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第5章 下篇 B · 領主の召見

ここまで来て、物語はいよいよ大きな転機を迎えます。

ハイシンに迫る暗影の罠、伯爵の真の欲望、そして――ライオンの乱入。


社死コメディと本格的な暗黒劇が同時進行する第五章の終盤、

ぜひ最後まで楽しんでいただければ幸いです!


第5章 · 宴会の途(共舞・収束)


音楽が徐々に弱まり、最後の旋律が流れる。

ロデリックはハイシン(白忻)の手を強く引き、ぐるりと一回転させた。


少女の身体は翻弄され、次の瞬間――伯爵の腕の中に強く抱き寄せられる。


「ひぃぃぃっ!? ちょ、ちょっと近い近い近いぃぃ!」

耳まで真っ赤に染まり、心臓は爆発寸前。

(や、やっと終わる!? 足つりそうだったのに! ここダンスフロアじゃなくて処刑場だよぉぉ!)


必死に手を引き抜き、後ずさりながら会長ギルドマスターの背後へ逃げ込む。

肩で息をし、顔は真っ赤に燃え上がる。


会場には拍手が鳴り響いた。

だがその裏に潜むのは、含み笑いや皮肉めいた囁き声。


「伯爵は相当ご執心だな。」

「小娘の顔、真っ赤じゃないか。」


「うぅぅぅ……穴があったら入りたい……!」

ハイシンは縮こまり、耳を塞ぎたくなる。


会長は冷徹な表情を崩さず、ただ氷のような沈黙で周囲を圧する。

瞳には怒りの火が潜み、心中で呟いた。

(ロデリック……お前、とうとう私の逆鱗を踏んだな。)


ライオン(ライオン・ミロス)は群衆の中で杯を傾け、金色の瞳を細めた。

(……面白ぇ。老狐と成金の犬、どちらが先に噛み付くか見ものだな。)



第5章 · 公女初登場リヴィアナ・ソルヴィア


その時、二階の回廊から澄んだ声が響いた。


「ふふ……伯爵様、ずいぶんと楽しそうではありませんか。舞まで踊られるなんて。」


ざわめきが一瞬で鎮まる。

視線が一斉に階上へ。


金色に縁取られた青のドレスをまとい、金髪碧眼の少女が優雅に歩み出る。

冷ややかな笑みを浮かべ、その気配は高貴にして鋭い。


――帝国公女、リヴィアナ・ソルヴィア。


彼女の瞳はまず伯爵を軽く流し見し、すぐさまハイシン(白忻)に突き刺さる。

碧眼には露骨な敵意の閃き。唇は皮肉に歪む。


(……これが噂の“小さな太陽”? 所詮は外から来た小娘。

どうして皆の目は、この女に奪われるの……?)


ハイシンは冷たい視線に射抜かれ、体がビクリと震える。

思わず手の中の杯を落としそうになり、顔が真っ青になった。


会長ギルドマスターは目を細め、灰色の瞳に冷ややかな光を宿す。

(……厄介だな。舞台がさらに複雑になる。)



第5章 · 公女の召見


二階の欄干に立つリヴィアナ・ソルヴィアは、冷たい声で言い放った。


会長ギルドマスター。」

白い手を軽く掲げ、碧眼を鋭く光らせる。

「父王の命により、辺境防務についてあなたと話し合うよう仰せつかっております。――こちらへ。」


その一言で、大広間の空気が凍りつく。

「公女殿下……」

ざわめきの中に、畏怖の混じった囁き声が走った。


ハイシン(白忻)は思わず頭を抱え、内心で絶叫する。

「ひぃぃぃっ!? これ完全にラスボス登場イベントじゃん! 圧がヤバすぎるぅぅ!」


会長は眉をわずかに寄せ、冷ややかな視線を返す。

これは明らかな「引き離し」。だが王命を盾にされた以上、拒む余地はない。


彼女はそっと身を屈め、低声でハイシンに囁いた。

「気をつけろ。不穏を感じたら外か、せめて廊下に身を避けろ。」


「ひぃぃぃっ!? 会長まで行っちゃうの!? ここ怪物クラスの大人ばっかりなのに、私ひとりでどう生き残れってのぉぉ!」

ハイシンは必死にスカートを握りしめ、涙目で震える。


会長の手が彼女の肩に軽く触れた。

冷たいが、揺るぎない力。

「王命は拒めない。……だがすぐ戻る。」


そう告げて背筋を伸ばし、氷のごとき威厳を纏ったまま階段を上っていく。


ハイシンは消えていく背中を見送りながら、心の中で絶叫した。

「や、やだぁぁ! これ完全に置いてけぼりじゃん! 私、ここで社死確定コースだよぉぉ!」



第5章 · 暗影の罠


会長ギルドマスターが公女リヴィアナと共に二階へ姿を消す。

大広間は再び音楽と談笑に包まれた。

だが、ハイシン(白忻)は隅で縮こまり、スカートを握りしめて震えていた。


「ひぃぃぃ……会長いない……ここ、怪物級の大人ばっかり……私どうすんのぉぉ……」

内心は社死寸前。


その時――


杯を持ったロデリック伯爵が、ゆったりと歩み寄る。

笑みは優しげだが、瞳には濁った光が潜んでいた。


「小さな太陽、お嬢さん。お顔が少々お疲れのようだ……

よければ、私が直接、上階の静かな部屋へご案内しましょう。」


「え、えっ……い、いや……」

ハイシンは首を振ろうとした――が、視界がぐらりと揺れる。


空気の中に、黒い糸のようなものが漂っていた。

それは無音で感覚を侵し、彼女の耳と目へと入り込む。


ロデリックの掌に、小さな結晶片が握られていた。

亀裂の走ったその欠片は、ほの暗い光を放ち、

――禁忌の「暗影」の力を滲ませていた。


「う、うぅ……なんか……頭が……」

ハイシンの瞳が霞み、言葉が掠れていく。

「だ、だめ……“いらない”って言いたいのに……声が出ない……」


伯爵は口端を吊り上げ、そっと彼女の腕を取った。

「大丈夫、少し休めばいいだけだ。……さぁ、一緒に。」


操り人形のように、ハイシンはふらつく足で階段へと導かれる。

周囲の貴族たちは酒と談笑に夢中で、この光景に気付く者はいない。


――ただひとり。


群衆の影に潜む金色の瞳が、冷たく光った。


ライオン(ライオン・ミロス)。


(ちっ……やっぱりやりやがったな、このクソ伯爵。

暗影の欠片まで使うか。ハイシンが連れ込まれたら、会長でも手遅れだ。

……ここは、俺が出る番だ。)



第5章 · 暗影の罠(続き・結末)


ハイシン(白忻)の視界は滲み、足取りは人形のようにふらついていた。

「う、うぅ……頭が……ぼんやり……」

暗影の靄が感覚を絡め取り、声すら霞んでいく。


ロデリック伯爵は満足げに彼女を抱え、寝室へと引きずり込む。

扉が重々しく閉まり、外の音は一切消えた。


豪奢な天蓋付きの寝台。

ハイシンはそこへ無造作に放り出され、震える手で胸を押さえる。

その姿は、まさに狩人の前に晒された獲物。


伯爵は外套を脱ぎ捨て、口元にいやらしい笑みを浮かべながら身を乗り出した。

「今宵から――お前は私のものだ。小さな太陽? いや……私だけの灯火として輝け。」


「……っ……!」

ハイシンは必死に声を絞ろうとするが、言葉にならない。

涙に滲んだ瞳がただ揺れるだけ。


――その刹那。


寝室の扉がかすかに鳴り、闇に金色の光が走った。


「……立派な北境の守護者が、こんな下卑た真似に堕ちるとはな。」


低い嘲りの声。

逆光の中に現れたのは、黒髪の少年。

金色の瞳が鋭く光り、唇には軽薄そうでいて危うい笑みが刻まれていた。


――ライオン(ライオン・ミロス)。


ベッドの上、霞む意識の中でハイシンはその影を見上げる。

「……ライオン……?」


彼は袖口を整えながら一歩踏み込み、声を鋭く放った。


「この茶番――ここで幕だ。」


——第五章 · 終

第五章はここで一区切りです。

宴の裏で張り巡らされた暗影の罠、そしてライオンの登場……

いよいよ物語は伯爵との直接対決へ!


ぜひ続きもお楽しみに!

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