表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/42

第6章 A · 暗影の夜

昨日「10時に更新します」と宣言しておきながら、更新できず本当に申し訳ありませんでした。

待ってくださった方々にご迷惑をおかけしたこと、心よりお詫びいたします。

本日は第6話A(前半)をお届けします。どうか最後までお付き合いいただければ幸いです。

——寝室 · 闇の束縛


白忻ハイシンの身体は震え、ベッドの上で小さく縮こまっていた。

呼吸は荒れ、今にも胸を裂いてしまいそうなほど。

闇のエネルギーは見えぬ鎖となり、幾重にも絡みつき、視界は次第に霞み、耳には轟音だけが響いていた。


「う……あああ……あたま……くら……はぁ……はぁ……」

指は真っ白になるほどシーツを掴み、胸は激しく上下する。まるで罠にかかった獣のようで、抗う術は何ひとつなかった。


厚いカーテンが外の音楽と灯火を遮断し、部屋に残るのは揺れる灯影と、男の荒い息遣いのみ。


ロデリック(ロデリック・フォン・グランデール)は赤く血走った目で迫り、剣柄に手をかけて、怒声を張り上げた。

「何者だ!? この私の寝室に踏み込むとは! 出て行け!」


——ライオンの嘲笑


扉口に、逆光を背に黒髪と金の瞳を持つ影が立った。

少年は気怠げに歩みながらも、その一歩一歩は拍子を刻むように正確。口元には嘲る笑みが浮かんでいる。


「ふん~“北境の守護者”ともあろう者が、シャドウ・フラグメントで小娘を立てなくなるまで酔わせる? 笑わせんなよ。

犬皮の太鼓でも用意して、絞首台に送ってやろうか?」


軽薄な声音だが、その冷たさは刃のようだった。


ロデリックの顔は怒りで鉄のように固まり、低く唸った。

「無礼者! 小賊風情が、この私の館で好き勝手を!」


だがライオン(ライオン・ミロス)の瞳は鋭さを増し、金色の光が炎に反射して刃のように閃いた。

声は低く、冷ややかに響く。

「証拠はもう押さえたぜ、伯爵様。」


彼は手を振り上げ、数枚の帳簿を投げる。紙の角が燭光に煌めいた。

「三年間の軍費の支給、すべてお前の私庫に消えてる。そして――これだ。」


掌に現れたのは半透明のガラス瓶。瓶の内には黒い霧が渦巻き、今にも蠢き出そうだった。


「シャドウ・フラグメント。禁忌の代物だ。これ一つで、お前も一族郎党も処刑台行きだ。」

ライオンの唇には笑みが残っていたが、その声は氷刃のように鋭く迫った。

「さて……この証拠を宰相に渡されたいか? それとも、今すぐその汚え手を彼女から離すか?」


白忻ハイシンは朦朧とした意識の中で顔を上げた。

逆光の中に立つ金眼の影が見える。

その声はいつもの軽薄さを纏っているはずなのに、今は鋭い刃のように響き、空気を張り詰めさせていた。


——寝室 · 対峙の激化


ロデリック・フォン・グランデールの顔は鉄のように硬直し、剣柄を乱暴に握りしめた。

指関節がぎしぎしと鳴り、殺意は炎のごとく室内に渦巻き、空気さえ焼き尽くしそうだ。


ベッドの上の白忻ハイシンは全身を震わせ、目は焦点を失い、胸は激しく波打っていた。

闇の束縛に呑み込まれ、今にも意識を失おうとしている。


――その対極に立つのは、扉口に佇む黒髪金眼の影。


ライオン(ライオン・ミロス)は慌てることなく、しかし刃のような歩調で一歩一歩迫っていく。

掲げた帳簿の紙が燭光に照らされ、「サラサラ」と音を立てる。その声は氷のように鋭かった。


「伯爵殿、宰相がなぜ俺をここに送ったか、わかるか?」

金色の瞳が細まり、嘲りと圧力を帯びる。

「三年間、北境の軍費は他の辺境の二倍三倍。だが現実はどうだ? 戦はなく、魔潮もない。城壁はボロ布みたいに崩れ、民は飢えて鍋すら空っぽ。

……なのにお前は王宮よりも華美な犬小屋を築きやがった。」


「黙れ!!」

ロデリックは怒号し、額に青筋を浮かべ、剣柄を握る手は震えていた。


だがライオンの声はさらに冷え、口元の笑みは消え、鋭い響きだけが残った。

「宰相はすでに資金の行方を疑っていた。そして今、証拠は俺の手にある。

加えて禁忌の《シャドウ・フラグメント》を隠し持つお前……これはもはや横領じゃない――反逆だ。」


その最後の一語は、冷たい鉄塊が床に落ちたように響いた。


彼は軽薄さを完全に収め、声を低く重く落とす。

「帝国宰相の名において、最後の通告を下す――ロデリック・フォン・グランデール。

直ちに投降し、俺と共に帝都で裁きを受けろ。さもなくば、この瞬間から――お前は帝国の叛徒だ!」


白忻ハイシンは朦朧とした意識の中で顔を上げた。

視線が一瞬で震え、言葉のやり取りは聞き取れない。

だが――「叛徒はんと」という二文字だけは、雷鳴のように心臓を打ち抜いた。


燭火が揺れ、空気は凍りつく。

ロデリックの姿は死角に追い詰められた獣のように筋肉を緊張させ、殺意を噴き上げる。

対するライオン(ライオン・ミロス)は逆光の中に立ち、金の瞳を弓の弦のように引き絞り、獲物を冷たく狙っていた――いつ爆ぜてもおかしくない修羅場の予感。


——寝室 · 強がる伯爵


ロデリックはライオンを睨みつけ、顔は鉄のように陰鬱。

手は剣柄を握りしめ、関節が「ギシギシ」と鳴った。声は低く、追い詰められた獣の咆哮。


「戯言を抜かすな! 俺は帝国の勲爵、北境の守護者だぞ!

小僧風情が、私の寝室で好き勝手とは――不遜にもほどがある!」


大股で踏み込み、その巨体が圧をかける。まるで猛虎が飛びかかるかのような気迫。

「帳簿だと? シャドウ・フラグメントだと? 紙切れ数枚で俺を反逆者に仕立てるつもりか! 笑わせるな!

この帝国で知らぬ者がいるか? 俺が血を流し、北境を守り、この街を救ったことを! 俺がいなければ魔物の群れがこの土地を焦土に変えていた!」


その声は戦鼓のように轟き、白忻ハイシンの鼓膜を揺らす。

少女はベッドの上で震え、視線は霞み、胸は切れそうなほど上下していた。


――だが、ライオンは笑った。


金の瞳が半ば細められ、燭火の中で狐のように光る。

「へっ、伯爵殿。口だけは達者だな。だが――真実はお前の怒鳴り声で消えるもんじゃない。」


懐から取り出したガラス瓶。瓶の内では黒き気配がうごめき、影が這うように揺れる。

「シャドウ・フラグメント――禁忌の証拠だ。これを宰相に渡せば、皇帝だってこう問うだろう。

“ロデリック、遺言はあるか”とな。」


「貴様ぁぁ――!」

ロデリックの額に青筋が浮かび、眼は狂気に燃え、牙のような咆哮が空気を裂いた。


ライオンは鼻で笑い、さらに毒を含んだ声を叩きつける。

「やるさ。それどころか――俺が直々にお前を帝都まで引きずっていく。

そして帝国中の貴族どもに見せてやるんだ。“北境の守護者”と呼ばれる男の正体が――金を盗み、禁忌まで貪る飢えた狼だってな。」


燭火は揺れ、空気は張り詰めた弦のように軋む。

白忻ハイシンの全身は氷のように冷え、指はシーツを食い込むほど握りしめた。

二頭の獣と狩人の殺気の間に挟まれ、今にも引き裂かれそうな感覚に。


——寝室 · 激戦の勃発


ロデリックが咆哮し、脱け出した猛獣のごとく巨体を爆発的に前へ。

残像だけを残して疾駆し、大剣が空を裂き、雷鳴のような轟きを伴って振り下ろされた。

天蓋は気流で引き裂かれ、燭火の半数が一瞬で消える。


「――死ねぇっ!」


――電光一閃。

ライオンは身を滑らせ、掌に電流を奔らせる。

「バチバチ」と音を立て、凝縮された稲光は短く鋭い雷の短剣へと変わる。


彼はそれを掲げ、迎撃しながらも、なおも軽口を忘れない。

「そんなに急いで死に急ぐなよ、老いぼれ。」


大剣と雷刃が正面から激突!

眩い火花が炸裂し、寝室全体を震わせる爆音が響いた。


刃と刃が噛み合い、爆ぜた衝撃波が重厚な机を粉砕し、帳簿の頁が宙を舞う。

二人の影は交錯し、剣光と雷光が閃き乱れ、肉眼では追いつけぬ速度でぶつかり合った。


ロデリックの大剣が横一閃、石柱を両断し、破片が四散する。

ライオンは反撃の一撃で雷刃を走らせ、長く尾を引く稲光でその圧を切り裂いた。


正面衝突の度に、大鐘が殴られるような轟音が館全体を揺らす。

壁には蜘蛛の巣のような亀裂が走り、シャンデリアは激しく揺れ、天井からは砂塵が降り落ちた。


ロデリックは声を張り裂けるほどの咆哮をあげる。

「小賊風情が! その程度の小細工で俺を止められると思うなぁ!」

剣圧はさらに強烈となり、気流は暴風のように天蓋を巻き上げる。


だがライオンは口角を吊り上げ、瞳は冷刃のように鋭かった。

「恐れるべきは――この醜態が、帝都の目に晒される時だろうさ。」


雷光と鋼鉄が再び衝突!

雷鳴の如き轟音が爆ぜ、領主邸全体が崩れ落ちんばかりに震えた。


——大広間 · 騒動の拡散


舞曲はまだ止まらない。だが、大広間は突如「ドォン!」と震えた。

水晶のシャンデリアが激しく揺れ、彩色ガラスからは破片が剥がれ落ち、眩い裂痕を撒き散らす。


「こ、これは……地震か!?」

「違う! 音は上の階からだ!」


貴族たちの顔色は一瞬で蒼白に変わり、杯は床に落ちて砕け、酒が飛び散る。

悲鳴が飛び交い、従者は四散して逃げ、華やかな舞踏会の場は一瞬で混乱に陥った。


「きゃあああああっ!」

舞い散るドレス、響くブーツの足音――逃げ惑う群衆は、豪奢な会場を難民の逃走劇のように踏み荒らした。


——二階 · ギルドマスターと公女


長廊の上で、ギルドマスターとリヴィアナは先ほどまで最後の挨拶を交わしていた。

だが壁全体が「ドォン」と震え、灰塵が天井からぱらぱらと落ちる。

金属の衝突音と雷鳴のような爆響が、奥の部屋から響き渡った。


ギルドマスターの灰色の瞳が一瞬で鋭さを増し、刃のような冷気を帯びる。

彼女は即座に身を翻し、冷声を放った。

「屋敷内に異変。直ちに確認せねばならぬ。」


リヴィアナは一瞬呆けたが、すぐに顔色を失い、スカートを必死に握りしめた。

「こ、この館……崩れるの!?」


灰が金の髪に舞い落ちると、彼女は後ずさりし、顔色は鉄のように青ざめた。

そして迷うことなく、侍女へ叫ぶ。

「馬車を用意しなさい! すぐよ! 私はここを離れる!」


その目に映るのは混乱と恐怖のみ。

そこには「皇族の冷静さ」など一欠片もなく、伯爵の安否も、ギルドマスターの判断も、北境の民の命も――一切顧みられなかった。


——豪奢な衣に隠されていたのは、ただの醜い本性――己の命惜しさだけだった。


——長廊 · 冷徹なる思索


ギルドマスターは風のように駆け、長衣が塵の中を翻った。

床板は轟き、燭火は揺らぎ、彼女の眉間は深く寄せられる。


心の声:

「これは単なる騒ぎではない……。

この揺れは、巨獣が屋敷を暴れているかのよう。

伯爵の武勇は熟知している――もし本気で剣を振るえば、この館など数合も持たぬ。」


逃げ惑う貴族を見下ろし、瞳はますます冷たくなる。

「今夜の暴走……示威か、それとも隠蔽か。伯爵は何を覆い隠そうとしている?」


指先が掌に沈み、思考は刃のように研ぎ澄まされる。

「ライオン――あの金眼の少年。宰相の密偵。伯爵と互角に渡り合えるなら……すでに証拠を手にしているはず。」


呼吸を整え、眼底の冷光はさらに鋭くなった。

「軍費、虚飾、そして漂う不吉な気配……禁忌と繋がっているのなら――この混乱は、序章にすぎない。」


この夜はまだ沈みきっていない――崩れるのは、館か、それとも誰かの正義か。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


本来は昨日10時に更新する予定でしたが、遅れてしまいました。

読者の皆さんを待たせてしまい、本当に申し訳ありません……!


次の更新は【12:00】を予定しています。

ぜひ引き続きお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ