表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/42

第8章 C · 曙光下の決意

本話では ギルド出発~道具屋~城門での再会、そして森での初戦から高地偵察、作戦会議、白忻ハイシンの大技「天罰」までを収録。

——初戦


林間の空気は次第に重くなり、枯葉と土の匂いが鼻を刺す。やがて小径の上に数体のゴブリンの死骸が無造作に転がっているのが見えた。


アレン(アレン)はしゃがみ込み、刃傷を検めて顔を曇らせる。

「……ピトス(ピトス)たちの残した痕だな。切り傷が深い。手際がいい。」


「またあの人渣!」白忻ハイシンは名を聞いた途端、頬をふくらませてぶつぶつ。


アレン(アレン)は苦笑し、腰の大剣を抜いた。声は冷静で揺るがない。

「どちらにせよ、こちらも用心だ。これからは俺の後ろに。無茶はするな。」


白忻ハイシンはまだ腹は立っていたが、ここでは気を引き締め、こくりとうなずく。

「わ、わかった。」


間もなく、前方の草むらが大きく揺れ、四体のゴブリンが木棍を振り回しながら飛び出してきた。怒鳴り声が林に反響する。


「来る!」アレン(アレン)は短く喝し、目を細め、両手で柄を固く握る。

「構えろ!」


二体のゴブリンが左右から挟み込むように高速で突っ込む。


「はっ!」

アレン(アレン)は一歩深く踏み込み、剣光が閃く。三連の斬撃は稲妻のように走り、「ズバッ」と音がして二体は棍棒を振り下ろす前に両断され、血飛沫を散らして倒れた。


後方の弓手二体が素早く弦を引き、矢が空を裂く。だが次の瞬間、アレン(アレン)の姿は「すっ」と掻き消えた。


「なっ――!?」白忻ハイシンが目を見張る間に、アレン(アレン)は弓手の目前へ。刃が瞬き、わずか二閃で喉元が裂け、二体は崩れ落ちる。


心の声(白忻):「は、速すぎ! 普段は大型わんこなのに、戦闘になると何このカッコよさ……!」


その時、背後の草むらが「ササッ」。錆びた短剣を握った一体が白忻ハイシンに飛びかかる。


白忻ハイシン! 背後!」アレン(アレン)が叫ぶ。


白忻ハイシンは振り返り、醜悪な顔面と鉢合わせ。

「こ、来ないでええええぇ――!」破れた悲鳴とともに、両手を突き出す。


次の瞬間、体内の魔力が爆ぜ、足元の魔法陣が閃光を放つ。烈風が唸りを上げた。


「ドォン――!」


白忻ハイシンの前から竜巻が噴き上がり、飛びかかった一体を空へ攫い、さらに草むらに潜んでいた複数をまとめて巻き上げる。悲鳴と共に樹をへし折って吹き飛び、地に叩きつけられた。


森が震え、落葉と塵が渦を巻いて舞い上がる。


アレン(アレン)は大剣を構えたまま一瞬目を見張り、すぐに満ち足りた微笑みへとかえる。

「……見事だ。初陣で一撃で崩し、茂みの伏兵まで察していたとは。海歐老師の言葉どおり、やはり只者じゃない。」


「え、えええっ!?」白忻ハイシンはぽかんと固まり、頭の中は混乱でいっぱい。

心の声(白忻):「違うの! 今のはビビってヤケ撃ち! 伏兵とか全然見えてない! なのに観察眼の天才って誤解されたぁぁ! どうしよう!」


真っ赤な顔でぷいっと横を向く。

「ふ、ふん! こ、こんなの……私には朝飯前よ!」

心の声(白忻):「だめ、絶対バレるな! これは一生モノの致命的黒歴史!」


アレン(アレン)は確信に満ちた表情でうなずき、その瞳に誇らしさが宿る。


白忻ハイシンは心臓がばくばく音を立て、今にも破裂しそうだった。


——営地の手前で


道中、林のあちこちから散発的にゴブリン(ゴブリン)の伏兵が現れた。アレン(アレン)は剣を掲げて切り込み、無駄のない所作で二、三手のうちに斃していく。白忻ハイシンは心臓ばくばくながらも次第に歩調に合わせ、時おり魔法で追い打ちをかけて小鬼どもを四散させた。


白忻ハイシンは草むらに身を沈め、そっと前方で剣を振るうアレン(アレン)を見つめる。梢をこぼれる陽が彼の硬い横顔を照らし、汗が首筋を伝う。瞳は静かに研ぎ澄まされていた。

心の声(白忻):「……普段は私にちょっと囃しただけで大きいわんこみたいに照れるくせに、戦いになると……こんなに頼もしいなんて。うわあ……胸の奥がちょっと、安心してる……?」


彼女はあわてて顔をそらし、耳まで真っ赤。

「ふ、ふん! べ、別にカッコいいからじゃないんだから!」


ほどなくして、アレン(アレン)は一本の老木の下で立ち止まった。幹に刻まれた「×」印を確かめ、依頼の巻物を開いて照合し、うなずく。

「間違いない。ここだ。これは斥候の残した暗号で、目標の営地が近いという印だ。」


白忻ハイシンが身を寄せ、目を丸くする。

「えっ!? 近いってことは、もうすぐそこ!?」

心の声(白忻):「うわわ! 初任務でいきなり巣を叩くとか、やっぱり地獄難易度!」


アレン(アレン)は巻物をしまい、落ち着いた声で言う。

「準備を。ここからはより慎重に行く。」


二人は身を低くし、林の小道に沿って匍匐で進む。前方に丈の低い茂みが見えたところで、アレン(アレン)が手で合図し、ささやく。

「声を出すな。営地は目と鼻の先だ。」


白忻ハイシンは息を止め、そっと顔をのぞかせた。


開けた土地が粗末な木杭で囲われ、その中はゴブリン(ゴブリン)でひしめいている。門番が木槍に寄りかかってあくびをし、焚き火では得体の知れない肉が焼け、脂が火に落ちてじゅうじゅうと鳴く。地面に寝転んで豪快にいびきをかく者もいて、乱雑で不潔、それでいて危うい気配が満ちていた。


「わ、わぁ……数、多くない……?」白忻ハイシンは目をこぼしそうにする。


アレン(アレン)は狼狽する彼女に答えず、人垣の中のひときわ大柄な影を指す。軽甲冑をまとったゴブリン(ゴブリン)が周りよりひと回り大きく、欠けた長剣を手に営地を巡回している。目の光は冷たく、すべてを警戒しているようだ。


「おそらくこの営地の小頭――ゴブリン騎士ゴブリン・ナイトだ。」アレン(アレン)が低く言う。


彼は脇の斜面を仰ぐ。上には張り出した岩があり、営地を見下ろせる位置取りだ。

「上へ行こう。全体を俯瞰してから動きを決める。」


「は、はい……」白忻ハイシンは高鳴る胸を抑え、アレン(アレン)の背に続いて斜面を登る。


二人が高所の岩陰に身を伏せると、景はより鮮明になった。数十のゴブリン(ゴブリン)が行き交い、火が揺らぎ、怒鳴り合いと笑い声が交錯する。遠くのゴブリン騎士ゴブリン・ナイトが仰いで咆哮すると、営地は一変して静まり返った。立場の違いが歴然だ。


白忻ハイシンは唾をのみ、小声でぼやく。

「うわぁ……ゲームのレイドボス開幕ムービーみたい……。初任務でこの規模は反則でしょ!」


アレン(アレン)は柄を握り直し、厳しい目を向ける。

「備えろ。突破口を見つける。」


——高所からの偵察


岩陰に伏せ、営地全体を俯瞰する。火がはぜ、ゴブリン(ゴブリン)たちがきゃんきゃん騒ぐ。


アレン(アレン)が目を細めると、小柄な数体が焼いた肉と水袋を両手で捧げ、ひざまずいている。その前で、軽甲冑のゴブリン騎士ゴブリン・ナイトが冷ややかに一瞥し、無造作に食糧を奪っては貪り、他の者は頭を垂れて息も潜める。


アレン(アレン)の声が低く重くなる。

「やはり……あいつがまとめ役だ。肉も水も優先して供給される。あれが支配力ってやつだ。」


白忻ハイシンは肩をすくめ、小声で尋ねる。

「“騎士”って……そんなに強いの?」


アレン(アレン)はうなずき、囁くように説明する。

「ゴブリン騎士ゴブリン・ナイトは希少種。普通の個体とは違う。知性があり、学び、意思疎通し、人間の戦い方すら模倣する。あの甲冑……おそらく冒険者から奪った物で、使い方もわかっている。戦力は白銀級の冒険者一人分に匹敵するだろう。」


「は、白銀級!?」白忻ハイシンは思わず声を上げかけ、慌てて口を押さえる。目は見開かれたまま。

「つまり精鋭ボスじゃない! 初任務で精鋭ボスって、合理的って言える?」


「ボス?」アレン(アレン)は眉を寄せ、ぽかんとする。

「それはどういう意味だ?」


「え、いや! なんでもない!」白忻ハイシンは耳まで真っ赤にし、むちゃくちゃに手を振る。

「要するに、とびきり面倒なデカい敵ってこと!」

心の声(白忻):「あぶな! うっかり異世界転移バレは即死案件!」


アレン(アレン)は観察を続け、眉間の皺を深めていく。

「数は……少なくとも三十。短期間でよくも集めたな。やはり騎士の統率だ。」


独り言のように戦術を組み立てていく。

「まず門を落として、そのまま騎士を抜く? ……いや危険だ。これだけの数、囲まれれば俺でも無傷では済まない。俺が単独で降りれば、白忻ハイシンを守る者がいない。二人で突っ込めば……彼女が包囲されやすい……」


思案は重く、握る拳には血管が浮く。


白忻ハイシンはしばらく黙って見ていたが、ついに大きく白目をむき、肩を「ぺしっ」と叩いた。

「ねぇねぇ~ぶつぶつ独り言、いつまで続けるの? だれを悩ませたいわけ?」

彼女は頬をふくらませ、抑えた声で不機嫌をあらわにする。

「営地を潰すだけでしょ? 論文書きじゃあるまいし! 忘れないで。あなたの隣には私、“小太陽”がいるんだから!」


胸をとん、と叩き、鼻先が上を向く。

「ふん! 私をポンコツ扱いしないで。少しくらい数が多くても、手はあるんだから!」


アレン(アレン)ははっとして彼女を見る。白忻ハイシンの口ぶりは強気だが、瞳はまっすぐで、退く色がない。


短い沈黙ののち、アレン(アレン)はふっと笑い、柔らかく答えた。

「……わかった。一緒に行こう。」


白忻ハイシンはぶわっと赤くなり、そっぽを向いて小声でつぶやく。

「ふ、ふん! そんな目で見るなってば! 私はただ……足手まといになりたくないだけ!」

心の声(白忻):「うわぁぁ! また“太陽スマイル”発動! ほんと眩しすぎ!」


アレン(アレン)は柄を強く握り、彼女を見て低く問う。

「……それで、どうするつもりだ?」


白忻ハイシンは腰に手を当て、営地の数え切れないゴブリン(ゴブリン)をにらみ、唇を噛む。

「ふん! あれだけいれば厄介に決まってるでしょ! ことわざ知らないの? 人海には豪傑も勝てないの!」


アレン(アレン)は一瞬きょとんとし、それから思案顔でうなずく。

「……たしかに。」


白忻ハイシンはすぐ得意になり、目を輝かせて早口になる。

「だからさ、人が多いなら正面から殴り合う必要ないでしょ? こっちには魔法使いの私がいるんだから! 範囲魔法を一発、まとめて片づければいいの!」


胸を反らし、鼻先を上げる。

「あなたは私の大技ショーを見てればいいの!」


アレン(アレン)は目を瞬き、意外そうにしてから小さく笑って首を振る。

「……そうだな。つい忘れてた。君は魔法使いだった。悪い、俺はつい前に出る癖があって……」


白忻ハイシンはそっぽを向きつつ、口元が勝手に上がる。

「ふふん、言うまでもないでしょ! さっきはあなたが前線張ってて、私は出番少なかったし。今度は私の番!」

心の声(白忻):「うわわ! 初めて役に立てそうな気がする。ちょっとカッコいいかも?」


アレン(アレン)は短く考え、真剣な声に変える。

「よし、君の案で行く。ただし覚えておけ――ここは森だ。前にやった“小太陽”の魔法は使うな。森全体が灰になる。」


白忻ハイシンは固まり、顔が一気に赤くなる。

「え、えぇ!? あれは、ただの実験で……!」

ぶんぶん手を振って取り繕う。

「わ、わかってるってば!」


心の声(白忻):「うわああ! ちゃんと覚えられてた! 恥ずかしい! 私は暴発火炎少女じゃないから!」


彼女はしゃがみ込み、営地を射抜くように見据え、頭の中で急速に計算する。

「一掃するなら……火は危険、森ごとBBQ。水は遅い、びしょ濡れ止まり。風は散らせるけど決定打にならない……」


ぱっと目が輝く。

「ふふん、なら雷よ! “天罰”……天から落として、全部黒こげにする!」


白忻ハイシンは拳を握り、抑えきれない興奮と緊張が表に出る。

心の声(白忻):「名前からして厨二パワー満載! カッコよすぎ! でも……本当に撃てるの私!?」


アレン(アレン)は彼女の得意げな顔を横目に、むしろ少し安心したように口元を緩める。

「わかった……じゃあ、取り逃した分は俺が片づける。」


「ちょ、取り逃しってなにそれ!」白忻ハイシンは即座に噴火。

「見てなさいよ!!」


——天罰


白忻ハイシンは深呼吸し、片手をゆっくり天へ掲げ、掌を上に向ける。

「ヴゥン――」

次の瞬間、体内の魔力が奔流となって掌へと集束した。


彼女は目を閉じ、呼吸を整えようとするが、額に細かな汗。足元の草が魔力に震え、森全体がざわりと身を震わせる。


「ゴロロロ――!」

空が一変した。朝の青は厚い黒雲に呑まれ、渦巻く雲塊が獣の咆哮のようにうねる。


営地のゴブリン(ゴブリン)が一斉に騒ぎ立つ。

「ギャッ!? なんだ!?」

「空が……黒い……!」

「ただの天気じゃねぇ!」


ゴブリン騎士ゴブリン・ナイトが跳ね起き、陰険な目で剣を握りしめる。

「なんだこれは!?」高所の白忻ハイシンを見据え、顔を歪める。

「人間の娘……その手の中の光は……電か!? まさか……!」


アレン(アレン)は彼女の傍らで剣を抜き、鋼のような眼を細める。押し寄せる圧は、この生涯で見た多くの戦場を凌ぐほどだ。

「……すさまじい圧だ。これが君の力か、白忻ハイシン……」


白忻ハイシンは歯を食いしばり、ぱっと目を開く。褐色の瞳に渦巻く黒雲と稲光。口元には強情な弧。

「ふん! 思い知りなさい!」


腕を高く振り上げ、勢いよく振り下ろす。

「――天罰!」


「ドオオオオ――――ン!!!!」


眩い蒼光が天を裂き、巨竜のような雷柱が轟然と落ち、営地の中心を直撃した。


鼓膜を破る雷鳴。大地が激しく揺れ、白光が森を一瞬で塗りつぶす。悲鳴は轟音に呑み込まれ、木杭は爆ぜ、火と電が交錯する。まるで審判の日。


アレン(アレン)は腕で目を庇い、心臓が暴れる。

――この規模、もはや“新人”の域ではない。


ほどなく雷鳴は遠のき、濃い煙がゆっくり引いていく。


目に映ったのは、沈黙。

営地は消え失せ、木杭は焦げた灰、地面には大穴。密集していたゴブリン(ゴブリン)は黒焦げの屍か、灰となって風に舞うばかり。


白忻ハイシンは呆然と立ち尽くし、振り下ろした腕のまま思考が止まる。

「え、えええ……ちょっと……やりすぎた?」


心の声(白忻):「うわあああ! ただの営地掃除のつもりが、戦略兵器ぶっぱなしたみたいになってる! これ、魔王扱いされないよね!?」


アレン(アレン)は腕をおろし、瞳に衝撃を宿したまま白忻ハイシンを見る。珍しく厳しい声音。

「……この破壊力……黒曜級でも、俺はこんなの見たことがない。」


一歩、彼は踏み出し、彼女の瞳をまっすぐに射抜く。

白忻ハイシン……君は、何者だ?」


白忻ハイシンは心臓が「ドン」と沈み、顔が紅白に揺れる。頭に残ったのはひとつの悲鳴だけ。

心の声(白忻):「うわあああ! 終わった! 社会的に死んだぁぁぁ!」


読了ありがとう。ハイシンの一撃で営地は更地。アレンの「守る」宣言と、ピトスたちの因縁も少しずつ露わに。

ブクマや感想が制作の燃料になります。引き続きよろしくお願いします。

※次回更新は本日 18:00(JST)予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ