やうこそお客様、とは云へない
〈旬と云ふもの京にある水菜哉 涙次〉
【ⅰ】
カンテラ事務所も不景氣の煽りを喰らつてゐる件は、前回書いた。カンテラは、君繪に出來得る限り最髙の教育を受けさせたかつたので、収入ダウンはキツイのである。
と云ふ譯で、一時ストップしてゐた異星人案件、再スタートと云ふ事になつた。異星人は、結界もゝのともしない。他にも色々不具合があり、カンテラはその方面の依頼は放つて置いたのだが... だうやら仕事を撰べる狀況にないやうなので、このリスタートと相なつた。
早速、それを知つてか知らずか、異星からのお客様(?)が「相談室」に姿を見せた。
【ⅱ】
かつて「星の歴史に涙する子」、と云ふカルト集團が、あつた。カルトと云つても、危険なものとは云ひ難く、たゞ、心を奪はれる、と云ふ點が、カンテラの氣に障つた。その詳細は記念すべきカンテラ、第一ピリオド「カンテラの一ダース」の中の挿話、に載つてゐる(tsuyutsuyuseigetsu名義、アメブロで展開。本当は私・永田のX=Twitterの固定ツイから入るのが容易なのだが... 因みにアカウントは@tsuomi2である)。一つの星の文明の終焉。それを思ひやつて慾しい、と云ふ、異星人の勝手な願ひが、そのカルトの發端となつてゐる。文明の榮枯盛衰- それは己々文明の持ち主獨自の榮枯盛衰である筈。思ひやり、と云ふものに、余りに甘えたそれ(カルト)は、まさしく異星人の身勝手さから來てゐた。地球人を劣等人種だと、見なしてゐる- カンテラには癪だつた。
カンテラ事務所の「相談室」に現れたエイリアン(異星人)は、ものゝ見事に(?)、カンテラが斬つた磯巾着型の奴にそつくりだつた。(子だな)とカンテラは思つた。(親と同じで、だうやつてこゝ迄躰を運んだのか、さつぱり分からん。)
「父(雄だとはカンテラ、知らなかつた)がアナタに斬られ、サビシイ思ひをイタシました」變な言葉遣ひである。エイリアンらしい、か。
「意趣ガエシをシタク思つてヲリます」カ「俺の躰に傷一つでも付けられたら、拍手してやるよ」磯巾着「今回ハ人間ガタのヤバンな友ダチを連れてキテいます。彼ラがアナタに傷を付けるデセウ」
【ⅲ】
見れば、確かに人間型の、だが一目で異星人だと分かる風體の輩たちが付いて來てゐる。これは、じろさんに任せやう。最近腕が鈍るやうな仕事しかしてゐない、とぼやいてゐたからな。カ「うちには、人間型の魔物をやつつける、専門家がゐるよ」磯「魔物トハ失敬な。チヤンとした、異星のヒトですヨ」カ「あんたの気色惡いイントネーションは聞き飽きた、ぢやその専門家にご登場願はう- おーい、じろさーん」
⁂ ⁂ ⁂ ⁂
〈エイリアン相手も致し方なしか地球不景氣極まりなしと 平手みき〉
【ⅳ】
じ「あいよつ」カ「異星からのお客様をおもてなしゝてやつて下さい」じ「ラジャー」取り敢へず、口から絶對零度の吐息を吐くのが武器らしいが、そいつらの事は、ものゝ2分で、宇宙の片隅にある、地球星の片隅・日本國の古式拳法を使つて、じろさん片付けた。
じ「こんなおもてなしで如何かな? カンさん」カ「万事オーケイで~す」磯「ナント、ヤバンの極み。ワタシ正視にタエマセーん」
カ「で? 後はあんた斬るだけなんだけど」磯「コノ事は国立天文台ニ云ひツケますヨ」カ「まあ、報酬の種には、それもいゝね。さあ、連絡して見なさい」磯巾着はスマホを持つてゐた・笑。
【ⅴ】
磯「誰もキイテはクレない。ダウカしてイル」カ「あんたも、あんたのカルトも、だうかしてゐる、それが分からんのか?」問答無用、「しええええええいつ!!」と、カンテラ斬り伏せた。太刀の刃がべつとり、嫌な體液で濡れてゐる。カンテラ、懐紙で丁寧に拭き、「この事は、テオに、改めて国立天文台に報告させるよ。この磯巾着の遺骸を提供しさへすれば、何らかのバックがあるだらう」じ「ホント、景氣ワルいシゴトだ」カ「傳染つてるよ、じろさん・苦笑」
これで異星から來たカルトの瀰漫を、辛うじて未然に防いだ、カンテラ一味、さて、次回のお相手は...? と云ふ譯で一卷の終はり。
⁂ ⁂ ⁂ ⁂
〈春の星ぼやける程に涙する 涙次〉
ぢやまた。