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10 十五歳のとき【side ルカ】

 オレはルーク・フォレスト。World Wildという音楽アイドルグループに所属していて、芸名はルカと名乗っている。


 今から二年前でオレが十五歳のころ。

 売れ始めて世界音楽ヒットチャートの下位に少しずつ名前が食い込むようになり始めた頃の話だ。


 World Wildのメンバーで今後の活動ミーティングを行っていた。


「ねぇ、そろそろソンジュの兵役のタイミングを考えた方が良くない?」


 日本人女性で小柄なアリサが、韓国人のソンジュが兵役についている間の活動をどうするか話を切り出した。アリサは高音域を得意として特にメインボーカルを引き立てるような声を出しながら、軽やかにダンスを踊るのが得意だ。


「そうだな。俺が韓国に行っている間に五人ではなくて四人で活動を続けておくとか?」

「じゃあ、その間ラップパートとバリトンボイスがいない曲なんて……W2としての魅力はあるのか?」


 韓国人男性でラップパートとバリトンボイスを担当しているソンジュが、自分を入れずに活動を続けておくことを提案してみるけれど、アメリカ人男性のテリーはソンジュがいないとW2として曲の印象がガラリと変わってしまうこともわかっているようだ。


 オレもテリーの意見に同意を示すために、うんうんと静かに首肯する。

 ドイツ人男性のアーベルも眉間に皺を寄せながら、自分の考えを述べる。


「なぁ、これから二年、必死にがむしゃらに頑張って、世界のヒットチャートに何曲か名を刻むところまで働きまくったら、一度、休息とってもいいんじゃないか?」


 オレも心の中で、いいね~その考え!! とアーベルの意見に賛同する。


「確かに、二年以内に世界的なアーティストグループまで上りつめたら、一度、各々自由な時間を過ごしてもいいかもしれない」

「そうね。ソンジュがいない期間を利用して、いろんな経験をしたらまたより良い作曲、作詞ができそうよね!」

「あぁ、俺もそう思う。みんなが各々の充電期間として過ごしてくれるなら、俺も心置きなく訓練に励めそうだ」

「じゃあ、二年後の夏に活動休止をするということで、それまでに世界に認め合られる音楽グループになろうよ。ルカもそれでいい?」


 一斉に四人がオレの方を向く。

 メンバーの中で一番年下のオレは基本的にメインボーカルも務めながら、顔が中性的で背が高いことと高音の声が出せるため、性別年齢不詳としてW2の謎メンバーという位置づけだ。


 正確に言うと、W2として活動を始めた頃は、十二歳で背も低くて声変わりしたばかりだった。ただ、この数年で一気に成長期を迎えて、十五歳の今もどんどん背が伸びている状態だ。


 もちろん、正真正銘男性なのだが、背が伸びる前は女の子にも普段から間違われる顔つきだったので、公式プロフィールは性別がわからないようにしておいたのだ。その方が、話題性もあって楽しめるだろうという安易な考えからだった。


 しかも、オレの両親は日本人とアメリカ人のハーフの父親とタイ人の母親がアメリカ留学中に恋に落ちたとかで、いろんな血が混じっているし、曾祖父母に関していうならばヨーロッパからアメリカに渡ってきているため、ヨーロッパにも少なからずルーツを持っている。だから、肌はタイ人の母から受け継いだのか少し褐色をしているけれど、髪はブラウン。でも瞳は青みがかったグリーンでしかも背はかなり高いという変わった外見をしている。


「うん。それでいい。活動休止して……その間にやってみたいことがある」


 オレはほのかに抱いていた別の夢に挑戦してみる良い機会だと内心喜ぶ。


「そう! じゃあ、二年後に一度、活動休止するということにしましょう!」


 アリサの最後の一声で、W2の活動休止は二年後にしようという決定が下った。

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