19 お悩み相談 【side ルカ】
オレがことりに恋をしていると自覚した日の夜。
W2のメンバーのグループトークにメッセージを送ってみた。
「どうしよう。オレ、恋してもいいのかな?」
「え? どういう事よ?」
「別にグループ結成時に恋愛禁止とかないから、してもいいんじゃね? ってか、俺も好きな子くらいいるし」
オレの恋愛相談をしようと思ったら、すぐさま日本人のアリサ、アメリカのテリーが話題に食いついてきた。
テリーの爆弾発言にも驚いてしまう。
「えっ? テリー好きな人いたの? 初耳なんだけど…」
どうやら、アリサも知らなかったようでビックリ顔のリアクションマークがメッセージの後ろについている。
「ルカさ、恋してもいい? じゃなくて、すでに恋しちゃってる…だろ?」
「うん。そうだね。現在進行形だ。彼女のことを思い出すだけで、心臓がドキドキしてる」
テリーの的確な指摘に、すでに恋に落ちていることを再び自覚する。
「え? どんな子? 私と同じ日本人?」
「そう。日本人の子。日本のホストファミリーで受け入れしてくれている家庭の女の子」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
二人の返信のスピードがとても速い。年齢問わず、恋バナは楽しいらしい。
「何度も聞くけど、恋してもいいんだよね? グループとしてもオッケイなんだよね?」
オレはしつこいくらい確認する。活動休止中とはいえ、メンバーに迷惑をかけたくないからだ。
「もちろんOKよ。何なら、恋していろんな経験をした方が、いい曲が歌えるし感情が豊かになって良い作品を生み出せるはずよ!!」
「そうだ! ルカは性別不詳で売り込んでいたけれど、喉ぼとけも出てきたし、そろそろ限界だろ? 活動再開した時には男として売り出せるように、しっかり男を磨いておけ!!」
テリーの助言は的を得ている。今までは成長途中だったし高音域の声も出せるから、中性的な顔で性別をあやふやにしていたけれど、さすがにオレ自身も限界を感じていた。ソンジュの兵役が終わって、W2の活動再開が決まったら男として舞台に立ちたいと思っている。
「じゃあ、オレ頑張ってみるよ! 振り向いてもらえるように!!」
「おうおう、せいぜい頑張れ! でもパパラッチには気をつけろよ」
「そうね、その子がスクープされることがないように、細心の注意を払いながら恋愛を謳歌しなさい!!」
「今は、顔を隠してオーラを消しているから、全然誰にも気づかれていないよ」
特徴的な青みがかったグリーンの瞳はカラーコンタクトでごまかしているし、そもそも目を前髪と黒縁眼鏡で隠しているから、W2のルカだとはすぐにはバレないだろう。
「そう…なら良かったわ。でもね、気を抜いちゃダメよ」
「わかった。気を付けるよ」
「最近は一般人が、写真と動画を平気で拡散させるからなぁ…まぁ、いつかはバレるかもしれないけれど、期間限定でもいいから恋を楽しんでこいよ!」
テリーの言った『期間限定』の言葉に胸がツキリと痛む。
そうか、確かにホームステイは1年と決まっていたし、来年の今頃は日本にはいない予定だ。
お菓子の『期間限定』は好きだけれど、自分の恋愛を『期間限定』にはしたくない。頭ではわかっているけれど、心は納得できそうにない。
W2の活動はソンジュが戻って来て、準備が整ったら再開することも決まっているけれど、動き出した気持ちに蓋をするのはしたくない。
「はぁ…初めから期間が決まっている恋をするのって…しんどいかも」
来年、日本を離れることを考えると一気に気が滅入ってくる。
ずっとことりと一緒にいられたら…いいな。
エプロンの刺繍のことりじゃなくて、上目遣いでオレを見上げてくる、少し恥ずかしがりやの彼女じゃないとダメなんだと、恋に落ちたその日に気が付いてしまった。




