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最初の印象は扉じゃないかというものだった。表面が平らだからだ。
しかし、縁を調べても、取っ手はなさそうだ。
開けるためのヒントとなる文字も刻まれていない。
どうしたらいいものか。
俺は僧ではないし、月も出ていないが、
石を、推してみた。
動かない。
敲いてみた。
動かない。
考えてもしょうがない。こうなれば、力ずくだ。
思い切り腰を入れて蹴飛ばしてみた。
石が揺れる。
こちら側に倒れてきたら危ないと思って斜面をバックステップして避けた直後、蹴飛ばした石はバタンと向こう側に倒れて土が舞った。
目をつぶって、目の前を手で払ったあと、目を開くと、思わず膝が笑ってしまった。
洞窟があった。しかも暗いはずなのほんのりと明るく、中が途中まで見通せる。
洞窟?
この深さで?
しかも、なぜ明るい?
あれ? そういえば、掘り進んでいるのに視界の明るさがそれほど大きく変わらなかった……掘るのに夢中で気が付かなかったが、それっておかしいだろ。
やばいかもしれない。
怖くなって急いで穴から出ようとした。
振り返って、走ろうとしたら、ミケがいた。
「おまえには巻き込まれる素質がある。森や世界の終着点に干渉する人のようだ。我の力を分け与えてやろう。我はこの身体を保てなくなるが、まだ存在はできる」
ミケがしゃべった……
「恐るな」
なぜ猫がしゃべってる!
ミケはなにものだ? ネコマタなのか?
俺のこころの声に反応するかのようにミケがこたえる。
「吾輩は猫である。名前は、今世では、ない」
名前って……そこですか?
それより、ネコマタについては答えないのか!
おまえ、ネコマタか!
第七話をお読みいただき、ありがとうございます
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