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第8章 B · 曙光下の決意

本話は〈城門を出るまで〉と〈ピトス一行との遭遇~道中の会話〉まで。

掛け合い強め。白忻ハイシンとアレン(アレン)の距離感が一歩前進します。

ピトス(ピトス)&シュウリ(シュウリ)の登場は、後半の伏線へ。

城門がごうごうと開き、鉄鎖の軋む音が空へ響いた。白忻ハイシンはもう一度深呼吸し、ぎこちない足取りでアレン(アレン)とともに分厚い石の門を踏み出す。


「……初めての外か。」彼女が小さくつぶやき、さらに感慨を続けようとしたその時、背後から耳障りな笑い声。


「よう、アレンじゃねぇか!」


ゆっくり近づいてくる冒険者の一団。先頭の剣士は挑発的な笑みを浮かべ、魔力の光沢を帯びた軽鎧を着込み、鞘には揺らめく符文。歩くたびに、いかに装備が高価かを世界に見せつけているかのようだ。


アレン(アレン)はわずかに目を見開き、声を低くした。

「……ピトス。」


白忻ハイシンが首を傾げる。

「誰?」


アレン(アレン)は声を潜める。

「昔……子どもの頃の知り合いだ。」


「知り合い?」白忻ハイシンは眉を上げ、目の前の尊大な態度にあからさまな疑念。


ピトス(ピトス)は腰に手を当て、呵々と笑いながらも、瞳には驕りが色濃い。

「こりゃ奇遇だな! アレン、お前まだこんな小都市の仕事なんて受けてんのか? かわいそうにな。俺について王都に来てりゃ、もう黄金級でこの俺みたいに羽振り良くやれてたのによ!」


言いながら肩のマントをこれ見よがしに払う。符文の煌めきが嫌でも目に入る。


「黄金級……?」白忻ハイシンは等級の重みを脳内で計算中。


ピトス(ピトス)は口角を吊り上げ、さらに得意げに胸を反らした。

「そうさ。今の俺は黄金級冒険者。パーティの中核だ。どれだけ魔物を狩ったか知れねぇぜ!」


わざと歩を止め、視線を白忻ハイシンへ。上から下まで舐めるように見て、露骨な軽蔑を宿す。

「で、そっちは誰だ? ずいぶん……適当な格好だな。まさか新入りか?」


アレン(アレン)は淡々と返す。

「彼女は白忻ハイシン。魔法使いだ。」


「魔法使い? ははは!」ピトス(ピトス)は腹を抱えて笑い出す。

「この恰好で? これで? おいおい、相変わらず田舎くせぇなアレン。お似合いじゃねぇか、二人そろって貧乏くさいカップルだこと、わはははは!」


白忻ハイシンは即座に爆発し、顔を真紅に染めた。

「だ、誰がカップルよっ!? このクズ!」

心の声(白忻):「うわあああ! 何こいつ! 公衆の面前で社死させに来た!? 許さない許さない許さない!」


ピトス(ピトス)の隣にいた女魔法使いが一歩進み出る。所作は優雅だが声は棘だらけ。緞子のローブに輝く護符を巻き、視線で白忻ハイシンを上から下へと掃き、最後に胸元で意味ありげに口元を歪める。


「私はシュウリ(シュウリ)。白銀級の魔法使いよ。」冷ややかな声音に、あからさまな嘲りが混じる。

「あなたが魔法使い? ふん、ゴブリン一匹も倒せないんじゃないの? 魔法使いを名乗るなんて、笑わせないで。」


彼女は喉を鳴らすようにくすくす笑い、悪意を光らせた。

「それにその体つき……ふふ、気の毒ね。そんな“素材”じゃ、魔法どころか男も見向きしないんじゃない?」


白忻ハイシンは一瞬で顔色が鍋底のように暗くなり、耳まで真っ赤。

「な、なによアンタ……!」

心の声(白忻):「最悪! 身体ディスまでしてくるとか地獄すぎ! 絶対負けないからぁぁ!」


アレン(アレン)は眉をひそめ、顔を強張らせて一歩前へ。白忻ハイシンの前に立ちはだかった。

「ピトス、シュウリ……そのくらいにしておけ。」


ピトス(ピトス)はまるで意に介さず、哄笑を続ける。

「ははっ、相変わらず堅物のアレンだな! 懐かしいぜ!」


「ようよう~で、二人はどこへ行くんだ?」ピトス(ピトス)は柄に手を掛け、見下ろすような芝居がかった声で言った。


アレン(アレン)は落ち着いて答える。

「ギルドの依頼だ。新しくできたゴブリンのキャンプを掃討する。」


「キャンプ?」ピトス(ピトス)は聞くなり仰け反って笑い、声を張り上げた。

「ふんふんふん! そりゃ奇遇だな、俺たちも森へ行く――が、雑魚キャンプなんて小競り合いじゃねぇ。森の奥にいるゴブリンの“大祭司”の討伐だぜ!」


「大祭司……?」白忻ハイシンは思わず繰り返し、目を丸くする。


ピトス(ピトス)の顔は得意一色。早口で、誰もが自分の“格の高さ”を理解するまで喋り倒す勢いだ。

「ははっ! 近隣の子爵様じきじきの依頼だとよ! 大祭司の体内には魔石が眠ってるらしくてな、子爵様はそれを使って“偉い方”にしか扱えない何かをお作りになるんだとよ~。そんな重要任務、俺たちみたいな精鋭に任せるのが筋ってもんだ!」


彼は軽鎧を誇示するように肩を揺らし、符文の光沢をきらめかせる。

「報酬は五万ソルだぜ! ふんふん~」ピトス(ピトス)は両手を広げ、口角を吊り上げる。

「お前ら、生涯でそんな大金触れたことねぇだろ? わはははは!」


脇にいたもう一人の剣士がすかさず同調し、腹を抱えて笑う。

「そうそう! 五万だぞ五万! こいつらみたいな貧乏くさい連中には天文学的数字だよな! わははは!」


白忻ハイシンは顔を真っ赤にし、耳まで震わせる。

心の声(白忻):「うわあああ! どストレートにムカつくタイプ! これが噂の“成金剣士”ってやつ!? くっそー!」


そこへシュウリ(シュウリ)が追い打ち。護符を指でなぞりながら、白忻ハイシンを上から下まで舐めるように見て、悪意を隠しもしない。

「魔法使い? ふん~その華奢な身体で? 魔法どころか、ゴブリン一匹倒せないんじゃない? へたしたら、あなたの魔法より私の“おなら”の方が役に立つわよ。あはは!」


白忻ハイシンは一瞬で爆発。頭に血が上り、踏み出して腰に手を当て、怒鳴り返した。

「アンタね! 口を慎みなさいよ! これ以上言うなら、私だって容赦しないから!」


「なに?」シュウリ(シュウリ)の目が冷たく光る。すらりとした影が覆いかぶさるように迫り、いきなり白忻ハイシンの襟首を掴み上げ、半寸ほど持ち上げた。

「ガキ、もう一度言ってみなさい?」低く、剣呑な声。


白忻ハイシンは呼吸が詰まり、顔が赤白に揺れる。

「は、離しなさいよっ!」

心の声(白忻):「うわわわ! ほんとに手ぇ出してきた!?」


その瞬間、分厚い掌が無造作にシュウリ(シュウリ)の手首を掴んだ。


「今すぐ放せ。」


アレン(アレン)の声は低く、刃のように鋭い眼差し。全身から冷たい殺気が押し寄せる。


シュウリ(シュウリ)は掌から骨まで刺すような圧に汗が噴き、心臓を鷲掴みにされた錯覚に凍り付く。

――この男、本気で抜けば一太刀で斬られる。

直感が悲鳴を上げ、彼女は硬い顔のまま手を離し、何事もなかったように半歩退いた。

「ふ、ふふ~冗談よ。そんな本気にならないで。……ふん、貧乏人相手に本気出す気なんてないけど。」


彼女はわざと軽やかに顔をそらす。

「ピトス、行きましょ。時間の無駄だわ~」


ピトス(ピトス)は哄笑し、振り返ってわざと一言置いていく。

「ははは! アレン、ゴブリン相手に死ぬなよ! それからそっちの小魔女――キャンプに入る前からびびって逃げんなよ? わははは!」


三人は笑いながら去り、背中は森の小径に消えた。


白忻ハイシンはその場に立ち尽くし、真っ赤な顔で肩を怒らせる。

「むかつくむかつくむかつく!! あの三人のクズども!!」

心の声(白忻):「うわああ! 街中でここまで笑いものにする!? シュウリのあの女……今度こそ倍返し!」


アレン(アレン)はちらりと彼女を見やり、厳しい表情のまま、握り締めていた拳をそっとほどいた。


——道中の会話


城門を出て間もなく。白忻ハイシンはまだ怒りで頬を紅潮させ、足を踏み鳴らしながらぶつぶつ。

「むかつくむかつく! 初任務でいきなりあんな人間のクズに遭遇とか何なの! ふん! どの口が黄金級よ、吐く言葉がゴブリン以下じゃない!」


彼女はくるりと振り向き、アレン(アレン)を指さす。

「ていうか、なんでアンタがあんなのと知り合いなのよ!」


アレン(アレン)は苦笑し、後頭部をかく。

「……昔の話だ。同じ界隈に住んでて、よく一緒に鍛錬もした。あいつ、昔はあんなじゃなかった。」


白忻ハイシンは訝しげに眉を吊り上げる。

「“あんなじゃない”? へぇ、じゃあ昔は“いい人”だったとでも?」


「本当だ。」アレン(アレン)の声音は落ち着いている。

「当時のピトスはやる気に満ちてて、皆を守れる剣士になるっていつも言ってた。家は裕福でも貴族でもなかったが、笑って前を向くやつでね。俺は、頼れる仲間になると思ってた。」


白忻ハイシンは一拍呆け、すぐ口を尖らせる。

「で、今はどうよ。金の匂いプンプンで、口はゴブリンより臭いってわけ。」


アレン(アレン)はうつむき、低く続ける。

「二年前、王都が魔物の大波に備えて冒険者を大量に動員した。あいつは行って、そのまま王都で力をつけた。……俺も一緒に行けたけど、その時、村の人に依頼を引き受けるって約束していた。俺にとって、約束を守ることが何より大事だった。だから行かなかった。」


少し間を置き、森の奥を見やって、淡く寂しげに言う。

「聞いた話だが、最近ようやく黄金級に昇格したらしい。……その過程で、何かが変わったのかもな。」


白忻ハイシンは鼻を鳴らし、ぷいっと横を向く。

「黄金級だからって偉いの? 孔雀みたいに羽根を振って歩けばいいわけ? ふん! 私がいつか黄金になっても、あんなツラだけは御免だね!」


ふいに彼女は振り返り、目をきらりとさせてわざとからかう口調に。

「ところでさ、アレンは? いつ黄金になったの?」


アレン(アレン)はわずかに微笑み、穏やかに答える。

「だいたい一年くらい前だ。」


「い、いち年!?」白忻ハイシンは目を剥き、オーバーに固まる。

心の声(白忻):「わわわ! この人そんなに強かったの!? あのピトスより先輩じゃん! なんで普段は大人しい大型わんこなのよ!」


言い募ろうとした矢先、アレン(アレン)がそっと手を伸ばし、彼女の頭を撫でた。掌の温もりは自然な慰めの所作。

「心配いらない。」穏やかな笑みとともに、確かな声。

「俺がいる限り、君に傷一つ付けさせない。」


白忻ハイシンははっとして顔を上げ、陽に透ける樹々の間からこぼれる光の中、そのまっすぐな笑みと目が合った。


「……ま、眩しっ!」白忻ハイシンは一気に真っ赤になり、跳ねるように離れて両手で目を覆い、わめく。

「な、なによこの大型わんこ! 笑ってんじゃないわよ!」

心の声(白忻):「うわあああ! この笑顔は反則! これが本物の“冒険者系主人公”ってやつ!? 心臓が爆散する!」


アレン(アレン)は照れくさそうに頬をかき、何も言わず、ただ彼女の隣を歩く。足取りは終始、揺るぎなく。


——森の小さな出来事


森へ向かう小径は狭く、両脇に高い木々がそびえる。木漏れ日が葉の隙間から降り、まだら模様となって草地に揺れていた。道中に大きな危険はなく、時おり野兎や林の鳥が走り出す程度で、散歩に近い。


白忻ハイシンは最初こそぷりぷり文句を言っていた。

「ふん~初任務から人間のクズに遭うなんて、ついてない! むかつく!」

アレン(アレン)は困った顔で聞き流し、時おりこう挟む。

「気にするな。任務を終えれば、大したことじゃなくなる。」


やがて二人の足取りも呼吸もほどけ、会話は軽くなる。


「アレン、ゴブリンって本当に弱いの?」

「うむ。普通は一体か小集団で動く。力は大きくない。囲まれないよう注意すればいい。」

「なるほど……ゲームのザコ敵って感じね。ふふん、なら私でも対処できそう。」

心の声(白忻):「強がりは止めない!」


彼女がまだ虚勢を張っていると、前方の茂みが「ササッ」と鳴った。

「えっ!? な、なに!? モンスター来た!?」白忻ハイシンは反射的に身を震わせる。


飛び出してきたのはゴブリンではなく、丸々太った甲虫。油を塗ったような殻が光り、翅が「ぶんぶん」と震える。


「きゃあああ――虫!!」白忻ハイシンは跳ね上がり、両手をばたつかせてアレン(アレン)の背にぴったり張り付く。

「ど、どかして! 早く! あああ来る来る来る――!」


アレン(アレン)は呆れ顔で手を伸ばし、甲虫をひょいとつまんで茂みに放った。

「……ただの甲虫だ。」


白忻ハイシンは胸を押さえ、ぜいぜい。

「“ただの”!? 私には飛行悪魔にしか見えないんだけど!」


アレン(アレン)は思わず笑い、少しからかう。

「まさか、白忻ハイシンが魔物より虫が怖いとはな。」


「ち、違う! た、ただ驚いただけ!」耳まで真っ赤、強がり全開。

心の声(白忻):「だめだ、絶対に“虫が無理”は悟らせない!」


言い合っているうち、白忻ハイシンがぴたりと固まる。視線は前方の木根の脇に釘付け。

「……ちょ、ちょっと……あ、あれ何!?」


アレン(アレン)が目をやると、黒い虫がゆっくり姿を現す。長い触角が震え、殻はいやな艶を帯びていた。

「……森ではよく見るゴキブリだろう。」


「ゴ、ゴキ――ブリ!?」白忻ハイシンは絶叫し、弾かれたように跳び上がって、今にもアレン(アレン)の胸に飛び込まんばかり。

「ぎゃあああああ! ゴキ! 異世界にまで出張して来ないでぇぇぇ!! いやあああ!!」


彼女は頭を抱えて木の周りをぐるぐる、口からは崩壊した言葉が止まらない。

「地球の宿敵! 永遠の悪夢! なんで私と一緒に転移してくるのよおぉぉ!」


アレン(アレン):……


彼は、白忻ハイシンに悲鳴で進路変更を強いられたゴキブリを見、それから泣きそうな彼女を見て、複雑な顔をする。


最後に彼はそっと彼女の腕を取って言った。

「……落ち着け。あれは虫だ。害はない。」


「無理! 魔王より怖いんだってばぁぁぁ!」白忻ハイシンは顔をアレン(アレン)の胸に埋め、今にも泣き出しそう。


アレン(アレン)はため息をつき、肩を軽く叩く。目にはわずかな笑み。

「まさか君の最大の弱点がゴキとはな……。」


白忻ハイシンは即座に噴火し、耳まで真っ赤で顔を上げる。

「わ、笑ったわね!? これは生死の危機なの! 覚えてなさい!」

心の声(白忻):「うわああ! 恥ずかしすぎ! 初任務前にゴキでKOとか!!」


お読みいただきありがとうございます。

口悪い成金剣士と毒舌魔法使い、はい、完全にフラグ建築ですね。ここから森の難易度が一段上がり、白忻ハイシンの「法術運用」が見せ場に入ります。

アレン(アレン)の“約束”の一件は、後にもう一度回収します。

ブクマ・感想が励みになります。引き続きよろしくお願いします。

※次回更新は**本日15:00(JST)**予定です。

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