導通信で帝国の特使に報告を上げました。大主祭のコアに研究価値があると聞いた帝国は、即座に買い取りを決定。六万はその前金としてギルドが立て替えたものです。どうぞお受け取りください。」
白忻は口をパクパクさせたまま、やっと震える手で袋を受け取る。心臓が胸を打ち破りそう。
心の声:「うわわ! 六万だよ! 現代なら半年は仕事辞めて遊べる額! いや、私はもう異世界にいるんだけど……でも! これでチキンとコーラを死ぬまで食べ放題じゃん!? うわわわわ!!」
顔を真っ赤にし、金袋を抱えながらも虚勢を張る。
「ふ、ふん……六万くらい、大したことないわ! 別にどうってことないもん!」
しかし背を向けると、足取りはふわふわ浮き、口元は勝手に緩んで笑いが漏れそうになる。
——この瞬間、白忻は初めて「伝説の舞台」に立たされた実感を抱いた。
——ギルド宿舎 · 夜
金袋を抱えたまま、白忻はわざと冷たい顔で歩き、足取りもゆっくり。六万ソルなど取るに足らぬ金額だと演じていた。
「ふん、六万ごときで大騒ぎするなんてね。」
しかし部屋に戻り、ドアを閉めた瞬間——
「わああああああああ!!!」
金袋をベッドにぶちまけ、金貨が「ジャラジャラ」と舞い散る。
白忻は目を輝かせ、その上に飛び込み、左右にゴロゴロ転がる。
金貨がぶつかり合う音は、彼女だけの祝賀の楽曲となった。
心の声:「うわわわ! 本物だよね!? ゲームのダミーコインじゃないよね!? 六万! 六万!!」
彼女は金貨を抱え、足をばたつかせ、笑いすぎて頬がひきつる。
「えへへへ……これだけあればチキン山にチキン海、コーラの滝だってできる! うわわわ!」
次々と妄想が広がる。
——六万で小屋を買い、ハンモックで徹夜アニメ視聴;
——いっそフライドチキン屋を開いて毎日試食し放題;
——金貨風呂に浸かって「社畜人生勝利組!」と叫ぶ姿まで浮かんだ。
笑い転げ、涙までにじみ、金貨を高々と掲げる。
「……これ、私が自分で勝ち取ったんだ。」
一瞬の静けさに、胸が甘酸っぱく締めつけられる。
だが三秒後には再び顔を赤くし、金貨を抱いて転げ回った。
「ふんふんふん~! 今日から私は輝く小金持ちなの!!」
——その夜、部屋に響いたのは寝息ではなく、金貨の転がる音と、社畜から「成り上がり」へと化した少女の高笑いだった。
——夜 · ギルド宿舎の廊下
深夜。廊下は油灯の揺れる微光だけが残り、静まり返っていた。
アレン(アレン)は小瓶の薬草オイルを手に、眉をひそめながら白忻の部屋の前で足を止める。
心の声:
「昨日、あんなに重傷を負ったのに……ギルドのポーションだけで本当に大丈夫か?
ちょっと確認するだけ……顔を見るだけでいい。休めって伝えるだけだ。」
拳を上げ、軽くノックしようとした、その時――
中から妙な音が漏れてきた。
「カランカランカランッ――! ひひひひひ、へへへへへ!!!」
アレン(アレン)は硬直し、頭皮が総毛立つ。
心の声:
「……な、なんだ!?
魔法を修練してる音じゃない……本をめくる音でもない……。
まるで悪霊が狂ったように笑ってる!? しかも金属音まで!?
まさか……大主祭の怨霊が取り憑いたのか!?」
息が止まり、額に冷汗がにじむ。思わず巨剣の柄を握りしめた。
部屋の中からは、さらに怪しい楽曲が続く。
「うわわわわ! フライドチキン山! コーラの滝! あたしは財テク自由よ、ははははは!!!」
ジャラジャラと金貨が転がる音も混じっていた。
アレン(アレン)の瞳孔が震え上がる。
心の声:
「……悪霊……がチキンの話を!?
だ、駄目だ! こんな怪異、聞いたことがない!
まさか……もう乗っ取られてるのか!?」
彼は手を上げ、葛藤の末に、控えめに扉を二度ノックした。
「し、白忻……? だ、大丈夫か?」
部屋の中は一瞬で静まり返る。
すぐに「ドタドタドタッ」と慌てた物音。まるで何かをベッド下に押し込んでいるようだ。
そして、わざとらしく落ち着いた声が返ってきた。
「ふん! な、何でもない! 魔法の修練してただけよ! 邪魔しないで!」
アレン(アレン)は拍子抜けしつつ、安堵の息を漏らす。
「そうか……ならよかった……無理はするなよ、休めよ……」
頬を赤らめたまま、ゆっくりと立ち去っていった。しかし心はまだざわついている。
心の声:
「でも……今の声……本当に修練だったのか?
どう聞いても……金貨とパーティーしてる音にしか……。」
廊下は再び静寂に戻る。
一方その頃、白忻は部屋の中で金袋を抱きしめ、真っ赤な顔で金貨の山に潜り込んでいた。
心の声(白忻):
「うわわわ! 危なかったぁ! もう少しでバレるとこだった!
もしアレンに、私が金貨で転げ回ってる姿を見られたら……イメージ崩壊間違いなし!!」
顔を両手で覆いながらも、口元からは笑いが止まらない。
——翌朝 · ギルド食堂
朝日がステンドグラスを透かして降り注ぎ、食堂にはパンとスープの香りが漂う。
冒険者たちが長卓に集まり、昨夜の戦果や噂話に花を咲かせていた。
白忻はトレイを持って、死んだ魚のような目で席に崩れ落ちる。
「……うわわわ……このパン、なんでこんなに硬いの? 煉瓦でも噛んでる気分……。」
アレン(アレン)は対面に座り、いつも通り端正に食事を進める。
やがて口を開いた。
「白忻……昨夜……」
白忻は即座に顔を上げ、猫のように警戒した目を向ける。
「な、なによ!? 別に何もなかったわよ! 魔法の修練してただけ! そう、修練! ふん!」
まるで早口言葉のようにまくしたて、顔は真っ赤。
アレン(アレン)は耳まで染めながらも、慎重に言葉を選ぶ。
「ただ……部屋から変な音が聞こえたし……笑い声もしてたから……心配になって。」
白忻の手が震え、スプーンが鼻先に刺さりそうになる。慌てて姿勢を正し、強がって鼻を鳴らす。
「は、はぁ!? 幻聴でしょ! あんた疲れてるんじゃないの!? 悪霊なんているわけないでしょ! ふん!」
心の声(白忻):
「うわわわ! やばい! バレてた!? 駄目駄目駄目! 絶対に金貨ダイブしてたなんて認められない!!」
アレン(アレン)は彼女の強がりに苦笑し、話題を変える。
「そういえば……昨日、報酬もらったよな。六万ソル。大金だ。何か欲しい物はあるか? 装備や服、薬品とか、案内するよ。」
白忻は一瞬止まり、頭に浮かぶのは数日着続けた米色の布衣と汗で蒸れる自分の姿。衣服の裾を引っ張り、不満げに眉をしかめる。
「……そうね、この布衣、マジで粗くて暑いのよ。肌も擦れて痛いし。歩くたびベタベタして……。」
そして視線を逸らしつつも、口元に笑みが漏れ、目が輝く。
「ふん……せっかくだから服でも見に行くわよ。どうせ金なら余ってるし!」
心の声(白忻):
「うわわわ! やっと“初心者布衣”とおさらばできる! カッコいいマント! 光るブーツ! いや、スカートも……ち、違う! 楽しみにしてるんじゃなくて、実用性のためだからっ!!」
アレン(アレン)は安心したように笑い、頷く。
「よし。じゃあ食後に市へ行こう。冒険者用の専門店がある。値は張るが、品質は確かだ。」
白忻はツンと顔をそむけ、冷たく装う。だが口元はどうしても緩みっぱなし。
「ふん~どうでもいいけど。六万なんて小銭同然だし。」
心臓はドキドキ高鳴り、脳内では早くも妄想が暴走していた。
——マントを翻して入場、周囲が「魔女様!」と喝采。
——黒いロングブーツで「カツカツ」と音を響かせ、BGM付きで登場。
——鏡の前でくるりと回る自分。
「ふふっ……」思わず笑いが漏れる。慌てて咳払いでごまかす。
「ごほっ! スープが熱かっただけよ!」
アレン(アレン)は何も言わず、柔らかい笑みを浮かべた。
——こうして二人は「初めての買い物体験」を計画し、朝食の笑いとツンデレの応酬の中で幕を開けた。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
みなさんの応援が、次の物語を書く大きな力になります。
次回更新:9月20日 15:00 JST
どうぞお楽しみに!




