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第8章 A · 曙光下の決意

本話では、ライオンの出立/ギルドでの任務告知/道具屋さんでの準備/城門を出るまでを描いています。

白忻ハイシンとアレン(アレン)の距離が少しだけ縮まる導入回。のんびり始まり、最後は「いざ、出立」。

——ライオンの出立


朝の光が高い窓から差し込み、ギルドの大広間にまだ昨夜の埃が残っていた。皆それぞれ一晩休み、空気は少し緩んだものの、疲労の影は消えていない。


ライオン(ライオン・ミロス)は気だるそうに扉にもたれ、金色の瞳を朝霧に輝かせた。指を鳴らし、軽薄な笑みを浮かべる。

「さて~休暇は終わりだ。俺は王都に戻って報告しねぇと。じゃなきゃ宰相のじいさんに首絞められるからな。」


一同は名残惜しさを覚えた。すかさず白忻ハイシンが腰に手を当て、強がって鼻を鳴らす。

「だったらさっさと失せなさいよ! 途中で転ぶんじゃないわよ、ふん!」


だがライオンは一歩踏み出し、彼女の耳元に顔を寄せ、妙に艶のある声で囁いた。

「その口さぁ……言葉では突き放すくせに、視線はずっと俺に釘づけじゃねぇか? 安心しろ、俺は転ばねぇよ。けどよ、小魔女ちゃん……俺が戻るまで、他の男に色目使うんじゃねぇぞ?」


心のライオン:「くくっ、この小魔女の反応こそ俺の好物だ。」


「は、はぁ!? だ、誰があんたなんか見てるっての!」白忻ハイシンは真っ赤になり、針で突かれたように飛び退き、必死に声を張り上げる。

「どっか行けっての! 早く行けーっ!」


心の声(白忻):「うわああ! こいつ、去り際にまで口説いてくるとか……ムカつくぅぅ!」


彼女の怒り顔を楽しむように、ライオンはさらに笑みを深め、ひらひらと手を振りながら馬に乗り、朝日に長く伸びる影を残して去っていった。


カイオウ(カイオウ・マグナス)は符文の杖に体を預け、深いため息をつくと、厳しい目を白忻ハイシンへ向ける。

「昨夜の伯爵の乱、お前はその場にいながら役立たずだった。それは責められることではない。だが力を持ちながら腐らせるのは愚かだ。本日より実戦で鍛えてやる。」


白忻ハイシンは目を瞬かせ、すぐさま逆上する。

「はぁ!? わ、私が!? なんでよ! まだ新人なんだから!」


心の声(白忻):「うわああ! 私は社畜上がりよ!? 徹夜残業なら耐えられても、戦場は無理ゲーでしょ!?」


だがカイオウは動じず、冷たく言い放つ。

「安心しろ。一人では行かせん。アレン(アレン)が終始お前を護る。」


その言葉にアレン(アレン)は思わず白忻ハイシンを見て、真っ赤になった。頭に浮かぶのは二人で任務に挑む光景――心臓は喉まで跳ね上がり、耳まで熱を帯びる。だが不安げな彼女の表情を見て、胸に静かな決意が灯る。大きく胸を叩き、声を張り上げた。

「任せてください! 彼女の安全は俺が必ず守ります!」


「えっ……」白忻ハイシンは驚き、じろりと睨む。

「ちょ、ちょっと顔赤いじゃない! なに照れてんのよ!」


カイオウの白鬚が震え、半ば呆れながら鋭く突き刺す。

「ふん、この若造は間抜けに見えても、街で名の知れた黄金級冒険者だ。口先だけの小娘より百倍は頼れるわ。」


白忻ハイシンの頭の中は真っ白になり、胸の奥に熱が宿る。

心の声(白忻):「昨夜……私は何もできなかった。誰も責めてはいないのに、心の中に棘が残ってる。……せっかく異世界に来たんだ、いつまでも足手まといじゃ格好つかない!」


彼女は深く息を吸い、無意識に胸に手を当て、瞳に決意の光を宿す。

「……力があるなら、使いこなしてみせる! 社畜が徹夜で働けるなら、モンスター相手でも負けるもんか!」


心の声(白忻):「少なくとも……もう二度と何もできずに突っ立っているわけにはいかない!」


——任務の告知


ギルドの大広間に朝の光が差し込み、木の床に影を落とす。冒険者たちは任務掲示板の前に三々五々集まり、賑わいの中に出立前の緊張感が漂っていた。


白忻ハイシンは米色の布衣をいじりながら、小声で「生地がザラザラする」と文句を漏らしていた。するとカイオウ(カイオウ)は符文杖をつき、受付のメアリー(メアリー・ベック)に耳打ち。二人の表情は真剣そのもので、声をひそめている。


やがてカイオウは振り返り、白忻ハイシンとアレン(アレン)に視線を止め、冷たくもどこか期待を含んだ声で告げた。

「老夫は他に用がある。今回の任務はお前たちに任せる。白忻ハイシン、口先だけではなく結果を示せ。アレン(アレン)、しっかり見張っておけ。」


「……はい!」アレン(アレン)は即答し、瞳を固く燃やす。


白忻ハイシンは思わず顔を背け、強がる。

「ふん! 誰が見張ってもらうもんですか!」

心の声:「うわああ……このジジイ、去り際まで嫌味を残していくんだから!」


老法師は白鬚を撫で、振り返ることなく去って行った。


アレン(アレン)は前へ一歩進み、真剣な顔で言った。

「カイオウ老師から任された。任務の流れは俺が説明する。白忻ハイシン、とにかく俺について来て、無茶はするな。」


白忻ハイシンが怪訝そうにしていると、受付のメアリー(メアリー・ベック)が微笑を浮かべ、しかし口調はきっぱりしていた。

「そういえば補足ですが――さきほど老法師が、もうお二人の任務を受けておきましたよ。」


「えっ? 何の任務?」白忻ハイシンが瞬きをする。


「キャンプの掃討です。」メアリー(メアリー・ベック)の声は、まるで今日の晩御飯を告げるかのように淡々としていた。


「えええええっ!? き、キャンプ!? それって高ランク任務じゃないの!?」白忻ハイシンの顔は真っ青になり、任務冊子を落としかける。猫の尻尾を踏まれたように飛び跳ね、叫んだ。

「まだ初心者だよ!? 初任務でいきなりボス戦とか聞いてないんですけど!?」


周囲の冒険者がくすくす笑い、ひそひそ声が飛ぶ。

「噂の全属性魔女って彼女か?」

「思ったより気が小さいな。」


だがメアリー(メアリー・ベック)は変わらず微笑み、むしろ子供をあやすように声を和らげた。

「大丈夫ですよ、小太陽さん。このキャンプは出来たばかりで規模も小さい。中にいるゴブリン(ゴブリン)の数も限られていますから。」


さらに優しく補足する。

「それにゴブリンは一番弱い魔物。夜の野犬より扱いやすいくらいです。あなたなら必ずやれますよ~。」


「で、でも……」白忻ハイシンは顔をしかめ、両手で頭を抱える。

心の声:「うわあああ! 初任務から『巣ごと破壊』とかありえない! このクソ老法師、また勝手に決めやがったぁぁ!」


見かねたアレン(アレン)が肩に手を置き、低いが落ち着いた声で告げる。

「心配するな。俺がいる。君はできる範囲で力を出せばいい。」


白忻ハイシンは一瞬胸が熱くなったが、すぐに顔を真っ赤にして叫ぶ。

「ふん! 別に怖くなんかないし! ちょっと心の準備が足りないだけ!」


メアリー(メアリー・ベック)は口元を押さえて笑い、灰色の瞳にかすかな悪戯っぽさを光らせた。

「では――ご武運を、小太陽さん。」



任務のやり取りが終わり、アレン(アレン)はまだ動揺する白忻ハイシンに向き直り、忍耐強く説明した。

「落ち着け。ギルドの任務は手順が決まっている。まずは物資の準備だ。回復薬、巻物、松明、乾パン、外套……これらが揃わなければ途中で命取りになる。」


「うわわわ~そんなに面倒なの!? アニメみたいに剣振って火球撃って終わりじゃないの!? なんで生活用品までリストアップするのよ!」

心の声:「くっそ~! 異世界冒険がまさか社畜出張と同じ『持ち物チェック』付きだなんて……!」


アレン(アレン)は咳払いし、照れ笑いで肩をすくめる。

「とにかく向かいの道具屋に行こう。揃えてくれば大丈夫だ。」


——道具屋のおじさん


石造りの小屋に吊るされた銅の鈴。扉を押すと澄んだ音が響く。棚には薬瓶や巻物筒、布袋や松明がきっちり並び、薬草と松脂の匂いが漂っていた。


カウンターの奥にいたのは、無精髭を生やした大柄なおじさん。瓶を拭いていた手を止め、顔を上げると、にやりと笑った。

「おぉ~アレン! また任務か?」


「はい、いつものです。」アレン(アレン)は真面目に返す。


おじさんの目はすぐに白忻ハイシンへ移り、にやにや笑いながら眉を跳ね上げた。

「ほぉ~新しい仲間か? いやぁ可愛らしい子じゃないか! アレン、お前さんも運がいいなぁ、こんな可愛い妹分を連れて歩けるなんてよ!」


「い、妹分!?」白忻ハイシンは飛び上がり、顔を真っ赤に染めた。

「可愛い!? な、何よそれ! 私は二十歳だってば!」

心の声:「うわああ! 可愛いって……子供扱い!? 褒めてんのか貶してんのかどっちよぉぉ!」


アレン(アレン)も耳まで赤くなり、慌てて手を振る。

「おじさん、からかわないでください! 彼女は……仲間です!」


「仲間ねぇ? ほぉ~そんなに慌てるってことは……ふふっ!」おじさんはわざとらしく肩を叩き、アレン(アレン)をよろめかせた。


白忻ハイシンは顔を覆い、今にも崩れ落ちそうになる。

心の声:「最悪! これじゃ本当にカップルみたいに見えるじゃない! 死ぬぅぅ!」


おじさんは愉快そうに笑いながらも、手際よく物資を揃えた。治癒薬、解毒薬、乾パン、火打石、松明、それに初級防護巻物を二枚おまけに添える。

「ほれ、準備は万端だ。アレン、今回は無茶すんなよ。ちゃんとその子を守ってやれ。」


「は、はい!」アレン(アレン)は真っ赤な顔のまま、しかし力強く答えた。


白忻ハイシンは物資袋を抱え、心の奥が少し温かくなる。それでも口では小声でつぶやく。

「ふん……誰が守ってもらうもんですか。私は足手まといになんかならない……はず。」


——城門を踏み出す


城門前はすでに人の波でごった返していた。長弓や大剣を背負う冒険者、陽光を受けて硬鎧が冷たく光る者、肩に新造のハルバードを担ぐ者、魔導紋の刺繍入りの外套を翻す者。足取りは皆、金属音を刻んで力強い。


白忻ハイシンは目を輝かせ、思わず小さく声を漏らす。

「わわっ、かっこいい! あの鎧、光のエフェクトまで付いてる! あの大剣なんて、モンスターを真っ二つにしそう!」


アレン(アレン)は彼女の星のような眼差しに苦笑して説明した。

「だいたい鍛冶屋か魔導工房の特注品だ。普通の鍛造でも武器や鎧は最低五千ソル、魔導工房製で符文や付与があれば一万は下らない。」


「ご、五千!? 一万!?」白忻ハイシンはその場で固まり、口が卵でも入るほど開いた。

心の声(白忻):「うわああ! なにその天文学的数字! 現代の通貨に換算したら、貯金ぜんぶ突っ込む勇気ないんだけど!?」


アレン(アレン)は付け加える。

「ここはまだ安い方だ。王都だと倍になってもおかしくない。」


「ううう……」白忻ハイシンは肩をがくりと落とし、今にも泣き出しそうな顔。

「異世界にも金の地獄……? どこへ転生しても結局は労働から逃げられない運命なの……?」


アレン(アレン)は慌ててフォローする。

「そこまで悲観するな。衣服や軽鎧なら仕立屋でオーダーできる。高くはあるが、付与装備よりは手が届く。」


「でも……結局高いじゃん!」白忻ハイシンは頭を抱えて嘆く。

心の声(白忻):「せっかく異世界に来たんだから無双スタートだと思ったのに、まずは貯金? それただの課金ゲーでは!?」


ふと何かを思い出し、視線が曇る。小さくつぶやいた。

「はぁ……私のマイカー、大丈夫かな……。マンションの下に停めっぱなし、レッカーされてないよね……。タイヤ替えたばっかりなのに……」


アレン(アレン)はきょとんとし、わからない単語にぎこちなく笑う。

「マイカー……?」


白忻ハイシンは即座に逆立つ。

「な、なんでもない! 気にしないでっ!」頬はみるみる真紅。


二人はそんな調子で言い合いながら、分厚い石壁を抜け、城門をまたいだ。外の風は市壁内より冴え、陽に照らされた草原がどこまでも広がる。未知の危険と冒険の匂いが混じる空気。


白忻ハイシンは思わず足を止め、高くそびえる城壁を振り返る。

心の声(白忻):「……これが、私のはじめての“出城”か。」


深く息を吸い、不安を押し込み、わざと強がった顔を作る。

「ふん、行こ。ゴブリンのキャンプなんて、たいしたことないんだから。」


アレン(アレン)は彼女のわずかに震える手を見たが、何も言わず、ただ隣を歩く。


——つづく

ここまでお読みいただきありがとうございます。

ライオン(ライオン・ミロス)の小悪魔ムーブ、そしてカイオウ(カイオウ・マグナス)の“老害…じゃなくて師匠ムーブ”で、白忻ハイシンはついに初任務へ。

次話からは森の道中と初戦、そして“あの連中”とのニアミスへ。テンポを上げていきます。

ブクマや感想が制作の燃料になります。引き続きよろしくお願いします。

※次回更新は本日12:00(JST)予定です。

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