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第9章 A・森の対戦

森での小競り合いを越えた直後、白忻ハイシンとアレン(アレン)の前に現れるのは、壊走寸前のピトス(ピトス)一行と、森を呑むゴブリンの大主祭。虚勢と恐怖、決意と一歩。剣と呪の火花が散り、白忻ハイシンの勘が命を拾う。ここから戦況は乱高下し。

第9章・森の対戦


木漏れ日の差す林道を、白忻ハイシンとアレン(アレン)は言い合いをしながら歩いていた。

ピトス(ピトス)一行から受けた屈辱の空気も、ようやく少しずつほどけていく。

彼女はなお強がって言う。「ゴブリンのキャンプなんて怖くないし!」だが実際には、手のひらにじっとり汗がにじんでいた。


そのとき――前方の森から鼓膜を揺らす轟音。鳥が一斉に飛び立ち、濃い煙と炎柱が空へ伸び、悲鳴が混じる。


アレン(アレン)の顔つきが険しくなり、巨剣を握りしめて低く告げた。

「戦闘の音だ……すぐ前方だ!」


白忻ハイシンの心臓がドクンと跳ね、喉が焼けつく。

心の声(白忻):(うわわわ! これってアニメでよくある“この先ボス戦”ってやつ!? 私、まだ新米装備なんだけど!)


彼女が反応するより早く、アレン(アレン)が鋭く命じる。

白忻ハイシン、離れるな!」


二人は足を速め、森の奥へ。

木陰が揺れる合間に見えたのは、圧倒的な敗勢へ追い込まれたピトス(ピトス)一行――


ピトス(ピトス)はよろめき膝をつき、鎧は砕け、瞳には恐怖が満ちる。

シュウリ(シュウリ)は血まみれで倒れ、杖は折れ、息も細い。

他の仲間も地に伏していた。


そしてそのすべてを見下ろすように、悪夢めいた巨影。

ゴブリンの大主祭が杖を高々と掲げ、黒と灼紅の光をまとい、森一帯を呑み込まんばかりに渦巻いている。


――戦闘開始。


轟音が森の静寂を粉砕した。折れ枝と燃え落ち葉が吹き飛び、空気そのものが灼熱と冷気に引き裂かれる。


白忻ハイシンとアレン(アレン)が空き地へ飛び込むと、そこはほとんど虐殺の光景だった。


ピトス(ピトス)は半膝で、剣は欠けだらけ、顔から血の気が消えている。

シュウリ(シュウリ)は焦げた土に横たわり、護符は砕け、唇から血が滲む。

他の仲間も動かない。


廃墟と化した中央で、ゴブリンの大主祭が漆黒の杖を突き立てる。

灰白の肌には妖しい紋が走り、眼窩には血のような紅光。口から零れる呪は亡霊の囁きのように低く共鳴した。


アレン(アレン)の瞳孔が収縮する。

「退けない。ここで俺たちが倒れれば、誰も生き残れない。」


巨剣を掲げ、一歩を踏み出す。胸は灼けるほど熱いが、決意は微動だにしない。


白忻ハイシン、ついて来い!」

咆哮とともに踏み込み、鉄塔のように突撃――


「おおおおっ!」

巨剣が風を巻き、一直線に大主祭の胸を狙う。


大主祭は嘶く笑いをあげ、杖を一閃。土石と黒炎が凝縮し、巨大なエネルギー塊となって頭上から叩きつけられる!


爆撃が空き地の中心を穿ち、破片と炎が雨のように降る。

アレン(アレン)は両腕で剣を受け、正面から押し返す。脚は土へめり込み、鎧は火光の中できしんだ。


「アレン!!」白忻ハイシンは息を呑む。

炎霧にさらされても、一歩も退かぬ背中。


心の声(白忻):(ひゃぁぁ! これが本物の冒険者!? 格好よすぎ……って何考えてんの私!)


次の瞬間、大主祭が圧をかけるや、アレン(アレン)は吠え、巨剣を横へ叩きつけた。

炎と土の弾が一閃で砕け、光片となって散る!


白忻ハイシンは呆然とし、膝が抜けかける。

だが首を振り、胸奥の「見てるだけ」を押し込めた。


「私も……仲間でしょ!」

両手を掲げ、指先に青白い光。詠唱とともに風刃と火球が連射される!


バシュッ――炎が煙を裂き、風刃が大主祭の盾を斬り裂く。

威力はアレン(アレン)に及ばずとも、確かに敵の手を鈍らせた。


「はぁっ!」アレン(アレン)が間を詰め、剣と杖が激突する。


白忻ハイシンは荒い息を吐き、額に冷や汗。

だが――転移直後の自分とは違う。道中での小競り合いが、彼女を「戦い」に慣らしていた。

震える両手でなお魔力を絞り出す。


心の声(白忻):(怖くても前に出る! これは私の初任務! 徹夜上等の社畜が、ゴブリンの大主祭ごときで引くもんですか!)


煙が渦巻き、戦況はさらに熱を帯び――


――戦闘続行。


大主祭は杖を掲げ、灰白の肌が炎光を受けて妖しく光る。

剣撃のたびに鼓膜を打つ轟音。白忻ハイシンの風刃と火球がしつこく割り込むにつれ、呼吸は荒く、額に青筋が浮く。


「鬱陶しい虫め……」

血紅の双眸が白忻ハイシンを捉える。

「――死ね」


杖が地を叩いた瞬間、空き地全体が震え、空気が裂ける。


白忻ハイシンの産毛が総立ち、心臓がきゅっと縮んだ。

第六感が怒号する。足元――危険!


「わわわわっ!」

彼女は悲鳴とともに横へ転がり、混乱のまま風の力で身体を押し流す。


直後、ドン!

さっきまで彼女がいた場所から、槍より太い土槍が突き上がり、石刃の穂先で空を割った。


「ひぃぃぃ――!」

白忻ハイシンは真っ青になって尻もちをつく。

心の声(白忻):(あぶなっ! 今の、串刺しコースじゃん! やっぱ女の勘、侮れない! 死ぬとこだったってば!)


震える土槍を見て、仲間が貫かれる凶景がよぎり、背筋が凍る。


それを見たアレン(アレン)の眼が、烈火のごとく燃え上がった。

「……外道が!」


大地を強踏して陥没させ、巨剣を振りかざす。

「相手は俺だぁぁ!!」


怒号が林間に反響し、鳥がまた飛び立つ。

暴風のような連撃が叩き込まれ、

――ガン! ガン! ガン!

大主祭は杖で受けるが、一撃ごとに腕が沈み、身体がのけぞる。


「ぐっ……!」

ついに盾が裂け、杖頭の符文光が不安定に明滅。


アレン(アレン)は奥歯を噛み、浮き上がる筋で両腕を締め上げ、渾身で振り下ろした。


ドオォン――!


衝撃は怪物の体を打ち抜き、

巨体は二本の大木を砕いてなお飛ばされ、三本目に叩きつけられる。

幹が大きく揺れ、葉がざわめき落ちた。


大主祭は濃い黒血を吐き、焦げ土に滴らせる。

「げほっ……げほ……!」

立ち上がるも、冷酷さは憤怒に呑まれ、嗄れた声で叫んだ。

「貴様ら……下賎なる人間風情がぁ!!」


森の陰風が一段と強まり、怒気が一帯を呑み込まんと膨れ上がる――。


——ピトスの愚動


ピトス(ピトス)は両手を震わせ、信じられないものを見る顔をしていた。

目の前の光景は、彼の認識を根こそぎひっくり返す。


「な、なんだと……?

アレン(アレン)のやつが……大主祭を押し返しただと!?

それにあの白髪の女魔法使い、敵の動きを乱して、攻撃まで先読みしてやがる……。

こいつら……一体何者だ!」


胸の奥を強く蹴り上げられたような屈辱。自尊と羞恥が燃え上がり、火柱になる。

「だめだ……このままじゃ終われねえ! ここで見せ場だ、キルをもらって勝ちを奪い返す!」


「おおおおおっ!!!」

ピトス(ピトス)は喉が裂けるほど吠え、アレン(アレン)に吹き飛ばされてまだ体勢の整わないゴブリンの大主祭へ一直線。

足取りは不格好、顔は凶相。無謀な猪突猛進。


アレン(アレン)の顔色が変わり、怒声が飛ぶ。

「ピトス(ピトス)! やめろ! 突っ込むな!」


だがピトス(ピトス)は聞く耳を持たず、むしろ加速する。

アレン(アレン)は眉根を寄せ、不吉な予感に血の気が冷えた。

「まずい……このままだとカウンターを食らう……!」


彼はすぐさま踏み出し、ピトス(ピトス)を追って駆ける。


大主祭は血紅の眼を細め、その滑稽な光景を見下ろした。

ちっぽけな人間が、ボロの剣を振り回して原始人さながらに突っ込んでくる。


「……救い難い愚か者だ。」

口端がつり上がり、軽蔑があらわになる。


杖が微かに震え、周囲の空気が一気に収束、暴風の渦となる。


凶悪な風刃が弾け、正面からピトス(ピトス)を叩きつけた!


「ぐあああああっ!!」

無防備の彼は大きく吹き飛び、鎧はガシャリと砕け、破れ袋のように逆方向へ転がる。


「ピトス(ピトス)!」

アレン(アレン)は避けきれず、飛んできた巨体をまともに受けて押し倒された。


鈍い唸りとともに地面へ叩きつけられ、アレン(アレン)は胸を強く打ち、巨剣も手を離れかける。

ピトス(ピトス)は四肢を投げ出し、完全なるお荷物へ。アレン(アレン)はその下敷きになり、顔が曇る。


白忻ハイシンは唖然。こめかみに青筋。

心の声(白忻):(うわわわ! この人、完全にデスしに来たでしょ!? 援護どころかアレンを巻き込んで転倒! お荷物、足手まとい、豚チーム集合ぅ!)


大主祭は嗄れた笑いを漏らし、血紅の瞳に嗜虐の閃きを宿す。

「これが人間だ……愚かで、醜く、脆弱。」


――戦況は、再び危地へ。


——白忻ハイシンの危機


大主祭の視線が白忻ハイシンに突き刺さる。狩人が獲物を見定める冷光。

両手で杖を握り、喉の奥から低い詠唱が響いた。


ドン、ドン、ドン――

地面から凝集した巨大な土弾がいくつも浮上し、圧し掛かる気圧とともに白忻ハイシンへ殺到する!


「まずい!」

白忻ハイシンは瞳を見開き、反射的に足元へ風元素を叩き込む。

身が跳ね、残光を引く高速のステップで空き地を駆け抜け、土弾の連打を紙一重で回避。


心臓は暴れ、額の汗が滴り落ちる。

心の声(白忻):(うわわわ! 攻撃えぐすぎ! これ新手村のボスじゃない! レイド全滅級の超必でしょ!)


だが慌てるあまり、前方の瓦礫の遮蔽物を見落とした。

ドン! 背後に隠れた小型の土弾が唸りを上げ、白忻ハイシンの腹部を直撃!


「ぐっ……ああっ!」

鉄槌のような痛みが内臓に叩き込まれ、顔面から血の気が引く。腹を押さえ、よろめき、ついに膝をついた。


白忻ハイシン!」

アレン(アレン)の叫びは喉を裂くほど。

ピトス(ピトス)に押さえつけられ、動けないまま、少女が崩れ落ちるのを見て怒りと自責が胸を焼く。

「大丈夫か!」


白忻ハイシンは全身を震わせ、声も出せず、顔を上げることすらできない。


大主祭は好機を嗅ぎ取り、口端に冷酷な笑み。

「卑小な人間よ……滅びろ。」


杖が高く掲げられ、大地が狂ったように震える。

巨大な土槍が形を取り、倒れた白忻ハイシンへと狙いを定めた。


「彼女に触るな!!」

アレン(アレン)は歯を食いしばって吠え、ピトス(ピトス)を思い切り突き飛ばすと、身を翻して剣を掴み突進!


迫る剣気に、大主祭の詠唱が途切れ、土槍は音を立てて崩れ散る。


「忌々しい!」

大主祭が杖を薙ぐ。瞬時に暴風が爆発し、渦の一撃がアレン(アレン)を襲う。


両手で大剣を噛み締めるように受け、泥土をえぐる深い軌跡を引きずりながらも踏みとどまる。

胸が詰まる痛み。それでも歯を食いしばって耐える。


まだ風の余波が残るうちに、アレン(アレン)は跳躍、一気に間合いを詰めた。

「食らえ!」

掌に火の魔力を収束。刃に導かせた火球が至近で炸裂する!


烈火が面前で弾け、大主祭は避けきれず、炎光に頬を呑まれた。

巨体は数度転がり、地面へ叩きつけられる。


「今だ!」

荒い息を吐きつつ、アレン(アレン)は剣を構え、畳みかけの一撃で決めにいく――


――だが、それは罠。


「フッ……愚かな。」

大主祭は口端から血を滲ませながら、嗤うように囁く。


アレン(アレン)の足元に、怪しげな紋が浮かび、瞬時に輝いた。

禁錮術。

鎖状の土元素が脚へ絡みつき、動きが鈍る。


「しまった!」

大主祭は地を叩き、風の推進で跳ね起きると、杖を振り下ろしてアレン(アレン)の腹へ叩き込む!


「ぐっ――!」

鈍い衝撃に身が反り、続けざまに側頭部を打ち付ける一撃!

バキンッ!

アレン(アレン)は大きく弾かれ、地面に叩き落ち、手の剣が滑りかけた。


「だめ!」

白忻ハイシンは腹の激痛に耐え、目を見開く。

「このままじゃアレン(アレン)が殺される!」


彼女は震える腕で身体を支え、汗を滴らせながら印を切る。

「いっけぇぇぇ――!」

数十本の水針が空中に凝集し、冷光を帯びて一直線に大主祭の背へ!


空気を裂く水針が肩と背甲を正確に穿ち、その動きを一瞬鈍らせる。


「なに……!」

大主祭は振り返り、苛立ちと警戒の色を宿した。


アレン(アレン)はその隙に受け身で転がり、素早く巨剣を掴み直す。

白忻ハイシンは肩で息をしながらも、これまでにないほど強い眼をしていた。


――戦況は、再び拮抗へ引き戻される。

無謀な突撃をしたピトス(ピトス)が最悪の形で戦況を崩し、白忻ハイシンは初めて「怖くても前へ出る」選択をする回。アレン(アレン)の守りと白忻ハイシンの援護が噛み合い、かろうじて拮抗まで引き戻した。


次回は領域支配と広域魔法の正面衝突。砂塵が視界を奪い、大地が割れ、そして天が落ちる――『砂塵暴域』から『天罰』へ。


ブクマや感想が制作の燃料になります。引き続きよろしくお願いします。

※次回更新は本日15:00(JST)予定です。

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