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第5章 上篇 C · 領主の召見

第5章のクライマックス、いよいよ伯爵が姿を現します。

大広間での演説、そして「小さな太陽」をめぐる衝撃の発言――。


ハイシンにとってはまさに公開処刑……どうぞお楽しみください。

第5章 · 潜入者の歩み(大広間)


大広間には燭火がきらめき、水晶のシャンデリアが万道の光を放っていた。

豪奢なドレスと宝石のきらめき、舞曲に合わせて踊る貴族たち。

華やかさの裏には、張り詰めた空気が隠されていた。


ライオン(ライオン・ミロス)は人混みに紛れ、深色のスーツに身を包んでいた。

袖口を軽く直し、口元に従者らしい礼儀正しい笑みを浮かべる。

だが金色の瞳には、獲物を狙う狐のような光が宿っていた。


――その時。


正門が開き、二つの影が大広間へ踏み込んだ。


雪のような白のドレスを纏うハイシン(白忻)。

深すぎる胸元、硬直した足取り、縮こまる肩。

顔は真っ赤に燃え、今にも泣き出しそうなほど社死寸前の姿。


「う、うわああああっ!? 見られてる、全員に見られてるぅぅぅ!」

彼女は心臓を抑え、半ば泣き叫びながら縮こまる。


その隣には、黒のドレスを纏った会長ギルドマスター

簡素ながらも威厳を纏い、氷の視線で会場を一瞬にして制圧する。

鎧すら要らぬ冷徹な気迫に、貴族たちは笑みを引き攣らせ、口を噤んだ。


――対比はあまりに鮮烈。


縮こまり赤面するハイシンと、氷のように堂々と立つ会長。

二人の姿は、その瞬間、全ての視線を奪い取った。


ライオンは酒杯を持ち上げながら、内心で舌打ちを漏らす。


(ちっ……これは酷い。ハイシン、本気で社交の場で死にそうじゃねぇか。

だが会長……礼服ひとつで鎧以上の威圧感を出すとは。やっぱり老獪な女狐だな。)


彼は金色の瞳を細め、唇に狡猾な笑みを浮かべた。

「……面白くなってきた。さぁ、幕が上がるぜ。」



第5章 · 領主登場


楽の音がふっと下がり、大広間に緊張が走る。


二階の階段から、一人の大男がゆっくりと姿を現した。

金糸を織り込んだ長衣を羽織り、胸元は大きく開かれている。

そこに刻まれた無数の戦傷は、かつて剣と血にまみれた証。

だが、その歩みに将軍の威厳はなく、残っているのは貴族らしい怠惰と驕慢。


――ロデリック・フォン・グランデール。


男は杯を掲げ、口端にいやらしい笑みを浮かべる。

声は厚く響くが、その奥に含まれるのは嘲弄だった。


「いやはや……これはこれは、尊き会長ギルドマスター殿ではないか。

今夜は直々にお越しいただけるとは、光栄至極。」


会長は冷ややかに一瞥し、わずかに頷くだけ。

媚びも飾りもないその態度に、彼女がこの男に慣れ切っていることが滲んでいた。


だが――伯爵の視線は、彼女には止まらなかった。


その目は、雪白のドレスに身を包み、今にも震え出しそうなハイシン(白忻)に釘付けだった。

大きく開いた胸元。硬直した姿。

それは、飢えた獣に差し出された肉塊のように見えたのだろう。


「ひぃぃぃっ……! ずっと、ずっとこっち見てる! 視線がいやらしい! 会長ぉぉ助けてぇぇぇ!」

ハイシンの顔は真っ白になり、心の中で悲鳴を上げる。


ロデリックの笑みはますます濃くなり、遠慮なく舐め回すように視線を這わせる。

「なるほど……これが新たに手に入れた小さな宝石か。」

杯を掲げる仕草の裏で、その瞳は少女の全身を切り裂くように見つめていた。


会長は一歩前に出て、その冷厳な気配でハイシンの前に立ちはだかる。

「伯爵殿。彼女はまだ見習い。あなたの目に晒すには早すぎる。」


「はははっ。」ロデリックは豪快に笑い、杯を揺らす。

「公会ともあろうものが、宴席にまで新人を連れてくるとは……

だがなるほど、確かに目を引く。実に、実に眩い存在ではないか。」


ハイシンは会長の背後に小さく縮こまり、心臓を爆発させながらただ一言。

「これ……宴会じゃない……完全に狩場だよぉぉ……!」


群衆の中でライオン(ライオン・ミロス)は杯を揺らし、口元に小さく笑みを浮かべた。

(……やっぱりだ。獲物の匂いに釣られて、狐は牙を剥く。)



第5章 · 領主の演説


ロデリック・フォン・グランデールは杯を掲げ、堂々と中央の高台へと歩み出た。

楽の音はすっと止み、大広間の視線が一斉に彼へと注がれる。

燭火が戦痕の刻まれた顔を照らし、その粗野と驕慢を同時に際立たせる。


両腕を大きく広げ、声を張り上げる。

「諸君! 今宵、我が館に集ったのは――北境にとっての栄光である!」


その響き渡る声に、何人かの貴族はすぐさま拍手で応じた。


ロデリックは鼻で笑い、さらに続ける。

「三十年前、私は剣を手に魔物の群れを退け、この街を守った!

あの戦功がなければ、諸君らは今夜の酒も舞も楽しめはせぬ!」


場内には賞賛の声が散発的に湧き起こる。だが、その多くは空虚な調子だった。


ロデリックはさらに顎を上げ、杯を掲げ直す。

「今や私は帝国の盾であり、北境の守護者だ!

この館、この繁栄こそが帝国から授かった褒賞である!」


――


会長ギルドマスターは瞳を細め、冷ややかにその姿を見据える。

(……その戦功、真実かどうか誰に確かめられる? だがこの虚飾に満ちた館は――資金の流れが腐っている証拠だ。)


――


ハイシン(白忻)は会長の陰に縮こまり、顔を真っ赤にしながら内心で絶叫する。

「ひぃぃぃっ! これ完全に TED トークじゃん!? 『俺スゴい』しか言ってないし!」


――


ロデリックは杯を飲み干し、声をさらに高くした。

「さぁ諸君、杯を掲げよ! 帝国のために! 我らの未来のために!」


貴族も冒険者も侍従も、一斉に杯を高く掲げ、燭火が乱反射する。

場内は喝采で満ち、宴の熱気は最高潮へ。


だがその熱狂の中で――

会長の瞳は氷のように冷え、ハイシンは身を小さく震わせ、

ライオン(ライオン・ミロス)は杯を揺らしながら口端に嘲笑を浮かべていた。


(――もっとやれ。派手に騒げば騒ぐほど、狐は匂いを辿って奥へ潜り込める。)



第5章 · 領主の演説(続き)


ロデリックは杯を置き、視線をゆっくりと巡らせる。

最後に止まったのは――入口に立つ白き影、ハイシン(白忻)。


「諸君。」

声が低くなり、嘲るような響きを帯びる。

「今宵はただの宴ではない。我が館が迎える――特別な客人のためでもある!」


ざわめきが走り、視線が一斉に彼女へと注がれる。


ハイシンは顔を真っ赤にして固まり、内心で絶叫する。

「ひぃぃぃっ!? なんで全員こっち見てんの!? やめろぉぉぉ!」


ロデリックは愉快そうに笑い、階段を下りながら高らかに告げた。

「そうだ……彼女こそ数日前、城外で烈火を放ち、魔物を焼き尽くした――小さな太陽!

この北境に奇跡をもたらした存在だ!」


「小さな太陽……!」

「本当にいたのか……」

「伯爵様がここまで用意するとは……」


囁きが四方から沸き起こり、会場の熱気はさらに膨れ上がる。

ハイシンはテーブルの下にでも潜り込みたいほど縮こまり、心臓が破裂しそうになっていた。


ロデリックは彼女の目の前に立ち、露骨なまでに値踏みする視線を投げかける。

「この聖なる光は守られるべきだ。ゆえに、私は決めた。」


彼は杯を高く掲げ、豪奢な声で宣言する。

「――彼女を我が第二夫人として迎える!」


大広間が爆ぜるようにざわめいた。


「なっ……!?」

ハイシンの頭は真っ白になり、内心で悲鳴を上げる。

「だ、第二夫人!? これってつまり側室コース!? なにこの公開プロポーズ兼公開処刑ぇぇぇぇ!!」


会長ギルドマスターの瞳は一瞬で氷刃のように鋭くなり、空気を切り裂く。

「伯爵殿。その『決定』……当人に一言も確認していないようだが?」


ライオン(ライオン・ミロス)は群衆の中で杯を回し、金色の瞳を細めた。

(……ほら来た。獲物を見つけた狐は牙を剥く。だが、これは芝居を超えて茶番だな。)

ここまでお読みいただきありがとうございます!


伯爵の口から飛び出した衝撃の一言――「第二夫人」。

宴はさらに混乱し、物語は大きく動き出します。


続きは【明日午前10時】に更新予定です。

ぜひお待ちください!


――つづく


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