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剣は一本二万ルドだそうだ。思った以上に高い。
二宮さんに、二万だって、と伝えると、買おう、と言う。
誰が使うの? と俺が尋ねると、もちろんみやじくん、と答える。短刀よりはいいと思うよ、とのことである。
いや、その短刀でさえ、一度も使ってないんだけど、とは、もちろん言わない。
俺は堂々と二万を払い、その剣を買った。
7600ルドしか手持ちはないから、もちろんキャッシュではない。組合証の残金で買うことが出来たのだ。掌認証の石もあった。高額商品は組合証で買うことが多いのだろう。
残金は70000ルドと表示が変わった。よくできている、この組合証。
剣は思ったよりも軽い。紐をつけてもらい、肩にかける。
「その剣で私を守ってね」
二宮さんはニッコリした。
……かわいい。
でも、守ってもらうのは依然として弱い俺のほうだよ、と思うが、それもカッコ悪くて、とてもじゃないが言えない。
「頑張るよ」
ほんとうは、まかせておけ! とか言いたかったが、さすがに言えなかった。だって、戦ったことがないんだもん。
二万も払ったのだ。知らないことも多いので、オヤジさん、情報もください。
「俺たちは遠い島国から来た旅のものなので、この国には疎いんです。さっき言っていた地下一層や塔のことを教えてもらえませんか」
嘘は言っていない。日本は遠い島国だ。
「そうか。だからそっちの女性の言葉がわからなかったのか」
オヤジは二宮さんを見てそう言い、ことばを続ける。
「いいだろう。地下一層には俺たちの元同族のゴブリンがいる。俺たちのような知恵ではなく、武器を持ち、争いを好む恐ろしいやつらさ。マテリアルの濃度が地上の倍の濃さだから強いが、コイツを狩ると、マテリアルの結晶であるクリスタルを手に入れることができる。これを売って生活している者がいるんだ。クリスタルは地上のエネルギー源だから互助組合に持っていけば買い取ってくれる」
マテリアル? マテリアルってなんだ? 聞いたことがない。
「マテリアルってなんですか? 聞いたことがないんですが」
俺は思ったとおりをことばにする。
「おい、マテリアルも知らないのか? あんたたちのいた島国とやらには存在しなかったのかい。それじゃあ、ここの空気は重たく感じないか?
マテリアルというのは、この地上にも含まれている見えない物質なんだよ。身体強化する作用があるんだ。地下に行けば行くほど濃くなるって言われているが、地下二層に行った奴はまだ聞かないから、本当のところはわからない。身体強化の作用があるから、濃度が濃くなればなるほど、魔物は手強くなるってことだ」
俺はここにきて、自分が買った剣の意味を知った。……地下一層にいる武器を持ったゴブリンと戦うための剣なんだ……
後ろで二宮さんが背中を突く。振り返ると、
「あとででいいから内容教えてね」
と困った顔をして言う。
二宮さん、以前空気が重いって言っていたね。
きみは正しかったよ。
うん、と頷きながら、このことを伝えたら、きっと二宮さんはドヤ顔をするんだろうなあと思った。
ドヤ顔は、それはそれで、かわいいかもしれない。
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