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短刀を和紙でくるみ、箱に入れてフタをする。
誰かに見られたら大変だ、銃刀法違反で捕まるかも。そんな考えが頭をよぎり、後ろを振り返る。
目が合ってしまって、身体がビクッとした。
ミケがこちらをじっと見ている。
「おどかすなよ」
そう言って穴から箱を持って出た。梯子を登って、じいさんの家に行く。ミケは庭先までついてきていたが、その後はどこかに行ってしまった。
「こんなものが出てきました、開けちゃいましたけど」
そう言って玄関口に行くと、
「上がりなさいな。ケーキがあるから」
ばあさんの声がする。
どうも午前中に駅前のケーキ屋で買ってきてくれたらしい。
俺は居間でストロベリーショートケーキとお茶をいただきながら、二人に経緯を話した。
「あなたが掘り当てたのだから、これはあなたが持っていなさい」
じいさんがそう言うと、ばあさんも、
「きっと役に立つよ」
と訳のわからないことを言う。短刀が役に立つって俺は人を殺す必要にせまられるのか?
人を殺す以外に短刀の役割が思いつかない。発想力のない俺……
短刀なんて役に立たないよ。捕まっちゃうよ。
「持っては帰れないので、穴の中に奉納しておきましょう」
と言ってごまかすと、
二人ともなぜか、そうじゃのう、と賛成してくれた。
とりあえず捕まらずにすみそうだ。
「明日は土曜日なので午後早めに来て、続きを掘ってみます。俺の学校、午前中は授業があるので」
そう言うと、うんうんとじいさんがうなずいた。
帰り際に、俺は、はたと気がつく。
「すいません、そういえばもう夕飯の支度の時間ですよね。ご迷惑をおかけします」
じいさんが、かまわん、孫は帰るのが遅いから、八時過ぎなきゃ夕飯にならん、という。
孫? 孫と三人で生活してるのかなと気になったが、家庭内のことをあれこれ聞くのは失礼すぎるだろうと思って、そうなんですかー、それではまたあした、と言って玄関を出た。
じいさんの名字を知らないことに気がついたのは、家に着いてからだ。
第五話、お読みいただき誠にありがとうございます
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