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僕と同居人

「ふぁーあ」

彼女が僕の肩に頭を乗せてあくびをした。重い。けど彼女は僕にこれをするのが好きなんだろうな。

合格祝いにもらった時計、彼女の書いた詩、これを見ると思い出す学校での思い出。

僕は久しぶりに昔の気分になりたいと感じ、目を瞑って振り返ってみることにした。今から綴るのは、僕の学生時代の記憶。彼女との最初の出会い。ぜひ最後まで付き合って欲しい。

僕の名前は高橋春音、内気で人と話すこともままならないけど楽器だけには素直になれる以外は、平凡な13歳の中学生だ。

今僕はお母さんの車の中にいて、これから僕の通うイーストン・ミュージック・パブリックスクールに向かっているということも話さなければいけないね。

正直言って、僕は心の底からこの学校に行きたかったわけじゃない。僕は家の環境が大っ嫌いだった。確かにお母さんは優しくしてくれるけど、過保護すぎる。ことあるごとに僕の心配をして、思春期真っ最中の僕にとっては本当に鬱陶しい。今話すとほんとに30ページ分を使うだろうから言わないけど。

気がつくともうちょっとで学校につきそうだ。

「そろそろ着くから、いつでも出れる準備しなさいね。」

「わかってるよ。」

そういうと僕は一番好きな楽器、バイオリンのケースを抱えて早く出るのを待っていた。

5分後には学校全体が見えた。門には音符や楽器を模った《かたどった》ブロンズ像が並んでる。

「さあついたわよ。がんばってね。」

元気な声で言うお母さんだがその顔は少し不安そうだ。

車を降りると、すぐにお母さんは行ってしまった。門の前で立っている人が

「君が新入生の子かね?」

と聞いてきたので

「あ、はい…」

とちょっと自信なさげに言ったのが悪かったのか、本当にここの新入生なのか疑われたので、とっさに合格証明証を見せて納得させた。

「すまないね。新しい学校へようこそ。ここが今日から君のお家でもあり、学ぶところでもある。受付は入り口を入ってすぐだからね。」

「親切にありがとうございます。」

そう言って早速入口の方に向かった。

受付には変な帽子をかぶったおじさんが座っていて

「君がハルト・タカハシか、名前なら全員覚えてるよ。」

と優しい声で言ってきたから正直驚いた。

もう名前覚えられてるんだ。ちょっと嬉しかった。

「これは君の部屋の鍵とロッカーの鍵。その中に教科書や実習に必要な物が入ってるからね。無くしたり、破損したりしたら購買部から買うといい。」

「あれ、制服って…」

「制服?ここは服装自由だよ。もしかして私服を持ってきてないのかい?」

「今着てるスーツとと寝巻きしか持ってきてないです…」

「それだったらこのポストカードに君の家宛に手紙を書きなさい。多分3日後には届くんじゃないかな。」

3日もスーツと寝巻きで耐えろというのか…普通に制服あると思っていたから必要最低限の服しか持ってきていなかった。ちょっと恥ずかしいな。

「じゃあ君はアダージョ寮だからここをまっすぐ行って右に行ってね。」

「ありがとうございます。」

アダージョ、音楽用語でゆるやかにって意味だけど、同じ寮の部屋に住む人が波瀾万丈な人でなければいいな。

ついた、僕と同居人の部屋だ。中からピアノの音がする。

「同じ部屋になったハルト・タカハシです。入りますね。」

中に入ると明らかに髪の長い人がいた。僕は一瞬で状況を理解して、すぐにドアを閉めてしまった。

(ちょっと待ってよ、同居人が女の子なんて聞いてないよ!)

すぐ受付のおじさんに(なんでだ)と問おうしたがすぐに女の子がドアを開けて僕の腕を引っ張った。

「早く入りなさいよ。こっちの方が涼しいわよ。」

部屋に入ってしまった。辺りを見回すと、部屋がとても広い。多分僕の日本の家のリビングぐらい広い。壁際には2段ベット、机、そしてピアノが置いてあった。

「君、名前は?」

金髪の女の子が僕に聞く。

「僕は春音。ハルト・タカハシ」

僕は内気だから少し下を向いて名乗った。

「ちゃんとこっちの目を見て話しなさいよ。私はルーナ。ルーナ・エバンスよ。これからよろしくね。」

「よろしく…お願いします…」

やっぱり僕は下を向いたままだった。大好きなバイオリンのケースを抱えて不安な顔をしている僕の姿は彼女にとって滑稽に感じるだろうな。

ともかく、今日から僕のこの学校での生活が始まった。

今日の振り返りはこれくらいにしておこう。





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