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7 目が見えません

「……」


 これが留学に来たルーク……。

 私も弟も咄嗟に返事ができない。予想と……全然違う!! いや、確かに宇宙人では無さそうだけれども!!


「あら~、ルークくん!! ようこそ~!! 待っていたわよ~」


 さすが陽キャの母は動じることもなく、すんなり現実を受け入れている。素晴らしい。


 私ももう一度、目の前に立っている青年を下から見上げる。

 まず……背は……高い!! 185センチは超えていそうだ。ひょっとしたら190センチくらいあるのかもしれない。知らんけど。

 だから、予想以上に目線が上に行っていることに驚く。

 大丈夫だろうか? ルークとやらには、私の頭頂部しか見えていないのではないだろうか。

 それを言ったら弟なんて、足元に気を付けてもらわないと見えていなくて踏まれてしまうんじゃないだろうか。


 次に想像と違ったのは、金髪、色白を正直イメージしていました。ごめんなさい。

 まさか、肌が小麦肌を通り越して褐色だとは思っていなかった。すみません。勝手に白い肌だと思い込んでいました。

 顔の作りはアジア系も入っているようだし、でも顔の凹凸はあるほうだからヨーロッパ系の血筋も入っていそうな気がする。

 まぁ、顔の造形については一年もあれば、どこの血が混じったらこんな顔が出来上がるのか判明するだろう。


 それよりも!! まず、前髪がめちゃめちゃ長い! 目が見えないんですけれど? その上、黒縁眼鏡をかけている。

 こちらは見えているようですが、髪に埋もれたルークの目はいずこにあるのでしょうか?

 だから、瞳の色はわからない。


 それから……声!! 蚊の鳴くような声!! 聞き取るのが大変なくらい小さい声でボソボソ自己紹介されるとは思っていなかった! 

 日本語学びに来たんだよね? そんなに小さい声だと会話が聞き取れなくて、苦労しそうじゃない?

 学校とか大丈夫っすか?


 頭と心でいろいろと思うことはあったけれど、私の気持ちは置いてけぼりにされて母がルークに話かける。


「疲れたでしょ? あ、これが私の娘と息子よ! ほら、二人とも自己紹介して!!」


 こんなに早口で母は話しかけているけれども、ルークは聞き取れているんだろうか?

 ゆっくり話さないと聞き取れないんじゃないだろうか。

 彼の表情からは、理解しているのか理解していないのかすら読み取ることができない。


「えっと……はじまして。笹波 ことりです。十七歳の高校二年生です。宜しくお願いします!」

「ぼくは大樹です。小学校の六年生でもうすぐ十二歳になります!」


 ひとまず簡単な紹介だけする。

 空港の到着ロビーは、人を探したり、数年ぶりで会う人たちが抱擁していたり、父親の出張のお迎えに来たりとごった返しているからだ。


「ことり……たいき……よろしく……ね」


 ルークは再び小さい声で返事をしてくれるため、聞き取りにくかったけれど私と弟の名前は覚えてくれたようだった。



 それから、母の運転する車のトランクにルークのスーツケースとボストンバックを載せると空港から四十分ほどの距離にある自宅にそのまま向かった。


 当初の予定では、後部座席で和気あいあいとルークを含めて三人で座ってみようと話していたけれど、それは無理そうだ。彼一人で十分、日本人成人男性よりも体積をとりそうだ。


「ルークはこの助手席に座ってね~。さぁ、家に向かうわよ~」


 母はルークが無口でもお構いなしに助手席のドアを開けると彼に座るように手で合図をする。

 さ、さすが母だ。陽キャには会話は必要ないらしい。行動と態度で示せば読み取ってくれると思って行動しているのが手に取るようにわかる。

 よし、私も母を見習って会話が成立しないなら態度とジェスチャーで切り抜けて行くしかない。


 母は、何も言わずに「娘が好きな曲なの~」と言いながら車の中でW2の曲を流し始める。

 お母さん、グッジョブ!! 音楽が流れていれば、無理に会話しなくてもおかしくない。

 しかも音楽がノリノリすぎて、ルークの声は絶対かき消されてしまうのは想像に容易かった。


 海の横の湾岸線を走りながら、青い空を見つめ続けるルークがどんな気持ちでいるのか、何を考えているのかはわからなかった。

 それでも、口元がへの字口になってはいないから恐らく嫌な想いをしていなさそうだと勝手に解釈することにした。

第一章はここまでです。

第二章からは、ルークとの共同生活が始まりますよ〜♪

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